苦寒行 謝霊運(康楽) 詩<70>Ⅱ李白に影響を与えた詩493 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1296



寒行
嵗嵗層冰合,紛紛霰雪落。
ここ毎年、寒さが厳しく氷の層が何層にも重なって厚くなっている。雪も深深と積もりあられ、雹も落ちる。
浮陽减清暉,寒禽呌悲壑。
雲間に浮ぶ太陽はきれいに晴れたかがやきをなくしてきたし、山野で厳しい冬の中を生きている鳥でさえこの寒さのため谷で哀しく泣き叫んでいる。
饑爨煙不興,渴汲水枯涸。
飢饉は釜戸さえ煙をあげなくなってしまったし、井戸は水を汲めないほど枯渇し、木も枯れ、川の水も涸れた。

歳歳【さいさい】 層【そう】冰合【ひょうごう】し、紛紛として霰【あられ】や雪 落つ。
浮陽【ふよう】も清暉【せいき】を減じ、寒禽【かんきん】も悲しく壑【たに】に叫び。
飢えたる爨【かまど】の煙 興こらず、汲むこと渇き水も枯【か】れ涸【か】れぬ。



現代語訳と訳註
(本文)
苦寒行
嵗嵗層冰合,紛紛霰雪落。
浮陽减清暉,寒禽呌悲壑。
饑爨煙不興,渴汲水枯涸。


(下し文)
歳歳【さいさい】 層【そう】冰合【ひょうごう】し、紛紛として霰【あられ】や雪 落つ。
浮陽【ふよう】も清暉【せいき】を減じ、寒禽【かんきん】も悲しく壑【たに】に叫び。
飢えたる爨【かまど】の煙 興こらず、汲むこと渇き水も枯【か】れ涸【か】れぬ。


(現代語訳)
ここ毎年、寒さが厳しく氷の層が何層にも重なって厚くなっている。雪も深深と積もりあられ、雹も落ちる。
雲間に浮ぶ太陽はきれいに晴れたかがやきをなくしてきたし、山野で厳しい冬の中を生きている鳥でさえこの寒さのため谷で哀しく泣き叫んでいる。
飢饉は釜戸さえ煙をあげなくなってしまったし、井戸は水を汲めないほど枯渇し、木も枯れ、川の水も涸れた。


(訳注)
苦寒行
清調曲。この詩は飢饉の年の天候不順を歌い、そして、鳥も食物に困り、悲しげに鳴く。人間たちはもっと困り、かまどの煙も起きず、水さえ滴れてしまったと、実に悲惨な状態を巧みに歌っている。経験したことを詩にするのではなく、想像して歌ったものである。


嵗嵗層冰合,紛紛霰雪落。
ここ毎年、寒さが厳しく氷の層が何層にも重なって厚くなっている。雪も深深と積もりあられ、雹も落ちる。


浮陽减清暉,寒禽呌悲壑。
雲間に浮ぶ太陽はきれいに晴れたかがやきをなくしてきたし、山野で厳しい冬の中を生きている鳥でさえこの寒さのため谷で哀しく泣き叫んでいる。
寒禽【かんきん】 山野・川・海などで厳しい冬の中を生きている鳥。冬の鳥。

饑爨煙不興,渴汲水枯涸。
飢饉は釜戸さえ煙をあげなくなってしまったし、井戸は水を汲めないほど枯渇し、木も枯れ、川の水も涸れた。




苦寒行   魏 武帝
北上太行山,艱哉何巍巍!
羊腸阪詰屈,車輪為之摧。
樹木何蕭瑟,北風聲正悲!
熊羆對我蹲,虎豹夾路啼。
谿谷少人民,雪落何霏霏!
延頸長嘆息,遠行多所懷。
我心何怫鬱?思欲一東歸。
水深橋梁絕,中路正徘徊。
迷惑失故路,薄暮無宿棲。
行行日已遠,人馬同時饑。
擔囊行取薪,斧冰持作糜。
悲彼東山詩,悠悠令我哀。
北のかた太行山に上れば 艱き哉 何ぞ巍巍たる
羊腸の坂 詰屈し 車輪 之れが為に摧く
樹木 何ぞ蕭瑟たる 北風 声正に悲し
熊羆 我に対して蹲まり 虎豹 路を夾んで啼く
谿谷 人民少なく 雪落つること 何ぞ霏霏たる
頸を延ばして長歎息し 遠行して懐う所多し
我が心 何ぞ怫鬱たる 一たび東帰せんと思欲す
水深くして橋梁絶え 中路 正に徘徊す
迷惑して故路を失い 薄暮 宿棲無し
行き行きて日已に遠く 人馬 時を同じくして飢う
嚢を担い 行きて薪を取り 氷を斧りて持て糜を作る
彼の東山の詩を悲しみ 悠悠として我れを哀しましむ
北上して太行山脈を越えようと必死なのに、道は大変険しく山は高く聳え立っている。
羊腸坂は曲がりくねっていて、兵車の車輪も砕けかねない。
樹木がうらさびしげに立ちつくし、北風がぴゅうぴゅうと吹きつけている。
熊や羆が低く身構えて我々をうかがい、虎や豹が道の両側から吠えかかってくる。
山間のため住む人も稀で、雪はしんしんと降りしきる。
首を伸ばして遠くを眺めやれば思わず溜息がもれるし、遠征する身ともなれば思いは更に増すばかり。
心に言いしれぬ不安が溢れ、いっそのこと、一旦東に引き返そうかとも思ってしまう。
谷川の水が深いのに渡るべき橋もなく、途中あちこち道を探しまわった。
だが、さんざん迷った挙げ句に元来た道を見失い、夕暮になっても泊るべき宿さえない。
山中を行軍して既に日数を重ね、人も馬もともに飢えてしまった。
袋を担いで行って薪を取り、氷を断ち割ってきて粥を作り、辛うじて寒さと飢えを凌いでいる状態だ。
あの周公東征の労苦を称えた「東山」の詩を思い起こすと、心に一層深い哀しみが広がってゆく。


苦寒行    陸機 
北游幽朔城,涼野多險艱。
俯入穹谷底,仰陟高山盤。
凝冰結重澗,積雪被長巒。
陰雲興岩側,悲風鳴樹端。
不 白日景,但聞寒鳥喧。
猛虎憑林嘯,玄猿臨岸嘆。
夕宿喬木下,慘慘恆鮮歡。
渴飲堅冰漿,饑待零露餐。
離思固已久,寤寐莫與言。
劇哉行役人,慊慊恆苦寒。
 

苦寒行      謝霊運
嵗嵗層冰合,紛紛霰雪落。
浮陽减清暉,寒禽呌悲壑。
饑爨煙不興,渴汲水枯涸。
  又
樵蘇無夙飲,鑿冰煑朝飡。
悲矣採薇唱,苦哉有餘酸。
 
苦寒    韓愈
四時各平分,一氣不可兼。
隆寒奪春序,顓頊固不廉。
太昊弛維綱,畏避但守謙。
遂令黄泉下,萌牙夭句尖。」

草木不複抽,百味失苦甜。
凶飆攪宇宙,铓刃甚割砭。
日月雖雲尊,不能活烏蟾。
羲和送日出,恇怯頻窺覘。」

炎帝持祝融,呵噓不相炎。
而我當此時,恩光何由沾。
肌膚生鱗甲,衣被如刀鐮。
氣寒鼻莫嗅,血凍指不拈。」

濁醪沸入喉,口角如銜箝。
將持匕箸食,觸指如排簽。
侵鑪不覺暖,熾炭屢已添。
探湯無所益,何況纊與縑。」

虎豹僵穴中,蛟螭死幽潛。
熒惑喪纏次,六龍冰脱髯。
芒碭大包内,生類恐盡殲。
啾啾窗間雀,不知已微纖。
擧頭仰天鳴,所願晷刻淹。」

不如彈射死,卻得親炰燖。
鸞皇苟不存,爾固不在占。
其餘蠢動儔,俱死誰恩嫌。
伊我稱最靈,不能女覆苫。
悲哀激憤歎,五藏難安恬。」

中宵倚牆立,淫淚何漸漸。
天王哀無辜,惠我下顧瞻。
褰旒去耳纊,調和進梅鹽。
賢能日登禦,黜彼傲與憸。
生風吹死氣,豁達如褰簾。」

懸乳零落堕,晨光入前檐。
雪霜頓銷釋,土脈膏且黏。
豈徒蘭蕙榮,施及艾與蒹。
日萼行鑠鑠,風條坐襜襜。
天乎苟其能,吾死意亦厭。」

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