獨不見 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集242/350
征夫を思う詩で「獨不見」(独り見えず)といふ楽府(がふ)は少し趣を異にしていて面白い。


獨不見
白馬誰家子。 黃龍邊塞兒。
白馬に乗って勇ましく駆け出したのはどこの家系のものだ、ここは契丹と対陣している北方の辺境地域の塞で戦に挑んでいる若者である。
天山三丈雪。 豈是遠行時。
匈奴の天山には三丈の雪があるという、でもこの積雪を見るのは、よほど敵地に攻め入った時だけである。
春蕙忽秋草。 莎雞鳴曲池。
春の若草が生え、草の香りの恵まれたと思ったら、それはわずかのあいだで、たちまちに秋草は枯れていき 、キリギリスが西池に鳴くのである。
風摧寒梭響。 月入霜閨悲。
冬の突風はしゅろの木の寒棕を吹き飛ばしてしまうほどくだくような音を響かせているし、それでも月のひかりはこんな霜の夜でも閨に入ってくるのでよけいに悲しさがますのである。
憶與君別年。 種桃齊蛾眉。
あなたを送り出した別離の年、桃の木を植えたのですそれは私の眉毛の大きさと同じくらいだったのです。
桃今百余尺。 花落成枯枝。
その桃の木はいまや百余尺もあるほどに育ちました、しかし三年以上も帰らないのでせっかくの花は落ちてしまい枯枝だけになってしまっているのです。
終然獨不見。 流淚空自知。

とうとういくら待っても私ひとりでいてあなたは見えないのです、じっと門の先を見ていて涙がとめどなく流れているのに誰もそのことを言ってくれるわけではなく自分で知るのです。


白馬たが家の子ぞ、 黄龍辺塞の児。
天山三丈の雪、あにこれ遠行の時ならんや。
春蕙たちまちに秋草 莎雞(さけい) 西池に鳴く。
風は寒棕(かんそう)を摧(くだ)いて響き、月は霜閨に入って悲しむ。
憶ふ君と別るるの年、桃を種ゑて蛾眉に斉し。
桃いま百余尺、花落ちて枯枝と成る。
終然としてひとり見えず、流涙むなしくみづから知る。
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現代語訳と訳註
(本文)

白馬誰家子。 黃龍邊塞兒。
天山三丈雪。 豈是遠行時。
春蕙忽秋草。 莎雞鳴曲池。
風摧寒梭響。 月入霜閨悲。
憶與君別年。 種桃齊蛾眉。
桃今百余尺。 花落成枯枝。
終然獨不見。 流淚空自知。

(下し文)
白馬たが家の子ぞ、 黄龍辺塞の児。
天山三丈の雪、あにこれ遠行の時ならんや。
春蕙たちまちに秋草 莎雞(さけい) 西池に鳴く。
風は寒棕(かんそう)を摧(くだ)いて響き、月は霜閨に入って悲しむ。
憶ふ君と別るるの年、桃を種ゑて蛾眉に斉し。
桃いま百余尺、花落ちて枯枝と成る。
終然としてひとり見えず、流涙むなしくみづから知る。


(現代語訳)
白馬に乗って勇ましく駆け出したのはどこの家系のものだ、ここは契丹と対陣している北方の辺境地域の塞で戦に挑んでいる若者である。
匈奴の天山には三丈の雪があるという、でもこの積雪を見るのは、よほど敵地に攻め入った時だけである。
春の若草が生え、草の香りの恵まれたと思ったら、それはわずかのあいだで、たちまちに秋草は枯れていき 、キリギリスが西池に鳴くのである。
冬の突風はしゅろの木の寒棕を吹き飛ばしてしまうほどくだくような音を響かせているし、それでも月のひかりはこんな霜の夜でも閨に入ってくるのでよけいに悲しさがますのである。
あなたを送り出した別離の年、桃の木を植えたのですそれは私の眉毛の大きさと同じくらいだったのです。
その桃の木はいまや百余尺もあるほどに育ちました、しかし三年以上も帰らないのでせっかくの花は落ちてしまい枯枝だけになってしまっているのです。
とうとういくら待っても私ひとりでいてあなたは見えないのです、じっと門の先を見ていて涙がとめどなく流れているのに誰もそのことを言ってくれるわけではなく自分で知るのです。


(訳注)
白馬誰家子、黄龍邊塞兒。
白馬に乗って勇ましく駆け出したのはどこの家系のものだ、ここは契丹と対陣している北方の辺境地域の塞で戦に挑んでいる若者である。 
黄龍 契丹との対陣の地。750年以降、安禄山の軍内に契丹軍が入り込んでいた。753年安禄山は契丹を破り契丹内の奚という国の軍を完全支配かにおく。755年の叛乱時はじゅうような一翼を担った。○邊塞 国境の塞


天山三丈雪、豈是遠行時。
匈奴の天山には三丈の雪があるという、でもこの積雪を見るのは、よほど敵地に攻め入った時だけである。
天山 匈奴中の山。遠行敵地の奥に攻め入ること


春蕙忽秋草、莎雞鳴西池。
春の若草が生え、草の香りの恵まれたと思ったら、それはわずかのあいだで、たちまちに秋草は枯れていき 、キリギリスが西池に鳴くのである。
莎雞 きりぎりす。


風摧寒椶響、月入霜閨悲。
冬の突風はしゅろの木の寒棕を吹き飛ばしてしまうほどくだくような音を響かせているし、それでも月のひかりはこんな霜の夜でも閨に入ってくるのでよけいに悲しさがますのである。
寒椶しゅろの一種。霜閨霜夜の夫のゐない寝室。


憶與君別年、種桃齊蛾眉。
あなたを送り出した別離の年、桃の木を植えたのですそれは私の眉毛の大きさと同じくらいだったのです。
 この霜の句は別の意味にもとれる。女性を示す語として使用され、「桃栗三年で実を成す。」ここでは桃が妻で、「齊蛾眉」蛾眉を慎んでいた。つまり化粧など全くしないということである。つつましく生活をしているという意味にもとれる。

また、徴兵されて出征する義務が3年であったところから、桃木でそれを表現するのであるが、この詩は、その頃戦況が話題となっていた契丹のことを、景色として借りたもので、4番目の妻宋氏にあてた詩であろうと思う。

桃今百餘尺、花落成枯枝。
その桃の木はいまや百余尺もあるほどに育ちました、しかし三年以上も帰らないのでせっかくの花は落ちてしまい枯枝だけになってしまっているのです。
○この下の句も、若くてはちきれそうだった桃の様な素肌が衰えてしまったという意味。
 
終然獨不見、流涙空自知。
とうとういくら待っても私ひとりでいてあなたは見えないのです、じっと門の先を見ていて涙がとめどなく流れているのに誰もそのことを言ってくれるわけではなく自分で知るのです。
○流れる涙は、あなたに拭いてもらいたい。ということで思いが強調されている。男性の青雲の志を女は歯を食いしばって我慢し、支えていくという時代である。
耐え忍んでいる姿をどう表現するか、というのが李白のテーマだったのかもしない。


 別れる時、自分の蛾眉の大きさであった桃が百余尺となり、更に枯れたといって別れの時間の経過の長さをあらわしている。同様に、春の若草がたちまち黄草に変わる。そして自分は轉蓬であるというのが、李白の得意の手法で、人として、好意的に見れるか見れないか分れる所である。李白という詩人が妻と同じところで過ごしていてこれだけの詩が作れるのかというと、それは絶対にできないのである。


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