張衡《西京賦》(11) 水草は火をさけるという藻草模様の組天井は、蓮の茎をならべつらなり、さかさに紅の花びらがかさなり合って開いている。模様を施した榱と、玉壁で飾る木頭の壁とは美しくよそおわれ、日の光はきらきら輝きわたる。彫刻した磨き丸柱には、美玉の礎石、絵ぎぬの斗拱には、雲気模様の楣【はり】がある。宮殿前の南面の三つの階と二重の軒は、ちりばめた欄干と、飾り模様の橋がある。
張平子(張衡)《西京賦》(11)#4-2 文選 賦<114―(11)>31分割68回 Ⅱ李白に影響を与えた詩1048 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3788
(宮殿の造営)
(10)#4―1
乃覽秦制,跨周法,
(宮殿の造営) かくして、秦の造営法に着目し、周の古法をしのぐ計画をたてる。
狹百堵之側陋,增九筵之迫脅。
周の宣王の百堵の牆で囲まれた宮室も、狭苦しいからといって取りあげはしない、九筵を基準とする周の明堂も、狭隘だからとて拡張することとした。
正紫宮於未央,表嶢闕於閶闔。
星座紫微宮にかたどり、未央宮の位置を正しく定め、高楼の門橋を、紫徴宮の天門、閶闔にかたどって、宮殿の目標とした。
疏龍首以抗殿,狀巍峩以岌嶪。
龍首の山を切り開いて、その正殿を高々と造る。その姿は、山のごとくそびえてたくましい。
亙雄虹之長梁,結棼橑以相接。
殿内は、色鮮やかな長い虹梁が、かけわたされ、二重屋根の、棟木と榱木がかみあって、たがいに交錯する。
(11)#4―2
蔕倒茄於藻井,披紅葩之狎獵。
水草は火をさけるという藻草模様の組天井は、蓮の茎をならべつらなり、さかさに紅の花びらがかさなり合って開いている。
飾華榱與璧璫,流景曜之韡曄。
模様を施した榱と、玉壁で飾る木頭の壁とは美しくよそおわれ、日の光はきらきら輝きわたる。
雕楹玉磶,繡栭雲楣。
彫刻した磨き丸柱には、美玉の礎石、絵ぎぬの斗拱には、雲気模様の楣【はり】がある。
三階重軒,鏤檻文㮰。
宮殿前の南面の三つの階と二重の軒は、ちりばめた欄干と、飾り模様の橋がある。
右平左墄,青瑣丹墀。
階の右側は平らかにならした車道があり、左側は階段になった人道がある。これを上れば、青色の鎖模様の窓と、朱丹の漆を塗る石畳がある。
刊層平堂,設切厓隒。
それに、層をなす山をけずり、高いところを地ならしして、縁に砌を設けてある。
(12)#4―3
坻崿鱗眴,棧齴巉嶮。
襄岸夷塗,脩路陖險。
重門襲固,姦宄是防。
仰福帝居,陽曜陰藏。
洪鐘萬鈞,猛虡趪趪。
負筍業而餘怒,乃奮翅而騰驤。
(10)#4―1
乃ち秦制を覽,周法を跨える。
百堵の側陋【そくろう】を狹しとし,九筵の迫脅を增す。
紫宮を未央に正し,嶢闕【ぎょうけつ】を閶闔【しょうこう】に表す。
龍首を疏して以て殿を抗げ,狀【かたち】巍峩【かいが】として以て岌嶪【きゅうぎょう】たり。
雄虹の長梁を亙【わた】し,棼橑【ふんりょう】を結んで以て相い接【う】く。
(11)#4―2
倒茄【とうか】を藻井【そうせい】に蔕し,紅葩【こうは】の狎獵【こうりょう】たるを披く。
華榱【かすい】と璧璫とを飾り,景曜の韡曄【けいよう】なるを流す。
雕楹【ちょうえい】玉磶【ぎょくせき】,繡栭【しゅうじ】雲楣【うんぴ】あり。
三階 重軒,鏤檻【ろうかん】文㮰【ぶんぴ】あり。
右は平 左は墄【しょく】,青瑣【せいさ】丹墀【たんち】あり。
層【かさな】れるを刊【けず】り 堂を平げ,切【ぜい】を厓隒【がいけん】に設ける。
(12)#4―3
坻崿【ちがく】鱗眴【りんじゅん】として,棧齴【ざんげん】巉嶮【ざんけん】なり。
襄岸【じょうがん】夷塗【いと】,脩路【しゅうろ】險に陖【のぼ】る。
重門 襲【かさな】り固く,姦宄【かんき】を是れ防ぐ。
仰げば帝居に福【おな】じく,陽には曜【ひか】り陰には藏【かく】る。
洪鐘【こうしょう】萬鈞【ばんきん】,猛虡【もうきょく】趪趪【こうこう】たり。
筍業を負いて餘怒し,乃ち翅を奮って騰驤【とうじょう】す。
『西京賦』 現代語訳と訳註
(本文)
(11)#4―2
蔕倒茄於藻井,披紅葩之狎獵。
飾華榱與璧璫,流景曜之韡曄。
雕楹玉磶,繡栭雲楣。
三階重軒,鏤檻文㮰。
右平左墄,青瑣丹墀。
刊層平堂,設切厓隒。
(下し文)
(11)#4―2
倒茄【とうか】を藻井【そうせい】に蔕し,紅葩【こうは】の狎獵【こうりょう】たるを披く。
華榱【かすい】と璧璫とを飾り,景曜の韡曄【けいよう】なるを流す。
雕楹【ちょうえい】玉磶【ぎょくせき】,繡栭【しゅうじ】雲楣【うんぴ】あり。
三階 重軒,鏤檻【ろうかん】文㮰【ぶんぴ】あり。
右は平 左は墄【しょく】,青瑣【せいさ】丹墀【たんち】あり。
層【かさな】れるを刊【けず】り 堂を平げ,切【ぜい】を厓隒【がいけん】に設ける。
(現代語訳)
水草は火をさけるという藻草模様の組天井は、蓮の茎をならべつらなり、さかさに紅の花びらがかさなり合って開いている。
模様を施した榱と、玉壁で飾る木頭の壁とは美しくよそおわれ、日の光はきらきら輝きわたる。
彫刻した磨き丸柱には、美玉の礎石、絵ぎぬの斗拱には、雲気模様の楣【はり】がある。
宮殿前の南面の三つの階と二重の軒は、ちりばめた欄干と、飾り模様の橋がある。
階の右側は平らかにならした車道があり、左側は階段になった人道がある。これを上れば、青色の鎖模様の窓と、朱丹の漆を塗る石畳がある。
それに、層をなす山をけずり、高いところを地ならしして、縁に砌を設けてある。
(訳注)
(11)#4―2
蔕倒茄於藻井,披紅葩之狎獵。
水草は火をさけるという藻草模様の組天井は、蓮の茎をならべつらなり、さかさに紅の花びらがかさなり合って開いている。
○蔕 蓮の茎をならべる。
○倒茄 さかさの蓮の垂。
○藻井 水草模様を画く組天井。水草は火をさけるというので描く。
○紅葩 紅い花びら。
○狎獵 重なり接する。
飾華榱與璧璫,流景曜之韡曄。
模様を施した榱と、玉壁で飾る木頭の壁とは美しくよそおわれ、日の光はきらきら輝きわたる。
○華榱 装飾模様の桷(方形)。
○璧璫 玉壁で飾る木頭。
○景曜 日の光。
○韡曄 かがやくさま。
雕楹玉磶,繡栭雲楣。
彫刻した磨き丸柱には、美玉の礎石、絵ぎぬの斗拱には、雲気模様の楣【はり】がある。
○雕楹 彫刻琢磨した柱。
○玉磶 柱の下のいしずえが玉になっているもの。
○繡栭 えぎぬを施した斗拱。
○雲楣 雲気紋のはり。
三階重軒,鏤檻文㮰。
宮殿前の南面の三つの階と二重の軒は、ちりばめた欄干と、飾り模様の橋がある。
○三階 未央宮の南面に、三だんになった階がある。「西都の賦」に「重軒三階」とある。
○重軒 重なった軒(てすり)。
○鏤檻 彫刻した欄干。
○文㮰 㮰はたるきのほしにさしわたした横木。瓦をうける。
右平左墄,青瑣丹墀。
階の右側は平らかにならした車道があり、左側は階段になった人道がある。これを上れば、青色の鎖模様の窓と、朱丹の漆を塗る石畳がある。
○右平左墄 平は化粧瓦などで平らかにする。乗車用。城は階段をなすきざはし。人道用。
○青瑣 青色で、宮門の戸にくさり模様を画いたものをいう。『漢書』に「赤堀青墳」(元后伝)とある。顔師古の注に「刻して環文を為りて青く之を塗る」とある。
○丹墀 丹の漆で塗った階前の庭。宮殿の階上の、朱で土地を赤ぬりこめた庭。
刊層平堂,設切厓隒。
それに、層をなす山をけずり、高いところを地ならしして、縁に砌を設けてある。
○刊層平堂 刊は削る。層は重なった地層。堂は高いところ。
○切 砌、敷き瓦の階段。



