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行行游且獵篇 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白350-  194


行行游且獵篇
邊城兒。生年不讀一字書。 但將游獵夸輕趫。
国境あたりの子は、生れてからずっと一字も書物など読むことなどないのだ。ただ知っているのは狩猟をあそびとするだけ、それにからだがすばしこいのが自慢であるという。
胡馬秋肥宜白草。 騎來躡影何矜驕。
大宛国産の馬が秋になってまるまると肥えるのは白い草もたくさん食べられる頃だからだ。かれらは、馬にむねはってまたがり走ってゆくが、何と怖さを知らず自信をもっているのだろう。
金鞭拂雪揮鳴鞘。 半酣呼鷹出遠郊。
狩猟に出るのに金のむちで雪をはらいのけると、ビシリとむちの先が鳴る。まだ半分酔っ払った状態のまま、鷹を放って、街を遠く離れたところまで出かける。
弓彎滿月不虛發。 雙鶬迸落連飛髇。』
弓を満月のように引きしぼり、射れば必ずあたるときまで矢をはなたない。射たら二羽のマナヅルがまっしぐらに落ち、飛んだかぶら矢が串ざしにしている。
海邊觀者皆辟易。 猛氣英風振沙磧。
放牧できていた湖のほとりで見ている者は、みな、おそれおののいているのだ。猛々しい気性であって、すぐれた風貌は、砂漠中にその名を鳴り響かせているのだ。
儒生不及游俠人。 白首下幃復何益。』

そういうことから儒学者というものは、狩猟ができ、任侠の筋道を立てる人にはかなわないのだ。しらが頭で、家の中にとじこもって、書物をたよりに礼節ばかりで、いったい何の利益があるというのだろう。


行行且遊猟篇

辺城の児。生年一字の書を読まず。但だ遊猟を知って (けいきょう)を誇る。

胡馬秋肥えて 白草に宜し。騎し来って影を踏む 何ぞ矜驕(きょうきょう)

金鞭(きんべん)雪を払って 鳴鞘(めいしょう)を揮(ふる)い、半酣(はんかん)鷹を呼んで 遠郊に出づ

弓は満月をいて 虚しく発せず、双(そうそう)迸落(ほうらく) (ひこう)に連なる

海辺観る者 皆(へきえき)し、猛気英風 沙磧(させき)に振う。

儒生(じゅせい)は及ばず 遊侠の人に、白首(はくしゅ)()を下すも 復た何の益かあらん





行行游且獵篇  訳註と解説

(本文)
邊城兒。生年不讀一字書。 但將游獵夸輕趫。
胡馬秋肥宜白草。 騎來躡影何矜驕。
金鞭拂雪揮鳴鞘。 半酣呼鷹出遠郊。
弓彎滿月不虛發。 雙鶬迸落連飛髇。』
海邊觀者皆辟易。 猛氣英風振沙磧。
儒生不及游俠人。 白首下幃復何益。』

(下し文)
邊城兒。生年不讀一字書。 但將游獵夸輕趫。
胡馬秋肥宜白草。 騎來躡影何矜驕。
金鞭拂雪揮鳴鞘。 半酣呼鷹出遠郊。
弓彎滿月不虛發。 雙鶬迸落連飛髇。』
海邊觀者皆辟易。 猛氣英風振沙磧。
儒生不及游俠人。 白首下幃復何益。』

(現代語訳)
国境あたりの子は、生れてからずっと一字も書物など読むことなどないのだ。ただ知っているのは狩猟をあそびとするだけ、それにからだがすばしこいのが自慢であるという。
大宛国産の馬が秋になってまるまると肥えるのは白い草もたくさん食べられる頃だからだ。かれらは、馬にむねはってまたがり走ってゆくが、何と怖さを知らず自信をもっているのだろう。
狩猟に出るのに金のむちで雪をはらいのけると、ビシリとむちの先が鳴る。まだ半分酔っ払った状態のまま、鷹を放って、街を遠く離れたところまで出かける。
弓を満月のように引きしぼり、射れば必ずあたるときまで矢をはなたない。射たら二羽のマナヅルがまっしぐらに落ち、飛んだかぶら矢が串ざしにしている。
放牧できていた湖のほとりで見ている者は、みな、おそれおののいているのだ。猛々しい気性であって、すぐれた風貌は、砂漠中にその名を鳴り響かせているのだ。
そういうことから儒学者というものは、狩猟ができ、任侠の筋道を立てる人にはかなわないのだ。しらが頭で、家の中にとじこもって、書物をたよりに礼節ばかりで、いったい何の利益があるというのだろう。


(語訳と訳註)

行行游且獵篇
行行且遊猟篇 古い楽府の題で、もとは天子の遊猟をうたったものといわれるが、李白のこの詩は辺境の少年の遊猟をうたっている。



邊城兒。生年不讀一字書。 但將游獵夸輕趫。
国境あたりの子は、生れてからずっと一字も書物など読むことなどないのだ。ただ知っているのは狩猟をあそびとするだけ、それにからだがすばしこいのが自慢であるという。
辺城 国境の町。○遊猟 狩をして遊ぶこと。○軽超 すばしこい。

 

胡馬秋肥宜白草。 騎來躡影何矜驕。
大宛国産の馬が秋になってまるまると肥えるのは白い草もたくさん食べられる頃だからだ。かれらは、馬にむねはってまたがり走ってゆくが、何と怖さを知らず自信をもっているのだろう。
胡馬 大宛国産の馬。胡は中国北方の異民族を指す。○白草 「白草は、稲に似た雑草でほそく、芒がなく、乾燥するとまっしろになり、ミネラル分が多い牛馬のえさになる。○躡影 疾走の形容。○矜驕 ほこり、おごる。意気揚揚。


金鞭拂雪揮鳴鞘。 半酣呼鷹出遠郊。
狩猟に出るのに金のむちで雪をはらいのけると、ビシリとむちの先が鳴る。まだ半分酔っ払った状態のまま、鷹を放って、街を遠く離れたところまで出かける。
鳴鞠鳴るむちの先。○半酎 半分よっばらう。○呼鷹 鷹狩をする。



弓彎滿月不虛發。 雙鶬迸落連飛髇。』
弓を満月のように引きしぼり、射れば必ずあたるときまで矢をはなたない。射たら二羽のマナヅルがまっしぐらに落ち、飛んだかぶら矢が串ざしにしている。
不虚発 射れば必ずあたる。○双鶬 二羽の鶬。鶬は鶬鴰。地方によって呼び名がちがい、鴰鹿、鶬鶏などとも呼ばれる。鶴の一種で、青蒼色、または灰色。頂には丹がなく、両頬は紅い。マナヅルのことらしい。○迸落 ほとばしり落ちる。○飛髇 髇は鳴鏑、囁矢、に同じく、かぶら矢。木または鹿角で作った中空のかぶら形の筒に数箇の穴をあけ、それを矢の先につける。射れば筒の穴に風が入って激しく鳴る。



海邊觀者皆辟易。 猛氣英風振沙磧。
放牧できていた湖のほとりで見ている者は、みな、おそれおののいているのだ。猛々しい気性であって、すぐれた風貌は、砂漠中にその名を鳴り響かせているのだ。
海辺 海は東方の大海ではない。砂漠の中の実は湖。○辟易 おどろきおそれて、しりごみする。○沙磧 砂漠。 



儒生不及游俠人。 白首下幃復何益。』
そういうことから儒学者というものは、狩猟ができ、任侠の筋道を立てる人にはかなわないのだ。しらが頭で、家の中にとじこもって、書物をたよりに礼節ばかりで、いったい何の利益があるというのだろう。
儒生 儒学者。○遊侠 游は、狩猟が上手い、武術ができる。腕っぷしが強い。その上、強きをくじき弱きをたすけ、生命をなげだして人を救うことを自分の任務とし、私交を結んで勢力をし、命をはっているもの。○白首 しらが頭。○下幃 とばりを垂れおろす。弟子をとること。「漢書」によると、漢の儒者、董仲舒は若いころ「春秋」を修得し、景帝のとき博士となったが、「帷下し」家にとじこもって弟子をとり、講義した。弟子たちは長い間順番を待って授業を受けたが、中には先生の顔を見ることさえできずに帰る者もいた。それほど多くの弟子が押しかけたという。李白は儒学者を評価していない



(解説)
 李白『幽州胡馬客歌』「旄頭四光芒」(旄頭(ぼうとう) 四(よも)に光芒あり)寒くなると北方の異民族は南下して国境線を突破してきた、そのため冬の戦いに備えた。異民族は騎馬民族で馬上の戦いであった。それに対し漢民族は農耕民族で、戦いは歩兵戦であった。
 幽州の兵は、北方の敵に対しての訓練がなされたのである。凶暴、残忍さが加わったのだ。もう一つは、略奪すること。これらが基本で、戦略とか、統治する意識がないのである。安禄山の叛乱は、普通に戦えば天下は取れた。統治するという意識がなさ過ぎたのである。

 李白の北方の詩、辺境の詩、出塞の詩はこういった部分を読み取ることができる。杜甫の『後出塞五首』其四も参考になる。