過白岸亭 謝霊運 <24>#2 詩集394 紀頌之 漢詩ブログ997


霊運はこの春には、永嘉江をさかのぼり、楠渓の西南にあった白岸亨に遊んでいる。この事は永嘉から八十七里(50km)も離れたところにあり、岸辺の砂が、白砂でとても美しかった。ここで歌ったものに「過白岸亭」(白岸亭を過ぐ)がある。
a謝霊運永嘉ルート02

過白岸亭
拂衣遵沙垣。緩步入蓬屋。
近澗涓密石。遠山映疏木。
空翠難強名。漁釣易為曲。
援蘿臨青崖。春心自相屬。』
交交止栩黃。呦呦食萍鹿。
コウコウと飛び交っていたちいさな黄色カラ鶯がなつめの木に止まっている、ヨウヨウと啼いていた鹿が蓬を食べている。
傷彼人百哀。嘉爾承筐樂。
鳥でさえ、鹿でさえそうなのに人生に傷ついた人間にとって数えきれない哀しみがある、しかし幸いなことに浄土教との出会い樂経を承ることができたことにある。
榮悴迭去來。窮通成休慽。
官僚として栄えることと貶められ悩むことが互いにやって来た。痛快にしごとができること窮めることは悩みおそれることを成すことなのである。
未若長疏散。萬事恆抱朴。』

いまだに長期的に疎んじられ離れてそのままになっている。万事に対して常に隠棲したい気持ちを持ち続けることである。

(白岸亭を過ぐ)#1
衣を払い沙の垣に遵【したが】い、歩を緩【ゆる】くして蓬屋【ほうおく】に入る。
近くの澗【たに】や涓【ちいさいながれ】は石を密にし、遠くの山は疎【まば】らなる木に映【は】ゆ。
空翠は強いて名づけ難く、漁釣の曲を為し易し。
蘿【ら】を援【ひ】きて青き崖【きし】に臨み、春の心は自【おのず】から相い属【つら】なる。
#2
交交【こうこう】として栩【くぬぎ】に黄は止まり、呦呦【ようよう】として萍【よもぎ】を食らう鹿。
傷つきたる彼【か】の人 百哀し、嘉爾【さいわい】には筐楽【きょうらく】を承【う】く。
栄えと悴【なや】みとは迭【たが】いに去来し、窮と通とは休【よろこ】びと慽【うれ】いを成す。
未だ長き疎散に若【し】かず、万事 恒【つね】に朴を抱く。


現代語訳と訳註
(本文)

過白岸亭
拂衣遵沙垣。緩步入蓬屋。
近澗涓密石。遠山映疏木。
空翠難強名。漁釣易為曲。
援蘿臨青崖。春心自相屬。』

(下し文) #2
交交【こうこう】として栩【くぬぎ】に黄は止まり、呦呦【ようよう】として萍【よもぎ】を食らう鹿。
傷つきたる彼【か】の人 百哀し、嘉爾【さいわい】には筐楽【きょうらく】を承【う】く。
栄えと悴【なや】みとは迭【たが】いに去来し、窮と通とは休【よろこ】びと慽【うれ】いを成す。
未だ長き疎散に若【し】かず、万事 恒【つね】に朴を抱く。


(現代語訳)
コウコウと飛び交っていたちいさな黄色カラ鶯がなつめの木に止まっている、ヨウヨウと啼いていた鹿が蓬を食べている。
鳥でさえ、鹿でさえそうなのに人生に傷ついた人間にとって数えきれない哀しみがある、しかし幸いなことに浄土教との出会い樂経を承ることができたことにある。
官僚として栄えることと貶められ悩むことが互いにやって来た。痛快にしごとができること窮めることは悩みおそれることを成すことなのである。
いまだに長期的に疎んじられ離れてそのままになっている。万事に対して常に隠棲したい気持ちを持ち続けることである。


(訳注)
交交止栩黃。呦呦食萍鹿。

コウコウと飛び交っていたちいさな黄色カラ鶯がなつめの木に止まっている、ヨウヨウと啼いていた鹿が蓬を食べている。
交交 詩経、秦風『黄鳥』「交交黄鳥、止于棗。」(交交たる黄鳥、棗【なつめ】に止まる。)ちいさなカラ鶯がなつめの木に止まっている。―鳥でさえその生命を楽しんでいる。○呦呦 鹿の啼く声。悲しい声。『詩経小雅』「「呦呦鹿鳴、食野之萍。」(呦呦たる鹿鳴、野の萍を食う。)


傷彼人百哀。嘉爾承筐樂。
鳥でさえ、鹿でさえそうなのに人生に傷ついた人間にとって数えきれない哀しみがある、しかし幸いなことに浄土教との出会い樂経を承ることができたことにある。
筐樂 『詩経‧小雅‧鹿鳴』「我有嘉賓, 鼓瑟吹笙。 吹笙鼓簧, 承筐是將。」(我嘉賓有り,瑟を鼓し笙を吹く。笙を吹く簧を鼓ち,筐を承けて是將く。)承筐は賓客を歡迎する。ここでは六経の一つ樂経を承ることをいう。浄土教との出会いをいう。


榮悴迭去來。窮通成休慽。
官僚として栄えることと貶められ悩むことが互いにやって来た。痛快にしごとができること窮めることは悩みおそれることを成すことなのである。
榮悴 茂り栄えることと痩せ疲れること。栄枯盛衰。○窮通 困窮と栄達。貧困と立身出世。奥底まで通ずること。○ 悩み怕こと


未若長疏散。萬事恆抱朴。』
いまだに長期的に疎んじられ離れてそのままになっている。万事に対して常に隠棲したい気持ちを持ち続けることである。
疏散 疎んじられ離れる。○ わすれる○抱朴 生れながらの純朴な性格。『老子、十九』「見素抱朴、少私寡欲。」・朴:素朴。はなれる。