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2012年12月1日から連載開始
唐五代詞詩・宋詞詩

『菩薩蠻 一』温庭筠   花間集

   
盛唐詩 望洞庭湖贈張丞相 孟浩然<36> Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -343


望洞庭湖贈張丞相
洞庭湖を望み、その情景を詩として張九齢丞相に贈る。
八月湖水平,涵虚混太淸。
仲秋、八月洞庭湖の湖水は平らかである。うつろな穴湖の窪みのおくまで水で涵(ひた)し、大空と水面は混じり合っている。
氣蒸雲夢澤,波撼岳陽城。
靄(もや)は、雲夢沢の大きな湿地帯、湖に湧き上がってきている。波は、岳陽城に打ち寄せて、揺るがせている。
欲濟無舟楫,端居恥聖明。
渡ろうとするが、舟とかじ、天子をたすける臣下の仕官するつてが無く、渡りたいが、つても無く、何事もしないでぼんやりと平生を過ごしているのは、聖明の天子様に恥じ入るばかりである。
坐觀垂釣者,徒有羨魚情。
坐って釣糸を垂れている者を見ていると、自分から釣られていく魚を羨む気持ち、それは仕官したいと願う気持ちが無闇に起こってくる。 


洞庭湖を望み 張丞相に贈る     
八月 湖水 平らかに,虚【きょ】を涵【ひた】して  太淸【たいせい】に混ず。
氣は蒸【む】す 雲夢【うんぼう】澤【たく】,波は撼【ゆる】がす 岳陽【がくよう】城。
濟【わた】らんと欲するに 舟楫【しゅうしふ】無く,端居して 聖明【せいめい】に恥づ。
坐して 釣を垂る者を 觀【み】るに,徒【いたづら】に 魚【うお】を羨【うらや】むの情 有り。



現代語訳と訳註
(本文)
望洞庭湖贈張丞相
八月湖水平,涵虚混太淸。
氣蒸雲夢澤,波撼岳陽城。
欲濟無舟楫,端居恥聖明。
坐觀垂釣者,徒有羨魚情。

(下し文) 洞庭湖を望み 張丞相に贈る     
八月 湖水 平らかに,虚【きょ】を涵【ひた】して  太淸【たいせい】に混ず。
氣は蒸【む】す 雲夢【うんぼう】澤【たく】,波は撼【ゆる】がす 岳陽【がくよう】城。
濟【わた】らんと欲するに 舟楫【しゅうしふ】無く,端居して 聖明【せいめい】に恥づ。
坐して 釣を垂る者を 觀【み】るに,徒【いたづら】に 魚【うお】を羨【うらや】むの情 有り。


(現代語訳)
洞庭湖を望み、その情景を詩として張九齢丞相に贈る。
仲秋、八月洞庭湖の湖水は平らかである。うつろな穴湖の窪みのおくまで水で涵(ひた)し、大空と水面は混じり合っている。
靄(もや)は、雲夢沢の大きな湿地帯、湖に湧き上がってきている。波は、岳陽城に打ち寄せて、揺るがせている。
渡ろうとするが、舟とかじ、天子をたすける臣下の仕官するつてが無く、渡りたいが、つても無く、何事もしないでぼんやりと平生を過ごしているのは、聖明の天子様に恥じ入るばかりである。
坐って釣糸を垂れている者を見ていると、自分から釣られていく魚を羨む気持ち、それは仕官したいと願う気持ちが無闇に起こってくる。 


(訳注)
望洞庭湖贈張丞相

洞庭湖を望み、その情景を詩して張九齢丞相に贈る。
洞庭湖 湖南省北東部にある中国最大の淡水湖。湘水(湘江)、沅水(沅江)などが流れ込んで長江に注ぐ。湖畔や湖中には岳陽楼や君山などがあり、瀟湘八景などの名勝に富む。
杜甫『登岳陽樓』
昔聞洞庭水,今上岳陽樓。呉楚東南坼,乾坤日夜浮。
親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。
張丞相 張九齢。或いは、張説。○丞相 天子を助けて政治を行う最高の官。宰相。総理大臣。相国。


八月湖水平,涵虚混太淸。
仲秋、八月洞庭湖の湖水は平らかである。うつろな穴湖の窪みのおくまで水で涵(ひた)し、大空と水面は混じり合っている。
八月 旧暦の中秋八月で、今の九月から十月。○湖水 洞庭湖の湖水。○涵虚 〔かんきょ〕澄み切った湖水。大地の窪み(虚(きょ))を涵(ひた)す澄んだ湖水。杜甫『登岳陽樓』「呉楚東南坼,乾坤日夜浮。」 ということ。)○太淸 大空。天空。


氣蒸雲夢澤,波撼岳陽城。
靄(もや)は、雲夢沢の大きな湿地帯、湖に湧き上がってきている。波は、岳陽城に打ち寄せて、揺るがせている。
氣蒸 霞(かすみ)や靄(もや)がわきあがる。○雲夢澤 〔うんぼうたく〕春秋・楚の国にあった大きな湖と大きな湿地帯。現・湖北省南部一帯。北限は安陸、南限は長江で、長江を夾んで洞庭湖・岳陽に近く、東は武漢、西は沙市一帯にあった、一辺100キロメートルほどで、洞庭湖の五、六倍ある広い湖沼。(北:安陸、南:岳陽、東:武漢、西は沙市。これで囲まれる内側が雲夢沢。また、長江北岸にあった沢を雲沢、南岸の夢沢、合わせて雲夢沢ともいう。○【かん】動かす。揺るがす。騒がす。○岳陽城 湖南省の北端の洞庭湖の東北に位置し、長江へ連なる水路の口にある岳陽の街。なお、その西門が岳陽楼。


欲濟無舟楫,端居恥聖明。
渡ろうとするが、舟とかじ、天子をたすける臣下の仕官するつてが無く、渡りたいが、つても無く、何事もしないでぼんやりと平生を過ごしているのは、聖明の天子様に恥じ入るばかりである。  
 …たい。…う。○ 渡る。○舟楫 天子の政治を助ける臣下の喩え。本来の意は、舟と楫(かじ)。ここは、前者の意。○端居 閑居。ふだん。平生。○ 自分の悪いところを認めてはじいる。○聖明 天子を呼ぶ尊称。天子の明徳。すぐれた聡明さ。


坐觀垂釣者,徒有羨魚情。
坐って釣糸を垂れている者を見ていると、自分から釣られていく魚を羨む気持ち、それは仕官したいと願う気持ちが無闇に起こってくる。 
坐觀 坐って観察する。よそ事のように見る。○垂釣者 釣り針を垂れて、釣りをしている者。ここでは、太公望を謂う。周・文王の賢臣・呂尚のこと。呂尚が渭水の岸で釣りをしていた時、文王が見いだし、「我が太公が待ち望んでいた人物だ」と喜び、太公望と呼んだ。武王を佐(たす)けて殷の紂王を滅ぼし、功によって斉に封じられた。『史記・齊太公世家』「呂尚蓋嘗窮困,年老矣,以漁釣奸周西伯。西伯將出獵,卜之,曰『所獲非龍非彲,非虎非羆;所獲霸王之輔』。於是周西伯獵,果遇太公於渭之陽,與語大説,曰:『自吾先君太公曰『當有聖人適周,周以興』。子真是邪?吾太公望子久矣。』故號之曰『太公望』,載與倶歸,立爲師。」とあり、晩唐・温庭筠の『渭上題三首』之三に「煙水何曾息世機,暫時相向亦依依。所嗟白首磻谿叟,一下漁舟更不歸。」○徒有 いたずらに起こってくる。むなしく起こってくる。漫然と起こってくる。○羨魚情 (釣られていく)魚を羨む気持ち。(何もしないで)仕官していく者を羨ましく思う気持ち。「太公望」については「姜太公釣魚」〔自発的に自分で罠にかかる(魚)=姜太公(呂尚)は真っ直ぐな針で魚を釣り、世を避けていた。従って、姜太公の針で釣られるものは自分から好んでかかったものである〕ということで、作者も釣られたい=仕官したいということを詠う。渭水で釣りをしていたところを文王が「これぞわが太公(祖父)が待ち望んでいた人物である」と。羨魚という語は『漢書・禮樂志』に「古人『淮南子』有言:臨淵羨魚,不如歸而結網。」とある。