怨詩 王昭君  漢詩<110-#1>玉台新詠集 女性詩 545 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1452


     
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怨詩
秋木萋萋,其葉萎黄。
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。
有鳥處山,集于苞桑。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
養育毛羽,形容生光。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。
既得升雲,上遊曲房。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
離宮絶曠,身體摧藏。
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
志念抑沈,不得頡頏。

わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。

雖得委食,心有徊徨。
我獨伊何,來往變常。
翩翩之燕,遠集西羌。
高山峨峨,河水泱泱。
父兮母兮,道里悠長。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。

 
怨詩
秋木 萋萋【せいせい】として,其の葉 萎黄【いこう】す。
鳥有り 山に處【を】り,苞桑【ほうそう】に集【むらが】る。
毛羽を養育し,形容 光を生ず。
既に雲に升【のぼ】るを得て,上のかた 曲房に遊ぶ。
離宮 絶【はなは】だ 曠【ひろ】くして,身體 摧藏【さいぞう】す。
志念 抑沈【よくちん】して,頡頏【けつこう】するを得ず。

委食を得【う】と 雖も,心に 徊徨【かいこう】する有り。
我 獨り 伊【こ】れ 何ぞ,來往【らいおう】常を變ず。
翩翩【へんぺん】たる燕,遠く西羌【せいきょう)に集【いた】る。
高山峨峨【がが】たり,河水泱泱【おうおう】たり。
父や母や,道里 悠長なり。
嗚呼【ああ】 哀しい哉,憂心惻傷【そくしょう】す。


現代語訳と訳註
(本文)
怨詩
秋木萋萋,其葉萎黄。
有鳥處山,集于苞桑。
養育毛羽,形容生光。
既得升雲,上遊曲房。
離宮絶曠,身體摧藏。
志念抑沈,不得頡頏。


(下し文)
怨詩
秋木 萋萋【せいせい】として,其の葉 萎黄【いこう】す。
鳥有り 山に處【を】り,苞桑【ほうそう】に集【むらが】る。
毛羽を養育し,形容 光を生ず。
既に雲に升【のぼ】るを得て,上のかた 曲房に遊ぶ。
離宮 絶【はなは】だ 曠【ひろ】くして,身體 摧藏【さいぞう】す。
志念 抑沈【よくちん】して,頡頏【けつこう】するを得ず。


(現代語訳)
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。


(訳注)
◎王昭君

前漢の元帝の宮女。紀元前33年(竟寧元年)、匈奴との和親のため、呼韓邪単于に嫁し、「寧胡閼氏」としてその地で没した。名は檣。昭君は字。明君、明妃は、「昭」字をさけたための晋以降の称。
『漢書・本紀・元帝紀』「竟寧元年春正月,匈奴 呼韓邪單于來朝。詔曰:「匈奴呼韓邪單于不忘恩德,鄕慕禮義,復修朝賀之禮,願保塞傳之無窮,邊垂長無兵革之事。其改元爲竟寧,賜單于待詔掖庭王檣爲閼氏。」
王檣 王昭君のこと。
閼氏 單于の正妻の称で皇后のこと。
『漢書・匈奴傳・下』「王昭君號寧胡閼氏,生一男伊屠智牙師,爲右日逐王。」
多くの子供をもうけ、夫の没後は、匈奴の習慣に従った再婚をし、父子二代の妻となり、更に子供を儲けている。子供達の名も記録されている。
辺疆安寧のための犠牲になったことで漢・匈奴友好使節の役を果たした。
李白33-35 王昭君を詠う 三首、五言絶句『王昭君』、雑言古詩、『王昭君』、雑言古詩『于闐採花』、王昭君ものがたり『王昭君 二首』 白楽天
聞歌
斂笑凝眸意欲歌,高雲不動碧嵯峨。
銅臺罷望歸何處,玉輦忘還事幾多。
靑冢路邊南雁盡,細腰宮裏北人過。
此聲腸斷非今日,香灺燈光奈爾何。

李商隠 3 聞歌

王昭君の七十余年前に、烏孫公主の故事がある。烏孫公主は漢の皇室の一族、江都王・劉建の娘で、武帝の従孫になる劉細君のこと。彼女は、西域の伊犂地方に住んでいたトルコ系民族の国家・烏孫国に嫁した。ともに漢王朝の対西域政策と軍略を物語るものである。
悲愁歌 烏孫公主(劉細君) 女流<108>542 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1443

oushokun03

◎『怨詩』
空高く飛ぶ鳥のさまから己の身を想い、遙かに離れ去ることとなってしまった境遇を詠う。『樂府詩集』に基づく。『昭君怨』『怨曠思惟歌』ともする。


秋木萋萋,其葉萎黄。
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。  
秋木 秋の樹木。 ・萋萋 草が茂っているさま。
萎黄 しおれて黄ばむ。


有鳥處山,集于苞桑。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
處山 山に居る。・處おる。いる。とまっている。おちつく。
集于 鳥が木にあつまる。(鳥が)とまる。とどまる。本来鳥が木につどうさまを表す。  
苞桑 クワの木の根。根本のしっかりしたもの。ものごとの根本のかたいこと、虫が多くいる。


養育毛羽,形容生光。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。  
養育 はぐくむ。養い育てる。 ・毛羽:鳥の羽。獣の毛と鳥の羽。羽毛。
形容 顔かたち。容貌。また、有様。形状。
生光 光を放つ。輝きを放つ。


既得升雲,上遊曲房。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
既得 ~をえて~となったばかりか。「升雲」となったばかりか「上遊曲房」となった。
升雲 立身出世する。雲居に昇る。
遊曲房 曲がりくねった女官のへや、屈曲した御殿、後宮において遊ぶ、過ごす。


離宮絶曠,身體摧藏。
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
離宮 皇宮以外、別の場所に設けられた皇帝の宮殿。 
絶曠 はなはだ広い。・絶:はなはだ。きわめて。・曠:広い。大きい。遮るものが無く明かである。
摧藏 くじけひそむ。おとろえかくれる


志念抑沈,不得頡頏。
わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。
志念 こころざし。こころざし思うこと。 
抑沈 おさえしずめる。抑制する。おさえつける。
不得 獲得できない。 
頡頏 鳥が飛び上がったり、飛んで下りたりすること。