西陵遇風獻康楽 その5 謝惠運 謝霊運(康楽) 詩<54>Ⅱ李白に影響を与えた詩441 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1140




 謝靈運

 謝惠連

酬従弟謝惠連 五首

西陵遇風獻康楽 五首

従弟の恵連に酬ゆ 五首

西陵にて風に遇い康楽に獻ず五首

(その1

(その1

寢瘵謝人徒,滅跡入雲峯。

我行指孟春、春仲尚未發。

岩壑寓耳目,歡愛隔音容。

趣途遠有期、念離情無歇。

賞心望,長懷莫與同。

成装候良辰、漾舟陶嘉月。

末路令弟,開顏披心胸

瞻塗意少悰、還顧情多闕。

(その2

(その2)

心胸既雲披,意得鹹在斯。

哲兄感仳別、相送越垌

淩澗尋我室,散帙問所知。

飲餞野亭館、分袂澄湖

夕慮曉月流,朝忌曛日馳。

悽悽留子言、眷眷浮客

悟對無厭歇,聚散成分離

迴塘隠艫栧、遠望絶形

(その3

(その3

分離別西,回景歸東

靡靡即長路,戚戚抱遙

別時悲已甚,別後情更

悲遙但自弭,路長當語

傾想遲嘉音,果枉濟江

行行道轉遠,去去情彌

辛勤風波事,款曲洲渚

昨發浦陽汭,今宿浙江

(その4

(その4)

洲渚既淹,風波子行

屯雲蔽曾嶺、驚風湧飛

務協華京想,詎存空穀

零雨潤墳澤、落雪灑林

猶復恵来章,祇足攬余

浮氛晦崖巘、積素成原

儻若果歸言,共陶暮春

曲汜薄停旅、通川絶行

(その5

(その5)

暮春雖未交,仲春善遊

臨津不得済、佇楫阻風波。

山桃發紅萼,野蕨漸紫

蕭條洲渚際、気色少諧和。

鳴嚶已悅豫,幽居猶郁

西瞻興遊歎、東睇起悽歌。

夢寐佇歸舟,釋我吝與

積憤成疢痗、無萱將如何。



西陵遇風獻康楽 謝惠連
謝恵連(394~433)   会稽の太守であった謝方明の子。陳郡陽夏の人。謝霊運の従弟にあたる。大謝:霊運に対して小謝と呼ばれ、後に謝朓を加えて“三謝”とも称された。元嘉七年(430)、彭城王・劉義慶のもとで法曹行参軍をつとめた。詩賦にたくみで、謝霊運に対して小謝と称された。『秋懐』『擣衣』は『詩品』でも絶賛され、また楽府体詩にも優れた。『詩品』中。謝恵連・何長瑜・荀雍・羊濬之らいわゆる四友とともに詩賦や文章の創作鑑賞を楽しんだ。四友の一人。



西陵にて風に遇い康楽に獻ず(その1)
我が行 孟春【もうしゅん】を指すに、春仲【はるなかば】なるも尚 未だ發せず。
途に趣くこと遠く期有り、離【わかれ】を念うて情 歇【や】む無し。
装【よそおい】成して良辰【りょうしん】を候【ま】ち、舟を漾【うかべ】て嘉月を陶【たの】しむ。
塗【みち】を瞻て意に悰【たのしみ】少し、還顧【かんこ】すれば情に闕【か】くること多し。

(その2)
哲兄【てっけい】は仳別【ひべつ】に感じ、相送って垌林【けいりん】を越え。
野亭【やてい】の館に飲餞【いんせん】し、澄湖【とうこ】の陰に分袂【ぶんぺい】す。
悽悽【せいせい】たり留子【りゅうし】の言、眷眷【けんけん】たり浮客【ふかく】の心。
迴塘【かいとう】に櫨挽【ろえい】隠れ、遠望【えんぼう】形音【けいおん】絶ゆ。

(その3)
靡靡【びび】として長路に即【つ】き、戚戚【せきせき】として遙なる悲みを抱く。
悲 遙なるは 但 自ら弭【や】む。路の長ぎに當【まさ】に誰とか語るべき。
行き行ぎて道 轉【うたた】遠く、去り去りて 情 彌【いよい】よ遅し。
昨【きのう】は浦陽【ほよう】の汭【ほとり】を發し、今【きょう】は浙江の湄【みぎわ】に宿る。

(その4)
屯雲【ちゅううん】は曾嶺【そうれい】を蔽【おお】い、驚風【きょうふう】飛流【ひりゅう】を湧かす。
零雨【れいう】墳澤【ふんたく】を潤おし、落雪【らいせつ】林邱【りんきゅう】に灑【そそ】ぐ。
浮氛【ふふん】崖巘【がいけん】に晦【くら】く、積素【せきそ】原疇【げんちゅう】を成【まどわ】す。
曲汜【きょくし】薄【しばら】く旅を停【とど】め、通川【つうせん】に行舟【こうしゅう】を絶つ。

(その5)
津【しん】に臨めど済【わた】り得ず、楫【かじ】を佇【とど】めて風波【ふうは】阻【へだ】てらる。
蕭條【しょうじょう】洲渚【しゅうちょ】の際、気色【けしょく】諧和【かいわ】すること少し。
西に瞻【み】て遊歎【ゆうたん】を興し、東に睇【み】て悽歌【せいか】を起す。
積憤【せきふん】疢痗【ちんばい】を成す、萱【けん】無くば將に如何【いかん】せんとす。



現代語訳と訳註
(本文)
(その5)
臨津不得済、佇楫阻風波。
蕭條洲渚際、気色少諧和。
西瞻興遊歎、東睇起悽歌。
積憤成疢痗、無萱將如何。


(下し文) (その5)
津【しん】に臨めど済【わた】り得ず、楫【かじ】を佇【とど】めて風波【ふうは】阻【へだ】てらる。
蕭條【しょうじょう】洲渚【しゅうちょ】の際、気色【けしょく】諧和【かいわ】すること少し。
西に瞻【み】て遊歎【ゆうたん】を興し、東に睇【み】て悽歌【せいか】を起す。
積憤【せきふん】疢痗【ちんばい】を成す、萱【けん】無くば將に如何【いかん】せんとす。



(現代語訳) (その5)
川の渡場のそばまで来ても渡ることができず、私は舟の楫をとどめて風波のために始寧に帰ることは阻まれている。
蕭条としてものさびしい川の中州のなぎさの際には、風雲によって暗い状態になっており、たのしく心やわらぐものが少ないのだ。
西の方向を眺めてみると他国に遊ぶ旅人達の嘆きを共にすることになり、東のかた郷里、始寧の方角を視てはこの悲しい歌を作ることになるのである。
なかなか帰れないことでつもり積もった憤怒のために私は病気になってしまった。もし憂えを忘れるという萱草が無かったら、わたしはいかにしたらよいというのであろうか。


(訳注)(その5)
臨津不得済、佇楫阻風波。

川の渡場のそばまで来ても渡ることができず、私は舟の楫をとどめて風波のために始寧に帰ることは阻まれている。
渡し場


蕭條洲渚際、気色少諧和。
蕭条としてものさびしい川の中州のなぎさの際には、風雲によって暗い状態になっており、たのしく心やわらぐものが少ないのだ。
蕭條 ものさびしい。・諧和 楽しく和やかた気分。


西瞻興遊歎、東睇起悽歌。
西の方向を眺めてみると他国に遊ぶ旅人達の嘆きを共にすることになり、東のかた郷里、始寧の方角を視てはこの悲しい歌を作ることになるのである。
遊歎 旅にある人の憂い欺き。・悽歌 悲しい歌。この詩をさす。


積憤成疢痗、無萱將如何。
なかなか帰れないことでつもり積もった憤怒のために私は病気になってしまった。もし憂えを忘れるという萱草が無かったら、わたしはいかにしたらよいというのであろうか。
積憤 積もって久しい憤り。・疢痗 病気。疢はわずらい、は病。・ 萱草、諼草、忘れ草。忘憂草。
詩経、衛風伯兮篇に「焉諼得草、言樹之背。願言伯思、使我心痗。」(焉くんぞ諼草を得ん。言に背に樹えん。願いて言に伯を思い、我が心をして痗ましむ)とある。
我憂いを忘れるために、何処かで、もの忘れする草をみつけ、それを裏座敷に植えたい。一生懸命あなたのことばかり思いつめていると、私の心は病気になりそう。
.「雅音徘徊(さまよい)して、清婉(きよらかこやさしく)誦すベし」と。