李白31 関山月
楽府、五言古詩。関所のある山々を照らす月。それに照らされる出征兵士や、兵士を思う故郷の妻たちを詠う。
李白の邊塞を詠う詩の掲載をに追加する。



關山月 李白

明月出天山、蒼茫雲海間。
明月が天山の上にのぼってきた、蒼く暗く広がる雲海を照らし出す。

長風幾萬里、吹度玉門關。
遠くから吹き寄せる風は幾萬里、吹度る はるかな玉門關に

漢下白登道、胡窺青海灣。
漢の軍隊は白登山の道を進んでいく、胡の将兵は青海の水辺で機会を窺っている。

由來征戰地、不見有人還。
ここは昔から遠征と戦闘の地だ、出征した人が生還したのを見たことがない

戍客望邊色、思歸多苦顏。
出征兵士は、辺境の景色を眺めている、帰りたい思いは顔をしかめさせることが多い。

高樓當此夜、歎息未應閑。
故郷の高殿で、こんな夜には、せつない歎息が、きっと途切れることもないことだろう。



明月が天山の上にのぼってきた、蒼く暗く広がる雲海を照らし出す。
遠くから吹き寄せる風は幾萬里、吹度る はるかな玉門關に
漢の軍隊は白登山の道を進んでいく、胡の将兵は青海の水辺で機会を窺っている。
ここは昔から遠征と戦闘の地だ、出征した人が生還したのを見たことがない。
出征兵士は、辺境の景色を眺めている、帰りたい思いは顔をしかめさせることが多い。
故郷の高殿で、こんな夜には、せつない歎息が、きっと途切れることもないことだろう。



關山月
楽府旧題。本来の意味は、国境守備隊の砦がある山の上に昇った月。前線の月。


明月出天山
明月が天山の上にのぼってきた。 ・明月:明るく澄みわたった月。 ・天山:〔てんざん〕新疆にある祁連山〔きれんざん〕(チーリェンシャン) 。天山一帯。当時の中国人の世界観では、最西端になる。天山山脈のこと。


蒼茫雲海間
蒼く暗く広がる雲海を照らし出す。 ・蒼茫:〔そうぼう〕(空、海、平原などの)広々として、はてしのないさま。見わたす限り青々として広いさま。また、目のとどく限りうす暗くひろいさま。 ・雲海:山頂から見下ろした雲が海のように見えるもの。また、雲のはるかかなたに横たわっている海原(うなばら)。ここは、前者の意。


長風幾萬里
遠くから吹き寄せる風は幾萬里。 ・長風:遥か彼方から吹いてくる風。 ・幾萬里:何万里もの。長大な距離を謂う。


吹度玉門關
吹度る はるかな玉門關に。 ・吹度:吹いてきてずっと通って先へ行く。吹いてきて…を越える。吹きわたる。 ・玉門關:西域に通ずる交通の要衝。漢の前進基地。関。玉関。現・甘肅省燉煌の西方、涼州の西北500キロメートルの地点にある。


漢下白登道
漢の高祖が白登山(現・山西省北部大同東北東すぐ)上の白登台で匈奴に包囲攻撃され白登山より下りて匈奴と戦い。 ・漢:漢の高祖の軍。 ・下:(白登山上の白登台より)下りて(、匈奴に対して囲みを破るための反撃する)。 ・白登道:漢の高祖が白登山より下りて匈奴と戦ったところ。現・山西省北部大同東北東すぐ。


胡窺青海灣
胡(えびす)は、青海(ココノール)の湾に進出の機会を窺っている。 ・胡:西方異民族。ウイグル民族や、チベット民族などを指す。上句で漢の高祖のことを詠っているが、漢の高祖の場合は、匈奴を指す。 ・窺:〔き〕ねらう。乗ずべき時を待つ。また、覗き見する。こっそり見る。ここは、前者の意。 ・青海:ココノール湖。 ・灣:くま。ほとり。前出・杜甫の『兵車行』でいえば「君不見青海頭」 の「頭」に該る。


由來征戰地
ここは昔から遠征と戦闘の地だ。 ・由來:もともと。元来。それ以来。もとから。初めから今まで。また、来歴。いわれ。よってきたところ。ここは、前者の意。 ・征戰:出征して戦う。戦に行く王翰も李白も同時代人だが、王翰の方がやや早く、李白に影響を与えたか。


不見有人還
出征した人が生還したのを見たことがない。 ・不見:見あたらない。 ・有人還:(だれか)人が帰ってくる。 ・還:行き先からかえる。行った者がくるりとかえる。後出の「歸」は、もと出た所にかえる。本来の居場所(自宅、故郷、故国、墓所)にかえる。


戍客望邊色
出征兵士は、辺境の景色を眺めている。 ・戍客:〔じゅかく〕国境警備の兵士。征人。 ・邊色:国境地方の景色。 邊邑ともする。その場合は国境地帯の村の意になる。


思歸多苦顏
帰りたい思いは顔をしかめさせることが多い。 ・思歸:帰郷の念を起こす ・苦顏:顔をしかめる。


高樓當此夜
故郷の高殿で、こんな夜には。 ・高樓:たかどの。 ・當:…に当たつては。…の時は。…に際しては。 ・此夜:この(明月の)夜。


歎息未應閑
せつない歎息が、きっと途切れることもないことだろう。 ・歎息:なげいて深くため息をつく。また、大変感心する。ここは、前者の意。 ・應:きつと…だろう。当然…であろう。まさに…べし。 ・閑:暇(いとま)。


○韻 山、間、關、灣、還、顏、閑


關山月  
明月 天山(てんざん)より出(い)づ,
蒼茫(さうばう)たる 雲海の間。
長風 幾(いく)萬里,
吹き度る 玉門關(ぎょくもんくゎん)。
漢は下(くだ)る 白登(はくとう)の道,
胡は窺(うかが)ふ 青海(せいかい)の灣。
由來( ゆ らい) 征戰の地,
見ず 人の還(かへ)る有るを。
戍客(じゅかく) 邊色(へんしょく)を望み,
歸るを思ひて 苦顏( く がん) 多し。
高樓 此(こ)の夜に當り,
歎息すること 未(いま)だ應(まさ)に閑(かん)ならざるべし。

李白の詩 連載中 7/12現在 75首

2011・6・30 3000首掲載
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