猛虎行 #4 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -279
「猛虎行」は李白が溧陽(江蘇省常州市の南に位置する西湖の西端から50km位西に行ったあたり)にいるとき作った詩である。
この地で草書の名人張旭(杜甫「飲中人仙歌」にも出る)と遇って、酒を飲んで歓を尽くし、別れに際して作ったもので、亡国の感慨を歌ったものである。
4回に分けて掲載。その4回目

#1 吟、琴/道、倒、草、城、寧。
朝作猛虎行。 暮作猛虎吟。
腸斷非關隴頭水。 淚下不為雍門琴。』 旌旗繽紛兩河道。 戰鼓驚山欲傾倒。
秦人半作燕地囚。 胡馬翻銜洛陽草。 一輸一失關下兵。 朝降夕叛幽薊城。
巨鰲未斬海水動。 魚龍奔走安得寧。』

#2 時、止、市/貧、臣、人/此、士/鱗、人』
頗似楚漢時。 翻覆無定止。 朝過博浪沙。 暮入淮陰市。』
張良未遇韓信貧。劉項存亡在兩臣。 暫到下邳受兵略。來投漂母作主人。」
賢哲棲棲古如此。今時亦棄青云士。 有策不敢犯龍鱗。竄身南國避胡塵。
寶書玉劍挂高閣。金鞍駿馬散故人。』 ( 玉一作長 )

#3 客。石。擲。/ 奇。知。隨。

昨日方為宣城客。制鈴交通二千石。 有時六博快壯心。 繞床三匝呼一擲。
楚人每道張旭奇。 心藏風云世莫知。 三吳邦伯皆顧盼。  四海雄俠兩追隨。 ( 皆一作多 )
蕭曹曾作沛中吏。攀龍附鳳當有時。』


#4 春、人、塵、賓、親。
溧陽酒樓三月春。楊花茫茫愁殺人。
いま、溧陽の酒場で三月春たけなわのころである。いつもなら柳や、春の花が咲き乱れているのに叛乱軍により人を殺しているので愁えで茫茫としたけしきになっている。
胡雛綠眼吹玉笛。吳歌白紵飛梁塵。
叛乱軍には異民族の緑眼の胡人の野郎が異国の玉笛を吹いているのだ、白紵曲の呉歌の声は高く上がり、ここにいる叛乱軍を塵のようにふっ飛ばすのである。
丈夫相見且為樂。槌牛撾鼓會眾賓。
私と張旭二人、こうして会っているのは久しぶりのことでとても楽しいものだ、牛を殺して料理をし、太鼓をうちならし音高く、みんな大勢であつまってこの会を大いに楽しむのである。
我從此去釣東海。得魚笑寄情相親。

自分は別れてから東海に行って釣りをして隠者の生活をしよう。魚が釣れたら、こんなものが釣れたと笑いつつ送ってよこし、互いの友情を温めようではないか。

猛虎の行 ( 此の詩、蕭士に贇に云う、是れ偽作。 )
#1
朝に 猛虎の行を作す、暮に 猛虎吟を作す。
腸斷す 關に非らずして 隴頭の水。 淚下 為さずして 雍門の琴。』
旌旗 繽紛として 兩の河道。 戰鼓 山を驚かして 傾倒せんと欲っす。
秦人 半ば作すと 燕地の囚となる。 胡馬 銜を翻して 洛陽の草。
一輸 一失 關下の兵。 朝降 夕べに叛し 幽薊の城。
巨鰲は未だ海水を動して斬らず。 魚龍は 奔走 安ぞ寧を得る。』
#2

頗 似て楚漢の時。 翻 覆て定むる止るることなし。
朝 博 浪沙を過ぎ。 暮 淮陰の市に入る。
張良 未だ 韓信の貧に遇わず。劉項 存亡すること兩に臣在る。
暫く 下邳にて 兵略 受けて到る。來りて 漂母 主人と作して投ざるる。
賢哲 棲棲 古きこと此の如し。今時 亦 青云の士棄る。
策 有り 敢て龍鱗を犯さず。身を竄して 南國に 胡塵を避ける。
寶書 玉劍 高閣に挂る。金鞍 駿馬 故人は散る。』
#3
昨日 方に宣城の客と為し。制鈴 交通 二千石。
有時 六博 快壯の心。 床を繞らし 三匝 一擲を呼ぶ。
楚人 每道 張旭は奇なり。 心藏 風云 世に知る莫れ。
三吳 邦伯 皆盼を顧る。  四海 雄俠 兩に追隨す。 ( 皆一作多 )
蕭曹 曾て沛中の吏と作す。龍を攀げて 鳳に當に時に有りて附く。』-#3
#4
溧陽の酒楼に三月の春、楊花は茫茫たり、人を愁殺せしむ。
胡の雛(こども )緑の眼にて玉笛を吹き、呉歌の白紵(はくちょ)は梁の塵を飛ばす。
丈夫相い見えば且く楽しみを為せ、牛を槌(う)ち鼓を撾きて衆賓を会す。
我は此より去って東海に釣りせん、魚を得ば笑って寄せて情相親しまん。
五重塔(2)
 


猛虎行#4 現代語訳と訳註
(本文) #4

溧陽酒樓三月春。楊花茫茫愁殺人。
胡雛綠眼吹玉笛。吳歌白紵飛梁塵。
丈夫相見且為樂。槌牛撾鼓會眾賓。
我從此去釣東海。得魚笑寄情相親。

(下し文) #4
溧陽の酒楼 三月の春、楊花 茫茫 人を愁殺せしむ。
胡の雛 緑の眼 玉笛を吹き、呉歌の白紵(はくちょ)梁の塵を飛ばす。
丈夫相い見え 且く楽しみを為せ、牛を槌ち 鼓を樋きて 衆賓を会す。
我 此より去って東海に釣りせん、魚を得ば 笑って寄せて情 相親しまん。


(現代語訳)
いま、溧陽の酒場で三月春たけなわのころである。いつもなら柳や、春の花が咲き乱れているのに叛乱軍により人を殺しているので愁えで茫茫としたけしきになっている。
叛乱軍には異民族の緑眼の胡人の野郎が異国の玉笛を吹いているのだ、白紵曲の呉歌の声は高く上がり、ここにいる叛乱軍を塵のようにふっ飛ばすのである。
私と張旭二人、こうして会っているのは久しぶりのことでとても楽しいものだ、牛を殺して料理をし、太鼓をうちならし音高く、みんな大勢であつまってこの会を大いに楽しむのである。
自分は別れてから東海に行って釣りをして隠者の生活をしよう。魚が釣れたら、こんなものが釣れたと笑いつつ送ってよこし、互いの友情を温めようではないか。


(訳注)
#4
 春、人、塵、賓、親。

溧陽酒樓三月春。楊花茫茫愁殺人。
溧陽の酒楼 三月の春、楊花 茫茫 人を愁殺せしむ。
いま、溧陽の酒場で三月春たけなわのころである。いつもなら柳や、春の花が咲き乱れているのに叛乱軍により人を殺しているので愁えで茫茫としたけしきになっている。
溧陽 現在江蘇省常州市に位置する県級市。  三月春 三月は春の終わり、科挙試験、地方においても試験が終わり合格者は貴族の庭に自由に出入りし、祝ってもらえる。長安の貴族の庭には牡丹、梨の花が咲き乱れ、柳絮が飛び交っていた。叛乱軍は略奪、強奪を残虐にしていた。


胡雛綠眼吹玉笛。吳歌白紵飛梁塵。
胡の雛 緑の眼 玉笛を吹き、呉歌の白紵(はくちょ)梁の塵を飛ばす。

叛乱軍には異民族の緑眼の胡人の野郎が異国の玉笛を吹いているのだ、白紵曲の呉歌の声は高く上がり、ここにいる叛乱軍を塵のようにふっ飛ばすのである。
胡雛 当時の漢人が異民族に対する蔑視の表現であり、「胡のくそガキ」という意味である。○呉歌の白紵(はくちょ) 李白「白紵辞」李白81白紵辭其一  82白紵辭其二  83 巴女詞  晋の時代、呉の地方に白紵の舞というのが起った。白紵というのは、麻の着物の美白なもの。それを着て舞い、その舞の歌を白紵辞と言った。
○梁塵 溧陽の地は梁の国の中心であった。その地にいた叛乱軍、異民族の兵士を示す。


丈夫相見且為樂。槌牛撾鼓會眾賓。
丈夫相い見え 且く楽しみを為せ、牛を槌ち 鼓を樋きて 衆賓を会す。
私と張旭二人、こうして会っているのは久しぶりのことでとても楽しいものだ、牛を殺して料理をし、太鼓をうちならし音高く、みんな大勢であつまってこの会を大いに楽しむのである。
丈夫 張旭のこと。○相見 二人があっていること ○且為楽 久しぶりのことでとても楽しいもの。○槌牛 牛を殺して料理をする。○撾鼓 太鼓をうちならし音高くするさま。 ○会衆賓 州知事や地元の文人などがみんなで集まることを言う。


我從此去釣東海。得魚笑寄情相親。
我 此より去って東海に釣りせん、魚を得ば 笑って寄せて情 相親しまん。
自分は別れてから東海に行って釣りをして隠者の生活をしよう。魚が釣れたら、こんなものが釣れたと笑いつつ送ってよこし、互いの友情を温めようではないか。
釣東海 「東海に釣りをする」は、『荘子』「外物」篇に、任公子が、大きな釣針で牛五十頭を餌にして、会稽山でうずくまり東海に糸を投じたという寓話にもとづくものである。○得魚笑寄 風流人、隠者の楽しみの表現である。


 張旭とは長安時代の飲み仲間である。気心知れている友人である。モれに対しては思う気持ちを偽りなく打ち明けられる。おそらくこのときは、剣中まで行って隠遁でもするつもりではなかったろうか。自分は「策がある」が認められないし、今や安禄山の乱まで起きて大混乱の世である。前途に対する希望は失いかけていたにちがいない。


 深陽から剣中に向かってゆくが、どの道を通ったか分からない。この地方は、かつての呉・越の地である。長安を追放されて以後、詐梁を中心に各地に遊び、南はこの地を通り、会稽方面まで行っている。あるいはそれより前、長安に入る以前にも、この呉・越の地を遍歴していると思われる。この地に関係する詩に、『唐詩選』にも収められている有名な「蘇台にて古えを覧る」と[越中にて古えを覧る]がある。同時期の作でないかもしれないが、亡国の悲しみを歌うところを見ると、安禄山の乱後、乱を避けて刻中に行く途中、呉・越の地を通りつつ、国家の危機を感じて、亡国の感慨を歌ったものではなかろうか。

李白8  蘇台覧古

李白9  越中覧古


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