杜甫 1 端午日賜衣

758乾元元年の五月五日 杜甫47歳
左拾遺であったとき、宮中より衣をたまわったことをのべている。杜甫が子供のように喜んでいる。杜甫人生、全詩の中から唯一無二の作品である。杜甫をスタートするにふさわしい本当に象徴的な作品。杜甫が分かればわかるほどこの作品時の杜甫がいとおしくなる。杜甫は誠実な詩人、苦悩することから、逃避していない。道教的な部分はなく、中国の良心ともいえる杜甫詩少しづつ見ていきます。杜甫の詩は作時期がはっきりしているが、必ずしも順序については、違っている。(長い詩が多いためで、私は長編詩を区切って紹介するのは、間違っていると思うので、それが理由で少し変わる可能性があるということである。)きっちり通してみていていくと杜甫のことがよく理解できると思う。

杜甫 1 端午日賜衣

五言律詩
端午日賜衣
宮衣亦有名,端午被恩榮。
細葛含風軟,香羅疊雪輕。
自天題處濕,當暑著來清。
意內稱長短,終身荷聖情。



こんど賜わった宮中でつくられた衣については、自分ほどのものの姓名まで御下賜者のなかにあって、端午のお祝い日にありがたき栄誉を被った。
その着物は、細い葛の糸を用いたのは風を含んでしなやかであり、香を燻らした薄絹のものは雪色を畳んでふわりとしている。
御筆で題されたところは墨のあともまだ乾かず、暑さにあたって之を身に着ければいと清々しい。
腹の中で積もってみるにこの着物は真に自分のからだの寸法によく合っている。これを下さった我が君のお情けのかたじけなさは自分が一生涯のいただきものである。


 この詩は、杜甫の数ある四の中で、トップに取り上げるとすればおそらく初めてのことではないだろうか、杜詩を、何度も読み返している。一千首以上もあるのでそのたびに違った印象を受けたり、新たな発見ができたりしている。何度読み返して飽きることのない作者である。
 実は、この詩を頂点に詩の内容がガラッと変わっていくのである。正確にいえばこの詩の前後20首で変わっているのだ。
 ただ、このブログの趣旨は杜甫のエポックメーキングの考察にはないので一般論で紹介していくこととする。







意內稱長短,終身荷聖情。
腹の中で積もってみるにこの着物は真に自分のからだの寸法によく合っている。これを下さった我が君のお情けのかたじけなさは自分が一生涯のいただきものである。
○意内 自己のこころのなかではかってみる。一説に天子の意内とするが、恐らくは天子は一々臣下の身の寸法をはからせることはあるまい。 ○称 つりあいのよろしいこと、去声によむ。○長短 きもののせたけ、そでたけ等の長いこと、短いこと。○荷 いただいている。○聖情 聖君のお情け心。



自天題處濕,當暑著來清。
御筆で題されたところは墨のあともまだ乾かず、暑さにあたって之を身に着ければいと清々しい。
〇自天 「題署自天子」( 天子 自ら題署す)を省略して、題の字を下におく。役職名と名前を書いてある、天子みずから名を題したまえることをいう。○題処 かき記されたもの、此の句は首句の「有名」を承けるもの。○湿 墨の痕がうるおう、かきたてであることをいう。○当暑 あつさのおりに。 ○清 さっぱりしてすがすがしいこと。



細葛含風軟,香羅疊雪輕
その着物は、細い葛の糸を用いたのは風を含んでしなやかであり、香を燻らした薄絹のものは雪色を畳んでふわりとしている。
○細葛 ほそいくずのいとでつくった衣をいう。 ○含風気孔が多くて風をいれやすいこと。 ○軟 しなやかなこと。 ○香羅 かんばしいうすぎぬの衣、香とは香をたきこめたのであろう。○畳雪 雪とは純白色をたとえていう、白衣を畳んであるのをみて雪をたたむと表現したもの。○転 ふわりとしている。



宮衣亦有名,端午被恩榮

こんど賜わった宮中でつくられた衣については、自分ほどのものの姓名まで御下賜者のなかにあって、端午のお祝い日にありがたき栄誉を被った。
○宮衣 宮女のつくった衣、即ち下の葛、羅を以て製したもの。 ○亦有名 「我亦た名有り」の義、宮中に名札版があり、賜衣者の列内に自分の姓名を確認できたのだ。最高に喜んでいる雰囲気を感じ取れる。○端午 夏暦では正月を寅とし、五月は午にあたる。五月が午であるために五の日をまた午とする、端は初の義、端午とは五月の初旬の午の日の義であるという。○恩栄 天子の御恩による栄誉。



 この詩は、杜甫の数ある四の中で、トップに取り上げるとすればおそらく初めてのことではないだろうか、杜詩を、何度も読み返している。一千首以上もあるのでそのたびに違った印象を受けたり、新たな発見ができたりしている。何度読み返して飽きることのない作者である。
 実は、この詩を頂点に詩の内容がガラッと変わっていくのである。正確にいえばこの詩の前後20首で変わっているのだ。
 ただ、このブログの趣旨は杜甫のエポックメーキングの考察にはないので一般論で紹介していくこととする。


○韻 名,榮、軽、清、情。

(端午の日衣を賜う)
宮衣亦名有り 端午恩栄を被る
細葛風を含んで軟やかに 香羅雪を畳んで軽(かるし)
天よりして題する処 湿い 署に当って 著け 来れば 清(きよし)。
意内 長短に 称う、 終身 聖情を 荷なう