李白  獨不見  #1

白馬誰家子,黃龍邊塞兒。天山三丈雪,豈是遠行時。

春蕙忽秋草,莎雞鳴西池。

(思う人に逢えず、ひとりで空閏を守って居る意味を、女性の言葉で述べたので、李白も、亦た古辭の語意をとって、この一首を作ったのである。)

白馬に跨り、意気揚揚として、邊塞に出かけた彼の人は、今や契丹と対陣している北方の辺境地域の黄龍塞というところに駐屯して居るとのことである。その地は、匈奴に接し、天山山脈といふ高い山々があって、その山頂には三丈の雪が常に積って居るそうで、とても行かれないというのを、無理に、険を冒して遠く従ったのである。さて一度、良人に別れた後は、いつまで待てども、帰って来ることはなく、春、蘭恵が香をはっすると思って居る内に、忽ち変じて秋草の荒蕪となり、その秋草の間なる曲地の傍には、キリギリスの鳴き聲がする。

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年:743年天寶二年43歳 94-23

卷別:  卷一六三        文體:  樂府

詩題:  獨不見

作地點:        長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)

及地點:黃龍城 (河北道北部 營州 柳城)    

天山 (隴右道西部 無第二級行政層級 天山) 別名:雪山       

 

 

獨不見  #1

(思う人に逢えず、ひとりで空閏を守って居る意味を、女性の言葉で述べたので、李白も、亦た古辭の語意をとって、この一首を作ったのである。)

白馬誰家子,黃龍邊塞兒。

白馬に跨り、意気揚揚として、邊塞に出かけた彼の人は、今や契丹と対陣している北方の辺境地域の黄龍塞というところに駐屯して居るとのことである。

天山三丈雪,豈是遠行時。

その地は、匈奴に接し、天山山脈といふ高い山々があって、その山頂には三丈の雪が常に積って居るそうで、とても行かれないというのを、無理に、険を冒して遠く従ったのである。

春蕙忽秋草,莎雞鳴西池。

さて一度、良人に別れた後は、いつまで待てども、帰って来ることはなく、春、蘭恵が香をはっすると思って居る内に、忽ち変じて秋草の荒蕪となり、その秋草の間なる曲地の傍には、キリギリスの鳴き聲がする。

#2

風摧寒棕響,月入霜閨悲。

憶與君別年,種桃齊蛾眉。

桃今百餘尺,花落成枯枝。

終然獨不見,流淚空自知。

獨り見えず

白馬たが家の子ぞ、 黄龍辺塞の児。
天山三丈の雪、あにこれ遠行の時ならんや。
春蕙たちまちに秋草 莎雞(さけい) 西池に鳴く。
風は寒棕(かんそう)を摧(くだ)いて響き、月は霜閨に入って悲しむ。
憶ふ君と別るるの年、桃を種ゑて蛾眉に斉し。
桃いま百余尺、花落ちて枯枝と成る。
終然としてひとり見えず、流涙むなしくみづから知る。

 

 

現代語訳と訳註
(
本文)

獨不見

白馬誰家子。 黃龍邊塞兒。 
天山三丈雪。 豈是遠行時。 
春蕙忽秋草。 莎雞鳴曲池。

 

詩文(含異文)  白馬誰家子,黃龍邊塞兒。天山三丈雪,豈是遠行時。春蕙忽秋草,莎雞鳴西池【莎雞鳴曲池】。風摧寒棕響【風摧寒梭響】,月入霜閨悲。憶與君別年,種桃齊蛾眉。桃今百餘尺,花落成枯枝。終然獨不見,流淚空自知。

 

(下し文)
獨り見えず

白馬たが家の子ぞ、 黄龍辺塞の児。
天山三丈の雪、あにこれ遠行の時ならんや。
春蕙たちまちに秋草 莎雞(さけい) 西池に鳴く。
風は寒棕(かんそう)を摧(くだ)いて響き、月は霜閨に入って悲しむ。
憶ふ君と別るるの年、桃を種ゑて蛾眉に斉し。
桃いま百余尺、花落ちて枯枝と成る。
終然としてひとり見えず、流涙むなしくみづから知る。


(現代語訳)
(思う人に逢えず、ひとりで空閏を守って居る意味を、女性の言葉で述べたので、李白も、亦た古辭の語意をとって、この一首を作ったのである。)

白馬に跨り、意気揚揚として、邊塞に出かけた彼の人は、今や契丹と対陣している北方の辺境地域の黄龍塞というところに駐屯して居るとのことである。

その地は、匈奴に接し、天山山脈といふ高い山々があって、その山頂には三丈の雪が常に積って居るそうで、とても行かれないというのを、無理に、険を冒して遠く従ったのである。

さて一度、良人に別れた後は、いつまで待てども、帰って来ることはなく、春、蘭恵が香をはっすると思って居る内に、忽ち変じて秋草の荒蕪となり、その秋草の間なる曲地の傍には、キリギリスの鳴き聲がする。

 

(訳注)
獨不見

(思う人に逢えず、ひとりで空閏を守って居る意味を、女性の言葉で述べたので、李白も、亦た古辭の語意をとって、この一首を作ったのである。)

楽府古題要解に「獨不見」は、「思うて見るを得ざるを言ふなり」とあり、胡震亨は「梁の柳惲の本辭、「奉帚長信宮、誰知獨不見」とあり、「唐人、擬するもの多く、《獨不見》の

三字を用ふ」といって居る。

 

白馬誰家子、黄龍邊塞兒。
白馬に跨り、意気揚揚として、邊塞に出かけた彼の人は、今や契丹と対陣している北方の辺境地域の黄龍塞というところに駐屯して居るとのことである。

黄龍 水經註「白狼水北逕白狼縣故城東,王莽更名伏狄。」契丹との対陣の地。750年以降、安禄山の軍内に契丹軍が入り込んでいた。753年安禄山は契丹を破り契丹内の奚という国の軍を完全支配かにおく。755年の叛乱時は重要な一翼を担った。

邊塞 国境の塞


天山三丈雪、豈是遠行時。
その地は、匈奴に接し、天山山脈といふ高い山々があって、その山頂には三丈の雪が常に積って居るそうで、とても行かれないというのを、無理に、険を冒して遠く従ったのである。

天山 天山山脈、匈奴中の山で、匈奴では白山といい、白山しんこうの家減の山である。古名白山,又名雪山,冬夏つうじて雪が有る。故名,匈奴謂之天山,唐の時、又、折羅漫山と名づく。

遠行 敵地の奥に攻め入ること


春蕙忽秋草、莎雞鳴西池。
さて一度、良人に別れた後は、いつまで待てども、帰って来ることはなく、春、蘭恵が香をはっすると思って居る内に、忽ち変じて秋草の荒蕪となり、その秋草の間なる曲地の傍には、キリギリスの鳴き聲がする。

莎雞 きりぎりす。

春蕙 春咲く蘭の花、