賀知章の詩  (1) 
賀知章 がしちょう 盛唐の詩人。
生れ:659年(顯慶四年)
没年:744年(天寶三年)
字名:季真。
出身:浙江の四明山に取った四明狂客と号する。越州永興(現・浙江省蕭山県)の人。
・則天武后の代に進士に及第して、国子監、秘書監などになった。
王維、日本の遣唐使、阿倍仲麻呂らとも仕事をしている。


回鄕偶書 二首
 書家。詩人として有名であるが、狂草で有名な張旭と交わり、草書も得意としていた。酒を好み、酒席で感興の趣くままに詩文を作り、紙のあるに任せて大書したことから、杜甫の詩『飲中八仙歌』では八仙の筆頭に挙げられている。

飲中八仙歌 杜甫28「飲中八仙歌」杜甫 先頭の聯に

   知章騎馬似乘船,眼花落井水底眠。

  賀知章が酔うと馬にのってはいるが船にのっているようにゆらゆらして
  いる。或るときは酔うて目先きがちらついて、誤って井の中に落ちこん
  で水底に眠ったりする。


 李白とも交友があった。743年玄宗皇帝に李白を紹介して、仕官させている。(もっとも賀知章だけの推薦ではなかったが)
744年正月、辞職し、なつかしい故郷、中国酒で有名な紹興(浙江省)に帰ります。賀知章80歳になってからことです。
この作品は、帰郷後に書かれた賀知章の性格を表した心温まる作品です。この二首は一対のものだ。



回鄕偶書 其の一
少小離家老大回、鄕音無改鬢毛摧。
わかいときにふるさとを離れて、歳をとってから帰ってきた。句中の対になっている。 故郷のなまりは改まることなく、そのままだが、鬢の毛は(変化があり)少なくなった。 
兒童相見不相識、笑問客從何處來?

こどもは出会っても、顔見知りでないので。 笑いながら「お客さんは、どこからやってきたのですか」と問いかけてきた。

わかいときにふるさとを離れて、歳をとってから帰ってきた。句中の対になっている。 故郷のなまりは改まることなく、そのままだが、鬢の毛は(変化があり)少なくなった。 
こどもは出会っても、顔見知りでないので。 笑いながら「お客さんは、どこからやってきたのですか」と問いかけてきた。


回鄕 偶書 其の一
少小家を離れ老大にして回かえる、鄕音きょうおん改まる無く鬢毛摧すたる
兒じ童相い見て相い識しらず,笑ひて問う「客 何いづれの處ところ從より來(きた)る」と?


回郷偶書
帰郷したおり、たまたまできたもの。
 ・回鄕:ふるさとへ帰る。帰郷。 ・:かえる。 ・偶書:偶成。たまたま書く。


少小離家老大回、鄕音無改鬢毛摧
わかいときにふるさとを離れて、歳をとってから帰ってきた。句中の対になっている。 故郷のなまりは改まることなく、そのままだが、鬢の毛は(変化があり)少なくなった。 
少小:わかいとき。 ・:わかい。 ・小:ちいさい。 ・離家:ふるさとを離れる。 ・:家郷、故郷。 ・老大:歳をとってから。少小の逆。 ・:歳がいく。大:おおきくなって。 ・:帰る。。

鄕音:故郷のなまり。 ・:なまり。発音。 ・無改:改まることがない。変化がない。そのまま。「改」の否定形は「不改」だが、「改めない、改めようとしない」といった意志の否定になる。ここでの「無改」は「改まるところがない、改まらない、変わることがない」といった意味になる。 ・鬢毛:鬢の毛。頭の両脇の部分の髪。 ・摧:だんだんと疎らになる。少しずつ減ってゆく。「摧」を「衰」とするのもある。、髪の毛や落ち葉等が一本又一本と少しずつ減っていくことを意味する。

兒童相見不相識、笑問客從何處來。
こどもは出会っても、顔見知りでないので。 笑いながら「お客さんは、どこからやってきたのですか」と問いかけてきた。
兒童:こども。わらべ。作者よりずっと年下の子ども。 ・相見:会う。見てきて。眺めてきて。 ・相:動作が対象に及ぶ様子を表現する。 ・不相識:顔見知りでない。知らない。

 ・笑問:笑いながら問いかけて。 ・:旅の人。よそから来た人をいう。 ・:…より。 ・何處:どこ。いづこ。いづれのところ。


 作者賀知章は今も故郷浙江省紹興市「賀秘監詞」に祀られている。唐の初唐の終わりから盛唐の中ごろまで朝廷の要職を歴任した。

 賀知章は80歳を過ぎて引退した。懐かしい故郷だが、なにしろ50年ぶり、村の子供たちはだれかわからないので、「お客さん」と呼んだ。
 『ああ、すっかりよそ者になってしまったのだなあ』としみじみ詠う。