答靈運 謝宣遠(謝瞻) 詩<63-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩466 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1215


謝瞻 あざな・宣遠が、謝霊連からの「霖(ながあめ)を愁ふる詩」に答えた詩である。

答靈運
夕霽風氣涼,閒房有餘清。
夕方雨がはれて清涼感のある空気が流れる、しずかなわが官舎の室には雨後の清らかさが満ちている。
開軒滅華燭,月露皓已盈。
廊下の欄干のまどを開扉してきれいな台座のともし火を消すと、もう月露のいろは白く光って月の光に満ちあふれている。
獨夜無物役,寢者亦云寧。
こうした夜に一人で過ごすわたしは俗務にわずらわされることもない、そして、横に寝ているものにとっては心安らかというものだ。
忽獲愁霖唱,懷勞奏所成。
そうしているうち、いまあなたからの「愁霖の詩」を受けとったところ、そこにはあなたが苦労をいだいたなかで、わたしに示す厚い真心を述べてある。
嘆彼行旅艱,深茲眷言情。
すなわち雨のため、旅中の難儀さをなげく気持ちがわかるとともに、わたしに対する慈しみ深い言葉を感じ親しみ思うのだ。
伊余雖寡慰,殷憂暫為輕。
わたしは平生慰め楽しむことも少ないといいながらも、あなたの詩を読んで、心の深い憂いも暫しば軽くなったものだ。
牽率酬嘉藻,長揖愧吾生。

あなたからの便りに心引かれ、みごとな詩に答える、霊運殿の妙才に対してまことに愧ずかしく思うしだいです。


(靈運に答ふ)
夕に霽【は】れて風氣【ふうき】は涼しく,閒房【かんぼう】には餘清【よせい】有り。
軒を開きて華燭【かしょく】を滅【け】せば、月霧【げつろ】は皓【こう】として已に盈つ。
獨夜には物役【ぶつえき】無く、寢【い】ぬれば 亦云【ここ】に寧【やす】し。
#2
忽ち愁霖【しゅうりん】の唱を獲たるに、勞を懐【いだ】ぎて誠なる所を奏す。
彼の行旅【こうりょ】の艱を嘆き、茲【こ】の眷言【けんげん】の情を深くす。
伊れ余【われ】慰【なぐさみ】寡【すくな】しと雖も、殷憂【いんゆう】ぱ暫く為に輕し。
牽率【けんそつ】して嘉藻【かそう】に酬い、長揖【ちょういつ】しで吾生【ごせい】に愧づ。


現代語訳と訳註
(本文)

忽獲愁霖唱,懷勞奏所成。
嘆彼行旅艱,深茲眷言情。
伊余雖寡慰,殷憂暫為輕。
牽率酬嘉藻,長揖愧吾生。


(下し文) (靈運に答ふ)#2
忽ち愁霖【しゅうりん】の唱を獲たるに、勞を懐【いだ】ぎて誠なる所を奏す。
彼の行旅【こうりょ】の艱を嘆き、茲【こ】の眷言【けんげん】の情を深くす。
伊れ余【われ】慰【なぐさみ】寡【すくな】しと雖も、殷憂【いんゆう】ぱ暫く為に輕し。
牽率【けんそつ】して嘉藻【かそう】に酬い、長揖【ちょういつ】しで吾生【ごせい】に愧づ。


(現代語訳)
そうしているうち、いまあなたからの「愁霖の詩」を受けとったところ、そこにはあなたが苦労をいだいたなかで、わたしに示す厚い真心を述べてある。
すなわち雨のため、旅中の難儀さをなげく気持ちがわかるとともに、わたしに対する慈しみ深い言葉を感じ親しみ思うのだ。
わたしは平生慰め楽しむことも少ないといいながらも、あなたの詩を読んで、心の深い憂いも暫しば軽くなったものだ。
あなたからの便りに心引かれ、みごとな詩に答える、霊運殿の妙才に対してまことに愧ずかしく思うしだいです。


(訳注)
忽獲愁霖唱,懷勞奏所成。

そうしているうち、いまあなたからの「愁霖の詩」を受けとったところ、そこにはあなたが苦労をいだいたなかで、わたしに示す厚い真心を述べてある。
 進める。○ 誠と同じ。


嘆彼行旅艱,深茲眷言情。
すなわち雨のため、旅中の難儀さをなげく気持ちがわかるとともに、わたしに対する慈しみ深い言葉を感じ親しみ思うのだ。
眷言 『詩経‧小雅‧大東』 「睠言顧之 潸焉出涕。」(睠かえりみて我ここに之れを顧み、潸焉として涕を出す。)」など、用例が多い。


伊余雖寡慰,殷憂暫為輕。
わたしは平生慰め楽しむことも少ないといいながらも、あなたの詩を読んで、心の深い憂いも暫しば軽くなったものだ。
殷憂 今、邶風、柏舟篇「殷憂」とみえる。痛ましい、深いうれい。○牽率 ひきいる。


牽率酬嘉藻,長揖愧吾生。
あなたからの便りに心引かれ、みごとな詩に答える、霊運殿の妙才に対してまことに愧ずかしく思うしだいです。
長揖 揖は胸のあたりに手をあてて、あいさつする。長とは、その手で上から下へ撫で極めること。○吾生 ここは謝霊運をさす。