従斤竹澗超嶺渓行 謝霊運(康楽) 詩<57-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩448 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1161


從斤竹澗越嶺溪行詩
斤竹澗から峰を越え谷川ぞいに行く時の詩
猿鳴誠知曙。穀幽光未顯。
猿が鳴いて、本当に夜が明けていくことがわかるのであるが、谷が深く、しずかで暗く、朝日の光はまだあらわれない。
巌下雲方合。花上露猶泫。
岩の下に雲がわいてきてちょうどそこで集まり合わさっている、谷に咲く花の上には露がまだしたたっている。
逶迤傍隈隩。迢遞陟陘峴。
うねうね峰は続き、山のくぼみに沿って、高く遠く山の切り通しや小さい嶺にのぼってゆく。
#2
過澗既厲急。登棧亦陵緬。
石の上に瓜先き立って岩から飛び出す滝の水を汲み、林の枝を引きよせて若葉を摘むのである。
#3
想見山阿人。薜蘿若在眼。
握蘭勤徒結。折麻心莫展。
情用賞為美。事昧竟誰辨。
觀此遺物慮。一悟得所遣。
谷川を過ぎてゆけばやがて急流を服を着たまま川を渡り、急傾斜に木を組んで造った桟道を登ってはるかな山の上に出る。
川渚屢徑複。乘流翫回轉。
川のなぎさをしばしば向こう岸に往ったりかえったりし、流れに随い下って川の廻転を楽しむのである。
蘋萍泛沉深。菰蒲冒清淺。
浮草が深い淵にただよい集まり、まこもやがまは清んだ浅瀬を蔽って生えている。
企石挹飛泉。攀林摘葉卷。


(斤竹澗より嶺を越えて溪行す。)
猿鳴いて誠に曙【あけぼの】を知り、谷幽にして光未だ顯【あら】われず。
巌下に雲 方【まさ】に合し、花上に露猶 泫【したた】る。
逶迤【いい】として隈隩【わいおう】に傍【そ】ひ、迢遞【ちょうてい】として陘峴【けいけん】を陟【のぼ】る。
#2
澗を過ぎて既に急を厲【わた】り、桟を登って亦 緬【めん】を陵【しの】ぐ。
川渚【せんしょ】は屡【しばし】ば 徑複【けいふく】し、流に乗じて回轉【かいてん】を翫【もてあそ】ぶ。
蘋萍【ひんべい】は沈深【ちんしん】に泛び、菰蒲【こほ】は清淺【せいせん】を冒【おお】えり。
石に企【つま】だてて 飛泉を挹【く】み、林を撃ちて葉巻【ようけん】を摘む。
#3
想見【そうけん】す山阿【さんあ】の人、薜蘿【へいら】眼に在るが若し。
蘭を握りて勤【ねんごろ】に徒【いたずら】に結び、麻【ま】を折りて心展【の】ぶる莫し。
情は賞して美と為すを用いて。事 昧【くら】くして竟に誰か辨せん。
此を觀て 物慮を遺【わす】れ、一たび 悟って遣る所を得たり。



現代語訳と訳註
(本文)
#2
過澗既厲急。登棧亦陵緬。
川渚屢徑複。乘流翫回轉。
蘋萍泛沉深。菰蒲冒清淺。
企石挹飛泉。攀林摘葉卷。


(下し文)
澗を過ぎて既に急を厲【わた】り、桟を登って亦 緬【めん】を陵【しの】ぐ。
川渚【せんしょ】は屡【しばし】ば 徑複【けいふく】し、流に乗じて回轉【かいてん】を翫【もてあそ】ぶ。
蘋萍【ひんべい】は沈深【ちんしん】に泛び、菰蒲【こほ】は清淺【せいせん】を冒【おお】えり。
石に企【つま】だてて 飛泉を挹【く】み、林を撃ちて葉巻【ようけん】を摘む。


(現代語訳)
谷川を過ぎてゆけばやがて急流を服を着たまま川を渡り、急傾斜に木を組んで造った桟道を登ってはるかな山の上に出る。
川のなぎさをしばしば向こう岸に往ったりかえったりし、流れに随い下って川の廻転を楽しむのである。
浮草が深い淵にただよい集まり、まこもやがまは清んだ浅瀬を蔽って生えている。
石の上に瓜先き立って岩から飛び出す滝の水を汲み、林の枝を引きよせて若葉を摘むのである。


(訳注) #2
過澗既厲急。登棧亦陵緬。

谷川を過ぎてゆけばやがて急流を服を着たまま川を渡り、急傾斜に木を組んで造った桟道を登ってはるかな山の上に出る。
 徒渉。詩経に「深ければ則ち厲る」と、毛伝に「衣を以て水を捗るを厲といふ」と。・登桟 かけはし路を登る。木を組んで急斜面に作った道を桟道という。・陵紬、はるかな山の上に出る。


川渚屢徑複。乘流翫回轉。
川のなぎさをしばしば向こう岸に往ったりかえったりし、流れに随い下って川の廻転を楽しむのである。
徑複 往来する。


蘋萍泛沉深。菰蒲冒清淺。
浮草が深い淵にただよい集まり、まこもやがまは清んだ浅瀬を蔽って生えている。
蘋萍 うきくさ。・沉深 深い淵。・孤荊 まこもやがま。水草。・ 蔽う。


企石挹飛泉。攀林摘葉卷。
石の上に瓜先き立って岩から飛び出す滝の水を汲み、林の枝を引きよせて若葉を摘むのである。
企石 石の上に爪先き立つ。企はつま立つ。・飛泉 滝水。・葉巻 まだ展びないわか葉。