登鹿門山懐古 #1李白「峴山懐古」関連 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -316
孟浩然は、故郷の鹿門山に自適の暮らしをし、季節の訪れも気づかず、あくせくと過ごす俗人の世界に対して、悠然と自然にとけ入った世界が歌われている。
「ぬくぬく春の眠りを貪っている」のは、宮仕えの生活を拒否した、つまり世俗の巷を低く見ている入物であり、詩人にとってあこがれの生活である。立身出世とは全く縁のない世界、悠然たる『高士』の世界である。この詩は、内容からして孟浩然の若いころの作品である。
登鹿門山懐古孟浩然
鹿門山に登り古えを懐かしむ
#1
清曉因興來,乘流越江峴。
初夏の清々しい明け方、風興の気分によってここに来ている。漢水の流れに乗って峴山が川を越えて見る。
沙禽近方識,浦樹遙莫辨。
砂浜にいる水鳥に近づくとこちらを向いて気が付いたようだ。入り江の奥の樹林は遙か遠くにあり、瓣別することができない。
漸至鹿門山,山明翠微淺。
しばらく山の道を進んでゆくと鹿門山にいたるのだけれど、山に日の光が射していて、山の中腹の浅いところが見える。
岩潭多屈曲,舟楫屢回轉。
大岩と淵で、川は折れ曲がりが多い、舟の楫をしばしば使って舳先をめくらして進む。
昔聞龐德公,采藥遂不返。
ここには昔、後漢の龐徳公の有名な故事がある。薬草を取りに山に入ったが帰ってこなかったというものだ。
#2
金澗餌芝朮,石床臥苔蘚。
紛吾感耆舊,結攬事攀踐。
隱跡今尚存,高風邈已遠。
白雲何時去,丹桂空偃蹇。
探討意未窮,回艇夕陽晚。
鹿門山に登り古えを懐かしむ#1
清暁 興来るに因り、流れに乗りて江峴を越ゆ。
沙禽 近づきて方に識り、浦樹 遙かに辨ずる莫し
漸く鹿門山に至れば、山明らかにして翠微浅し。
岩潭 屈曲多く、舟楫 屡々回り転ず。
昔聞く 龐徳公、業を採りて遂に返らずと。
#2
金澗に芝朮(しじゅつ)を養ひ、石床 苔蘇に臥す。
紛として 吾 耆舊(ききゅう)に感じ、攬を結びて攀踐(はんせん)を事とす。
隠跡 今尚は存するも、高風 邈(ばく)として已に遠し。
白雲 何れの時にか去らん、丹桂 空しく偃蹇(えんけん)たり。
探討 意未だ窮まらず、艇を回らす 夕陽の晩。
現代語訳と訳註
(本文) #1
清曉因興來,乘流越江峴。
沙禽近方識,浦樹遙莫辨。
漸至鹿門山,山明翠微淺。
岩潭多屈曲,舟楫屢回轉。
昔聞龐德公,采藥遂不返。
(下し文) #1
清暁 興来るに因り、流れに乗りて江峴を越ゆ。
沙禽 近づきて方に識り、浦樹 遙かに辨ずる莫し
漸く鹿門山に至れば、山明らかにして翠微浅し。
岩潭 屈曲多く、舟楫 屡々回り転ず。
昔聞く 龐徳公、業を採りて遂に返らずと。
(現代語訳)
鹿門山に登り古えを懐かしむ
初夏の清々しい明け方、風興の気分によってここに来ている。漢水の流れに乗って峴山が川を越えて見る。
砂浜にいる水鳥に近づくとこちらを向いて気が付いたようだ。入り江の奥の樹林は遙か遠くにあり、瓣別することができない。
しばらく山の道を進んでゆくと鹿門山にいたるのだけれど、山に日の光が射していて、山の中腹の浅いところが見える。
大岩と淵で、川は折れ曲がりが多い、舟の楫をしばしば使って舳先をめくらして進む。
ここには昔、後漢の龐徳公の有名な故事がある。薬草を取りに山に入ったが帰ってこなかったというものだ。
(訳注) #1
登鹿門山懐古
鹿門山に登り古きを懐かしむ
○鹿門山 鹿門山は旧名を蘇嶺山という。建武年間(25~56年)、襄陽侯の習郁が山中に祠を建立し、神の出入り口を挟んで鹿の石像を二つ彫った。それを俗に「鹿門廟」と呼び、廟のあることから山の名が付けられた。
清曉因興來,乘流越江峴。
清暁 興来るに因り、流れに乗りて江峴を越ゆ。
初夏の清々しい明け方、風興の気分によってここに来ている。漢水の流れに乗って峴山が川を越えて見る。
○清曉 清々しい明け方。
沙禽近方識,浦樹遙莫辨。
沙禽 近づきて方に識り、浦樹 遙かに辨ずる莫し。
砂浜にいる水鳥に近づくとこちらを向いて気が付いたようだ。入り江の奥の樹林は遙か遠くにあり、瓣別することができない。
○沙禽 砂浜にいる水鳥。○浦樹 漢水に灌ぎこむ襄水の入り江の奥の樹林。○辨 辯ではなく瓣別すること。
漸至鹿門山,山明翠微淺。
漸く鹿門山に至れば、山明らかにして翠微浅し。
しばらく山の道を進んでゆくと鹿門山にいたるのだけれど、山に日の光が射していて、山の中腹の浅いところが見える。
○翠微 山の中腹。李白『游泰山六首 其六』、同『下終南山過斛斯山人宿置酒』
岩潭多屈曲,舟楫屢回轉。
岩潭 屈曲多く、舟楫 屡々回り転ず。
大岩と淵で、川は折れ曲がりが多い、舟の楫をしばしば使って舳先をめくらして進む。
○岩潭 大岩と淵。襄陽に沈碑潭という名勝があるがここでは襄水を登っているのであろう。
昔聞龐德公,采藥遂不返。
昔聞く 龐徳公、業を採りて遂に返らずと。
ここには昔、後漢の龐徳公の有名な故事がある。薬草を取りに山に入ったが帰ってこなかったというものだ。
○龐德公 東漢の末年、襄陽の名士である龐徳公は薬草を求めて妻を連れて山に入ってからもどらなかった。劉表からの士官への誘い、諸葛孔明からも誘われた、それを嫌って、奥地に隠遁したということと解釈している。隠遁を目指すものの憧れをいう。
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