黄葛篇 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -237
  

 女性の無限の哀怨を湛える、寵愛を得ないことに李白はたくさん詠っている。
「玉階怨」「妾薄命」、「長信宮」、「長門怨」二首、もみなこれと同じ趣を詠っている。
 以上のものとは異って、内妻の地位、別れの原因を具体的にしない閨怨の詩も多い。
「黄葛篇」もこの類である。


黃葛篇
黃葛生洛溪、黃花自綿冪。
黄い葛は洛水の溪谷に生えている。その黄色の花はそっと大切に真綿で覆われているのである。
青煙蔓長條、繚繞几百尺。
春の青いかすみがかかり、その葛のつたは細長い枝となっている。くねくねと湾曲、もつれあっていること数百尺の長さだ。
閨人費素手、采緝作絺綌。
その内妻は白い素肌のままでてにとり、絲にしてつむいで、細糸とあら糸の葛布を織ったのだ。
縫為絕國衣、遠寄日南客。
遠くへだたった国へ行っているあの人の衣用に縫っている。越南の日南方面へ行く旅人に夫へ渡してもらうため託する。
蒼梧大火落、暑服莫輕擲。
越何の地方、蒼梧県だといっても大火の星が西に流れると秋が来るのだ、軽はずみに夏服だと思って投げ出すことがあってはならない。
此物雖過時、是妾手中跡。
この葛を縒って織った着物を縫った。このようなことが過ぎたけれども、残された妻の手中になかに跡として残っているのだ。

冪。尺。綌。客。/落、擲。跡。

黄葛(こうかつ)は洛溪に生じ、黄花 自(おのずから) 綿冪(めんべき)。
青煙 長條を蔓(はびこ)らし、繚繞(りょうじょう) 幾百尺。
閨人 素手を費し、採緝(さいしゅう)して絺綌(ちげき)を作る。
縫ひて絶国の衣となし、遠く日南の客に 寄す。
蒼梧に大火落つるとも、暑服 軽(かろがろし)く擲(なげう)つなかれ。
この物 時を過ぎると いへども、これ妾が手中の跡。

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黃葛篇 現代語訳と訳註
(本文)

黃葛生洛溪、黃花自綿冪。
青煙蔓長條、繚繞几百尺。
閨人費素手、采緝作絺綌。
縫為絕國衣、遠寄日南客。
蒼梧大火落、暑服莫輕擲。
此物雖過時、是妾手中跡。


(下し文)
黄葛(こうかつ)は洛溪に生じ、黄花 自(おのずから) 綿冪(めんべき)。
青煙 長條を蔓(はびこ)らし、繚繞(りょうじょう) 幾百尺。
閨人 素手を費し、採緝(さいしゅう)して絺綌(ちげき)を作る。
縫ひて絶国の衣となし、遠く日南の客に 寄す。
蒼梧に大火落つるとも、暑服 軽(かろがろし)く擲(なげう)つなかれ。
この物 時を過ぎると いへども、これ妾が手中の跡。


(現代語訳)
黄い葛は洛水の溪谷に生えている。その黄色の花はそっと大切に真綿で覆われているのである。
春の青いかすみがかかり、その葛のつたは細長い枝となっている。くねくねと湾曲、もつれあっていること数百尺の長さだ。
その内妻は白い素肌のままでてにとり、絲にしてつむいで、細糸とあら糸の葛布を織ったのだ。
遠くへだたった国へ行っているあの人の衣用に縫っている。越南の日南方面へ行く旅人に夫へ渡してもらうため託する。
越何の地方、蒼梧県だといっても大火の星が西に流れると秋が来るのだ、軽はずみに夏服だと思って投げ出すことがあってはならない。
この葛を縒って織った着物を縫った。このようなことが過ぎたけれども、残された妻の手中になかに跡として残っているのだ。


(訳注)
黃葛生洛溪、黃花自綿冪。

黄い葛は洛水の溪谷に生えている。その黄色の花はそっと大切に真綿で覆われているのである。
黄葛 マメ科のつる性の多年草。花と根が黄色である。根を用いて食品の葛粉や漢方薬が作られる。秋の七草の一つ。○洛溪 洛水の谷間。・洛水陝西(せんせい)省南部にある華山に源を発し、河南省に入って北東に流れ、洛陽の南を通り黄河に注ぐ川。長さ420キロ。洛河。○綿冪 (メンベキ)若のように細かに覆い被さっている。


青煙蔓長條、繚繞几百尺。
春の青いかすみがかかり、その葛のつたは細長い枝となっている。くねくねと湾曲、もつれあうすること数百尺の長さだ。
青煙 春の青いかすみ。○長條 細長い枝。○繚繞 もつれあう、まつわりめぐること。また、くねくねと湾曲すること。

閨人費素手、采緝作絺綌。
その内妻は白い素肌のままでてにとり、絲にしてつむいで、細糸とあら糸の葛布を織ったのだ。
閨人 寝室を共にする人。閨の人。妻の場合。めかけの場合。娼婦の場合。○素手 白い素肌で
○採緝 (サイシュウ)絲にしてつむぐ。○絺綌 (チゲキ)細糸とあら糸の葛布。


縫為絕國衣、遠寄日南客。
遠くへだたった国へ行っているあの人の衣用に縫っている。越南の日南方面へ行く旅人に夫へ渡してもらうため託する。
○絶国 遠くへだたった国。○日南 漢の時、越南に置かれた郡。○ たびびと。雲南に徴兵で戦争に行っている夫へ渡してもらうため託する。


蒼梧大火落、暑服莫輕擲。
越何の地方、蒼梧県だといっても大火の星が西に流れると秋が来るのだ、軽はずみに夏服だと思って投げ出すことがあってはならない。
蒼梧 蒼梧県(そうご-けん)は中華人民共和国広西チワン族自治区梧州市に位置する県。 戦国時代より蒼梧、または倉吾の名で呼ばれている。○大火 「アレース(火星)に対抗するもの」という意味で、「アンタレス」この星の光が火星の赤い色によく似ているところからつけられた。蝎座の一等星で太陽の直径の230倍もあって、中国では「火」とか「大火」と呼ばれる。陰暦七月末から西に流れる。
(なげう) 投げ出すこと。捨ててかえりみないこと。


此物雖過時、是妾手中跡。
この葛を縒って織った着物を縫った。このようなことが過ぎたけれども、残された妻の手中になかに跡として残っているのだ。


(解説)
楊國忠の雲南戦線の戦いに敗れ、死者6万人をかぞえるも、なお徴兵し続けた。同じころ、西方のタラスの戦いも敗戦している。李白は、西方の勝ち負けは常日頃耳にしていたが、南方の戦で、負けてもなお兵力をつぎ込む楊国忠の無能さが言いたかったことであろう。

 「子夜呉歌」にも似た趣がある。これは南方にいる夫を思う情景に作っている。
 妻の征夫を懐うの情はひとたび翻せば、兵士の思郷の情である。

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