立石壁招提精舎 謝霊運(康楽) 詩<41#1>Ⅱ李白に影響を与えた詩420 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1077
(石壁に招提精舎を立つ)

浄土教に厚く帰依していた謝霊運は浮き世の無常を強く感じ、衆生済度をも兼ねて仏寺を建立した。それを詠じたものに、「石壁に招提精舎を立つ」の作がある。この精舎についてはしょせつあるが読書斎であり、慧遠にいたく帰依し、浄土教を信じていたので、謝霊運の仏教修行の場であった。


石壁立招提精舍詩
石壁という場所で、招提=修行場、書斎のような建物を建てての詩。
四城有頓躓。三世無極已。
城郭の四方にはもっぱらつまずくことがあるものだ、過去、現在、未来にわたってきわめることはないものだ。
浮歡昧眼前。沉照貫終始。
浮ついている歓びは目の前にあることでさえ見えないことがある、暗く沈んだり明るく照らされたりしてはじめから終わりまで貫くことである。
壯齡緩前期。頹年迫暮齒。
壮年の歳になることは人生の前半期であり緩やかに過ごすものであるが、人生の老年期には晩年にせまるのである。
揮霍夢幻頃。飄忽風電起。

ぱっとどびちり振り払うことは夢まぼろしという時もあるし、突然掻かき曇って風や雷がおこることもある。

#2
良緣迨未謝。時逝不可俟。
敬擬靈鷲山。尚想祗洹軌。
絕溜飛庭前。高林映窗裏。
禪室棲空觀。講宇析妙理。


(石壁に招提精舎を立つ)
四城に頓瞑【とんめい】有り、三世【さんせい】は無極【はてなき】のみ。
浮きたる歓びは眼前を昧【くら】くし、沈照【ちんしょう】して終始を貫く。
壮齢【そうれい】 前期に緩【ゆる】く、頹年【たいねん】 暮歯【ろうじん】に迫り、揮霍【はや】きこと夢・幻【まぼろし】の頃、飄忽【ひょうこつ】に風電【ふうでん】 起こり。

#2
良縁【りょうえん】 未だ謝せざるに迨【いた】る、時は逝【ゆ】き挨つ可からず。
敬みて靈鷲山【りょうじゅせん】に擬し、尚お想う 祗洹【ぎおん】の軌。
絶溜【ぜつりゅう】 飛庭【ひてい】の前、高き林 窗裏【そうり】に映じ。
禅室【ぜんしつ】にて空観【くうかん】を棲【すま】し、講字【こくじ】にて妙理【みょうり】を析【わ】かつ。


現代語訳と訳註
(本文)

石壁立招提精舍詩
四城有頓躓。三世無極已。
浮歡昧眼前。沉照貫終始。
壯齡緩前期。頹年迫暮齒。
揮霍夢幻頃。飄忽風電起。


(下し文)
四城に頓躓【とんち】有り、三世【さんせい】は無極【はてなき】のみ。
浮きたる歓びは眼前を昧【くら】くし、沈照【ちんしょう】して終始を貫く。
壮齢【そうれい】 前期に緩【ゆる】く、頹年【たいねん】 暮歯【ろうじん】に迫り、揮霍【はや】きこと夢・幻【まぼろし】の頃、飄忽【ひょうこつ】に風電【ふうでん】 起こり。


(現代語訳)
石壁という場所で、招提=修行場、書斎のような建物を建てての詩。
城郭の四方にはもっぱらつまずくことがあるものだ、過去、現在、未来にわたってきわめることはないものだ。
浮ついている歓びは目の前にあることでさえ見えないことがある、暗く沈んだり明るく照らされたりしてはじめから終わりまで貫くことである。
壮年の歳になることは人生の前半期であり緩やかに過ごすものであるが、人生の老年期には晩年にせまるのである。


(訳注)
石壁立招提精舍詩
石壁という場所で、招提=修行場、書斎のような建物を建てる。
官を辞して初めて味わえる浄土宗の修行三昧の日々、心をやすめて棲むところであったものである。
石壁 崖下のような場所。石壁という場所、地名。○ 建立したのである。○招提 修行場、書斎のような建物。○精舍 心をやすめて棲むところであったもの。


四城有頓躓。三世無極已。
城郭の四方にはもっぱらつまずくことがあるものだ、過去、現在、未来にわたってきわめることはないものだ。
四城 城郭の四方。○頓躓 頓1 いちずなさま。ひたすら。2 完全にその状態であるさま。3 向こう見ずなさま。また、強引で粗暴なさま。躓【ち】つまずくこと。また、失敗すること。○三世 過去、現在、未来。


浮歡昧眼前。沉照貫終始。
浮ついている歓びは目の前にあることでさえ見えないことがある、暗く沈んだり明るく照らされたりしてはじめから終わりまで貫くことである。
浮歡 浮ついている歓び。○昧眼前 目の前にあることでさえ見えないこと。○沉照 暗く沈んだり明るく照らされたりすること。○貫終始 はじめから終わりまで貫くこと。


壯齡緩前期。頹年迫暮齒。
壮年の歳になることは人生の前半期であり緩やかに過ごすものであるが、人生の老年期には晩年にせまるのである。
暮歯【ぼし】老年。晩年。


揮霍夢幻頃。飄忽風電起。
ぱっとどびちり振り払うことは夢まぼろしという時もあるし、突然掻かき曇って風や雷がおこることもある。
揮霍 ぱっとどびちり振り払うこと。○飄忽 突然掻かき曇る。○風電起 風や雷がおこること。