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詠歩揺花 范靖婦沈満願 宋詩<119>玉台新詠集巻四 女性詩 556 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1485


沈約の孫娘
梁の征西記室范靖の妻
沈滿願 :生卒年不詳。吳の武康の人。沈約の孫娘。征西記室范靖(靜)の妻。
西暦540年ごろの梁武帝最盛期頃に評価を受けたようである。ただ、沈約(441年 - 513年)は学問に精励し学識を蓄え、宋・斉・梁の3朝に仕えた。南斉の竟陵王蕭子良の招きに応じ、その文学サロンで重きをなし、「竟陵八友」の一人に数えられた。その後蕭衍(後の梁の武帝)の挙兵に協力し、梁が建てられると尚書令に任ぜられ、建昌県侯に封ぜられた。晩年は武帝の不興をこうむり、憂愁のうちに死去したというので、身分地位についてはそれほど高いものではなかったのではなかろうか。ただ、女性の立場で、趙飛燕と班婕妤、王昭君の悲劇を呼んでいるわけで、詩界に参列できるだけのものであったことは間違いない。


詠歩揺花
珠華縈翡翠、寶葉間金瓊。
宝玉でかざった華が翡翠の羽毛をめぐらせている。美しい葉に金玉がまじりあっている。
剪荷不似製、爲花如自生。
切って作った蓮の葉なのだがとても作り物とは見えない、造花であるが天然に生えたもののようだ。
低枝拂繍領、徴歩動瑤瑛。
低く下がった枝は刺繍の襟元を払っていて、わずか体を動かすだけでも飾り瑛は揺れ動くのである。
但令雲髻插、蛾眉本易成。
とはいっても、雲型の黒髪の髻にこのかんざしを挿したらいいのだ、蛾の眉などを画くことなどは容易にできることなのだから。
珠華【しゅか】縈翡翠【ひすい】を【めぐ】り、寶葉【ほうよう】金瓊【きんけい】間【まじ】はる。
剪荷【せんか】製するに似ず、花と爲りて自生するが如し。
低枝【ていし】繍領【しゅうれい】を拂う、徴歩すれば瑤瑛【ようえい】動く。
但 令雲髻【うんけい】に插しましめん、蛾眉【がび】本【もと】成し易し。


現代語訳と訳註
(本文)
詠歩揺花
珠華縈翡翠、寶葉間金瓊。
剪荷不似製、爲花如自生。
低枝拂繍領、徴歩動瑤瑛。
但令雲髻插、蛾眉本易成。


(下し文) 歩揺花を詠う)
珠華【しゅか】縈翡翠【ひすい】を【めぐ】り、寶葉【ほうよう】金瓊【きんけい】間【まじ】はる。
剪荷【せんか】製するに似ず、花と爲りて自生するが如し。
低枝【ていし】繍領【しゅうれい】を拂う、徴歩すれば瑤瑛【ようえい】動く。
但 令雲髻【うんけい】に插しましめん、蛾眉【がび】本【もと】成し易し。


(現代語訳)
宝玉でかざった華が翡翠の羽毛をめぐらせている。美しい葉に金玉がまじりあっている。
切って作った蓮の葉なのだがとても作り物とは見えない、造花であるが天然に生えたもののようだ。
低く下がった枝は刺繍の襟元を払っていて、わずか体を動かすだけでも飾り瑛は揺れ動くのである。
とはいっても、雲型の黒髪の髻にこのかんざしを挿したらいいのだ、蛾の眉などを画くことなどは容易にできることなのだから。


(訳注)
詠歩揺花

・歩 かんざし。歩揺花:かんざしに花をつけている。
王樞 『徐尚書坐賦得可憐』(徐尚書の坐にて「可憐」を得て賦する)
紅蓮披早露、玉貌映朝霞。
飛燕啼妝罷、顧挿歩揺花。
溘匝金鈿滿、參差繍領斜。
暮還垂瑤帳、香鐙照九華。
紅蓮【こうれん】早露に披【ひら】き、玉貌【ぎょくぼう】朝霞【ちょうか】に映ず。
飛燕【ひえん】啼妝【ていそう】罷【や】み、顧みて歩揺【ほよう】の花を挿しはさむ。
溘匝【こうそう】金鈿【きんてん】滿ち、參差【しんし】繍領【しゅうれい】斜なり。
暮に還りて瑤帳【えいちょう】を垂る、香鐙【こうとう】九華【きゅうか】照る。


珠華縈翡翠、寶葉間金瓊。
宝玉でかざった華が翡翠の羽毛をめぐらせている。美しい葉に金玉がまじりあっている。
珠華 宝玉でかざった華。
翡翠 翡翠の羽毛。
寶葉 美しい葉。蓮の葉。
金瓊 金玉。瓊は玉。


剪荷不似製、爲花如自生。
切って作った蓮の葉なのだがとても作り物とは見えない、造花であるが天然に生えたもののようだ。


低枝拂繍領、徴歩動瑤瑛。
低く下がった枝は刺繍の襟元を払っていて、わずか体を動かすだけでも飾り瑛は揺れ動くのである。
繍領 襟元に刺繍模様がある着物。
徴歩 わずかに動くこと。


但令雲髻插、蛾眉本易成。
とはいっても、雲型の黒髪の髻にこのかんざしを挿したらいいのだ、蛾の眉などを画くことなどは容易にできることなのだから。
雲髻 高く結んだ、美しい婦人の髪。曹植『洛神賦』「雲髻峩峩、脩眉聯娟。」(雲髻 峩峩として、脩眉 聯娟たり。)漫成三首 其三 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-82 「参考」として曹植『洛神賦』とこの詩に関するものがたりを参照されたい。