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李白85 安陸白兆山桃花岩寄劉侍御綰


安陸白兆山桃花岩寄劉侍御綰
安陸の白兆山桃花巌にて劉侍御綰に寄す 

云臥三十年。 好閑復愛仙。
浮雲暮らしで30年、その間、隠遁の閑暇を好み、また神仙の道を愛してきました。
蓬壺雖冥絕。 鸞鶴心悠然。
蓬萊山の宮女の部屋ははてしなく遠いけれど、鸞鳳のような心はゆったりとしています。
歸來桃花岩。 得憩云窗眠。
桃花巌に帰ってきた、雲に抱かれ夢心地の窓辺で眠れました。
對嶺人共語。 飲潭猿相連。
山を相手に人は語り合いができるが、淵の水を飲む猿であっても手をつなぎ合っている。(私たちは手を取り合っています)
時升翠微上。 邈若羅浮巔。
時として青い山々に靄が立ち込めている山に登れば、はるかかなたの羅浮山のいただきにいる気がしてくるのです。
兩岑抱東壑。 一嶂橫西天。
二つの岑峰が東の谷を抱いてそそり立ち、屏風のような山が西の空を横切っています。
樹雜日易隱。 崖傾月難圓。
樹々は茂り合って日陰になりやすく、崖は急で  満月の形も見えにくいものです。
芳草換野色。 飛蘿搖春煙。
草は、ほのかにかおり、野色を変え、飛蘿(ひかげかずら)は春霞のようはゆらめいています。
入遠構石室。 選幽開上田。
遠く山中に岩屋をかまえ、分け入って、奥深い場所を選んで高いところに田をひらきました。
獨此林下意。 杳無區中緣。
ひとり山中の情を維持します、世間との縁はすっかり切れてしまったとしても。
永辭霜台客。 千載方來旋。
侍御史の客となって永の暇を告げましたが、いつの日にかまた参上いたしましょう。


浮雲暮らしで30年、その間、隠遁の閑暇を好み、また神仙の道を愛してきました。
蓬萊山の宮女の部屋ははてしなく遠いけれど、鸞鳳のような心はゆったりとしています。
桃花巌に帰ってきた、雲に抱かれ夢心地の窓辺で眠れました。
山を相手に人は語り合いができるが、淵の水を飲む猿であっても手をつなぎ合っている。(私たちは手を取り合っています)
時として青い山々に靄が立ち込めている山に登れば、はるかかなたの羅浮山のいただきにいる気がしてくるのです。
二つの岑峰が東の谷を抱いてそそり立ち、屏風のような山が西の空を横切っています。
樹々は茂り合って日陰になりやすく、崖は急で  満月の形も見えにくいものです。
草は、ほのかにかおり、野色を変え、飛蘿(ひかげかずら)は春霞のようはゆらめいています。
遠く山中に岩屋をかまえ、分け入って、奥深い場所を選んで高いところに田をひらきました。
ひとり山中の情を維持します、世間との縁はすっかり切れてしまったとしても。
侍御史の客となって永の暇を告げましたが、いつの日にかまた参上いたしましょう。

云臥三十年。 好閑復愛仙。
浮雲暮らしで30年、その間、隠遁の閑暇を好み、また神仙の道を愛した
○愛仙 道教の神仙の道

蓬壺雖冥絕。 鸞鶴心悠然。
蓬萊山の宮女の部屋ははてしなく遠いけれど、鸞鳳のような心はゆったりとしている
○蓬壺 蓬は蓬莱山。中国東方の海中にあって、不老不死の仙人が住むところ。壺は竜宮城の女官の住む部屋。 ○冥絕 果てしなく遠いさま。手の届かない存在。 ○鸞鶴 想像上の鳥。天子の乗る御車。 ○悠然 ゆったりとしたさま。。

歸來桃花岩。 得憩云窗眠。
桃花巌に帰ってきた、雲に抱かれ夢心地の窓辺で眠れた
○得憩 ゆっくりと休めた。 ○云窗 雲中の窓というのは男女の営み行為を連想させる言葉。この前後の句は儒教的な解釈では理解できない。道教的な考え方と、詩人李白の想像力は読む人にも想像を与えてくれる。


對嶺人共語。 飲潭猿相連。
山を相手に人は語り合いができる、淵の水を飲む猿であっても手をつなぎ合っている。(私たちは手を取り合っています)

時升翠微上。 邈若羅浮巔。
時として青い山々に靄が立ち込めている山に登れば、はるかかなたの羅浮山のいただきにいる気がしてくる。
○升 のぼる。成熟する。○翠微 青い山々に靄が立ち込めているさま。山の八合目あたり。萌黄いろ。男女のことを示唆。○邈 ばく はるか、はなれる。もだえる。 ○巔 てん 山頂。ものの上側。おちる。


兩岑抱東壑。 一嶂橫西天。
二つの岑峰が東の谷を抱いてそそり立ち、屏風のような山が西の空を横切っている
○兩岑 二つの先のとがった山。 壑 がく 谷間。あな。いわや。女性の体を示唆している聯である。抱く東と横わる西が対句になるのでこの東西は直接的な意味はなく胸の乳頭とその谷間横たわる軆体と解釈する。


樹雜日易隱。 崖傾月難圓。
樹々は茂り合って日陰になりやすく、崖は急で  満月の形も見えにくい。


芳草換野色。 飛蘿搖春煙。
草はほのかにかおり野色を変える、飛蘿(ひかげかずら)は春霞のようはゆらめいている。
(体からほのかにいい匂いがしきて、体に紅色がさしてきた、二人は春カスミのなかで揺らめいている。)


入遠構石室。 選幽開上田。
遠く山中に岩屋をかまえ、分け入って、奥深い場所を選んで高いところに田をひらく。


獨此林下意。 杳無區中緣。
ひとり山中の情があるのみで、世間との縁はすっかり切れてしまった。
○杳 よう くらい。はるかな。はっきりしない。 ここは悦楽を示唆する。


永辭霜台客。 千載方來旋。
侍御史の客となって永の暇を告げ、また参上できるのは  いつの日だろうか


○韻 年、仙、然、連、巔、天、圓、煙、田、緣、旋。
李白は多くの長編の古詩に変韻を使うが、ここでは一気に最後まで韻を踏襲している。お礼状としてのありがたさを増していることと感じられる。
   
安陸白兆山桃花巌寄劉侍御綰
    
安陸の白兆山桃花巌にて劉侍御綰に寄す     
雲臥(うんが)すること三十年、閑(かん)を好み復(ま)た仙(せん)を愛す
蓬壷(ほうこ)  冥絶(めいぜつ)すと雖も、鸞鳳(らんほう)  心(こころ)悠然たり
帰り来る桃花巌(とうかがん) 、雲窻(うんそう)に憩(いこ)うて眠るを得たり
嶺(みね)に対(むか)って人は共に語り、潭(ふち)に飲んで猿は相い連なる
時に翠微(すいび)の上に昇(のぼ)れば、邈(ばく)として羅浮(ふら)の巓(いただき)の若(ごと)し
両岑(りょうしん) 東壑(とうがく)を抱(いだ)き、一嶂(いつしょう) 西天(せいてん)を横(よこ)ぎる
樹(き) 雑(まじ)って 日 隠れ易(やす)く、崖(がけ) 傾いて 月 円(まどか)なり難し
芳草(ほうそう) 野色(やしょく)を換(か)え、飛蘿(ひら) 春煙(しゅんえん)を揺るがす
遠きに入りて石室(せきしつ)を構え、 幽(ふか)きを選んで山田(さんでん)を開く
独り此の林下(りんか)の意(い)のみ、杳(よう)として区中(くちゅう)の縁(えん)無し
永く辞す霜台(そうだい)の客、千載(せんざい) 方(まさ)に来(きた)り旋(めぐ)らん

 李白は官を辞して隠遁している劉綰(りゅうわん)という人に随州でお世話になったことを風雅に表現してお礼を述べているもの。六朝からの男女の営みを、想像力豊に表現する伝統の艶辞表現を李白が集大成した見事な詩になっている。儒教的な解釈だとわけのわからない詩となってしまう。李商隠などに影響を与えたものであろう。

別に詩題が「春歸桃花岩貽許侍御 」春帰る桃花岩にて許侍御に貽(おくる)としている。
この場合、舅の許氏へ夫婦仲睦まじく暮らしておりますご安心くださいという詩になる。いずれも男女のことを詠っていることには違いはない。