妾薄命 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -238
漢 陳皇后の詩

色におぼれて、嫉妬に狂った女の詩。班婕妤は趙飛燕に嫉妬し、漢の陳皇后の嫉妬は尋常ではなかった。

妾薄命
漢帝寵阿嬌、貯之黃金屋。
漢の武帝は皇太子の時、阿嬌を見初め、いつくしんだ、これよって金で飾られた家に住まわせたのだ。
咳唾落九天、隨風生珠玉。
その権力と勢力、天下の真ん中だということを知らしめた、風までもそれに従い珠玉を生じていった。
寵極愛還歇、妒深情卻疏。
天子の寵愛が極限まで行ったその後に別の后妃に移った時、嫉妬心が深く人の心も疎んじていった。
長門一步地、不肯暫回車。
一族でさえひとたびその地を歩んだ、その後、車馬さえ回ってこなくなった。
雨落不上天、水覆難再收。
雨が落ちてくるように天子のもとに上がることはなくなった、こぼされた水は再び元に収まることはないのだ。
君情與妾意、各自東西流。
天子の愛情と后妃の思いはそれぞれ西と東に別れて流れたようなものだ。
昔日芙蓉花、今成斷根草。
昔は確かに、芙蓉の花のように 華麗に咲く花のような后妃であったが、それも廃位となった今はただ、根無し草となり、飛蓬のように、零落して各地を流浪するしかなくなったのだ。
以色事他人、能得幾時好。
色香をもって、人につかえることしかできないものが、一体どれほどの期間、すばらしい時間とすることができるというのであろうか。

漢帝 阿嬌 寵(いつく) しむ、之を黃金の屋に貯(おさ)む。
咳唾(がいだ) 九天に落つ、風隨う 珠玉 生ず。
寵極 愛 還た歇(つきる)、妒み深く 情 卻く疏(うと)んず。
長門 一たび 地を步む、肯って 暫く 回車されず。
雨落 天に上らず、水覆 再び收り難し。
君情 與 妾意、各々自ら 東西に流る。
昔日  芙蓉の花,今 成る  斷根の草。
色を以て  他人に事(つか)へ,能(よ)く  幾時(いくとき)の 好(よろし)きを  得たりや。

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妾薄命 現代語訳と訳註
(本文)

漢帝寵阿嬌、貯之黃金屋。
咳唾落九天、隨風生珠玉。 」
寵極愛還歇、妒深情卻疏。
長門一步地、不肯暫回車。
雨落不上天、水覆難再收。 」
君情與妾意、各自東西流。
昔日芙蓉花、今成斷根草。
以色事他人、能得幾時好。 」

○押韻 屋。玉。/歇、疏。車。收。/流。草。好

(下し文)
漢帝 阿嬌 寵(いつく) しむ、之を黃金の屋に貯(おさ)む。
咳唾(がいだ) 九天に落つ、風隨う 珠玉 生ず。
寵極 愛 還た歇(つきる)、妒み深く 情 卻く疏(うと)んず。
長門 一たび 地を步む、肯って 暫く 回車されず。
雨落 天に上らず、水覆 再び收り難し。
君情 與 妾意、各々自ら 東西に流る。
昔日  芙蓉の花,今 成る  斷根の草。
色を以て  他人に事(つか)へ,能(よ)く  幾時(いくとき)の 好(よろし)きを  得たりや。

(現代語訳)
漢の武帝は皇太子の時、阿嬌を見初め、いつくしんだ、これよって金で飾られた家に住まわせたのだ。
その権力と勢力、天下の真ん中だということを知らしめた、風までもそれに従い珠玉を生じていった。
天子の寵愛が極限まで行ったその後に別の后妃に移った時、嫉妬心が深く人の心も疎んじていった。
一族でさえひとたびその地を歩んだ、その後、車馬さえ回ってこなくなった。
雨が落ちてくるように天子のもとに上がることはなくなった、こぼされた水は再び元に収まることはないのだ。
天子の愛情と后妃の思いはそれぞれ西と東に別れて流れたようなものだ。
昔は確かに、芙蓉の花のように 華麗に咲く花のような后妃であったが、それも廃位となった今はただ、根無し草となり、飛蓬のように、零落して各地を流浪するしかなくなったのだ。
色香をもって、人につかえることしかできないものが、一体どれほどの期間、すばらしい時間とすることができるというのであろうか。


(訳注)
曹植に同名の「妾薄命」があり、後部に掲載あり。(2)
漢帝寵阿嬌、貯之黃金屋。
漢の武帝は皇太子の時、阿嬌を見初め、いつくしんだ、これよって金で飾られた家に住まわせたのだ。
阿嬌 漢の武帝の后の幼名。(漢武故事)。「阿」は親しみを表す語。「嬌」は〕美しい女性。美人。文末に
(1)阿嬌陳后妃ものがたり 参照。
漢の武帝について李商隠特集。
宮詞 李商隠:紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 62

漢宮詞 李商隠:紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 63

賈生 李商隠:紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 64

茂陵 李商隠:紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 65


咳唾落九天、隨風生珠玉。
その権力と勢力、天下の真ん中だということを知らしめた、風までもそれに従い珠玉を生じていった。
咳唾 せきとつばき。権力・勢力の強いさま。一言一句が珠玉の言葉になること。 ○九天 中華思想で天地は九で区分される。地は九州、天は九天、その真ん中を示す語である大空の真ん中。天下の中心。○風隨 かぜのふくままに。○珠玉 生ず。

寵極愛還歇、妒深情卻疏。
天子の寵愛が極限まで行ったその後に別の后妃に移った時、嫉妬心が深く人の心も疎んじていった。
寵極 天子の寵愛○愛還歇、別の后妃に移った○妒深 嫉妬心が深く。
 
長門一步地、不肯暫回車
一族でさえひとたびその地を歩んだ、その後、車馬さえ回ってこなくなった。
長門 一族○回車 お迎えの車馬。。

雨落不上天、水覆難再收。
雨が落ちてくるように天子のもとに上がることはなくなった、こぼされた水は再び元に収まることはないのだ。
雨落 天に上らず、○水覆難再收 覆水盆に返らず。
 
君情與妾意、各自東西流。
天子の愛情と后妃の思いはそれぞれ西と東に別れて流れたようなものだ。
君情 天子の愛情○妾意 后妃の思い○東西流る。
 

昔日芙蓉花、今成斷根草。
昔は確かに、芙蓉の花のように 華麗に咲く花のような后妃であったが、それも廃位となった今はただ、根無し草となり、飛蓬のように、零落して各地を流浪するしかなくなったのだ。
昔日 むかし。○芙蓉花 フヨウの花。華麗に咲く花の女王でもある。そのように、天子の側にいて芙蓉花のように愛でられる位置にいたものだった(が)。 ○今成 今は…となった。 ○斷根草 根無し草。飛蓬、転蓬。 *零落して各地を流浪するさまをいう。


以色事他人、能得幾時好。
色香をもって、人につかえることしかできないものが、一体どれほどの期間、すばらしい時間とすることができるというのであろうか。
以色 色香をもって。色事で。 ○ つかえる。動詞。 ・他人 ほかの人。○能得 …が可能である。 ○ よく。 ○ 得る。 ○幾時 どれほどの時間。 ○ よい。
 




 



趙飛燕と班婕妤
衛子夫と陳皇后

(1)陳皇后のものがたり
阿嬌
:陳皇后(ちん こうごう、生没年不詳)は、前漢の武帝の最初の皇后。武帝の従姉妹に当たる。
母は武帝の父である景帝の同母姉の館陶長公主劉嫖、父は堂邑侯陳午である。
『漢武故事』によると、館陶長公主は娘を皇太子に娶わせようと思ったが、当時の皇太子である劉栄の母栗姫が長公主と仲が悪かった。そこで長公主は景帝に王夫人の子である劉徹(武帝)を褒め、王夫人を皇后、劉徹を皇太子にすることに成功した。
長公主はまだ幼い皇太子の劉徹と娘の阿嬌を会わせ、劉徹に「阿嬌を得たいかい?」と訊いた。劉徹は「もし阿嬌を得る事ができたら、金の建物に住まわせるよ」と答えたので、長公主は喜んで娘を彼に娶わせ、阿嬌は皇太子妃となった。

 武帝が即位すると彼女は皇后となり、寵愛をほしいままにしたが、10年以上子が出来なかった。一方で衛子夫が武帝に寵愛されたと聞くと、嫉妬心 皇后は彼女の死を願い、一族も弟の衛青を連れ去り監禁するほどだった。皇后は呪術を用いて呪い、それが発覚して元光5年(紀元前130年)に廃位された。
母の館陶長公主は武帝の姉の平陽公主に「皇帝は私がいなければ皇太子になれなかったのに、どうして我が娘を捨てるのだ」と訊いたが、平陽公主は「子が出来ないからです」と答えた。皇后は子が出来るようにと医者に多額の金を使ったが、結局子は出来なかった。
十数年後に館陶長公主が死亡し、その数年後には陳皇后も死亡した。



 



(2)
妾薄命二首 其一 曹植(曹子建)

(本文)
携玉手喜同車  比上雲閣飛除
釣台蹇産清虚  池塘霊沼可娯
仰汎龍舟緑波  俯擢神草枝柯
想彼宓妃洛河  退詠漢女湘娥
(下し文)
玉手を携え同車を喜び  比びて雲閣の飛除を上がる
釣台は蹇産とし清虚  池塘霊沼を娯しむべし
仰ぎて龍舟を緑波に汎べ  俯して神草の枝柯を擢く
彼の宓妃の洛河を想い  退きて漢女湘娥を詠ず


 



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