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哭晁卿衡 李白  Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350- 163

李白の詩は時系列並べてみていかなければいけないものはほとんどない。李白の都における交友関係は酒中の八仙、飲中の八仙といわれる人々か、道教の関係者である。李白の方から知己を広げようとか、親密になろうと接近することはない。
 
この詩題の「哭晁卿衡も」754年の作である。晁衡とは阿倍仲麻呂であり、遣唐使の中で、唐王朝の高級官僚で秘書監となり、衡尉卿を兼ねていた。李白が朝廷にいた時に阿倍仲麻呂とどの程度の付き合いがあったのか全く資料は残っていない。役職上での接点はないし、個人的な接点のない。共通点は、李白も阿倍仲麻呂も①試験を及第して朝廷に入ったのではない。②どちらも有名人である。ある一時気について言えば、③天子の寵愛を受けていた。④抜群の文才がある。④権力者に媚びる性格はない。

 こういう点から見れば、足かけ三年実質二年の中で、文学について意気投合していてもおかしくはない。仲麻呂に詩の心得があるのに詩を交わしていないことからすれば、それほどの付き合いではないのであろうか。ちがう、仲麻呂は李白の詩才に驚愕したから、日本から持参した絹を贈ったのである。仲麻呂の使命は中国文化を吸収し、持ち帰ることにある。したがって、李白に積極的に接近していてもおかしくない。数少ないチャンスの中で贈り物をし、言葉をかわしたはずである。残念なことに李白が追放され、仲麻呂が帰国に際してすべきことは、李白との接触の痕跡を消すことであったはずである。

阿倍仲麻呂が帰国する前後の長安の主な出来事を示す。
752年天宝11載・11月宰相李林甫(65歳位)が病死、楊国忠、右相となる。18年間の圧制も今度は楊貴妃一族に取って代わる。
753年天宝12載・8月、長安に長雨あり、米穀騰貴す。
四隻の遣唐使帰国船団で、同船には、藤原清河がおり、別の船にはすでに視力を失った鑑真和上が乗っていた。出港に際して詠んだのが、「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」であるとされている。沖縄のあたりで暴風雨に遭い、船は難破する。仲麻呂の船はベトナムに漂着する。
754年天宝13載この年、戸部郡県の戸口の数を奏して、唐代の極盛となすも、関中は大いに賑わう。

天宝十三年ごろは、李白は南方を放浪し、揚州(広陵)に遊び、ついで金陵(南京)・宜城などに遊んでいた。
この遊びの相手に仲麻呂がかつて李白に贈ったものを、友人の親方に贈り、日本の布で作った着物を着ているという詩が残されている。李白が仲麻呂に詩を贈り、お礼に日本の反物を李白に贈呈したのであろう。しかし、仲麻呂のほうには、李白に対する友情を示す何の資料も今は残っていない。
  

哭晁卿衡 
日本晁卿辞帝都、征帆一片繞蓬壺。
日本から来ていた晁卿どのは、帝都長安に別れを告げられた、帰途に立った帆一片は風をはらんで、蓬莱山をめぐって行ったのだろう。
明月不帰沈碧海、白雲愁色満蒼梧。
明月のように輝くあなたは 祖国の地にたどりつけないで仙人の住む海に沈んでしまった、白雲は悲しみの色に染まり、舜帝が巡航し没した蒼梧の地に惜しむ聲が満々ているのだ。


日本から来ていた晁卿どのは、帝都長安に別れを告げられた、帰途に立った帆一片は風をはらんで、蓬莱山をめぐって行ったのだろう。
明月のように輝くあなたは 祖国の地にたどりつけないで仙人の住む海に沈んでしまった、白雲は悲しみの色に染まり、舜帝が巡航し没した蒼梧の地に惜しむ聲が満々ているのだ。




晁卿衡を哭す
日本の晁卿(ちょうけい)  帝都を辞し
征帆(せいはん)  一片  蓬壺(ほうこ)を繞(めぐ)る
明月は帰らず   碧海(へきかい)に沈み
白雲  愁色(しゅうしょく)  蒼梧(そうご)に満つ




日本晁卿辞帝都、征帆一片繞蓬壺。
日本から来ていた晁卿どのは、帝都長安に別れを告げられた、帰途に立った帆一片は風をはらんで、蓬莱山をめぐって行ったのだろう。
○帝都 都、長安。○征帆 向かう方向に帆をあげたことをいう。○蓬壺 東海の仙人の住む島、蓬莱、方丈、瀛州のうちの一つ。


明月不帰沈碧海、白雲愁色満蒼梧。
明月のように輝くあなたは 祖国の地にたどりつけないで仙人の住む海に沈んでしまった、白雲は悲しみの色に染まり、舜帝が巡航し没した蒼梧の地に惜しむ聲が満々ているのだ。
碧海 仙人の島にむかうまでの間の海を言う。○蒼梧 舜帝が巡航し没したといわれる中国東南(現広東省の海岸線)の地方名。