李白81白紵辭其一


白紵辭其一
揚清歌、發皓齒。
すみきった声をあげて歌をうたい、まっしろな歯をみせている。
北方佳人東鄰子、且吟白紵停綠水。
北にすむ漢人の俳優だろうか、山東あたりの処女だろうか、ともかく一級の美人ぞろい。だから、「緑水」などの古臭い舞はやめて「白紵」の舞を踊っている。
長袖拂面為君起、寒云夜卷霜海空。
うす絹の長い袖で顔を隠し、誘いの合図にあなたは応じてくれた。寒々とした夜であっても、あなたに抱かれて悦楽な気持ちになる。
胡風吹天飄塞鴻、玉顏滿堂樂未終。

白絹の似合う、西域の異国の色白な肌、国境近くから来た女が雁の踊りで白紵をひるがえす、玉のような美女の顔を座敷いっぱい集めて、楽しみはなかなか終りそうにない。

白紵辞(はくちょじ) 其の一
清歌を揚げ、皓歯を発く。
北方の佳人 東隣の子、且つ白紵を吟じて 緑水を停め
長袖 面を払って 君が為に起つ、寒雲 夜巻いて 霜海空ごこち。
胡風天を吹いて 塞鴻諷える
玉顔満堂 楽しみ未だ終らず

現代語訳と訳註
(本文)
揚清歌、發皓齒。
北方佳人東鄰子、且吟白紵停綠水。
長袖拂面為君起、寒云夜卷霜海空。
胡風吹天飄塞鴻、玉顏滿堂樂未終。

(下し文)
白紵辞(はくちょじ) 其の一
清歌を揚げ、皓歯を発く。
北方の佳人 東隣の子、且つ白紵を吟じて 緑水を停め
長袖 面を払って 君が為に起つ、寒雲 夜巻いて 霜海空ごこち。
胡風天を吹いて 塞鴻諷える
玉顔満堂 楽しみ未だ終らず

(現代語訳)
すみきった声をあげて歌をうたい、まっしろな歯をみせている。
北にすむ漢人の俳優だろうか、山東あたりの処女だろうか、ともかく一級の美人ぞろい。だから、「緑水」などの古臭い舞はやめて白紵の舞を踊っている。
うす絹の長い袖で顔を隠し、誘いの合図にあなたはおおじてくれた。寒々とした夜であっても、あなたに抱かれて悦楽な気持ちになる。
白絹の似合う、西域の異国の色白な肌、国境近くから来た女が雁の踊りで白紵をひるがえす、玉のような美女の顔を座敷いっぱい集めて、楽しみはなかなか終りそうにない。



(訳注)
白紵辞

白紵辭 晋の時代、呉の地方に白紵の舞というのが起った。白紵というのは、麻の着物の美白なもの。それを着て舞い、その舞の歌を白紵辞と言った。


揚清歌、發皓齒。
すみきった声をあげて歌をうたい、まっしろな歯をみせている。
清歌 澄みきった声で唄う 〇皓齒 まっしろな歯。


北方佳人東鄰子、且吟白紵停綠水。
北にすむ漢人の俳優だろうか、山東あたりの処女だろうか、ともかく一級の美人ぞろい。だから、「緑水」などの古臭い舞はやめて白紵の舞を踊っている。
北方佳人 漢の俳優、 その妖艶な色香の一瞥で城をも滅ぼすほどの美貌。漢の協律郎<李延年>が妹を武帝劉徹(紀元前157~87年)に薦めて歌った詩の一節、「一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾けん。」からこの語にしている。唐代では皇帝好みの美人を差し向け、麗しい色気と回春の媚薬とでとりこにし、やがて中毒死させていくのである。この役割の一端を宦官が担っていた。これを「傾国」という。
 紀頌之の漢詩ブログの別のブログ 特集李商隠 4 曲江で「傾城色」(7月14日)とあらわしている。その後妹が武帝に寵愛され、彼女は李夫人と呼ばれるようになった。李夫人は男子を産んだが早死にした。また、李延年は協律都尉に任命されて二千石の印綬を帯び、武帝と寝起きを共にするほど寵愛された。李夫人の死後、李延年の弟が宮女と姦通し、武帝は李延年や兄弟、宗族を誅殺した。○東鄰子 宋玉の賦の中に出てくる美人。〇綠水 古代の舞曲の名。白紵よりも古い舞。

長袖拂面為君起、寒雲夜卷霜海空。
うす絹の長い袖で顔を隠し、誘いの合図にあなたは応じてくれた。寒々とした夜であっても、あなたに抱かれて悦楽な気持ちになる。
○踊る時に流し目をし、顔を覆い隠す所作をしめす。誘うためのしぐさ。○霜海空 悦楽、エクスタシーをしめす。

(この句は今まで意味不明として訳されていない句であった。雲に抱かれる、水の流れ、海の波、霜の白さ、それぞれがセックスを連想させる語で、霜の白き肌、海の竜宮、雲に乗る心地を連想する。愛の詩、恋の詩、芸術表現である。)

胡風吹天飄塞鴻、玉顏滿堂樂未終。
白絹の似合う、西域の異国の色白な肌、国境近くから来た女が雁の踊りで白紵をひるがえす、玉のような美女の顔を座敷いっぱい集めて、楽しみはなかなか終りそうにない。
胡風 えびすの風。白絹の似合う、西域の異国の色白な肌。○塞鴻 国境の大雁。国境近くから来た女。○玉顔 玉のように美しい顔。


すみきった声をあげて歌をうたい、まっしろな歯をみせている。
北にすむ漢人の俳優だろうか、山東あたりの処女だろうか、ともかく一級の美人ぞろい。だから、「緑水」などの古臭い舞はやめて白紵の舞を踊っている。
うす絹の長い袖で顔を隠し、誘いの合図にあなたはおおじてくれた。寒々とした夜であっても、あなたに抱かれて悦楽な気持ちになる。
白絹の似合う、西域の異国の色白な肌、国境近くから来た女が雁の踊りで白紵をひるがえす、玉のような美女の顔を座敷いっぱい集めて、楽しみはなかなか終りそうにない。



白紵辞82其二
館娃日落歌吹深、月寒江清夜沉沉。
館娃宮では日が落ちて歌と笛とがいっそうたけなわ。月はつめたく長江の水清く、夜はしんしんとふけてゆく。
美人一笑千黃金、垂羅舞縠揚哀音。
美人のほほえみには千の黄金も惜しくない。うすぎぬを垂らし、ちぢみの絹でかざって舞いおどり、かなしそうに、せつなそうに、声をあげる。
郢中白雪且莫吟、子夜吳歌動君心。
郢の白雪というような他国の高尚な歌は、今は場違いだから唄ってはいけない。この国の民謡である子夜の呉歌で君の心を動かそう。(この歌で君の心つかめるか)
動君心、冀君賞。
君の心を動かして、君から誉めてもらって承諾をもらおう。
愿作天池雙鴛鴦、一朝飛去青雲上。
願わくは御苑の池のつがいのおしどりのように、やがては青雲の上に飛んで行く心地になろう。
 

館娃宮では日が落ちて歌と笛とがいっそうたけなわ。月はつめたく長江の水清く、夜はしんしんとふけてゆく。
美人のほほえみには千の黄金も惜しくない。うすぎぬを垂らし、ちぢみの絹でかざって舞いおどり、かなしそうに、せつなそうに、声をあげる。
郢の白雪というような他国の高尚な歌は、今は場違いだから唄ってはいけない。この国の民謡である子夜の呉歌で君の心を動かそう。(この歌で君の心つかめるか)
君の心を動かして、君から誉めてもらって承諾をもらおう。
願わくは御苑の池のつがいのおしどりのように、やがては青雲の上に飛んで行く心地になろう。


館娃日落歌吹深、月寒江清夜沉沉。
館娃宮では日が落ちて歌と笛とがいっそうたけなわ。月はつめたく長江の水清く、夜はしんしんとふけてゆく。
○館娃 かんあ 戦国時代の呉の国の宮殿の名。遺跡は江原省蘇州にある。○沈沈 夜がふけてしずかな様子。


美人一笑千黃金、垂羅舞縠揚哀音。
美人のほほえみには千の黄金も惜しくない。うすぎぬを垂らし、ちぢみの絹でかざって舞いおどり、かなしそうに、せつなそうに、声をあげる。
○穀 ちぢみおりで飾る。


郢中白雪且莫吟、子夜吳歌動君心。
郢の白雪というような他国の高尚な歌は、今は場違いだから唄ってはいけない。この国の民謡である子夜の呉歌で君の心を動かそう。
○郢中白雪 郢は春秋時代の楚の国の都。いまの湖北省江陵県。「白雪」は楚の国の歌曲の名。宋玉の「楚王の問いに対う」という賦の中にこんな話がある。ある旅人が郢に来て歌をうたった。はじめ「下里巴人」(かりはじん)という歌をうたったところ、国中でいっしょについて歌った者が、数千人もいた。つぎに「陽阿薤露」という歌をうたったら、いっしょに歌った者が、数百人いた。さいごに「陽春白雪」の歌をうたったら、国中でいっしょに歌った者が、わずか数十人であったという。低俗な歌の流行していた郢の中では「白雪」のような高尚な歌曲は向かないという故事である。○子夜呉歌 古い歌曲の名。晋の時代、呉の地方(江蘇竺帯)の子夜という少女の作った民謡と伝えられる。李白にも有名な作がある。


動君心、冀君賞。
君の心を動かして、君から誉めてもらって承諾をもらおう。
○冀 こいねがう。承諾をとる。


愿作天池雙鴛鴦、一朝飛去青雲上。
願わくは御苑の池のつがいのおしどりのように、やがては青雲の上に飛んで行く心地になろう。
○天池 天子の御苑の中の池。「荘子」がいう天上の池。○鴛鴦 鴛 おしどり。鴦 おしどりの雌。



館娃宮では日が落ちて歌と笛とがいっそうたけなわ。月はつめたく長江の水清く、夜はしんしんとふけてゆく。
美人のほほえみには千の黄金も惜しくない。うすぎぬを垂らし、ちぢみの絹でかざって舞いおどり、かなしそうに、せつなそうに、声をあげる。
郢の白雪というような他国の高尚な歌は、今は場違いだから唄ってはいけない。この国の民謡である子夜の呉歌で君の心を動かそう。(この歌で君の心つかめるか)
君の心を動かして、君から誉めてもらって承諾をもらおう。
願わくは御苑の池のつがいのおしどりのように、やがては青雲の上に飛んで行く心地になろう。



館娃(かんあ)日落ちて 歌吹(かすい)深く、月寒く江清く 夜沈沈。
美人一笑 千の黄金、羅(うすもの)を垂れ 穀を舞わして 哀音を揚ぐ。
郢中(えいちゅう)白雪 且つ吟ずる莫れ、子夜呉歌 君の心を動かす。
君の心を動かして、君の賞を冀う。
願わくは天池の双鴛鴦(そうえんおう)と作り、一朝飛び去らん 青雲の上





83 巴女詞


巴女詞
巴水急如箭、巴船去若飛。
巴水は矢のようにはやくながれる、巴の船は鳥のように飛んで行ってしまう。
十月三千里、郎行幾歳歸。
十月には三千里にも遠くなる。男は、行ったきり、いくつになったら帰るのやら。

巴水は矢のようにはやくながれる、巴の船は鳥のように飛んで行ってしまう。
十月には三千里にも遠くなる。男は、行ったきり、いくつになったら帰るのやら。



○巴 四川省重慶地方のこと。○巴水 重慶地方を流れる長江の流れ。○巴船 重慶地方の船は、急流にのれる船。○郎 芸妓などの女性が男を示す。


 この詩は故郷、四川に残した女性について詠ったものではないと思う。当時の社会は男に、妾を含め、女性がいることは男の甲斐性なのである。したがって、李白はこの種の詩をたくさん作っているが、どの詩も、女性が誰なのか、特定しにくい表現がほとんどである。詩を読んでくれているのは、李白を支えてくれている人たちである。パトロン、スポンサーは多種多様であったであろうと思う。

巴水 急なること箭(や)の如し、巴船 去こと飛が若し。
十月 三千里、郎 行きて幾歳か歸える。


李白の詩 連載中 7/12現在 75首

2011・6・30 3000首掲載
漢文委員会 ホームページ それぞれ個性があります。
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