孟浩然 夏日南亭懷辛大 李白「峴山懐古」関連 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -318

卷159_13 「夏日南亭懷辛大」孟浩然

李白


夏日南亭懷辛大
山光忽西落,池月漸東上。
峴山からの西日がさしていたがすぐに山の端にしずんでいった、峴首亭から習家池へと散策していくと池に月が影を落として東の鹿門山からのぼってくる。
散發乘夕涼,開軒臥閑敞。
髪の束ねた簪を抜いて髪の毛をさばいたら夕涼みにはもってこいの格好で乗ってきた。亭の長廊下の窓からの眺めは開けていて、少し小高く、閑静な広々とした場所なので横になる。
荷風送香氣,竹露滴清響。
池の蓮の上を抜けてきた風はほのかな香りを運んでくる、静かな竹林の葉に落ちた露が落ちたしずくの音が響く。
欲取鳴琴彈,恨無知音賞。
しずかな竹林には琴を弾きならしてくれる人を呼びたいと思っている、ところが残念な事にはあの音を鑑賞したことを覚えている君はいない。
感此懷故人,中宵勞夢想。

やはり、この感情は友人を懐かしむのであり、様々なことが夢心に浮かび思い悩んで夜が更けてしまう。

夏日に南亭で辛大に懐う
山光 忽ち西に落ち、池月 漸く東に上る。
髪を散じて夕涼に乗じ、軒を開きて間敞に臥す。
荷風 香気を送り、竹露 清響を滴らす。
琴を弾き鳴らしむるものを取(よ)ばんと欲するも、恨むらくは音の賞するを知るは無し。
此に感じて故人を懐ひ、中霽 夢想を勞す

 宮島(3)

現代語訳と訳註
(本文)
夏日南亭懷辛大
山光忽西落,池月漸東上。
散發乘夕涼,開軒臥閑敞。
荷風送香氣,竹露滴清響。
欲取鳴琴彈,恨無知音賞。
感此懷故人,中宵勞夢想。

(下し文) 夏日に南亭で辛大に懐う
山光 忽ち西に落ち、池月 漸く東に上る。
髪を散じて夕涼に乗じ、軒を開きて間敞に臥す。
荷風 香気を送り、竹露 清響を滴らす。
琴を弾き鳴らしむるものを取(よ)ばんと欲するも、恨むらくは音の賞するを知るは無し。
此に感じて故人を懐ひ、中霽 夢想を勞す


(現代語訳)
峴山からの西日がさしていたがすぐに山の端にしずんでいった、峴首亭から習家池へと散策していくと池に月が影を落として東の鹿門山からのぼってくる。
髪の束ねた簪を抜いて髪の毛をさばいたら夕涼みにはもってこいの格好で乗ってきた。亭の長廊下の窓からの眺めは開けていて、少し小高く、閑静な広々とした場所なので横になる。
池の蓮の上を抜けてきた風はほのかな香りを運んでくる、静かな竹林の葉に落ちた露が落ちたしずくの音が響く。
しずかな竹林には琴を弾きならしてくれる人を呼びたいと思っている、ところが残念な事にはあの音を鑑賞したことを覚えている君はいない。
やはり、この感情は友人を懐かしむのであり、様々なことが夢心に浮かび思い悩んで夜が更けてしまう。


(訳注)
夏日南亭懷辛大

夏日に南亭で辛大に懐う
南亭 詩の雰囲気と西側に山があることから、襄陽城南西方向峴山中腹の峴首亭とする。南は夏を示す季語である。○辛大 辛家の長男。孟浩然とこの亭に来た友人であろう。


山光忽西落,池月漸東上。
山光 忽ち西に落ち、池月 漸く東に上る。
峴山からの西日がさしていたがすぐに山の端にしずんでいった、峴首亭から習家池へと散策していくと池に月が影を落として東の鹿門山からのぼってくる。
山光 峴山に落ちかかった夕日。○池月 峴首亭から南にむかってすこし進むと山簡の行楽した高陽池、習家池がある。○東上 東の方、鹿門山から月がのぼる。習家池から東に鹿門山が位置する。


散發乘夕涼,開軒臥閑敞。
髪を散じて夕涼に乗じ、軒を開きて間敞に臥す。
髪の束ねた簪を抜いて髪の毛をさばいたら夕涼みにはもってこいの格好で乗ってきた。亭の長廊下の窓からの眺めは開けていて、少し小高く、閑静な広々とした場所なので横になる。
散發 正式な場所では髪を束ねて簪で止めていたのを、それをほどいた。夕涼みだから髪の毛に風を当てることをいう。○開軒 亭の長廊下の窓が開けているさま。・ 亭の長廊下の窓。『登峴山亭,寄晉陵張少府』
峴首風湍急,雲帆若鳥飛。憑軒試一問,張翰欲來歸。」『澗南園即時貽皎上人』「弊廬在郭外,素產惟田園。左右林野曠,不聞朝市喧。釣竿垂北澗,樵唱入南軒。書取幽棲事,將尋靜者論。」王維『少年行四首 其四』「漢家君臣歓宴終、高議雲台論戦功。天子臨軒賜侯印、将軍佩出明光宮。」○閑敞 少し小高く、閑静な広々とした場所。


荷風送香氣,竹露滴清響。
荷風 香気を送り、竹露 清響を滴らす。
池の蓮の上を抜けてきた風はほのかな香りを運んでくる、静かな竹林の葉に落ちた露が落ちたしずくの音が響く。
荷風 池の蓮を抜けてきた風をいう。○竹露 竹の葉の露。前の聯の静けさを受けた句で清閑をいう。王維『竹里館』「独坐幽篁裏、弾琴復長嘯。深森人不知、明月来相照。」場所的には襄水の川べりの竹林に急流か滝から霧のような水しぶきが竹の葉に落ちているような情景ではなかろうか。静けさをしずくの滴り音であらわしている。


欲取鳴琴彈,恨無知音賞。
琴を弾き鳴らしむるものを取(よ)ばんと欲するも、恨むらくは音の賞するを知るは無し。
しずかな竹林には琴を弾きならしてくれる人を呼びたいと思っている、ところが残念な事にはあの音を鑑賞したことを覚えている君はいない。
鳴琴彈 琴をひきならす者。○知音 音を鳴らすものを知る。・ 鑑賞する。ここでは辛大のことをいう。


感此懷故人,中宵勞夢想。
此に感じて故人を懐ひ、中霽 夢想を勞す
やはり、この感情は友人を懐かしむのであり、様々なことが夢心に浮かび思い悩んで夜が更けてしまう。



解説

この詩は、孟浩然がその場にいたのではなく、そう昔のことではない友人と別れた峴山の峴首亭を思い浮かべて作ったのであろう。情景の動きと時間の経過に関しては、歳をまたいで移動するものである。詩は、唐時代に流行した、詩の中に自然を鏤める趣向を凝らしている。
 「夏日」、「南亭」、「山光」、「池月」、「夕涼」、「閑敞」、「荷風」、「香氣」、「竹露」、「清響」、「琴彈」、「夢想」とつづいていくのである。律詩で終わるべき詩に一韻を追加する形で友人の辛君との友情を強調している。自然の美を詠うために友情の意味の言葉が足らなくて一韻を追加したのか。いずれにしても、この詩の時期の孟浩然の行動範囲、友好関係が矮小化していたものと推定できる。「弊居」の書斎において作られたものであろう。

夏日
南亭
懷辛大
山光西落池月東上
散發夕涼開軒閑敞
荷風香氣竹露清響
欲取琴彈,恨無音賞
感此故人中宵夢想

夏日南亭懷辛大⑪

忽↔漸↔乘↔臥↔送↔滴↔鳴↔知↔懷↔勞


対句 a:d b:e c:f


        
 夏日 南亭 懷辛大 
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1山光西落池月東上
2散發夕涼開軒閑敞
3荷風香氣竹露清響
4欲取琴彈恨無音賞
5感此故人中宵夢想

季語・語の進行    
山光→西落→池月→東上。→
散發→夕涼→開軒→閑敞。→
荷風→香氣→竹露→清響。→
欲取→琴彈→恨無→音賞。→
感此→故人→中宵→夢想。