紫藤樹 李白 漢文委員会Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白168  玄宗(1)



玄宗(1)
 玄宗は、「開元の治」といわれるほどの治世をもたらした部分はたしかにあるが、とくに音楽を好み、宮中に左教坊・右教坊なる教習所を設け、また梨園では、梨園の弟子とし、玄宗は唐の宮廷楽団を「立部伎」および「座部伎」に分け、「立部伎」は立ったままで演奏し、室外で行う比較的に規模の小さいもの。「座部伎」は室内で座って演奏し、規模は比較的大きく、豪華さと迫力を重んじるものだった。

 玄宗は、梨園で選び抜いた300人に自ら音楽を教え、間違いがあるとすぐに指摘し正すなど厳しく指導していた。その場所には、梨が多く植えられていたことから「梨園」といわれている。唐玄宗の指導を受けた300人は後に、梨園弟子と呼ばれた。演出に参加した数百人の女官も梨園弟子と呼ばれた。ここの楽人をいう。また、西域から外来音楽を好んで移入したために、その曲調は広まり、のちの詞のメロディーにも影響する。

 また、興慶官の離宮を設けて遊び、あるいは曲江池の離宮にも遊んだりする。また、東の驪山の温泉宮にも、冬は避寒に出かけることを習わしにした。こうした遊びを詩に歌わせ、その遊びの中に音楽を演奏させることが、ことのほか好きであった。こうした中に登場したのが、ほかならぬ李白である。しかし、李白が腕を見せることのできる場はこうした遊びの場だけであった。記録に残るものには醜態も多い。

 玄宗が音楽に傾倒したのは、即位する以前の太平公主時代の豪奢な宮廷生活をまのあたりに見て、それへのあこがれが大きいのではないだろうか。政務を宦官任せにし、歌舞音楽の世界に鬱結した。また玄宗は、神仙道教に傾倒した。これは心のゆとりを神仙に求めたものであったが、不老長寿、悦楽、媚薬を求めたものでしかなかった。
こうした皇帝の我儘に付け込めるのが宦官の高力士であり、宰相の李林甫であったのだ。この時、唐の国の礎であった、二大制度、律令制度と府兵制度は崩壊していた。



紫藤樹

紫藤掛雲木、花蔓宜陽春。
かぐわしき紫のふじの花、やわらかき雲、尊き大木にかかっている。
きれいな花は蔦のように絡まっている、万物が性に目覚める春にふさわしいことだ。
密葉隠歌島、香風留美人。

肢体は葉のように密着し合い、宮妓たちの歌声、はしゃぐ声は帳に隠れている。かぐわしい宮女たちの香りは風に乗ってくる、その中で特に美しい人を引きとどめる。



かぐわしき紫のふじの花、やわらかき雲、尊き大木にかかっている。きれいな花は蔦のように絡まっている、万物が性に目覚める春にふさわしいことだ。

肢体は葉のように密着し合い、宮妓たちの歌声、はしゃぐ声は帳に隠れている。かぐわしい宮女たちの香りは風に乗ってくる、その中で特に美しい人を引きとどめる。



紫藤樹
紫藤(しとう) 雲木に掛り、花蔓(かまん) 陽春に宜し。
密葉(みつよう) 歌鳥を隠し、香風 美人を留む。





紫藤掛雲木、花蔓宜陽春。
かぐわしき紫のふじの花、やわらかき雲、尊き大木にかかっている。きれいな花は蔦のように絡まっている、万物が性に目覚める春にふさわしいことだ。
○紫藤 紫の藤の花。○雲木 雲に秘めるのは女性の柔らかさ、包み込むこと。木は、男性を表す。雲のまつわる大木の意。天使を示す。
花蔓 花をつけたつる。○陽春 万物が性に目覚める春。




密葉隠歌島、香風留美人。
すきまのない葉は、さえずる小鳥の姿をかくし、かぐわしい風は、美しい人を引きとどめる。
 肢体をしめす。○歌鳥 さえずる小鳥。ここでは宮妓を示す。○香風 香しき風。ここでは女性の持つ香りを示す。 ○美人 宮妓の中の美人、ここでは楊貴妃(当時は楊環)