西陵遇風獻康楽 その2 謝惠運 詩<48>Ⅱ李白に影響を与えた詩435 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1122


西陵遇風獻康楽 謝蕙連
謝恵連(394~433)   会稽の太守であった謝方明の子。陳郡陽夏の人。謝霊運の従弟にあたる。大謝:霊運に対して小謝と呼ばれ、後に謝朓を加えて“三謝”とも称された。元嘉七年(430)、彭城王・劉義慶のもとで法曹行参軍をつとめた。詩賦にたくみで、謝霊運に対して小謝と称された。『秋懐』『擣衣』は『詩品』でも絶賛され、また楽府体詩にも優れた。『詩品』中。謝恵連・何長瑜・荀雍・羊濬之らいわゆる四友とともに詩賦や文章の創作鑑賞を楽しんだ。四友の一人。


 謝靈運 謝惠連
酬従弟謝惠連 五首西陵遇風獻康楽 五首

従弟の恵連に酬ゆ 五首

西陵にて風に遇い康楽に獻ず五首

(その1(その1

寢瘵謝人徒,滅跡入雲峯。

我行指孟春、春仲尚未發。

岩壑寓耳目,歡愛隔音容。

趣途遠有期、念離情無歇。

賞心望,長懷莫與同。

成装候良辰、漾舟陶嘉月。

末路令弟,開顏披心胸

瞻塗意少悰、還顧情多闕。

(その2(その2)

心胸既雲,意得鹹在

哲兄感仳別、相送越垌

淩澗尋我室,散帙問所

飲餞野亭館、分袂澄湖

夕慮曉月流,朝忌曛日

悽悽留子言、眷眷浮客

悟對無厭歇,聚散成

迴塘隠艫栧、遠望絶形

(その3(その3

分離別西,回景歸東

靡靡即長路,戚戚抱遙

別時悲已甚,別後情更

悲遙但自弭,路長當語

傾想遲嘉音,果枉濟江

行行道轉遠,去去情彌

辛勤風波事,款曲洲渚

昨發浦陽汭,今宿浙江

(その4(その4)

洲渚既淹,風波子行

屯雲蔽曾嶺、驚風湧飛

務協華京想,詎存空穀

零雨潤墳澤、落雪灑林

猶復恵来章,祇足攬余

浮氛晦崖巘、積素成原

儻若果歸言,共陶暮春

曲汜薄停旅、通川絶行

(その5(その5)

暮春雖未交,仲春善遊

臨津不得済、佇楫阻風

山桃發紅萼,野蕨漸紫

蕭條洲渚際、気色少諧

鳴嚶已悅豫,幽居猶郁

西瞻興遊歎、東睇起悽

夢寐佇歸舟,釋我吝與

積憤成疢痗、無萱將如


西陵遇風獻康楽(その1)
都建康の西陵で病気になったので康楽兄上に近況をお知らせする詩。
我行指孟春、春仲尚未發。
私の旅は春のはじめのつもりであったのに、仲春二月になってもやはりまだ出発しないでいる。
趣途遠有期、念離情無歇。
旅の途に向かうことは遠く以前に心に決めていたが、別れを思えばさびしい気持ちが尽きない。
成装候良辰、漾舟陶嘉月。
旅装も出来上がって門出の良い日を待ちながら、船を浮かべて春の好ましい月を楽しむのである。
瞻塗意少悰、還顧情多闕。
そうはいっても、行く手の途をながめてみると心に楽しみが少なく、あと振り返ってみるなら、ここに留まるには、気持の上で満足することはないことの方が多いのを覚えるのである。


西陵にて風に遇い康楽に獻ず(その1)
我が行 孟春【もうしゅん】を指すに、春仲【はるなかば】なるも尚 未だ發せず。
途に趣くこと遠く期有り、離【わかれ】を念うて情 歇【や】む無し。
装【よそおい】成して良辰【りょうしん】を候【ま】ち、舟を漾【うかべ】て嘉月を陶【たの】しむ。
塗【みち】を瞻て意に悰【たのしみ】少し、還顧【かんこ】すれば情に闕【か】くること多し。

(その2)
哲兄感仳別、相送越垌林。
賢兄は私との別れに心を感きわまったようだ、互いの別れのために野の林を越えて遠く送って下さいました。
飲餞野亭館、分袂澄湖陰。
郊外の宿場の館で贐の酒宴を催してくれ、澄んだ入江の南岸でたもとを分かち別れを惜しまれた。
悽悽留子言、眷眷浮客心。
後に留まる貴君のことばは悲しみに満ち、旅人の私はいつまでも心引かれて顧みるのであった。
迴塘隠艫栧、遠望絶形音。
舟は進みやがで曲がった岸に楫や舟のへさきが隠れて、はるかな眺めの中に人々の姿も声も絶えてしまった。


(その2)
哲兄【てっけい】は仳別【ひべつ】に感じ、相送って垌林【けいりん】を越え。
野亭【やてい】の館に飲餞【いんせん】し、澄湖【とうこ】の陰に分袂【ぶんぺい】す。
悽悽【せいせい】たり留子【りゅうし】の言、眷眷【けんけん】たり浮客【ふかく】の心。
迴塘【かいとう】に櫨挽【ろえい】隠れ、遠望【えんぼう】形音【けいおん】絶ゆ。


現代語訳と訳註
(本文)

哲兄感仳別、相送越垌林。
飲餞野亭館、分袂澄湖陰。
悽悽留子言、眷眷浮客心。
迴塘隠艫栧、遠望絶形音。

(下し文) (その2)
哲兄【てっけい】は仳別【ひべつ】に感じ、相送って垌林【けいりん】を越え。
野亭【やてい】の館に飲餞【いんせん】し、澄湖【とうこ】の陰に分袂【ぶんぺい】す。
悽悽【せいせい】たり留子【りゅうし】の言、眷眷【けんけん】たり浮客【ふかく】の心。
迴塘【かいとう】に櫨挽【ろえい】隠れ、遠望【えんぼう】形音【けいおん】絶ゆ。


(現代語訳)
賢兄は私との別れに心を感きわまったようだ、互いの別れのために野の林を越えて遠く送って下さいました。
郊外の宿場の館で贐の酒宴を催してくれ、澄んだ入江の南岸でたもとを分かち別れを惜しまれた。
後に留まる貴君のことばは悲しみに満ち、旅人の私はいつまでも心引かれて顧みるのであった。
舟は進みやがで曲がった岸に楫や舟のへさきが隠れて、はるかな眺めの中に人々の姿も声も絶えてしまった。


(訳注) (その二)
哲兄感仳別、相送越垌林。
賢兄は私との別れに心を感きわまったようだ、互いの別れのために野の林を越えて遠く送って下さいました。
哲兄 賢兄に同じ。 ・仳 別れ。


飲餞野亭館、分袂澄湖陰。
郊外の宿場の館で贐の酒宴を催してくれ、澄んだ入江の南岸でたもとを分かち別れを惜しまれた。
 爾雅に「。野外を林と日ひ、林外な桐と臼ふ、」と。郊外、秋野。・飲餞はなむけの宴を催す。・野亭鮮 郊外にある宿場の旅館。・澄湖陰 澄んだ入江の南岸。陰は水の南。


悽悽留子言、眷眷浮客心。
後に留まる貴君のことばは悲しみに満ち、旅人の私はいつまでも心引かれて顧みるのであった。
留子 残留する人。謝霊運を指す。・眷眷 心引かれて顧みる。・浮客 行方定めぬ旅人。


迴塘隠艫栧、遠望絶形音。
舟は進みやがで曲がった岸に楫や舟のへさきが隠れて、はるかな眺めの中に人々の姿も声も絶えてしまった。
迴塘 曲がった岸。・艫栧 舟のへさきとかじ。・絶形音 姿も声も絶えてわからなくなる。