・94尋蕹尊師隠居  ・95自遣李白  ・95 獨坐敬亭山


五言古詩
尋蕹尊師隠居
群峭碧摩天、逍遥不記年。
群がるほどの峰は、緑色をして、天をこするほどの高さだ。法師はここできままな生活をしつつ、何年棲んでいるのか分らない。
撥雲尋古道、倚樹聴流泉。
雲をおし開いて、古い道を尋ね歩いた、木によりかかって流れる泉の音をきいた。
花暖青牛臥、松高白鶴眠。
花は太陽にあたためられ、青い牛がねそべっていた。松の木は高く、その上に白い鶴が眠っていた。
語來江色暮、濁自下寒煙。
尊師と語りあっているあいだに川辺の色は暗くなっていた。自分ひとり、つめたい夕もやの山路を下った。


尋蕹尊師隠居
群峭 碧 天を摩し、逍遥して 年を記さず。
雲を撥いて古道を尋ね、樹に倚って流泉を聴く。
花は暖にして 青牛臥し、松高うして白鶴眠る。
語り来れば 江色暮れ、独り自ずから 寒煙を下る

尋蕹尊師隠居
○尊師蕹というのは道士すなわち道教の法師の名。尊師は道士の尊称。

群峭碧摩天、逍遥不記年。
群がるほどの峰は、緑色をして、天をこするほどの高さだ。法師はここできままな生活をしつつ、何年棲んでいるのか分らない。
○群峭 峭とは、高くけわしい峰。○摩天 天をこする、それほど高いこと。○逍遥 のんびりするさま。・悠々自適に生活する。・荘子の逍遥游 心を時々俗世界に遊ばせる。○不記年 何歳になったかわからない。仙人である尊師の年齢は分からない。

撥雲尋古道、倚樹聴流泉。
雲をおし開いて、古い道を尋ね歩いた、木によりかかって流れる泉の音をきいた。
○撥雲 雲を開く。

花暖青牛臥、松高白鶴眠
花は太陽にあたためられ、青い牛がねそべっていた。松の木は高く、その上に白い鶴が眠っていた。


語來江色暮、濁自下寒煙。
法師と語りあっているあいだに川辺の色はくらくなっていた。自分ひとり、つめたい夕もやの山路を下った。


 この詩は、隠遁生活、道教の基本そのもので、詩の雰囲気からも知識、情報量も多くない、場所の特定もはっきりしない。しかし、道教に対する姿勢ははっきりさせている。


韻 泉、眠、煙。


李白 95 自遣 

五言絶句  
自遣
對酒不覺暝,落花盈我衣。
醉起歩溪月,鳥還人亦稀。



自ら遣る   

酒に對して  暝(ひく)るるを 覺えず,
落花  我が衣に 盈(み)つ。
醉(ゑひ)より起きて  溪月(けいげつ)に 歩めば,
鳥 還(かへ)り  人も亦た 稀(まれ)なり。



自遣
みずから 憂さを晴らす。みずからを慰める。みずからやる。のどかな詩である。しかし、詩題から考えれば、以下のようにもとれる:情況は「不覺」であり、「暝」であり、作者に向かってくるものは「落(花)」で、それのみが作者に「盈」ちてくる。周りは「鳥還」であり、作者を訪ねてくる「人」も、鳥が還ってしまったのと同様に人も亦、「稀」になっている、という心象風景である。
 ・遣 うさをはらす。はらす。

對酒不覺暝,落花盈我衣。
酒に向かっていたら、日の暮れるのに気づかなかった。散ってくる花の花びらが、わたしの衣服にみちていた。 
・對酒:酒に向かう。 ・不覺:悟らない。気づかなかい。思わなかった。分からなかった。いつの間にか。 ・暝 暮れる。日が暮れる。・落花:散ってくる花。花びらの意になる。 ・盈 次第に多くなってみちる。だんだんみちてくる。みたす。 ・我衣 わたしの衣服。李白の衣服になる。88「下終南山過斛斯山人宿置酒」綠竹入幽徑。 青蘿拂行衣。同じように使う。

醉起歩溪月,鳥還人亦稀。
酔いから醒めて、月明かりの谷川を散策すれば。鳥還人亦稀:鳥は、ねぐらに帰り、人影も、稀(まれ)になっている。 
・醉起 酔いから醒める。 ・歩:散歩をする。あゆむ。「踏月」の「踏」でもある。月影を踏む。月明かりの中を散歩する。 ・溪月 けいげつ 谷川に出た月。月明かりの谷川。 ・還 かえる。でかけていったところからもどる。 ・亦 …もまた。「鳥がねぐらに帰って、あたりが静かになる」ということに「人がだれも往来しなくなって静かである」を付け加えて言う。「鳥還」と「人稀」を繋ぐ時にリズムを整えるためにも「亦」を使う。 ・稀き まれ。まれである。
李白93「春日酔起言志」覺來盼庭前,一鳥花間鳴。
同じように使う。


○韻 衣、稀。

李白の足跡5c4に安徽省宣城市


李白 95 獨坐敬亭山

獨坐敬亭山
眾鳥高飛盡。 孤云獨去閑。
相看兩不厭。 只有敬亭山。

○この詩は唐詩選にある。○敬亭山 安徽省宜城県の北にある。李白の敬愛する六朝の詩人、謝朓が宣城の長官であった時、つねにこの山に登ったといわれ、絵のような景色が眺められるという。

謝朓①玉階怨 ②王孫遊 金谷聚 ④同王主薄有所思 ⑤遊東田 謝靈運:東陽谿中贈答 班婕妤と蘇小小 
李白60宣州謝朓樓餞別校書叔雲 李白61秋登宣城謝眺北楼 李白62久別離 李白63估客行

眾鳥高飛盡。 孤云獨去閑
たくさんの島たちは、空高く飛んで行ってしまった。ただひとら浮かんでいた雲も、のんびりと流れて


相看兩不厭。 只有敬亭山。
いつまでもながめあって、たがいにアキのこないのは、敬宇山よ、おまえだけだ。


獨 敬亭山に 坐す
眾鳥 高く飛び盡くし、 孤雲 獨 去って閑なり。
相看て 兩 厭かず、只 有り 敬亭山。


韻 閑、山。

  

李白の略歴であるがほとんど定住していない。
・718 李白18歳 載天山に隠れる。
・722 李白22歳岷山に隠れる。小鳥を懐ける。 科挙試験に推挙されたが拒否
・727 李白27歳 友人呉指南と、楚に遊ぶ。
・730 李白30歳前後2~3年長安地方に滞在。
・732 李白32歳 安陸白兆山で許幸師の孫と結婚
・735 李白35歳 太原に遊ぶ。「太原早秋」
・740 李白40歳  山東に遊ぶ。酒びたりの生活。
この間、各地にある道教の寺観を中心にして遊んでいたと考える。
詩に劇的な変化は見えない。

詩のイメージとしてもほとんど変わりはない。
86 太原早秋 87游南陽清泠泉  88下終南山過斛斯山人宿置酒 李白 89 將進酒 李白 90 夏日山中、91 山中與幽人對酌、92 山中答俗人 李白 93 春日酔起言志 94尋蕹尊師隠居 95 自遣 96 獨坐敬亭山

恋歌詩人・李商隠            杜甫の詩 青年期連載中   
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