遊南亭 謝霊運 <26>#2 詩集398 紀頌之 漢詩ブログ1011

孤独な霊運はその事に腰を下ろして四方の景を眺めつつ、来し方のこと、都のことを思い出し、左遷された今を悲しみ、早く故郷の会稽に帰り、自然の美しきを楽しみたいと思いつつ歌ったのが「南亭に遊ぶ」で、この作は『文選』の巻二十二の「遊覧」に選ばれている。


遊南亭
時竟夕澄霽。雲歸日西馳。
密林含余清。遠峰隱半規。
久痗昏墊苦。旅館眺郊歧。
澤蘭漸被徑。芙蓉始發池。』
未厭青春好。已觀朱明移。
万物の息吹、木々の芽生える春の好い季節、気候をまだ、まだ飽きてもいないのに、もうすでに日の朱き、明るく輝く夏に移りゆくのを見る。
慼慼感物嘆。星星白髮垂。
そうすると私は物悲しくなって風物に感じて嘆いてしまう、きらきらと光って白髪が垂れ下がっているのに気が付く。
藥餌情所止。衰疾忽在斯。
老衰と疾病がたちまちこのようにやって来たのは薬や食物はわが気持ちから止めてしまったからだ。
逝將候秋水。息景偃舊崖。
これから秋の増水の時を待って流れに随って帰えり行き、わが身の影を休息させるために始寧の故郷の崖の家に身を横たえようと思う。
我志誰與亮。賞心惟良知。』

私の志は誰が明らかに知ってくれることだろうか。自然の実を写る心の人こそ良い知友である。これからは私は風月をめでて暮らしたいと思う。


南亭遊
時も竟【お】わりて夕【ゆうべ】は澄み霽【は】れ、雲は帰り日は西に馳【は】す。
密林 余清【よせい】を含み、遠峰は 半規【はんき】を隠す。
久しく昏墊【こんてん】の苦に痗【なや】みしも、旅館にて郊岐【こうき】を眺む。
沢の蘭は漸【ようや】く径【こみち】を被い、芙蓉は始めて池に発す。
未だ青青の好を厭【あ】かざるに、己に朱明【しゅめい】の移れるを覩【み】る。
戚戚【せきせき】として物に感じて嘆き、星星【せいせい】として白髪 垂【た】る。
薬餌【やくじ】は情の止【や】む所、衰疾【すいしつ】 忽ち斯【ここ】に在り。
逝【ゆき】て将に秋水を侯【ま】ち、景を息【やす】 めて旧崖に偃【ふ】さんとす。
我が志 誰と与にか亮【あき】らかにせん。賞心【しょうしん】惟【こ】れ 良知なり。

 #2 現代語訳と訳註
(本文)#2

未厭青春好。已觀朱明移。
慼慼感物嘆。星星白髮垂。
藥餌情所止。衰疾忽在斯。
逝將候秋水。息景偃舊崖。
我志誰與亮。賞心惟良知。』


(下し文)
未だ青青の好を厭【あ】かざるに、己に朱明【しゅめい】の移れるを覩【み】る。
戚戚【せきせき】として物に感じて嘆き、星星【せいせい】として白髪 垂【た】る。
薬餌【やくじ】は情の止【や】む所、衰疾【すいしつ】 忽ち斯【ここ】に在り。
逝【ゆき】て将に秋水を侯【ま】ち、景を息【やす】 めて旧崖に偃【ふ】さんとす。
我が志 誰と与にか亮【あき】らかにせん。賞心【しょうしん】惟【こ】れ 良知なり。


(現代語訳)
万物の息吹、木々の芽生える春の好い季節、気候をまだ、まだ飽きてもいないのに、もうすでに日の朱き、明るく輝く夏に移りゆくのを見る。
そうすると私は物悲しくなって風物に感じて嘆いてしまう、きらきらと光って白髪が垂れ下がっているのに気が付く。
老衰と疾病がたちまちこのようにやって来たのは薬や食物はわが気持ちから止めてしまったからだ。
これから秋の増水の時を待って流れに随って帰えり行き、わが身の影を休息させるために始寧の故郷の崖の家に身を横たえようと思う。
私の志は誰が明らかに知ってくれることだろうか。自然の実を写る心の人こそ良い知友である。これからは私は風月をめでて暮らしたいと思う。


(訳注)
未厭青春好。已觀朱明移。

万物の息吹、木々の芽生える春の好い季節、気候をまだ、まだ飽きてもいないのに、もうすでに日の朱き、明るく輝く夏に移りゆくのを見る。
青春 五行思想で青、春、東を青とする。春霞の青い山々。万物の息吹、木々の芽生える春の季節。○朱明 夏のこと。『爾雅、釈天』に「夏を朱明と為す」と。五行思想で南方、夏の色を朱とする。


慼慼感物嘆。星星白髮垂。
そうすると私は物悲しくなって風物に感じて嘆いてしまう、きらきらと光って白髪が垂れ下がっているのに気が付く。
戚戚 憂え悲しむ。○星星 点々と白髪の交じるさま。


藥餌情所止。衰疾忽在斯。
老衰と疾病がたちまちこのようにやって来たのは薬や食物はわが気持ちから止めてしまったからだ。
○倒句でよむ。


逝將候秋水。息景偃舊崖。
これから秋の増水の時を待って流れに随って帰えり行き、わが身の影を休息させるために始寧の故郷の崖の家に身を横たえようと思う。
秋水 秋の増水。○息景 景は影と同じ。わが身の影。文選、張銑注に「形影を旧居の山崖に息む」と。○ 身を横たえ○舊崖 始寧のf故郷の崖の家


我志誰與亮。賞心惟良知。』
私の志は誰が明らかに知ってくれることだろうか。自然の実を写る心の人こそ良い知友である。これからは私は風月をめでて暮らしたいと思う。
誰與亮 輿は「歟」~だろうか。誰か亮かなるだろうか。亮は明、信。○賞心 自然の風光を賞でる心。○惟良知 自然の美を知り、俗事を脱れる心のある人こそわが良友である。