張衡《西京賦》(20) (甘泉官)そもそも、帝王の宮殿は神々しく美麗であるとも、尊卑の別が区別できないと気づかわれる。この宮殿は壮大に建てられているとはいうものの、天子の心は満足なされたようで晴れやかではない。天帝の御殿の紫微官という星に象る宮殿の造営を思案されたが、恨むらくは、それにふさわしい始皇帝の宮殿である阿房官はすでになく、つかいものにならないのである。

2014年3月3日の紀頌之5つのブログ
●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩六朝謝朓・庾信 後世に多大影響を揚雄・司馬相如・潘岳・王粲.鮑照らの「賦」、その後に李白再登場
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩
 
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●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
Ⅱ中唐詩・晩唐詩
 
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●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
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(20) (甘泉官)#9-1

惟帝王之神麗,懼尊卑之不殊。

(甘泉官) そもそも、帝王の宮殿は神々しく美麗であるとも、尊卑の別が区別できないと気づかわれる。

雖斯宇之既坦,心猶憑而未攄。

この宮殿は壮大に建てられているとはいうものの、天子の心は満足なされたようで晴れやかではない。

思比象於紫微,恨阿房之不可廬。

天帝の御殿の紫微官という星に象る宮殿の造営を思案されたが、恨むらくは、それにふさわしい始皇帝の宮殿である阿房官はすでになく、つかいものにならないのである。

覛往昔之遺館,獲林光於秦餘。

そこで、昔の今に残る離宮をつらつら見て、秦の離宮で残存の林光宮を見つけられた。

處甘泉之爽塏,乃隆崇而弘敷。

それは、甘泉山の爽やかな乾燥した高台にあるばかりか、高くもりあがり一面に広がる壮大な宮殿である。

 (21)#9-2

既新作於迎風,增露寒與儲胥。

託喬基於山岡,直霓以高居。

通天訬以竦峙,徑百常而莖擢。

華以交紛,下刻陗其若削。

翔鶤仰而不逮,況青鳥與黃雀。

伏櫺檻而頫聽,聞雷霆之相激。

 

惟れ帝王の神麗なる,尊卑の殊ならざるとを懼る。

斯の宇 既に坦【おおい】なりと雖も,心 猶お憑【み】ちて未だ攄【の】びず。

象を紫微に比せんことを思い,阿房の廬【お】る可からざるを恨む。

往昔【おうせき】の遺館を覛【み】て,林光を秦餘【しんよ】に獲る。

甘泉の爽塏【そうがい】に處【お】り,乃ち隆崇にして弘敷【こうふ】す。

 

既に新たに迎風を作り,露寒と儲胥【ちょしょ】とを增す。

喬基【きょうき】を山岡に託し,直ちに【てつげい】として以って高く居る。

通天訬【びょう】として以って竦峙【しょうじ】し,百常を徑【わた】りて莖【ひとり】擢【ぬき】んでる。

上は【はんか】して以て交紛し,下は刻陗【こくしょう】にして其れ削れるが若し。

翔鶤 仰げども逮【およ】ばず,況んや青鳥と黃雀とをや。

櫺檻【れいかん】に伏【よ】りて頫【ふ】して聽けば,雷霆【らいてい】の相い激するを聞く。

幻日環01 

 

『西京賦』 現代語訳と訳註

(本文)

(20) (甘泉官)#9-1

惟帝王之神麗,懼尊卑之不殊。

雖斯宇之既坦,心猶憑而未攄。

思比象於紫微,恨阿房之不可廬。

覛往昔之遺館,獲林光於秦餘。

處甘泉之爽塏,乃隆崇而弘敷。

 

(下し文)

惟れ帝王の神麗なる,尊卑の殊ならざるとを懼る。

斯の宇 既に坦【おおい】なりと雖も,心 猶お憑【み】ちて未だ攄【の】びず。

象を紫微に比せんことを思い,阿房の廬【お】る可からざるを恨む。

往昔【おうせき】の遺館を覛【み】て,林光を秦餘【しんよ】に獲る。

甘泉の爽塏【そうがい】に處【お】り,乃ち隆崇にして弘敷【こうふ】す。

 

(現代語訳)

(甘泉官) そもそも、帝王の宮殿は神々しく美麗であるとも、尊卑の別が区別できないと気づかわれる。

この宮殿は壮大に建てられているとはいうものの、天子の心は満足なされたようで晴れやかではない。

天帝の御殿の紫微官という星に象る宮殿の造営を思案されたが、恨むらくは、それにふさわしい始皇帝の宮殿である阿房官はすでになく、つかいものにならないのである。

そこで、昔の今に残る離宮をつらつら見て、秦の離宮で残存の林光宮を見つけられた。

それは、甘泉山の爽やかな乾燥した高台にあるばかりか、高くもりあがり一面に広がる壮大な宮殿である。

函谷関長安地図座標005 

(訳注) (20) (甘泉官)#9-1

惟帝王之神麗,懼尊卑之不殊。

(甘泉官) そもそも、帝王の宮殿は神々しく美麗であるとも、尊卑の別が区別できないと気づかわれる。

神麗 班固「東都賦」に「園庭神尾」とある。美麗の意。

 

雖斯宇之既坦,心猶憑而未攄。

この宮殿は壮大に建てられているとはいうものの、天子の心は満足なされたようで晴れやかではない。

憑 満つ。胸いっぱい。

攄 舒(の)ぶ、ふるいのはす。意思を外に表す。

 

思比象於紫微,恨阿房之不可廬。

天帝の御殿の紫微官という星に象る宮殿の造営を思案されたが、恨むらくは、それにふさわしい始皇帝の宮殿である阿房官はすでになく、つかいものにならないのである。

紫微 星座の名。天帝の住居。

阿房 秦の始皇帝の宮殿の名。項羽これを焼く。三か月も燃え続ける。始皇帝の三十五年、渭南の上林苑中に造り、まず前段の阿房宮を作る、東西五百歩、南北五十丈、殿上は万人が坐れ、殿下は五丈の旗が立ち、宮外は四方閣道をめぐらし、殿下より南山に至り、南山の頂上に宮闕をつくり、また複道をつくり、阿房宮より渭水を渡ることができた(『史記』による)。阿とは四方のひさし。房とはそれが広いことから家の形に名づけたといい、また阿は近い、房は旁の意あれば、咸陽陽の都の近傍ということから名づけたともいう。

廬 居る。

 

覛往昔之遺館,獲林光於秦餘。

そこで、昔の今に残る離宮をつらつら見て、秦の離宮で残存の林光宮を見つけられた。

覛 視る。

林光 秦の離宮の名。甘泉山にあり。成帝の時宮門に落雷し燃ゆ(『漢書』の郊祀志)。

秦餘 秦の残存する建物。

 

處甘泉之爽塏,乃隆崇而弘敷。

それは、甘泉山の爽やかな乾燥した高台にあるばかりか、高くもりあがり一面に広がる壮大な宮殿である。

甘泉 長安の西北にある山の名。甘泉がわく。漢の武帝の元封二年、林光宮のそばに甘泉宮を造る。

爽塏 乾燥した高いところ。

降崇 高いさま。

弘敷 延蔓、のびて続くさま。林光官は周囲十余里とある。
長安付近図00