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經下邳圯橋懷張子房 #1 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -272


安禄山の叛乱が起こって以来、南方地方を転々としている李白であるが、友人と酒を酌み交わすときに決まって、酔うと李白は韓信,張良の気分に浸ったようだ。既に掲載した「扶風豪士歌」扶風豪士歌 安史の乱と李白(3) Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350- 215こののち掲載予定の「猛虎行」題名が面白い猛虎(叛乱軍)に立ち向かう任侠の士としてうたうもの(李白が作ったのではないという説もある)、そしてここに挙げる「經下邳圯橋懷張子房」である。


經下邳圯橋懷張子房    
子房未虎嘯、破產不為家。
下邳という地方の圯橋を通りかかってここの出身の張子房を懷(おも)いおこすのである。
滄海得壯士、椎秦博浪沙。』
張子房はまだ獲物を決めかねた虎がほえているだけで、仇を取ろうとしなかった、それは財産を売り払ってでも家の再興をなしえることをしなかったのだ。
報韓雖不成、天地皆振動。
しかし、無鉄砲にも、蒼海君から屈強な若者を譲り得て、博浪抄で秦の始皇帝の行列に鉄椎を投げつけさせた。
韓のためにくわだてた復讐は不成功におわったが、天も地も皆、なりひびくほどの喝采を受けたのだ。

潛匿游下邳、豈曰非智勇。』-#1

そのため、始皇帝は犯人を捕まえるため、大捜査を繰り広げたので、張子房はひそかに下邳の村に潜伏し勉強したのだ、そしてこれを智略と勇気を備えることといわずにおれようか。

我來圯橋上、懷古欽英風。
惟見碧流水、曾無黃石公。
嘆息此人去、蕭條徐泗空。』#2

下邳(かひ)の圯橋(いきょう)を經て張子房を懷う
子房 未だ虎 嘯せざり、產を破って 家を為さず。
滄海に 壯士を得て、秦を椎(つい)す 博浪沙。
韓に報じて 成らずと雖も、天地 皆 振動せり。
潜匿(せんとく)して 下邳(かひ)に遊ぶ、豈 智勇(ちゆう)に 非ずと 曰わんや。』-#1

我 圯橋(いきょう)の上に來り、古(いにしえ)を懐うて、英風を欽(しと)う。
唯だ見る 碧流(へきりゅう)の水、曾て無し 黄石(こうせき)公(こう)。
嘆息す 此の人去りて、蕭條(しょうじょう)徐泗(じょし)の空しきを。』-#2



經下邳圯橋懷張子房 現代語訳と訳註
(本文) 經下邳圯橋懷張子房 -#1

子房未虎嘯、破產不為家。
滄海得壯士、椎秦博浪沙。』
報韓雖不成、天地皆振動。
潛匿游下邳、豈曰非智勇。』


(下し文) 下邳の圯橋を經て張子房を懷う-#1
子房 未だ虎 嘯せざり、產を破って 家を為さず。
滄海に 壯士を得て、秦を椎(つい)す 博浪沙。
韓に報じて 成らずと雖も、天地 皆 振動せり。
潜匿(せんとく)して 下邳(かひ)に遊ぶ、豈 智勇(ちゆう)に 非ずと 曰わんや。』


(現代語訳)
下邳という地方の圯橋を通りかかってここの出身の張子房を懷(おも)いおこすのである。
張子房はまだ獲物を決めかねた虎がほえているだけで、仇を取ろうとしなかった、それは財産を売り払ってでも家の再興をなしえることをしなかったのだ。
しかし、教えを乞うてから、蒼海君から屈強な若者を譲り得て、博浪抄で秦の始皇帝の行列に鉄椎を投げつけさせた。
韓のためにくわだてた復讐は不成功におわったが、天も地も皆、なりひびくほどの喝采を受けたのだ。
そのため、始皇帝は犯人を捕まえるため、大捜査を繰り広げたので、張子房はひそかに下邳の村に潜伏し勉強したのだ、そしてこれを智略と勇気を備えることといわずにおれようか。


(訳注)
經下邳圯橋懷張子房

下邳という地方の圯橋を通りかかってここの出身の張子房を懷(おも)いおこすのである。
下邳:かひ いまの江蘇省北端の邳県の東にある。○圯橋:いきょう 土橋。○張子房 張良(ちょうりょう、生年未詳― 紀元前186年)は、秦末期から前漢初期の政治家・軍師。字は子房。諡は文成。劉邦に仕えて多くの作戦の立案をし、劉邦の覇業を大きく助けた。蕭何・韓信と共に漢の三傑とされる。劉邦より留(江蘇省徐州市沛県の東南)に領地を授かったので留侯とも呼ばれる。子には嗣子の張不疑と少子の張辟彊がいる。漢の高祖(鋸鰯の参謀として漢の帝国樹立に功績があり、斎何、韓信とともに、創業の表といわれている。のち、大名に封ぜられ、留侯と呼ばれた。張良の先祖は韓の人で、祖父も父も韓国の宰相をつとめた。

(この詩の背景としての逸話のまとめ)
・秦が韓を滅ぼした時、張良はまだ少年であったが、家財を投げ出して暗殺者を求め、秦の始皇帝を襲うと決意した。
・家柄からして、韓のために仇を報いざるを得なかったのである。
・かれは滄海君という異民族の酋長に力強い男を世話してもらう。
・大きなハンマーを作り、秦の始皇帝を博浪沙というところに行幸していたのを狙撃させた。
・狙いは外れて予備の車にあたった。
・始皇帝は大いに怒った。天下に犯人をもとめ、捜索は非常にきびしかった。

・張良は変名して下邳に身をかくしていた。ある日のこと、張良がぶらぶら散歩して下邸の土橋にさしかかると、一人のじいさんがそまつな着物をきて張良のそばに寄ってきた。
・いきなり、自分の靴を橋の下におとし、張良の顔をみて言った。「小僧、靴をとってきてくれ!」張良はびっくりした。
・殴ってやろうかと思ったが、年よりだから、がまんして降りていき靴を拾った。
・じいさんは言った。「わしにはかせろ」張良は是や靴を拾った以上仕方がない。膝まずいて、はかせてやった。
・じいさんは足で受け、笑って立ち去った。張良があっけにとられて後姿を見送っていると、しばらくして引きかえしてきたじいさんが言った。「小僧、教えがいのある奴だ。五日のち、明け方にわしと此所で会おう」
・張良は怪しみながらも「はい」と答えた。五日たって夜明けに張良が行くと、じいさんは先に来ている。
・そして怒って言う。「老人と約束してで遅れるとは何事だ!#!」去りながら言った。
・「五日のち、朝早く会おう」こんどは番鶏がなくころ張良は行った。じいさんはやっぱ。先に来ていた。・また怒って言う。「おくれるとは何事だ!」「五日のち、もっと早く来い」と。
・張良、こんどこそはと、夜中にもならないうちに行った。しばらくするとじいさんがやってきて、はじめてニコニコした。「こうこなくちゃいかん」
・一篇の書をとり出して言った。「これを読めば、王者の師となれる。十年のち、出世る。十三年のち、小僧はわしを済北の穀城山のふもとに見つけるであろう、黄石がつまりわしなんだ」言いおわると、さっと姿をけした。
・夜が明けてその書をよく見ると、太公望の兵書であった。張良はふしぎに思ったが、毎日これを通読した。やがて高祖が兵をあげると手柄を立てたのだ。
・十三年のち、高祖に従って済北を過ぎたとき、張良ははたして黄色の石を見つけたので、とってきてそれをまつったということである。


子房未虎嘯、破產不為家。
張子房はまだ獲物を決めかねた虎がほえているだけで、仇を取ろうとしなかった、それは財産を売り払ってでも家の再興をなしえることをしなかったのだ。
子房 張良。○虎嘯 虎がうそぶく、仕留める獲物を特定しないで空吼えをしていること。義臣が聖主にあって出世し天下に羽振。をきかせること。別に秦の始皇帝が天下に横暴を繰り返した。ここでは、安禄山を暗示させている。○破產 資産を売り払うこと。

滄海得壯士、椎秦博浪沙。』
しかし、無鉄砲にも、蒼海君から屈強な若者を譲り得て、博浪抄で秦の始皇帝の行列に鉄椎を投げつけさせた。
滄海 滄海君。異民族の酋長。○壯士  ○椎 椎(ハンマー)を投げつける。○ 秦の始皇帝。○博浪沙 いまの河南省原陽県(陽武)。開封の近くにある。

報韓雖不成、天地皆振動。
韓のためにくわだてた復讐は不成功におわったが、天も地も皆、なりひびくほどの喝采を受けたのだ。
○報韓 秦に敗れた韓の敵討ち。○天地皆振動 秦の始皇帝の徹底した統治に嫌気を持っていた人々、天下に離散した韓の関係者たちの喝采を浴びたこと。


潛匿游下邳、豈曰非智勇。』
そのため、始皇帝は犯人を捕まえるため、大捜査を繰り広げたので、張子房はひそかに下邳の村に潜伏し勉強したのだ、そしてこれを智略と勇気を備えることといわずにおれようか。
潛匿 ひそかに潜伏しかくれる。○游 勉強する。○智勇 智略と勇気を備えること。
張良が下邳に潜伏していることと、、李白、張旭らが逃避しているのを重ねている。

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