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白頭吟
皚如山上雪,皎若雲間月。
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
聞君有兩意,故來相決絶。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。
今日斗酒會,明旦溝水頭。
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
躞蹀御溝上,溝水東西流。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。
淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
願得一心人,白頭不相離。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
男兒重意氣,何用錢刀爲。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。
白頭吟
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に躞蹀【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。
淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ簁簁【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。
現代語訳と訳註
(本文)
淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
願得一心人,白頭不相離。
竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
男兒重意氣,何用錢刀爲。
(下し文)
淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ簁簁【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。
(現代語訳)
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。
(訳注)
淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
・淒淒 寒く冷ややかなさま。寒く厳しいさま。ぞっとする。ここの「淒淒」は、別れた後の女の心の形容。
・復 また。ふたたび。その上。
・嫁娶 嫁入り。縁談。結婚。
・不須 必要はない。もちいず。
・啼 声に出して泣く。
願得一心人,白頭不相離。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
・願 ねがうことなら。願望「得一心人,白頭不相離」をいう。 ・得:える。
・一心人 嘘をつかない男性。愛し続けてくれる人。一つ心の人。
・白頭 白髪頭。老齢、老人をいう。
・不相離 離れてはいかない。離れはしない。
・相 対象に向かって…てはいか(ない)。「相互に」の意では使われていない。
竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
*『詩經・衛風』『竹竿』「籊籊竹竿,以釣于淇。豈不爾思,遠莫致之。」(籊籊たる竹竿,以って淇に釣る。豈爾を思わざらんや,遠くして之を致す莫し。)に基づく。『詩經・衛風』『竹竿』は、女子は嫁ぐものが道であり、兄弟親子で遊んだ故郷から、離れて行くのが定めであるというもの。
・竹竿 昔仲良く遊んだ釣り竿のこと。
・何 何と。疑問、感嘆を表す。
・嫋嫋 しなやかでゆれるさま。
・魚尾 魚。また、魚のシッポ。
・簁簁 動くさま。ピチピチとしている。
男兒重意氣,何用錢刀爲。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。。
・意氣 心意気。気概。ここでは、真実の愛情の意で使われている。 *後世、唐の魏徴の『述懷』尾聯「人生感意氣,功名誰復論。」と使われている。
・何用 どうして用いるのか。
・錢刀 ぜに。かね。銭貨。
卓文君
蜀卓氏之先,趙人也,用鐵冶富。秦破趙,遷卓氏。
致之臨,即鐵山鼓鑄,富至僮千人。田池射獵之樂,擬於人君。
『史記・司馬相如列傳』
會梁孝王卒,相如歸,而家貧,無以自業。素與臨令王吉相善,吉曰:『長卿(司馬相如の字)久宦遊不遂,而來過我。』於是相如往,舍都亭。臨令繆爲恭敬,日往朝相如。相如初尚見之,後稱病,使從者謝吉,吉愈益謹肅。臨中多富人,而卓王孫家僮八百人,程鄭亦數百人,二人乃相謂曰:『令有貴客,爲具召之。』并召令。令既至,卓氏客以百數。至日中,謁司馬長卿(司馬相如の字),長卿謝病不能往,臨令不敢嘗食,自往迎相如。相如不得已,彊往,一坐盡傾。酒酣,臨令前奏琴曰:「竊聞長卿(司馬相如の字)好之,願以自娯。」相如辭謝,爲鼓一再行。是時卓王孫有女(卓)文君新寡,好音,故相如繆與令相重,而以琴心挑之。相如之臨,從車騎,雍容閒雅甚都;及飮卓氏,弄琴,(卓)文君竊從戸窺之,心悅而好之,恐不得當也。既罷,相如乃使人重賜文君侍者通殷勤。文君夜亡奔相如,相如乃與馳歸成都。家居徒四壁立。卓王孫大怒曰:『女至不材,我不忍殺,不分一錢也。』人或謂王孫,王孫終不聽。文君久之不樂,曰:『長卿第倶如臨,從昆弟假貸猶足爲生,何至自苦如此!』相如與倶之臨,盡賣其車騎,買一酒舍酒,而令文君當鑪。相如身自著犢鼻褌,與保庸雜作,滌器於市中。卓王孫聞而恥之,爲杜門不出。昆弟諸公更謂王孫曰:『有一男兩女,所不足者非財也。今文君已失身於司馬長卿,長卿故倦游,雖貧,其人材足依也,且又令客,獨奈何相辱如此!』卓王孫不得已,分予文君僮百人,錢百萬,及其嫁時衣被財物。文君乃與相如歸成都,買田宅,爲富人。