酬従弟謝惠運 五首その(3) 謝霊運(康楽) 詩<49>Ⅱ李白に影響を与えた詩436 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1125


 謝靈運 謝惠連
酬従弟謝惠連 五首西陵遇風獻康楽 五首
従弟の恵連に酬ゆ 五首西陵にて風に遇い康楽に獻ず五首
(その1(その1
寢瘵謝人徒,滅跡入雲峯。我行指孟春、春仲尚未發。
岩壑寓耳目,歡愛隔音容。趣途遠有期、念離情無歇。
賞心望,長懷莫與同。成装候良辰、漾舟陶嘉月。
末路令弟,開顏披心胸瞻塗意少悰、還顧情多闕。
(その2(その2)
心胸既雲,意得鹹在哲兄感仳別、相送越垌
淩澗尋我室,散帙問所飲餞野亭館、分袂澄湖
夕慮曉月流,朝忌曛日悽悽留子言、眷眷浮客
悟對無厭歇,聚散成迴塘隠艫栧、遠望絶形
(その3(その3
分離別西,回景歸東靡靡即長路,戚戚抱遙
別時悲已甚,別後情更悲遙但自弭,路長當語
傾想遲嘉音,果枉濟江行行道轉遠,去去情彌
辛勤風波事,款曲洲渚昨發浦陽汭,今宿浙江
(その4(その4)
洲渚既淹,風波子行屯雲蔽曾嶺、驚風湧飛
務協華京想,詎存空穀零雨潤墳澤、落雪灑林
猶復恵来章,祇足攬余浮氛晦崖巘、積素成原
儻若果歸言,共陶暮春曲汜薄停旅、通川絶行
(その5(その5)
暮春雖未交,仲春善遊臨津不得済、佇楫阻風
山桃發紅萼,野蕨漸紫蕭條洲渚際、気色少諧
鳴嚶已悅豫,幽居猶郁西瞻興遊歎、東睇起悽
夢寐佇歸舟,釋我吝與積憤成疢痗、無萱將如

酬従弟謝惠運 五首 
従弟の恵連に酬ゆ 五首 
(その1)
(その1)
寢瘵謝人徒,滅跡入雲峯。
病の床について人と会うのを謝絶した、それから後名跡を訪れることはなく雲に隠れる峯に隠棲した。
岩壑寓耳目,歡愛隔音容。
ひととの交じりを断って岩の谷間の水音に耳や目を寄せた。愛しい人とも声を聞くことも隔たったのである。
永絕賞心望,長懷莫與同。
その隠棲生活は長く続いた、景観を賞賛する心でここで臨んだのだ。そして長期間にわたって同じ気持ちで過ごすことはなかった。
末路值令弟,開顏披心胸。
晩年になって、弟の君と逢うことが出来た。そして顔を開いたし、心を打ち解け、胸襟を開いたのだ。
(その2)
心胸既雲披,意得鹹在斯。
心と胸の中の本音を既にうちあけて話したら、互いの思いはここで納得し合うことが出来た。
淩澗尋我室,散帙問所知。
そうしたら、隠棲している谷を越えて私の庵を尋ねてくる。読書をしてわからないところを質問をしてくる。
夕慮曉月流,朝忌曛日馳。
夕べに明け方の月かが流れ落ちるのかと思い、朝には夕日が落ちるのを嫌ったように朝と夕を間違えるほど楽しい時を過ごした。
悟對無厭歇,聚散成分離。
向かい合ってみると厭になって辞めることはなく、集った後で散したらその後は分れて離れたままである。
(その3)
分離別西川,回景歸東山。
惠連と西川で別れた、わたしは景色を廻って会稽の東山に帰った。
別時悲已甚,別後情更延。
別れるときはそれまで以上に甚だ悲しい思いをしていた、別れた後は心情としてさらに伸びたようだ。
傾想遲嘉音,果枉濟江篇。
想いを謝蕙連の方に傾けて良い便りをこころまちにしている。果して私の贈った詩「濟江篇」の気持ちを忘れたりはしないのだ。
辛勤風波事,款曲洲渚言。
辛いおもいをして勤めていておだやかでないしごとがあるものだ,その旅先の中州の渚からこちらに手紙をくれたらいいのだ。

離して西川にて別れ,回景【かいけい】して東山に歸れり。
別れし時 悲しみ已に甚しきも,別れて後 情け更に延ぶ。
想いを傾けて嘉音【かおん】を遲【ま】ちしに,果して濟江【せいこう】の篇を枉【まげ】られぬ。
辛勤【して】風波【ふうは】の事,款曲【かんきょく】して洲渚【しゅうしょ】の言。


(その4) 
洲渚既淹時,風波子行遲, 洲渚【しゅうしょ】既に淹時【えんじ】せば,風波【ふうは】子の行くこと遲し,
務協華京想,詎存空穀期。 務【とお】く華京【かきょう】の想に協【かな】えり,詎【なん】ぞ 空穀【くうこく】に 期を存せん。
猶復恵来章,祇足攬余思。 猶 復た来章【らいしょう】を恵む,祇【まさ】に足余【よ】の思いを攬【みだ】す。
儻若果歸言,共陶暮春時。 儻若【もし】歸言【きごん】を果しなば,共に陶【たのし】まん 暮春の時を。
(その5) (その5)
暮春雖未交,仲春善遊遨。 暮春 未だ交わらずと雖も,仲春にても善く遊遨【たのし】まん。
山桃發紅萼,野蕨漸紫苞。 山桃は紅萼【こうがく】を發し,野蕨【やけつ】は紫苞【しほう】を漸【すす】む。
鳴嚶已悅豫,幽居猶郁陶。 鳴嚶【めいえい】 已に悅豫【えつしょう】し,幽居猶お 郁陶【ゆうとう】す。
夢寐佇歸舟,釋我吝與勞。 夢寐【むび】にも歸舟【きしゅう】を佇【ま】ち,我の吝【けち】と勞とを釋【と】かん。



現代語訳と訳註
(本文)
(その3)
分離別西川,回景歸東山。
別時悲已甚,別後情更延。
傾想遲嘉音,果枉濟江篇。
辛勤風波事,款曲洲渚言。


(下し文) (その3)
分離して西川にて別れ,回景【かいけい】して東山に歸れり。
別れし時 悲しみ已に甚しきも,別れて後 情け更に延ぶ。
想いを傾けて嘉音【かおん】を遲【ま】ちしに,果して濟江【せいこう】の篇を枉【まげ】られぬ。
辛勤【して】風波【ふうは】の事,款曲【かんきょく】して洲渚【しゅうしょ】の言。


(現代語訳)
惠連と西川で別れた、わたしは景色を廻って会稽の東山に帰った。
別れるときはそれまで以上に甚だ悲しい思いをしていた、別れた後は心情としてさらに伸びたようだ。
想いを謝蕙連の方に傾けて良い便りをこころまちにしている。果して私の贈った詩「濟江篇」の気持ちを忘れたりはしないのだ。
辛いおもいをして勤めていておだやかでないしごとがあるものだ,その旅先の中州の渚からこちらに手紙をくれたらいいのだ。


(訳注) (その3)
分離別西川,回景歸東山。

惠連と西川で別れた、わたしは景色を廻って会稽の東山に帰った。
○東山 浙江省上虞県の西南にあり、会稽(紹興)からいうと東の山であり、名勝地。晋の太傅であった謝安がむかしここに隠居して、なかなか朝廷の招きに応じなかったので有名。山上には謝安の建てた白雲堂、明月堂のあとがあり、山上よりの眺めは絶景だという。薔薇洞というのは、かれが妓女をつれて宴をもよおした所と伝えられている。


別時悲已甚,別後情更延。
別れるときはそれまで以上に甚だ悲しい思いをしていた、別れた後は心情としてさらに伸びたようだ。


傾想遲嘉音,果枉濟江篇。
想いを謝蕙連の方に傾けて良い便りをこころまちにしている。果して私の贈った詩「濟江篇」の気持ちを忘れたりはしないのだ。
嘉音 良い便り。濟江篇 謝惠連に贈った謝靈運の詩篇. 《昭明文選》卷二十五南朝宋•謝靈運《酬從弟惠連》 傾想遲嘉音,果枉濟江篇。 《昭明文選》卷二十五南朝宋•謝惠連《西陵遇風獻康樂》 昨發浦陽汭,今宿浙江湄。屯雲蔽曾嶺,驚風涌飛流。零雨潤墳澤,落雪灑林丘。


辛勤風波事,款曲洲渚言。
辛いおもいをして勤めていておだやかでないしごとがあるものだ,その旅先の中州の渚からこちらに手紙をくれたらいいのだ。
款曲【かんきょく】うちとてけ交わる
洲渚【しゅうしょ】洲渚  州(す)の水際の言。旅先の中州の渚からこちらに手紙。


(その3)
分離して西川にて別れ,回景【かいけい】して東山に歸れり。
別れし時 悲しみ已に甚しきも,別れて後 情け更に延ぶ。
想いを傾けて嘉音【かおん】を遲【ま】ちしに,果して濟江【せいこう】の篇を枉【まげ】られぬ。
辛勤【して】風波【ふうは】の事,款曲【かんきょく】して洲渚【しゅうしょ】の言。