怨詩 王昭君 漢詩<110-#2>玉台新詠集 女性詩 546 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1455
同じ日のブログ | ||||
1455 | 怨詩 王昭君 漢詩<110-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩546 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1455 | |||
1456 | 元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩<80-#12>Ⅱ中唐詩459 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1456 | |||
1457 | 寄岳州賈司馬六丈、巴州嚴八使君兩閣老五十韻 杜甫 <317-#4> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1457 杜甫詩 700- 450 | |||
李商隠詩 | 李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 | |||
2011/7/11 | 李商隠 1 錦瑟 | |||
2011/7/11 ~ 2012/1/11 まで毎日掲載 全130首(187回) | ||||
2012/1/11 | 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻 白文/現代語訳 (全文) | |||
謝靈運index | 謝靈運詩 | |||
怨詩
秋木萋萋,其葉萎黄。
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。
有鳥處山,集于苞桑。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
養育毛羽,形容生光。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。
既得升雲,上遊曲房。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。
離宮絶曠,身體摧藏。
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
志念抑沈,不得頡頏。
わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。
雖得委食,心有徊徨。
食べることは至れり尽くせり養っていただいているとはいうものの、心の中だけでも、自由にさまようことを思うのです。
我獨伊何,來往變常。
わたしは、このようにひとりだけでどうしているのでしょう。人の行き来というものが世の常と異なっているのではないでしょうか。
翩翩之燕,遠集西羌。
燕がひらりひらりと身軽く飛んで、はるか西の方のチベット系の民族の許にあつまりとどまっている。
高山峨峨,河水泱泱。
此処と故郷を隔てる高山は、けわしく高大なものであるし、黄河の流れは、立派で大きくさかんにながれている。(大自然は何も変わらない)
父兮母兮,道里悠長。
父よ、母よ、故郷までの道程は、遙かに遠いものです。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。
ああ、かなしいことです。表情や態度に表せないのですが憂えた心で、憐れみいたんでいるのです。
怨詩
秋木 萋萋【せいせい】として,其の葉 萎黄【いこう】す。
鳥有り 山に處【を】り,苞桑【ほうそう】に集【むらが】る。
毛羽を養育し,形容 光を生ず。
既に雲に升【のぼ】るを得て,上のかた 曲房に遊ぶ。
離宮 絶【はなは】だ 曠【ひろ】くして,身體 摧藏【さいぞう】す。
志念 抑沈【よくちん】して,頡頏【けつこう】するを得ず。
委食を得【う】と 雖も,心に 徊徨【かいこう】する有り。
我 獨り 伊【こ】れ 何ぞ,來往【らいおう】常を變ず。
翩翩【へんぺん】たる燕,遠く西羌【せいきょう)に集【いた】る。
高山峨峨【がが】たり,河水泱泱【おうおう】たり。
父や母や,道里 悠長なり。
嗚呼【ああ】 哀しい哉,憂心惻傷【そくしょう】す。
現代語訳と訳註
(本文)
雖得委食,心有徊徨。
我獨伊何,來往變常。
翩翩之燕,遠集西羌。
高山峨峨,河水泱泱。
父兮母兮,道里悠長。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。
(下し文)
委食を得【う】と 雖も,心に 徊徨【かいこう】する有り。
我 獨り 伊【こ】れ 何ぞ,來往【らいおう】常を變ず。
翩翩【へんぺん】たる燕,遠く西羌【せいきょう)に集【いた】る。
高山峨峨【がが】たり,河水泱泱【おうおう】たり。
父や母や,道里 悠長なり。
嗚呼【ああ】 哀しい哉,憂心惻傷【そくしょう】す。
(現代語訳)
食べることは至れり尽くせり養っていただいているとはいうものの、心の中だけでも、自由にさまようことを思うのです。
わたしは、このようにひとりだけでどうしているのでしょう。人の行き来というものが世の常と異なっているのではないでしょうか。
燕がひらりひらりと身軽く飛んで、はるか西の方のチベット系の民族の許にあつまりとどまっている。
此処と故郷を隔てる高山は、けわしく高大なものであるし、黄河の流れは、立派で大きくさかんにながれている。(大自然は何も変わらない)
父よ、母よ、故郷までの道程は、遙かに遠いものです。
ああ、かなしいことです。表情や態度に表せないのですが憂えた心で、憐れみいたんでいるのです。
(訳注)
雖得委食,心有徊徨。
食べることは至れり尽くせり養っていただいているとはいうものの、心の中だけでも、自由にさまようことを思うのです。
・委食 委ねやしなう。まかせくわせる。
・心有 心の中では、…を思う。
・徊徨 さまよう。
我獨伊何,來往變常。
わたしは、このようにひとりだけでどうしているのでしょう。人の行き来というものが世の常と異なっているのではないでしょうか。
・伊何 そもそもどうして。・伊:口調を整えリズムをとるために用いる。格別の意はない。
・來往:往ったり来たりする。・變常:人とは異なる。通常の状態を変えて変則的になっている。
翩翩之燕,遠集西羌。
燕がひらりひらりと身軽く飛んで、はるか西の方のチベット系の民族の許にあつまりとどまっている。
・翩翩 燕がひらりひらりと身軽く飛ぶさま。すばやいさま。宋玉『九辨』、「燕翩翩其辭歸兮,蝉寂漠而無聲。」(燕は翩翩として其れ辭し歸えり,蝉は寂漠として聲無し。)
・遠集 遠く…にとどまる。・集:とどまる。鳥が木にあつまる。本来鳥が木につどうさまを表す。
・西羌 西の方のえびす。チベット系の民族。
高山峨峨,河水泱泱。
此処と故郷を隔てる高山は、けわしく高大なものであるし、黄河の流れは、立派で大きくさかんにながれている。(大自然は何も変わらない)
・峨峨 山の高くけわしいさま。山の高大なさま。姿の立派なさま。
・河水 黄河の流れ。
・泱泱 水の深く広いさま。立派で大きいさま。ながれのさかんなるさ。『詩経小雅・瞻彼洛矣』「瞻彼洛矣、維水泱泱」(彼の洛を瞻れば、維れ水の泱泱たり。)
父兮母兮,道里悠長。
父よ、母よ、故郷までの道程は、遙かに遠いものです。
・道里 道のり。道程。
・悠長 遙かにながい。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。
ああ、かなしいことです。表情や態度に表せないのですが憂えた心で、憐れみいたんでいるのです。
・嗚呼 ああ。ため息するときの言葉。 ・哀哉 かなしいなあ。
・憂心 憂え。心配。 ・惻傷 憐れみいたましくおもう。表情や態度に表さない、心の中での歎きをいう。