孟浩然・王維・李白に影響を与えた山水詩人、謝霊運<6>  従遊京口北固應詔 #2 詩集 362

従遊京口北固應詔 #1
玉璽誡誠信、黄屋示崇高。事為名教用、道以神理超。
昔聞汾水遊、今見塵外鑣。鳴笳發春渚、税鑾登山椒。
張組眺倒景、列筵矚歸潮。
#2
遠巌映蘭薄、白日麗江皐。
遠い岩は蘭の繁みに映え、輝く日光は大川の岸にうららかに射している。
原濕荑縁柳、墟囿散紅桃。
低くひろがった湿原と草原に緑の柳が芽ぶいている、御苑のような庭園跡には紅の挑がちらほらと咲いている。
皇心美陽澤、萬象咸光昭。
天子は御心に春の陽気の恵みゆたかなのを愛でられ、万物のすがたはことごとく光り輝いている。
顧己枉維縶、撫志慙場苗。
私自身を顧みるにその任ではないのに枉げて用いられて官職に繋がれている、辞任したい志が抑えてなだめながらも、『詩経、小雅、白駒篇』にある白い駒が、農場の苗を喰らって繋がれているように、賢者でもない私が俸禄をはむのがはずかしい。
工拙各所宜、終以返林巣。
ひとは事を処するのに上手と下手があるもので、各々に適する所があるのである。私の決めていることは、究極の道は世俗と離れた山林のすまいに帰りたい。
曾是縈舊想、覽物奏長謡。
さればこそ、まえまえから隠棲したいと思っていることが心にまとわりついてはなれず、ここの佳気漂う万物を覧ると声を長くしてこの詩を謡って天子に申しあげるのである。


(京口の北固【ほくこ】に従遊【じゅうゆう】す、詔に應ず)
玉璽【ぎょくじ】もて誠信【せいしん】を誡【いまし】め、黄屋【こうおく】もて崇高【すいこう】を示す。
事は名教【めいきょう】の為に用ひ、道は神理【しんり】を以て超ゆ。
昔は汾水【ふんすい】の遊を聞ぎ、今は塵外【じんがい】の鑣【ひょう】を見る。
茄を鳴らして春渚【しゅんしょ】を發し、鑾を税【と】いて山椒【さんしょう】に登る。
組を張りて倒景【とうえい】を眺め、筵を列ねて歸潮【きちょう】を矚【み】る。

遠巌【えんがん】は蘭薄【らんはく】に映【えい】じ、白日は江皐【えこう】に麗【うるわ】し。
原濕【げんしゅう】に緑柳【りょくりゅう】荑【きざ】し、墟囿【きょゆう】に紅桃【こうとう】散ず。
皇心【こうしん】陽澤【ようたく】を美とし、萬象【ばんしょう】咸【みな】光昭【こうしょう】す。
己を顧みるに維縶【いちゅう】を枉【ま】げ、志を撫して場苗【じょうびょう】に慙【は】づ。
工拙【こうせつ】は各々宜しき所、終【つい】に以て林巣【りんそう】に返らん。
曾ち是【ここ】に旧想【きゅうそう】に縈【まと】はれ、物を覧て長謡を奏す


謝霊運 285―433、陳郡(河所)陽夏の人。謝玄の孫。晋の時に祖父康楽公の封か襲【つ】いだか、宋に仕えて侯に降された。後に侍中となったが、性質は傲慢、所遇に不満で、それを慰めるために山水に遊んだ。元嘉十年に罪を得て広州比消死し、市にさらされた。年四十九。霊運の詩はやや細工が過ぎるが、山水を写してすぐれている。当時笛一流の詩人で、陶淵明と並び陶謝と称される。

従遊京口北固應詔

現代語訳と訳註
(本文) 
#2
遠巌映蘭薄、白日麗江皐。
原濕荑縁柳、墟囿散紅桃。
皇心美陽澤、萬象咸光昭。
顧己枉維縶、撫志慙場苗。
工拙各所宜、終以返林巣。
曾是縈舊想、覽物奏長謡。

(下し文) #2
遠巌【えんがん】は蘭薄【らんはく】に映【えい】じ、白日は江皐【えこう】に麗【うるわ】し。
原濕【げんしゅう】に緑柳【りょくりゅう】荑【きざ】し、墟囿【きょゆう】に紅桃【こうとう】散ず。
皇心【こうしん】陽澤【ようたく】を美とし、萬象【ばんしょう】咸【みな】光昭【こうしょう】す。
己を顧みるに維縶【いちゅう】を枉【ま】げ、志を撫して場苗【じょうびょう】に慙【は】づ。
工拙【こうせつ】は各々宜しき所、終【つい】に以て林巣【りんそう】に返らん。
曾ち是【ここ】に旧想【きゅうそう】に縈【まと】はれ、物を覧て長謡を奏す。

(現代語訳)
遠い岩は蘭の繁みに映え、輝く日光は大川の岸にうららかに射している。
低くひろがった湿原と草原に緑の柳が芽ぶいている、御苑のような庭園跡には紅の挑がちらほらと咲いている。
天子は御心に春の陽気の恵みゆたかなのを愛でられ、万物のすがたはことごとく光り輝いている。
私自身を顧みるにその任ではないのに枉げて用いられて官職に繋がれている、辞任したい志が抑えてなだめながらも、『詩経、小雅、白駒篇』にある白い駒が、農場の苗を喰らって繋がれているように、賢者でもない私が俸禄をはむのがはずかしい。
ひとは事を処するのに上手と下手があるもので、各々に適する所があるのである。私の決めていることは、究極の道は世俗と離れた山林のすまいに帰りたい。
さればこそ、まえまえから隠棲したいと思っていることが心にまとわりついてはなれず、ここの佳気漂う万物を覧ると声を長くしてこの詩を謡って天子に申しあげるのである。



(訳注)#2
遠巌映蘭薄、白日麗江皐。
遠い岩は蘭の繁みに映え、輝く日光は大川の岸にうららかに射している。
蘭薄 蘭の叢。蘭の花が薄暗く繁みとなっている。○江皐 江岸。 


原濕荑縁柳、墟囿散紅桃。
低くひろがった湿原と草原に緑の柳が芽ぶいている、御苑のような庭園跡には紅の挑がちらほらと咲いている。
 きざす。つぼみが芽吹く。墟囿 庭園の迹。墟は丘。は庭、庭園。御苑のような庭園。


皇心美陽澤、萬象咸光昭。
天子は御心に春の陽気の恵みゆたかなのを愛でられ、万物のすがたはことごとく光り輝いている。
皇心 天子は御心。 ○萬象 万物のかたち。宇宙に存在する、ありとあらゆるもの。


顧己枉維縶、撫志慙場苗。
私自身を顧みるにその任ではないのに枉げて用いられて官職に繋がれている、辞任したい志が抑えてなだめながらも、『詩経、小雅、白駒篇』にある白い駒が、農場の苗を喰らって繋がれているように、賢者でもない私が俸禄をはむのがはずかしい。
枉維繋 「維繋」二宇とも繋ぐ。官位に引き繋ぐことを枉げてする。その任でもないのに別の官職に用いられ、留められることの意。○撫志 平素の志をおさえなだめて。○慙場苗 馬が農場の苗を食うように官禄をはむのを慙じる。『詩経、小雅、白駒篇』に「皎皎たる白馬、我が場苗を食まば、之か繋ぎ之を維【つな】ぎて、以て今朝を永うせん」と。白馬がわが畑の苗を食ってくれるならば、繋いで今朝だかでも永く止めておきたい。賢人の留まるのを願う詩。二君にまみえることを恥じてみせる。
『詩経、小雅、白駒篇』
大夫刺宣王也.
皎皎白駒.食我場苗.縶之維之.以永今朝.所謂伊人.於焉逍遙。
皎皎白駒.食我場藿.縶之維之.以永今夕.所謂伊人.於焉嘉客。
皎皎白駒.賁然來思.爾公爾侯.逸豫無期.慎爾優游.勉爾遁思。
皎皎白駒.在彼空谷.生芻一束.其人如玉.毋金玉爾音.而有遐心。


工拙各所宜、終以返林巣。
ひとは事を処するのに上手と下手があるもので、各々に適する所があるのである。私の決めていることは、究極の道は世俗と離れた山林のすまいに帰りたい。
工拙 上手と下手。巧拙。○返林巣 山林の居に帰りたい。


曾是縈舊想、覽物奏長謡。
さればこそ、まえまえから隠棲したいと思っていることが心にまとわりついてはなれず、ここの佳気漂う万物を覧ると声を長くしてこの詩を謡って天子に申しあげるのである。
 纏と同じ。めぐる。○舊想 まえまえから隠棲したいと思っていること。


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