石門在永嘉 謝霊運<30>#2 詩集 405  kanbuniinkai紀 頌之漢詩ブログ1032
(石門は永嘉に在り)
『文選』の巻三十の「雑詩」石門在永嘉
『文選』の巻三十の五言雑詩に『石門新營所住四面高山回溪石濑茂林修竹』(石門に新たに住する所を営む。四面は高山、漢を廻らし、石瀬、傭竹、茂林)

この石門とは、始寧より少しく南の浙江省嵊県の嘑山の南にある名勝という説と、永嘉にありとする説と、古来、二説ある。もしも、嵊県の石門とすると、少しく始寧より距離がある。遊楽地としては温州郊外の石門とみるほうが適当だとされる。
謝霊運の心には山水の美を賞でたいという気持はいっこうに消えず、名山を求めては旅を続け、詩を作ったらしい。それらのうちに名勝石門を主題にした作品群が残されている。


《石門新營所住四面高山回溪石瀨修竹茂林》石門在永嘉 #1
躋険築幽居、披雲臥石門。
苔滑誰能歩、葛弱豈可捫。
嫋嫋秋風過、萋萋春草繁。
美人遊不遠、佳期何繇敦。』
#2
芳塵凝瑤席、清醑満金樽。
においの良い塵は立派な玉飾りの御御座席に固まるものであり、清酒のうま酒は金の大盃に満たされるものだ。
洞庭空波瀾、桂枝徒攀翻。
洞庭湖には空しく大波が立っているし、桂樹の枝は無造作に上に向かって翻っている。
結念屬霽漢、孤景莫與諼。
思いを胸に結ぶ、すると空が晴れ渡ってきて、この気に入っている風景は忘れることはないようにしたい。
俯濯石下潭、仰看條上猿。』
身をかがめて下を向き川の流れをみる、大岩の下には淵があり、仰ぎ見て枝々が重なったうえに猿がいる。

#3
早聞夕飈急、晩見朝日暾。
崖傾光難留、林深響易奔。
感往慮有復、理来情無存。
庶持乗日車、得以慰營魂。」
匪爲衆人説、冀與智者論。』

(石門は永嘉に在り)#1
険に躋【のぼ】りて幽居を築き、雲を披【ひら】きて石門に臥す。
苔は滑【なめ】らかにして誰か能く歩せん、葛は弱くして豈捫る可けんや。
嫋嫋【じょうじょう】と秋風が過ぎ、萋萋【せいせい】と春草も繁り。
美人は遊びて還らず、佳期は何に繇【よ】りてか敦【さだ】めん。
#2
芳塵【ほうじん】瑤席【ようせき】に凝【こ】もり、清醑【うまざけ】は金の樽に満つ。
洞庭は空しく波瀾し、桂の枝は徒らに攀翻【はんぱん】す。
念いを結び霽漢【しょうかん】に属【つ】け、弧景【こけい】与【とも】に 諼【わす】るる莫し。
俯【ふ】して石下の潭【ふち】に濯【そそ】ぎ、仰いで粂上の猿を看る。

#3
早【つと】に夕飈の急なるを聞き、晩に朝日の暾【かがや】くを見る
崖は傾き光は留【とど】め難し、林深くして響き 奔【はし】り易【やす】し。
感の往き慮【おも】い 復する有り、理の来たり情 存する無し。
庶【ねが】わくは乗日の事に持し、以って営魂を慰むるを待んことを。
衆人の為に説くに匪【あら】ず、冀【こいねが】わくは智者と論ぜん。


現代語訳と訳註
(本文)
#2
芳塵凝瑤席、清醑満金樽。
洞庭空波瀾、桂枝徒攀翻。
結念屬霽漢、孤景莫與諼。
俯濯石下潭、仰看條上猿。』


(下し文) #2
芳塵【ほうじん】瑤席【ようせき】に凝【こ】もり、清醑【うまざけ】は金の樽に満つ。
洞庭は空しく波瀾し、桂の枝は徒らに攀翻【はんぱん】す。
念いを結び霽漢【しょうかん】に属【つ】け、弧景【こけい】与【とも】に 諼【わす】るる莫し。
俯【ふ】して石下の潭【ふち】に濯【そそ】ぎ、仰いで粂上の猿を看る。


(現代語訳)
においの良い塵は立派な玉飾りの御御座席に固まるものであり、清酒のうま酒は金の大盃に満たされるものだ。
洞庭湖には空しく大波が立っているし、桂樹の枝は無造作に上に向かって翻っている。
思いを胸に結ぶ、すると空が晴れ渡ってきて、この気に入っている風景は忘れることはないようにしたい。
身をかがめて下を向き川の流れをみる、大岩の下には淵があり、仰ぎ見て枝々が重なったうえに猿がいる。


(訳注) #2
芳塵凝瑤席、清醑満金樽。
においの良い塵は立派な玉飾りの御御座席に固まるものであり、清酒のうま酒は金の大盃に満たされるものだ。
芳塵 においのよいちり。塵の美称。○1 一所にかたまって動かない。こりかたまる。「凝血・凝結・凝固・凝集・凝然・凝滞」 2 じっと一点に集中する。「凝議・凝視」○瑤席 玉のむしろ。立派な席。天子の御座席。○清醑 清酒のうまざけ。


洞庭空波瀾、桂枝徒攀翻。
洞庭湖には空しく大波が立っているし、桂樹の枝は無造作に上に向かって翻っている。
○桂枝 桂樹の枝。○攀翻 上に向かって翻える


結念屬霽漢、孤景莫與諼。
思いを胸に結ぶ、すると空が晴れ渡ってきて、この気に入っている風景は忘れることはないようにしたい。
*故郷始寧への思い、隠棲したいと思うこと。半官半隠の生活。○霽漢 (天空)漢の国の空が晴れ渡る ○ うつわる、 わすれる、 かまびすしい、 いつわる。


俯濯石下潭、仰看條上猿。』
身をかがめて下を向き川の流れをみる、大岩の下には淵があり、仰ぎ見て枝々が重なったうえに猿がいる。
 うつむく。身をかがめて下を向く。○石下潭 巌の下の淵。○條上猿 枝々が重なったうえに猿がいる