種桑 謝霊運<19>  詩集 385


すなおち、この田舎はいろいろと生活への条件が悪く、物の産出も少なく、人民ははな
はだしく貧乏になりやすいため、凶災の年にはその生命すら全うしがたく、そのうえ、知能も低い。それゆえ、一生懸命、政治に励み、物の豊かになれるように努力したいという。この詩のうちで、鄭白の渠とは鄭渠と白渠の朧漑により人民は衣食が満ち足りたという後漢の班固の「西都賦」を意識して歌う。いかにも地方の政治家として真剣に取り組んでいる姿が浮かぶ。
 また、産業の指導にも熱心に当たったようで、それを物語るものとして、「種桑」の詩が伝えられている。この詩が、いつ、どこで作られたかは不明であるが、政治家謝霊運の一面を語る資料として挙げてみる。

種桑
詩人陳條柯、亦有美攘剔。
(植え方)詩人は枝を揃えて並べていく、あるいはまた、枝を選定して美しくするものだ。
前修爲誰故、後事資紡績。
(加工)昔この作業を修業した人は誰のためにしたのであろうか、木が成長した後に、紡績を助けるためにしたのである。
媿微富敎益、浮陽騖嘉日。
(生産性)少しずつでも富となっていくように利益が増えるよう植え方を教えてきたことは大したことではなく、ほんの少し恥ずかしいと思う。日当たりについては、よろしい日々を重ねることである。
蓺桑迨閒隙、疏欄發近郛、長行達廣場。
(手入)桑の木はその間隔を整えることである、粗くていいので、城郭の近くから手すりを設置しなかにいれない、長く広場所まで達するものにするのである。
曠流始毖泉、湎塗猶跬跡。
(灌漑の水)遠くから流れ込むささやかな泉から始まり。なお流れていきその足跡を残して筋を残して沈み込んでいく。
俾比將長成、慰我海外役。
(土地を守る)これらのことをこれからとこしえに成功するためには、「我々は海外での役割、戦いをすることで慰められるものである」ということをしめしておくことなのだ。



桑を種える。
詩人は(桑の)條柯【じょうか】を陳【なら】べるに、また攘【はら】い剔【き】って美しくする有り。
前修は誰の故に為す、後の事は紡績に資るのみ。
媿微【きび】は富の教え益ますなり、浮陽は嘉日を騖【はせ】る
桑を蓺えて間隙に迨【およ】ぶ、疎らな欄は近くの郛に発し、長行して広場に達す。
曠【とお】き流れも毖泉【ひせん】に始まり、湎塗【めんと】 猶 跬跡【けいせき】のごとし。
此 長成し、「我を慰むるに海外の役」をもって俾めん

iwamizu01


現代語訳と訳註
(本文) 
種桑
詩人陳條柯、亦有美攘剔。
前修爲誰故、後事資紡績。
媿微富敎益、浮陽騖嘉日。
蓺桑迨閒隙、疏欄發近郛、長行達廣場。
曠流始毖泉、湎塗猶跬跡。
俾比將長成、慰我海外役。


(下し文)
桑を種える。
詩人は(桑の)條柯【じょうか】を陳【なら】べるに、また攘【はら】い剔【き】って美しくする有り。
前修は誰の故に為す、後の事は紡績に資るのみ。
媿微【きび】は富の教え益ますなり、浮陽は嘉目を騖【はせ】る
桑を蓺えて間隙に迨【およ】ぶ、疎らな欄は近くの郛に発し、長行して広場に達す。
曠【とお】き流れも毖泉【ひせん】に始まり、湎塗【めんと】 猶 跬跡【けいせき】のごとし。
此 長成し、「我を慰むるに海外の役」をもって俾めん。

(現代語訳)
(植え方)詩人は枝を揃えて並べていく、あるいはまた、枝を選定して美しくするものだ。
(加工)昔この作業を修業した人は誰のためにしたのであろうか、木が成長した後に、紡績を助けるためにしたのである。
(生産性)少しずつでも富となっていくように利益が増えるよう植え方を教えてきたことは大したことではなく、ほんの少し恥ずかしいと思う。日当たりについては、よろしい日々を重ねることである。
(手入)桑の木はその間隔を整えることである、粗くていいので、城郭の近くから手すりを設置しなかにいれない、長く広場所まで達するものにするのである。
(灌漑の水)遠くから流れ込むささやかな泉から始まり。なお流れていきその足跡を残して筋を残して沈み込んでいく。
(土地を守る)これらのことをこれからとこしえに成功するためには、「我々は海外での役割、戦いをすることで慰められるものである」ということをしめしておくことなのだ。


(訳注)
詩人陳條柯、亦有美攘剔。

(植え方)詩人は枝を揃えて並べていく、あるいはまた、枝を選定して美しくするものだ。


前修爲誰故、後事資紡績。
(加工)昔この作業を修業した人は誰のためにしたのであろうか、木が成長した後に、紡績を助けるためにしたのである。


媿微富敎益、浮陽騖嘉日。
(生産性)少しずつでも富となっていくように利益が増えるよう植え方を教えてきたことは大したことではなく、ほんの少し恥ずかしいと思う。日当たりについては、よろしい日々を重ねることである。
媿微 ほんの少し、恥ずかしいと思う。○浮陽 水上に浮かび日光に近づくこと。日光。


蓺桑迨閒隙、疏欄發近郛、長行達廣場。
(手入)桑の木はその間隔を整えることである、粗くていいので、城郭の近くから手すりを設置しなかにいれない、長く広場所まで達するものにするのである。


曠流始毖泉、湎塗猶跬跡。
(灌漑の水)遠くから流れ込むささやかな泉から始まり。なお流れていきその足跡を残して筋を残して沈み込んでいく。
曠流 遥かな遠いさま。○毖泉 『詩経』毖泉篇「毖彼泉水、亦流于淇」(毖【ささや】かなる彼の泉の水も、亦た淇のかわに流【そそ】ぐなり。)大意は泲(せい)・禰(でい)という土地は衛という国から嫁入りした時に経由したところであるという。また干(かん)・言(げん)は衛に里帰りをするならばその地を経由するのである。この2章の語意はもともと同じであるが、その解釈は異なっている。そして干(かん)・言(げん)を衛に里帰りをする時の経由地であるとするならば、「車を旋(かえ)す」は特に適切でないと思われる。「諸姫(しょき)は姪娣(ていてつ)を謂う。姪娣の中に乃ち諸姑伯姊あり」とは、意味が通らない。○ しずみ、のめりこむ。塗 ぬりふさぐ。すじみちとする。○跬跡 かたあしのあと。


俾比將長成、慰我海外役。
(土地を守る)これらのことをこれからとこしえに成功するためには、「我々は辺境の土地での役割、仕事、戦いをすることでまもられ、慰められるものである」ということをしめしておくことなのだ。
 しめる。せしめる。○長成、とこしえにうまくいくように。○海外役 辺境の土地での役割、仕事。


この詩は、治政者として謝霊運が懸命に人民の致治を考え、実践したことを示す。都から離れていても、国を富国強兵で、継続性のあるものにするには、その生産基盤をしっかりとし、生産性を高めなければいけないとしている。そしてそれを末代まで継続する必要があるということで、農耕法をしにしている。根っからの政治家であった。人民のための謝霊運のまじめな努力と一方では、美しい山水の詩人である。この地方で抜群の指示を受けたのも理解できることである。
しかし出るくぎは打たれるというものである謝霊運の仁徳の政治実践は権力者によっては目障りなものとして映るかもしれない。