李白 87 下終南山過斛斯山人宿置酒
五言古詩


下終南山過斛斯山人宿置酒
暮從碧山下。 山月隨人歸。
日暮れに碧山から下ってくると、山の端からのぼってきた月も我々についてくる。
卻顧所來徑。 蒼蒼橫翠微。
振り返って下りてきた小道を見れば山の緑の中に、こんもりとした青い色の道がぼんやりと中腹に続いて見える
相攜及田家。 童稚開荊扉。
友と連れ立って百姓家に来ていた、子どもらが柴の戸を開けて迎えてくれた。
綠竹入幽徑。 青蘿拂行衣。
緑の竹が暗い寂しい小道にまで生い茂り、青いツタが旅の衣にまとわりつく
歡言得所憩。 美酒聊共揮。
楽しみながら話をし、今夜の休むところもできた。うまい酒をちょっとともに酌み交わすことになった。
長歌吟松風。 曲盡河星稀。
長々と歌を唄い、松風を聞いて口ずさむ、歌いきってしまうと天の河の星もまばらになっていた。
我醉君復樂。 陶然共忘機。
私は酔ってしまった、君もまた楽しんだ。心持よく酒に酔ったので、ともに淡泊自然の心境になったということだ。




終南山下り斛斯山人を過り宿し置酒す

日暮れに碧山から下ってくると、山の端からのぼってきた月も我々についてくる。
振り返って下りてきた小道を見れば山の緑の中に、こんもりとした青い色の道がぼんやりと中腹に続いて見える
友と連れ立って百姓家に来ていた、子どもらが柴の戸を開けて迎えてくれた。
緑の竹が暗い寂しい小道にまで生い茂り、青いツタが旅の衣にまとわりつく
楽しみながら話をし、今夜の休むところもできた。うまい酒をちょっとともに酌み交わすことになった。
長々と歌を唄い、松風を聞いて口ずさむ、歌いきってしまうと天の河の星もまばらになっていた。
私は酔ってしまった、君もまた楽しんだ。心持よく酒に酔ったので、ともに淡泊自然の心境になったということだ。



終南山過斛斯山人宿置酒
終南山下り斛斯山人を過り宿し置酒す
終南山 陝西省長安の南にある山。唐時代道教の本山があった。 ○斛斯山人 斛斯は姓。山人は山中に隠遁している人。 ○置酒 酒を用意してもてなしてもらうこと。


暮從碧山下。 山月隨人歸。
日暮れに碧山から下ってくると、山の端からのぼってきた月も我々についてくる。
山月 山の月。登ってきた月。登ってきた月はまだ山に近い。


卻顧所來徑。 蒼蒼橫翠微。
振り返って下りてきた小道を見れば山の緑の中に、こんもりとした青い色の道がぼんやりと中腹に続いて見える
蒼蒼 こんもりとした青い色。 ○翠微 山の中腹。


相攜及田家。 童稚開荊扉。
友と連れ立って百姓家に来ていた、子どもらが柴の戸を開けて迎えてくれた。
相攜 友と連れだって。 ○田家 百姓家。  ○童稚 こども。 ○荊扉 柴で作った粗末な開き戸。


綠竹入幽徑。 青蘿拂行衣。
緑の竹が暗い寂しい小道にまで生い茂り、青いツタが旅の衣にまとわりつく
幽徑 暗い寂しい小道。  ○青蘿 青いツタ。○行衣 旅衣。


歡言得所憩。 美酒聊共揮。
楽しみながら話をし、今夜の休むところもできた。うまい酒をちょっとともに酌み交わすことになった。
歡言 よろこんで話をする。○ 休息。 ○ ちょっと。 ○ ふるう、振り回す。さしずする。


長歌吟松風。 曲盡河星稀。
長々と歌を唄い、松風を聞いて口ずさむ、歌いきってしまうと天の河の星もまばらになっていた。
河星 星屑の天の河。


我醉君復樂。 陶然共忘機。
私は酔ってしまった、君もまた楽しんだ。心持よく酒に酔ったので、ともに淡泊自然の心境になったということだ。
陶然 心持よく酒に酔う。 ○忘機 世のからくりや人間のたくらみを忘れる。道教の主張する淡泊自然の心境を言う。


○韻 下、歸、微、扉、衣、稀、機。


 斛斯(こくし)山人とは李白の道士仲間である。その人と共に山中で道教を学び、その帰りに田家に立ち寄って、酒を飲み、泊まらせてもらった。山中問答の詩、游南陽清泠泉と同じような趣を詠った李白の道教的な考え、あるいは理想を表したものだ。「遊南陽清泠泉」の3聯と下終南山過斛斯山人宿置酒の6聯類似している。

李白 「遊南陽清泠泉」
1.惜彼落日暮、愛此寒泉清。    
2.西耀逐流水、蕩漾遊子情。
3.空歌望雲月、曲尽長松声。
(空しく歌い雲間の月を眺めている、曲が終われば、高い松を抜ける風の音がするばかりだ。)
下終南山過斛斯山人宿置酒
1.暮從碧山下。 山月隨人歸。
2.卻顧所來徑。 蒼蒼橫翠微。
3.相攜及田家。 童稚開荊扉。
4.綠竹入幽徑。 青蘿拂行衣。
5.歡言得所憩。 美酒聊共揮。
6.長歌吟松風。 曲盡河星稀。
(長々と歌を唄い、松風を聞いて口ずさむ、歌いきってしまうと天の河の星もまばらになっていた。)
7.我醉君復樂。 陶然共忘機。




終南山下り斛斯山人を過り宿し置酒す
暮に碧山從(より)下れば、 山月 人隨って歸える。
卻(かえ)って來る所の徑を顧みれば、蒼蒼として翠微(すいび)に橫たう。
相攜(あいたずさ)えて田家に及べば、童稚(どうち) 荊扉(けいひ)を開く。
綠竹 幽徑(ゆうけい)に入り。 青蘿(せいち) 行衣を拂う。
歡言 憩う所を得。 美酒 聊(いささ)か共に揮(ふる)う。
長歌 松風に吟じ。 曲盡きて河星 稀なり。
我 醉うて 君も復た 樂しむ。 陶然して 共に機を忘る。