金陵江上遇蓬池隱者 #1 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -286
金陵の江上にて蓬池隱者に遇う


金陵江上遇蓬池隱者 時于落星石上

心愛名山游、身隨名山遠。
羅浮麻姑台、此去或未返。
遇君蓬池隱、就我石上飯。
空言不成歡、強笑惜日晚。
綠水向雁門、黃云蔽龍山。
嘆息兩客鳥、徘徊吳越間。』
#2
共語一執手、留連夜將久。
二人で真剣に語り合って、お互い引き止めながら夜が更けていくのに長いこと一緒にいる。
解我紫綺裘、且換金陵酒。
私の持っていた朝廷で来ていた官吏服を荷物から出してきて、それを金陵の酒に変えてしばらくの間、飲んだのだ。
酒來笑復歌、興酣樂事多。
酒が来ると笑うながら飲み、それから歌って飲んだ、酔うことがたけなわになり、音楽でもってたのしみが多くなった。
水影弄月色、清光奈愁何。
月は長江の水に影を落とし、月の色に遊んだのだ、清々しいこの光は愁いが浮かんで来てどうしようもないのである
明晨挂帆席、離恨滿滄波。』
朝が来て明るくなり、舟で座っていた席を立った、惜しみつつ別れ、そのあとには青々とした波が続いていた。


金陵の江上にて蓬池の隱者に遇う 于の時落星 石上にて
心愛 名山に游ぶ。 身隨 名山遠。
羅浮麻姑台。 此を去る或は未だ返らず。
君に蓬池の隱に遇う。我 石上の飯に就く。

空言 歡び成ず。 強いて笑う日晚惜む。
綠水 雁門に向う。 黃云 蔽龍山。
嘆息す兩客の鳥。 徘徊す吳越の間。 』
#2
共に語り 一に手を執る。留連し將に久しき夜となる。
我 紫綺裘を解き。且く金陵酒に換う。
酒 來りて笑い復た歌う。 興 酣(たけなわ)にして樂しむ事 多し。
水影 月色に弄ぶ。 清光 愁 奈何。
明晨 帆席を挂け。 離恨 滄波を滿つ。

宮島(1)

 現代語訳と訳註
(本文) #2
 久。酒。/歌、多。何。波。
共語一執手、留連夜將久。
解我紫綺裘、且換金陵酒。
酒來笑復歌、興酣樂事多。
水影弄月色、清光奈愁何。
明晨挂帆席、離恨滿滄波。』


(下し文) #2
共に語り 一に手を執る。留連し將に久しき夜となる。
我 紫綺裘を解き。且く金陵酒に換う。
酒 來りて笑い復た歌う。 興 酣(たけなわ)にして樂しむ事 多し。
水影 月色に弄ぶ。清光に愁う奈何(いかならん)。
明けて晨(あした) 帆席を挂け。 離恨 滄波を滿つ。


(現代語訳)
二人で真剣に語り合って、お互い引き止めながら夜が更けていくのに長いこと一緒にいる。
私の持っていた朝廷で来ていた官吏服を荷物から出してきて、それを金陵の酒に変えてしばらくの間、飲んだのだ。
酒が来ると笑うながら飲み、それから歌って飲んだ、酔うことがたけなわになり、音楽でもってたのしみが多くなった。
月は長江の水に影を落とし、月の色に遊んだのだ、清々しいこの光は愁いが浮かんで来てどうしようもないのである
朝が来て明るくなり、舟で座っていた席を立った、惜しみつつ別れ、そのあとには青々とした波が続いていた。


(訳注)
共語一執手、留連夜將久。

(共に語り 一に手を執る。留連し將に久しき夜となる。)
二人で真剣に語り合って、お互い引き止めながら夜が更けていくのに長いこと一緒にいる。
○留連 遊興にふけって、家に帰るのを忘れること。中国では「大安」:「奉安」と言われ「友引」は「先負」と「先勝」の間で「ひきわけ」(共引)ということで、「留連」:「友引」とも表現されていた。


解我紫綺裘、且換金陵酒
(我 紫綺裘を解き。且く金陵酒に換す。)
私の持っていた朝廷で来ていた官吏服を荷物から出してきて、それを金陵の酒に変えてしばらくの間、飲んだのだ。
紫綺裳烏紗巾 ともに李白が、長安の翰林供奉時代に着ていた宮中の官吏服であろう。酔ったまぎれに、昔を思い出しつつ、かつての宮中における李白の権威を見せつける気持ちもあったのであろう。○「紫綺裘を解き。且く金陵酒に換う。」官吏の服で権威を示して酒にしたのかもしれない。長安以外の地方ではでたまにしか、官吏の服を見ない、税金の取り立て位の権威をもって酒にしたので、質に入れて金にしたのではない。


酒來笑復歌、興酣樂事多。
(酒 來りて笑い復た歌う。興 酣(たけなわ) 樂しむ事 多し。)
酒が来ると笑うながら飲み、それから歌って飲んだ、酔うことがたけなわになり、音楽でもってたのしみが多くなった。
興酣 酔って最高の気分、それが風流の内であること。李白の気分の乗った時の常套語。李白は琵琶、琴、笙を奏でたのでいろいろしたのであろう。
 
水影弄月色、清光奈愁何。
(水影 月色に弄ぶ。 清光に愁う奈何(いかならん)。
月は長江の水に影を落とし、月の色に遊んだのだ、清々しいこの光は愁いが浮かんで来てどうしようもないのである
奈愁何 押韻のため奈何愁を奈愁何としたもの。

明晨挂帆席、離恨滿滄波。
(明けて晨(あした) 帆席を挂け。 離恨 滄波を滿つ。)
朝が来て明るくなり、舟で座っていた席を立った、惜しみつつ別れ、そのあとには青々とした波が続いていた。
離恨 別離の悲しみ。人と別れるつらさ。○滄波 隠遁生活にあこがれを持つ李白は、その生活を連想させる滄海とともにこの語をよく使う。

(1)金陵における李白
金陵のエピソードが『旧唐書』 に載せられている。長安を追放されてから、(乃ち江湖を浪跡い、終日沈いに飲む。時に侍御史の崔宗之、金陵に謫官され、白と詩酒もて唱和す。嘗て月夜舟に乗って采石(南京と当塗の中間にある采石磯) より金陵に達る。白は官錦袍を舟中に衣、顧り瞻みて笑倣いし、傍らに人無きが若し。)とある。久しぶりに長安時代における旧友の飲み仲間の崖宗之に会い、都の生活を思い起こし、詩を作り、酒を飲み、唱和したりして、楽しい会合であった。あるときには、月夜に揚子江に舟を浮かべ、采石磯より金陵まで下った。そのときには、長安時代に着た官錦袖を着て、あたりを顧みて平然と笑い、傍若無人の態度をとったという。長安時代の李白に返り、かつての李白の面目が再びよみがえってきたようである


(2)羅浮麻姑台。
麻姑の名は『神仙伝』の巻二「王遠」と巻七「麻姑」の項に見られるが、麻姑に関する部分の記述はほとんど同じである。
漢の孝桓帝の代に、神仙の王遠が平民である蔡経の家に降臨し、使者をやって麻姑を呼び寄せた。麻姑は蔡経の弟の妻が出産数日後であることを遠目から知ると、しばらく近づかぬように言いつけ、清めのために少量の米粒を持ってこさせた。このとき地面に撒いた米は、悉く丹砂(巻七では真珠)に変わったという。
蔡経は麻姑の爪が鳥のように伸びているのを見ると、彼女が神人であるにもかかわらず、心中「この爪で背中を掻けたら気持ちが良いだろう」と考えた。この心を見抜いた王遠は蔡経を捕まえて怒った。このとき蔡経は背を鞭で打たれたが、鞭を打つ人の姿は見えなかったという。
また同様の話は三国時代の『列異伝』にも見られ、この書では、麻姑の爪で背中を掻きたいと思った蔡経は彼女の怒りを買って地に倒れ、両目から血を流したという。


唐宋詩 
(Ⅰ李商隠Ⅱ韓退之(韓愈))
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