諸葛亮《出師表-前出師表》#4 先帝(劉備)がご存命の時、常に私と次の事を議論している。まず、後漢の国家を衰えさせ痛恨の極みである桓帝と霊帝の時代を嘆いていた。


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諸葛亮
前出師表1-1-1#1
臣亮言:先帝創業未半,而中道崩殂;
陛下の家臣である亮が申し上げます。 先帝(劉備)は、この国の基礎を作り始められてから、事業の道半ばにして、事業途中でほうぎょされました。
今天下三分,益州疲敝,此誠危急存亡之秋也。
今、天下は三国に分かれ鼎立しており、わが益州の地は疲れ果ててしまい、これは本当に危急存亡の時、まさしく冬を迎えようとしているのです。
然侍衛之臣,不懈於內;
そんな中では、まず、陛下(劉禅)の護衛をしている兵士たちは怠慢の気持ちを起こすことがあってはなりません。
忠志之士,忘身於外者:
そして、忠義心を抱く役人たちでかためること、外部の守りをするものは自分の身を忘れることである。
蓋追先帝之殊遇,欲報之於陛下也。
つまり、たいせつなのは、先帝(劉備)に特別の礼で接遇されたことを思い慕うこと、そして、その御恩を陛下に報いようとしなければならないと思うことであります。
誠宜開張聖聽,以光先帝遺德,恢弘志士之氣;
陛下が仁義、慈愛、道徳でもって心を広く開かれ、施政されることがもっともよろしいのです、偉大なる先の帝ののこされた徳につつまれていることなのです。そうすればわが国に尽くそうという志のある人々の心は広がってまいります。
不宜妄自菲薄,引喻失義,以塞忠諫之路也。
むやみに、自分の形成されていない力であることを、昔のたとえを引用して教条主義的施政を行えば主君と家臣の筋道をなくしてしまいます、まずもって陛下は家臣たちが真心を持って陛下を諫める道をふさいではなりません。

1-1-2#2
宮中府中,俱為一體;
宮廷の中と役所の中の者たちは、ともに一体となること。
陟罰臧否,不宜異同:
功績によって官位を上昇させることであり、、罰による官位の下降させることであり、人物の善し悪しの判断については、人によって異なる点があってはならないということです。
若有作奸犯科,及為忠善者,宜付有司,
もし、やましいことや、悪事を行って法律を犯すこと、それに真心をもって善行をしたのだということになれば、役人に任じることにする。
論其刑賞,以昭陛下平明之治;
その刑罰と功績による褒美を与えることについて判断をさせるときには、陛下の公平で明らかな道理をはっきりとさせることによって判断をさせることにするのです。
不宜偏私,使內外異法也。
そのときには特定の人をえこひいきしたりして、国内・国外の法を曲げないようにすることです。
侍中、侍郎郭攸之、費依、董允等,此皆良實,志慮忠純,是以先帝簡拔以遺陛下:
陛下に政務のことを申し上げる侍中(じちゅう)や役所の次官(じかん)である侍郞(じろう)の郭攸之(かくゆうし)や、費禕(ひい)や、董允(とういん)らは、彼らは皆な善良で実直であり、その志は真心があって素直であり、そのことを見抜かれた先の帝によって多くの者たちから選び出されて、そして陛下のためにのこされたのです。
愚以為宮中之事,事無大小,
彼等に任じて宮中の仕事をすすめていき、仕事の大小の差をつけないこと。
悉以咨之,然後施行,
すべて彼等に相談をすること。そういうことしたうえで実施すること。
必得裨補闕漏,有所廣益。
必ずよく手落ちとなっている部分を助けて補うこと。そうすれば、利益になるところが大きいのです。

1-1-3#3
將軍向寵,性行淑均,
将軍の向寵(こうちょう)は、性質と行いは穏やかで公平である。
曉暢軍事,試用之於昔日,
軍事に関する道理に通じており、すこし前のこと、彼を試みに用いています。
先帝稱之曰“能”,是以眾議舉寵為督:
先帝(劉備)は彼を賞賛して能力のある人と仰せられています。このことで、衆人して議論により、彼を軍の指揮官としたのです。
愚以為營中之事,事無大小,
まず、わが身を愚として、彼に経営・軍事上のことを任せること。それは事の大小を問わずということです。
悉以咨之,必能使行陣和穆,優劣得所也。
すべてのことをよく相談するのです。かれは、必ずよく軍・部隊をうち解けさせて、その個々人の優劣を見極め、能力にあった役割を与えてくれるのです。
親賢臣,遠小人,此先漢所以興隆也;
才能や仁徳にすぐれた家臣に親しんで、人格の劣ったくだらない者たちを遠ざけるのは、これは前漢という国が盛えた所以なのです。
親小人,遠賢臣,此後漢所以傾頹也。
一方で小人という人格の劣ったくだらない者たちと親しんで、賢臣という才能や人格にすぐれた家臣たちを遠ざけるのは、これは後漢末期に、國が衰えてしまった理由なのです。

1-1-4#4
先帝在時,每與臣論此事,
先帝(劉備)がご存命の時、常に私と次の事を議論している。
未嘗不嘆息痛恨於桓、靈也!
まず、後漢の国家を衰えさせ痛恨の極みである桓帝と霊帝の時代を嘆いていた。
侍中、尚書、長史、參軍,此悉貞亮死節之臣也,
侍中や、中央官庁の長官である尚書や、宰相の次官である長史や、軍の相談に当たる役人の参軍の者たちは、彼等はすべて志がまっすぐですぐれたもの、大義のためには命を惜しまない家臣たちを配する事である。
願陛下親之、信之,則漢室之隆,可計日而待也。
陛下にはその者たちと親しまれ、信頼されること。それによって漢の王室が栄えること。日々計画的にすること、そうしてその結果を待つようにすることを願うのです。

4岳陽樓詩人003











『出師表-前出師表』 現代語訳と訳註
(本文)
#4
先帝在時,每與臣論此事,
未嘗不嘆息痛恨於桓、靈也!
侍中、尚書、長史、參軍,此悉貞亮死節之臣也,
願陛下親之、信之,則漢室之隆,可計日而待也。


(下し文)
先帝の在時、毎に臣と此の事を論じ、
未だ嘗て歎息して桓﹑霊を痛恨せざることあらざるなり。
侍中【じちゅう】、文書の発行をつかさどる尚書【しょうしょ】や、長史【ちょうし】﹑参軍【さんぐん】は、此れ悉く貞良 死節の臣にして、
願わくは陛下は之に親しみ之を信じ、則ち漢室の隆【さかん】なるを、日に計りて待つべきなり。


(現代語訳)
先帝(劉備)がご存命の時、常に私と次の事を議論している。
まず、後漢の国家を衰えさせ痛恨の極みである桓帝と霊帝の時代を嘆いていた。
侍中や、中央官庁の長官である尚書や、宰相の次官である長史や、軍の相談に当たる役人の参軍の者たちは、彼等はすべて志がまっすぐですぐれたもの、大義のためには命を惜しまない家臣たちを配する事である。
陛下にはその者たちと親しまれ、信頼されること。それによって漢の王室が栄えること。日々計画的にすること、そうしてその結果を待つようにすることを願うのです。


(訳注) #4
先帝在時,每與臣論此事,
先帝(劉備)がご存命の時、常に私と次の事を議論している。


未嘗不嘆息痛恨於桓、靈也!
まず、後漢の国家を衰えさせ痛恨の極みである桓帝と霊帝の時代を嘆いていた。


侍中、尚書、長史、參軍,此悉貞亮死節之臣也,
侍中や、中央官庁の長官である尚書や、宰相の次官である長史や、軍の相談に当たる役人の参軍の者たちは、彼等はすべて志がまっすぐですぐれたもの、大義のためには命を惜しまない家臣たちを配する事である。
尚書 中央官庁の役人。尚書省(しょうしょしょう)とは、中国で後漢代から元代まで存在した省。唐の三省六部体制の元で中書省・門下省の取り決めた事を六部に伝える役割を果たした。前漢代には尚書は少府(皇帝の私的財産を扱う部署)に属し、上奏を取り扱う役職であった。皇帝に対し何らかの上奏を行いたいと思う者は正副二つの上表書を尚書に提出し、尚書は副の方を閲覧し、それが良くないと思えばこれを皇帝には上奏しないということが出来た。つまり上奏を皇帝に見せるか否かは尚書が決定するということであり、そのため絶大な権限を誇った。宣帝の時代、これを憂慮した魏相はこうした故事は皇帝の耳目を塞ぐものであるとして廃止するように求め、宣帝は魏相を給事中に任じた上で、この故事を廃止させた(『漢書』魏相伝)。
長史 宰相の輔佐をする次官。長史という職権、職責の重さがあまりよく知られてないので、楊儀がその職にあって諸葛孔明に全幅の信頼を寄せられた。
参軍 軍事の相談に当たる役人。参軍と言う職は軍事アドバイザーであるが、軍を統率する司令官が参軍の言うことを無視すればそれだけの職であり、司令官の罪に連座させる諸葛亮の意図を図りかねる。三国志の著者・陳寿の父も馬謖の参軍と言うことでコン刑(屈辱刑であり、五体を損ねる肉刑に次ぐ重刑、降格とは比べものにならない)を受けたのだ。総司令官である諸葛亮も丞相から右将軍に降格し、諸将に詫びている。
貞良 志がまっすぐですぐれていること。
死節 大義のために死ぬ。


願陛下親之、信之,則漢室之隆,可計日而待也。
陛下にはその者たちと親しまれ、信頼されること。それによって漢の王室が栄えること。日々計画的にすること、そうしてその結果を待つようにすることを願うのです。