張衡《西京賦》(12) 楼門は幾重にも固められ、姦賊の侵入を防ぐ。宮殿を仰ぎ見れば、天帝のおいでます所と同じく、日が照ればひかりかがやき、日が曇れば姿を隠す。その宮殿には、巨大な鐘があり重さ二手万斤、大鐘につり合うよう怒った神獣の鐘かけ台の柎となる猛獣は、威勢よく力みかえっている。鐘の掛ける横木と、彫物の大板とを背負っても、なお力があまり勇みたち、両翼をふるい首をもたげて飛びあがる。
張平子(張衡)《西京賦》(12)#4-3 文選 賦<114―(12)>31分割68回 Ⅱ李白に影響を与えた詩1049 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3793
(10)#4―1
乃覽秦制,跨周法,
(宮殿の造営) かくして、秦の造営法に着目し、周の古法をしのぐ計画をたてる。
狹百堵之側陋,增九筵之迫脅。
周の宣王の百堵の牆で囲まれた宮室も、狭苦しいからといって取りあげはしない、九筵を基準とする周の明堂も、狭隘だからとて拡張することとした。
正紫宮於未央,表嶢闕於閶闔。
星座紫微宮にかたどり、未央宮の位置を正しく定め、高楼の門橋を、紫徴宮の天門、閶闔にかたどって、宮殿の目標とした。
疏龍首以抗殿,狀巍峩以岌嶪。
龍首の山を切り開いて、その正殿を高々と造る。その姿は、山のごとくそびえてたくましい。
亙雄虹之長梁,結棼橑以相接。
殿内は、色鮮やかな長い虹梁が、かけわたされ、二重屋根の、棟木と榱木がかみあって、たがいに交錯する。
(11)#4―2
蔕倒茄於藻井,披紅葩之狎獵。
水草は火をさけるという藻草模様の組天井は、蓮の茎をならべつらなり、さかさに紅の花びらがかさなり合って開いている。
飾華榱與璧璫,流景曜之韡曄。
模様を施した榱と、玉壁で飾る木頭の壁とは美しくよそおわれ、日の光はきらきら輝きわたる。
雕楹玉磶,繡栭雲楣。
彫刻した磨き丸柱には、美玉の礎石、絵ぎぬの斗拱には、雲気模様の楣【はり】がある。
三階重軒,鏤檻文㮰。
宮殿前の南面の三つの階と二重の軒は、ちりばめた欄干と、飾り模様の橋がある。
右平左墄,青瑣丹墀。
階の右側は平らかにならした車道があり、左側は階段になった人道がある。これを上れば、青色の鎖模様の窓と、朱丹の漆を塗る石畳がある。
刊層平堂,設切厓隒。
それに、層をなす山をけずり、高いところを地ならしして、縁に砌を設けてある。
(12)#4―3
坻崿鱗眴,棧齴巉嶮。
宮殿に通ずる階段が、歯のならんだようながけのような形でつらなっている。見上げれは、高峻で今にも崩れそうなほどです。
襄岸夷塗,脩路陖險。
その殿階は高いけれど路は平らかであって、この長い路は危険なところに向かってのぼる。
重門襲固,姦宄是防。
楼門は幾重にも固められ、姦賊の侵入を防ぐ。
仰福帝居,陽曜陰藏。
宮殿を仰ぎ見れば、天帝のおいでます所と同じく、日が照ればひかりかがやき、日が曇れば姿を隠す。
洪鐘萬鈞,猛虡趪趪。
その宮殿には、巨大な鐘があり重さ二手万斤、大鐘につり合うよう怒った神獣の鐘かけ台の柎となる猛獣は、威勢よく力みかえっている。
負筍業而餘怒,乃奮翅而騰驤。
鐘の掛ける横木と、彫物の大板とを背負っても、なお力があまり勇みたち、両翼をふるい首をもたげて飛びあがる。
(10)#4―1
乃ち秦制を覽,周法を跨える。
百堵の側陋【そくろう】を狹しとし,九筵の迫脅を增す。
紫宮を未央に正し,嶢闕【ぎょうけつ】を閶闔【しょうこう】に表す。
龍首を疏して以て殿を抗げ,狀【かたち】巍峩【かいが】として以て岌嶪【きゅうぎょう】たり。
雄虹の長梁を亙【わた】し,棼橑【ふんりょう】を結んで以て相い接【う】く。
(11)#4―2
倒茄【とうか】を藻井【そうせい】に蔕し,紅葩【こうは】の狎獵【こうりょう】たるを披く。
華榱【かすい】と璧璫とを飾り,景曜の韡曄【けいよう】なるを流す。
雕楹【ちょうえい】玉磶【ぎょくせき】,繡栭【しゅうじ】雲楣【うんぴ】あり。
三階 重軒,鏤檻【ろうかん】文㮰【ぶんぴ】あり。
右は平 左は墄【しょく】,青瑣【せいさ】丹墀【たんち】あり。
層【かさな】れるを刊【けず】り 堂を平げ,切【ぜい】を厓隒【がいけん】に設ける。
(12)#4―3
坻崿【ちがく】鱗眴【りんじゅん】として,棧齴【ざんげん】巉嶮【ざんけん】なり。
襄岸【じょうがん】夷塗【いと】,脩路【しゅうろ】險に陖【のぼ】る。
重門 襲【かさな】り固く,姦宄【かんき】を是れ防ぐ。
仰げば帝居に福【おな】じく,陽には曜【ひか】り陰には藏【かく】る。
洪鐘【こうしょう】萬鈞【ばんきん】,猛虡【もうきょく】趪趪【こうこう】たり。
筍業を負いて餘怒し,乃ち翅を奮って騰驤【とうじょう】す。
『西京賦』 現代語訳と訳註
(本文) (12)#4―3
坻崿鱗眴,棧齴巉嶮。
襄岸夷塗,脩路陖險。
重門襲固,姦宄是防。
仰福帝居,陽曜陰藏。
洪鐘萬鈞,猛虡趪趪。
負筍業而餘怒,乃奮翅而騰驤。
(下し文)(12)#4―3
坻崿【ちがく】鱗眴【りんじゅん】として,棧齴【ざんげん】巉嶮【ざんけん】なり。
襄岸【じょうがん】夷塗【いと】,脩路【しゅうろ】險に陖【のぼ】る。
重門 襲【かさな】り固く,姦宄【かんき】を是れ防ぐ。
仰げば帝居に福【おな】じく,陽には曜【ひか】り陰には藏【かく】る。
洪鐘【こうしょう】萬鈞【ばんきん】,猛虡【もうきょく】趪趪【こうこう】たり。
筍業を負いて餘怒し,乃ち翅を奮って騰驤【とうじょう】す。
(現代語訳)
宮殿に通ずる階段が、歯のならんだようながけのような形でつらなっている。見上げれは、高峻で今にも崩れそうなほどです。
その殿階は高いけれど路は平らかであって、この長い路は危険なところに向かってのぼる。
楼門は幾重にも固められ、姦賊の侵入を防ぐ。
宮殿を仰ぎ見れば、天帝のおいでます所と同じく、日が照ればひかりかがやき、日が曇れば姿を隠す。
その宮殿には、巨大な鐘があり重さ二手万斤、大鐘につり合うよう怒った神獣の鐘かけ台の柎となる猛獣は、威勢よく力みかえっている。
鐘の掛ける横木と、彫物の大板とを背負っても、なお力があまり勇みたち、両翼をふるい首をもたげて飛びあがる。
(訳注) (12)#4―3
坻崿鱗眴,棧齴巉嶮。
宮殿に通ずる階段が、歯のならんだようながけのような形でつらなっている。見上げれは、高峻で今にも崩れそうなほどです。
○坻崿 塩は宮殿の基礎、『広雅』に「除」(階段)の意あり。未央宮は龍首山にあれば、その宮殿に至るまで階段がある。崿は隆起するさま。
○鱗眴 宮殿に至る段々が上へ高々と並んでいるさま。
○棧齴 棧は高いさま。齴は歯の露出するさま。高々と歯をむきだしているような形をいう。
○棧齴 高峻なさま。
襄岸夷塗,脩路陖險。
その殿階は高いけれど路は平らかであって、この長い路は危険なところに向かってのぼる。
○襄岸 嚢は高の意。岸はここは殿階。
○夷塗 平らかな路。
○脩路陖險 慨は長い。峻は山勢が直立する。のぼる。
重門襲固,姦宄是防。
楼門は幾重にも固められ、姦賊の侵入を防ぐ。
○重門 層をなす門。
○襲固 襲は重ねる。厳重に固める。
○姦宄 二字意同じ。悪徒。分けると内に在るを姦、外に在るを宄という。
仰福帝居,陽曜陰藏。
宮殿を仰ぎ見れば、天帝のおいでます所と同じく、日が照ればひかりかがやき、日が曇れば姿を隠す。
○福 同じ。
洪鐘萬鈞,猛虡趪趪。
その宮殿には、巨大な鐘があり重さ二手万斤、大鐘につり合うよう怒った神獣の鐘かけ台の柎となる猛獣は、威勢よく力みかえっている。
○洪鐘 大鐘。
○鈞 三十斤を鈞という(『説苑』弁物篇)。
○猛虞 猛は怒るさま。虞は鐘かけ台のたてはしらの柎(うてな)。神獣の猛獣をここに刻んで装飾とする。『漢書』の郊祀志には羽のある銅人もある。また『後漢書』には、鹿頭龍身の神獣の銅製がある。大鐘につり合うよう怒った神獣の鐘かけ台が作ってある。
負筍業而餘怒,乃奮翅而騰驤。
鐘の掛ける横木と、彫物の大板とを背負っても、なお力があまり勇みたち、両翼をふるい首をもたげて飛びあがる。
○筍 鐘をかける横木。
○業 板、鐘をかける横木をおおう飾り板。




