遊南亭 謝霊運 <26>#1 詩集397 紀頌之 漢詩ブログ1008

孤独な霊運はその事に腰を下ろして四方の景を眺めつつ、来し方のこと、都のことを思い出し、左遷された今を悲しみ、早く故郷の会稽に帰り、自然の美しきを楽しみたいと思いつつ歌ったのが「南亭に遊ぶ」で、この作は『文選』の巻二十二の「遊覧」に選ばれている。


遊南亭
南亭に遊ぶ。
時竟夕澄霽。雲歸日西馳。
日暮れの時も終わるころ、夕方の気は澄みわたり、そして空は晴れる。雲は山に帰り、日は西に馳せて行く。
密林含余清。遠峰隱半規。
奥深く繁った林はありあまる涼しさを含み、遠山の峯は半円形の夕日を隠してしまった。
久痗昏墊苦。旅館眺郊歧。
久しく暗い雨の日が続き、洪水の苦しみ、なやんでいた私は、南亭の旅館で郊外の分かれ道を眺めている。
澤蘭漸被徑。芙蓉始發池。』

沢の蘭草はやや小道を被って茂り、蓮の花ははじめて池の中でいま開いたところである。

未厭青春好。已觀朱明移。
慼慼感物嘆。星星白髮垂。
藥餌情所止。衰疾忽在斯。
逝將候秋水。息景偃舊崖。
我志誰與亮。賞心惟良知。』


時も竟【お】わりて夕【ゆうべ】は澄み霽【は】れ、雲は帰り日は西に馳【は】す。
密林 余清【よせい】を含み、遠峰は 半規【はんき】を隠す。
久しく昏墊【こんてん】の苦に痗【なや】みしも、旅館にて郊岐【こうき】を眺む。
沢の蘭は漸【ようや】く径【こみち】を被い、芙蓉は始めて池に発す。

未だ青青の好を厭【あ】かざるに、己に朱明【しゅめい】の移れるを覩【み】る。
戚戚【せきせき】として物に感じて嘆き、星星【せいせい】として白髪 垂【た】る。
薬餌【やくじ】は情の止【や】む所、衰疾【すいしつ】 忽ち斯【ここ】に在り。
逝【ゆき】て将に秋水を侯【ま】ち、景を息【やす】 めて旧崖に偃【ふ】さんとす。
我が志 誰と与にか亮【あき】らかにせん。賞心【しょうしん】惟【こ】れ 良知なり。


現代語訳と訳註
(本文)

時竟夕澄霽。雲歸日西馳。
密林含余清。遠峰隱半規。
久痗昏墊苦。旅館眺郊歧。
澤蘭漸被徑。芙蓉始發池。』


(下し文)
時も竟【お】わりて夕【ゆうべ】は澄み霽【は】れ、雲は帰り日は西に馳【は】す。
密林 余清【よせい】を含み、遠峰は 半規【はんき】を隠す。
久しく昏墊【こんてん】の苦に痗【なや】みしも、旅館にて郊岐【こうき】を眺む。
沢の蘭は漸【ようや】く径【こみち】を被い、芙蓉は始めて池に発す。


(現代語訳)
南亭に遊ぶ。
日暮れの時も終わるころ、夕方の気は澄みわたり、そして空は晴れる。雲は山に帰り、日は西に馳せて行く。
奥深く繁った林はありあまる涼しさを含み、遠山の峯は半円形の夕日を隠してしまった。
久しく暗い雨の日が続き、洪水の苦しみ、なやんでいた私は、南亭の旅館で郊外の分かれ道を眺めている。
沢の蘭草はやや小道を被って茂り、蓮の花ははじめて池の中でいま開いたところである。


(訳注)#1
遊南亭
南亭に遊ぶ
南亭 永嘉郡の南亭


時竟夕澄霽。雲歸日西馳。
日暮れの時も終わるころ、夕方の気は澄みわたり、そして空は晴れる。雲は山に帰り、日は西に馳せて行く。
時竟 暫くの時が終わって。あるいは、時雨止む、ここでは、日暮れの時おわり、一日を尽くすとする。


密林含余清。遠峰隱半規。
奥深く繁った林はありあまる涼しさを含み、遠山の峯は半円形の夕日を隠してしまった。
密林 奥深く繁った林。○半規 沈みかけ半ば隠れた太陽。


久痗昏墊苦。旅館眺郊歧。
久しく暗い雨の日が続き、洪水の苦しみ、なやんでいた私は、南亭の旅館で郊外の分かれ道を眺めている。
 なやむ。○昏墊 暗く曇り水があふれる。長雨と洪水。○郊歧 城郭郊外の分かれ道(分岐点)。


澤蘭漸被徑。芙蓉始發池。』
沢の蘭草はやや小道を被って茂り、蓮の花ははじめて池の中でいま開いたところである。
沢蘭 沢畔の蘭草。楚辞招魂に「皐蘭径【こみち】を蔽【おお】ひ、斯の路漸【ひた】る。」と。○芙蓉 連の花。楚辞、招魂に「芙蓉始めて発【ひら】いて、芰荷を雑【まじ】ふ」と。