秋下荊門 李白 4
七言絶句
 李白たちの舟は、長江三峡の急流を無事に下って荊門に着くことができた。あたりははや晩秋の気配。「荊門」は山の名で、長江の南岸、宜都(湖北省枝城市)の西北にある。対岸の虎牙山と対しており、昔は楚の西の関門といった趣き。蜀の東方、湖北・湖南地方への出口ということになる。

秋下荊門
霜落荊門江樹空、布帆無恙挂秋風。
霜は荊門に降り岸辺の樹々も葉が落ちた、帆に事はなく 秋風をはらんで立っている
此行不為鱸魚鱠、自愛名山入剡中。


こんどの旅は 鱸魚のなますのためではない、名山を愛し  剡渓の奥へ分け入るのだ

霜は荊門に降り岸辺の樹々も葉が落ちた
帆に事はなく 秋風をはらんで立っている
こんどの旅は 鱸魚のなますのためではない
名山を愛し  剡渓の奥へ分け入るのだ


 李白はここで、ひとつの決意を口にしている。これからの旅は名高い寺を訪ねて勉強をし、東の果て「剡中」(浙江省嵊県)まで分け入るのだと意気込んだ。剡中は剡渓の流れる地で、六朝の時代から文人墨客の閑居・風雅の地として有名であった。そうしたところを訪ねて有名人と交わりたいのが李白のおもいであった。

韻は、空、風、中。

秋下荊門
霜落荊門江樹空、布帆無恙挂秋風。
此行不為鱸魚鱠、自愛名山入剡中。


(下し文)秋 荊門を下る
霜は荊門(けいもん)に落ちて江樹(こうじゅ)空(むな)し
布帆(ふはん) 恙(つつが)無く  秋風に挂(か)く
此の行(こう)  鱸魚(ろぎょ)の鱠(なます)の為ならず
自ら名山を愛して剡中(せんちゅう)に入る