古風,五十九首之二十二
秦水別隴首,幽咽多悲聲。胡馬顧朔雪,躞蹀長嘶鳴。
感物動我心,緬然含歸情。昔視秋蛾飛,今見春蠶生。
(此の詩は別れの時の詩、長安を去るものの情思纏綿たることを詠ったもの。) 長安を旅立つものは東流する秦水がやがて隴山に別れを告げるために、ひとしれずむせび泣き嗚咽して悲しい声を発てて流れてゆく。胡地の馬がその地を去るときに、は故郷の朔地の山に積もった雪の向こうを振り向いて長く嘶いて、馬に付けた鈴や玉を鳴らして、故郷に別れを告げるのである。此処に、外界の景色を見るにつけて、詩人としての私の心を動かした、わかれにはいろんな思いにふけるものである、これから先の旅路のはるか遠くのことを考えると長安を旅立つというのではなくはやくこの故郷に帰ってきたいと思う気持ちの方が強いものである。先に、家を出るとき、秋の蛾が飛んでいたが、何時しか冬を過ぎたが、いまはどうだろう、もう、春の蚕が生まれていることだろう。
李太白集巻一22 |
古風,五十九首之二十二 |
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Index-24 |
744年天寶三年44歳 |
56首-(4) |
418 <1000> |
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index-23Ⅲ-1 744年天寶三年44歳-4 古風,五十九首之二十二(世道日交喪)
作時年: |
744年 |
天寶三年 |
44歲 |
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全唐詩卷別: |
卷一六一 1-22 |
文體: |
五言古詩 |
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李太白集 |
巻01-22 |
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詩題: |
古風,五十九首之二十二 |
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序文 |
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作地點: |
長安 |
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及地點: |
臨淄 (河南道 青州 臨淄) 別名:齊都 |
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華不注山 (河南道 齊州 華不注山) 別名:華不注峰 |
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交遊人物: |
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古風,五十九首之五
#1
太白何蒼蒼,星辰上森列。
去天三百里,邈爾與世絕。
中有綠髮翁,披雲卧松雪。
不笑亦不語,冥棲在岩穴。
#2
我來逢真人,長跪問寶訣。
粲然啟玉齒,授以練葯說。
銘骨傳其語,竦身已電滅。
仰望不可及,蒼然五情熱。
吾將營丹砂,永世與人別。
古風,五十九首之二十 #1
昔我遊齊都,登華不注峰。
茲山何峻秀,綠翠如芙蓉。
蕭颯古仙人,了知是赤松。
借予一白鹿,自挾兩青龍。
含笑凌倒景,欣然願相從。
#2
泣與親友別,欲語再三咽。
勗君青松心,努力保霜雪。
世路多險艱,白日欺紅顏。
分手各千里,去去何時還。
在世復幾時,倏如飄風度。
#3
空聞紫金經,白首愁相誤。
撫己忽自笑,沈吟為誰故。
名利徒煎熬,安得閒余步。
終留赤玉舄,東上蓬萊路。
秦帝如我求,蒼蒼但煙霧。
古風,五十九首之二十二
秦水別隴首,幽咽多悲聲。
胡馬顧朔雪,躞蹀長嘶鳴。
感物動我心,緬然含歸情。
#2
昔視秋蛾飛,今見春蠶生。
嫋嫋桑柘葉,萋萋柳垂榮。
急節謝流水,羈心搖懸旌。
揮涕且複去,惻愴何時平。
古風,五十九首之四十
鳳饑不啄粟,所食唯琅玕.焉能與群雞,刺蹙爭一餐。
朝鳴昆丘樹,夕飲砥柱湍。歸飛海路遠,獨宿天霜寒。
幸遇王子晉,結交青雲端。懷恩未得報,感別空長歎。
古風,五十九首之四十二
搖裔雙白鷗,鳴飛滄江流。宜與海人狎,豈伊雲鶴儔。
寄形宿沙月,沿芳戲春洲。吾亦洗心者,忘機從爾遊。
古風,五十九首之四十三
周穆八荒意,漢皇萬乘尊。淫樂心不極,雄豪安足論。
西海宴王母,北宮邀上元。瑤水聞遺歌,玉懷竟空言。
靈跡成蔓草,徒悲千載魂。
古風,五十九首之五十五
齊瑟彈東吟,秦弦弄西音。慷慨動顏魄,使人成荒淫。
彼美佞邪子,婉孌來相尋。一笑雙白璧,再歌千黃金。
珍色不貴道,詎惜飛光沉。安識紫霞客,瑤台鳴素琴。
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年: 744年 天寶三年 44歲
卷別: 卷一六一 文體: 五言古詩
詩題: 古風,五十九首之二十二
古風,五十九首之二十二
(此の詩は別れの時の詩、長安を去るものの情思纏綿たることを詠ったもの。)
秦水別隴首,幽咽多悲聲。
長安を旅立つものは東流する秦水がやがて隴山に別れを告げるために、ひとしれずむせび泣き嗚咽して悲しい声を発てて流れてゆく。
胡馬顧朔雪,躞蹀長嘶鳴。
胡地の馬がその地を去るときに、は故郷の朔地の山に積もった雪の向こうを振り向いて長く嘶いて、馬に付けた鈴や玉を鳴らして、故郷に別れを告げるのである。
感物動我心,緬然含歸情。
此処に、外界の景色を見るにつけて、詩人としての私の心を動かした、わかれにはいろんな思いにふけるものである、これから先の旅路のはるか遠くのことを考えると長安を旅立つというのではなくはやくこの故郷に帰ってきたいと思う気持ちの方が強いものである。
#2
昔視秋蛾飛,今見春蠶生。
先に、家を出るとき、秋の蛾が飛んでいたが、何時しか冬を過ぎたが、いまはどうだろう、もう、春の蚕が生まれていることだろう。
嫋嫋桑柘葉,萋萋柳垂榮。
それに、桑の葉は群がり生じて、しなやかにまとわりついているし、柳は見事に繁って、煙れる枝を垂れていることであろう。
急節謝流水,羈心搖懸旌。
時節は流れる水よりも早くながれ、わが旅人の心は旗のように揺れうごいて落ち気はしない。
揮涕且復去,惻愴何時平。
こうして、今、涙を払ってともかくもこの地を去って、旅を続けようとするので、愴然として心を傷ましめ、この重たく暗い思いは何時になったら平静になるのであろうか。
(古風,五十九首の二十二)
秦水【しんすい】 隴首【ろうしゅ】に別れ、幽咽【ゆうえつ】して悲声多し。
胡馬【こば】 朔雪【さくせつ】を顧み、躞蹀【しょうちょう】として長く嘶鳴【しめい】す。
物に感じて我が心を動かし、緬然【めんぜん】として帰情を含む。
#2
昔は視る 秋蛾【しゅうが】の飛ぶを、今は見る 春蚕【しゅんさん】の生ずるを。
嫋嫋【じょうじょう】として桑は葉を結び、萋萋【せいせい】として柳は栄を垂る。
急節 流水のごとく謝【さ】り、羇心【きしん】 懸旌【けんせい】を揺るがす。
涕を揮って且【しばら】く復(ま)た去り、惻愴【そくそう】
何【いず】れの時か平かならん。
『古風,五十九首之二十二』 現代語訳と訳註
(本文) 古風,五十九首之二十二
古風,五十九首之二十二
秦水別隴首,幽咽多悲聲。
胡馬顧朔雪,躞蹀長嘶鳴。
感物動我心,緬然含歸情。
#2
昔視秋蛾飛,今見春蠶生。
嫋嫋桑柘葉,萋萋柳垂榮。
急節謝流水,羈心搖懸旌。
揮涕且復去,惻愴何時平。
(下し文)
(古風,五十九首の二十二)
秦水【しんすい】 隴首【ろうしゅ】に別れ、幽咽【ゆうえつ】して悲声多し。
胡馬【こば】 朔雪【さくせつ】を顧み、躞蹀【しょうちょう】として長く嘶鳴【しめい】す。
物に感じて我が心を動かし、緬然【めんぜん】として帰情を含む。
#2
昔は視る 秋蛾【しゅうが】の飛ぶを、今は見る 春蚕【しゅんさん】の生ずるを。
嫋嫋【じょうじょう】として桑は葉を結び、萋萋【せいせい】として柳は栄を垂る。
急節 流水のごとく謝【さ】り、羇心【きしん】 懸旌【けんせい】を揺るがす。
涕を揮って且【しばら】く復(ま)た去り、惻愴【そくそう】 何【いず】れの時か平かならん。
(現代語訳)
(此の詩は別れの時の詩、長安を去るものの情思纏綿たることを詠ったもの。)
長安を旅立つものは東流する秦水がやがて隴山に別れを告げるために、ひとしれずむせび泣き嗚咽して悲しい声を発てて流れてゆく。
胡地の馬がその地を去るときに、は故郷の朔地の山に積もった雪の向こうを振り向いて長く嘶いて、馬に付けた鈴や玉を鳴らして、故郷に別れを告げるのである。
此処に、外界の景色を見るにつけて、詩人としての私の心を動かした、わかれにはいろんな思いにふけるものである、これから先の旅路のはるか遠くのことを考えると長安を旅立つというのではなくはやくこの故郷に帰ってきたいと思う気持ちの方が強いものである。
#2
先に、家を出るとき、秋の蛾が飛んでいたが、何時しか冬を過ぎたが、いまはどうだろう、もう、春の蚕が生まれていることだろう。
それに、桑の葉は群がり生じて、しなやかにまとわりついているし、柳は見事に繁って、煙れる枝を垂れていることであろう。
時節は流れる水よりも早くながれ、わが旅人の心は旗のように揺れうごいて落ち気はしない。
こうして、今、涙を払ってともかくもこの地を去って、旅を続けようとするので、愴然として心を傷ましめ、この重たく暗い思いは何時になったら平静になるのであろうか。
(訳注)
古風,五十九首之二十二
古風とは古体の詩というほどのことで、漢魏の間に完成した五言古詩の継承を目指すものである。諸篇は一時の作でなく、折にふれて作られた無題の詩を後から編集し、李白の生き方を述べたものである。
(此の詩は別れの時の詩、長安を去るものの情思纏綿たることを詠ったもの。)
秦水別隴首。 幽咽多悲聲。
長安を旅立つものは東流する秦水がやがて隴山に別れを告げるために、ひとしれずむせび泣き嗚咽して悲しい声を発てて流れてゆく。
1 秦水 渭水の上流部、隴西の流域。 《水經注卷十七》「秦水西逕降隴縣故城南,又西南自亥、松多二水出隴山,合而西南流,逕降隴城北,又西南注秦水。」(秦水の西逕は隴縣故に城南に降り,又、西南に自ら亥【とざ】す、松多く二水は隴山に出づ,合して 西南に流る,隴城の北に逕降し,又 西南に 秦水に注ぐ。)
2 隴首 渭水が隴山のすそをながれるあたりは、杜甫《巻二14前出塞九首其三》「磨刀嗚咽水,水赤刃傷手。欲輕腸斷聲,心緒亂已久。」(隴山までくるとむせび泣いている水が流れている、その水で刀をみがく。水の色がさっと赤くなる、刀の刃が自分の手を傷つけたのだ。自分はこんな腸はらわたを断たせるという水の音などはたいしたことはないつもりなのだが、家と国とのことを考えると以前からさまざま思っていて心がみだれてくる。)「前出塞九首」其三 紀頌之の漢詩ブログ杜甫特集 42
《太平御覽、辛氏、三秦記》「隴右西關、其坂紆迴、不知髙㡬里。欲上者、七日乃越。髙處可容百餘家。上有清水、四注流下。俗歌曰、隴頭流水、鳴聲幽咽、遥望秦川、肝腸斷絶。隴首即隴頭也。」(隴右の西關、其の坂 紆迴し、髙さ㡬里なるを知らず。上らんと欲する者は、七日乃ち越ゆ。髙處は百餘家を容る可し。上に清水有り、四に注いで流下す。俗歌に曰く、隴頭の流水、鳴聲は幽咽す、秦川を遥望し、肝腸して斷絶す。隴首は即ち隴頭なり。)とある
沈約詩《西征登隴首、通鑑地理通釋》「秦州隴城縣有大隴山亦曰隴首山。」(秦州の隴城縣に大隴山有り亦た隴首山と曰う。)とある。
胡馬顧朔雪。 躞蹀長嘶鳴。
胡地の馬がその地を去るときに、は故郷の朔地の山に積もった雪の向こうを振り向いて長く嘶いて、馬に付けた鈴や玉を鳴らして、故郷に別れを告げるのである。
3 胡馬 陸機詩に「胡馬如雲屯」とある。いい馬を生産する遊牧民の地をいう。
4 躞蹀 馬に付けた鈴や玉が鳴る音。旅立ちの寂しさをあらわす。吳均詩「蹀躞青驪馬」とあり、「廣韻蹀躞、行貌緬逺也」と説明している。
5 朔雪 朔は、北。ここでは山西省朔州の山に積もった雪とすれば、黄河合流点をこえ、洛陽に近づいて来たことになるが、ここは北の名馬の産地の背後の山である。
6 嘶鳴 馬が嘶くのが、李白自身が大声で泣きたい心境を示していると考えられもするが古風の詩であることを考慮すると、馬の嘶きが別れの時にはよく響き渡るものというほどの意味である。解釈者の中には長安を追われて去る際の詩と考えて、こじつけ解説されているのを見かけるが、それでは、李白が古風としてまとめた意図を解していないことになる。ここは、そういった事実を踏まえながらも、一般的な長安での別れを詠うものと解釈した方がスケールが大きい。
感物動我心。 緬然含歸情。
此処に、外界の景色を見るにつけて、詩人としての私の心を動かした、わかれにはいろんな思いにふけるものである、これから先の旅路のはるか遠くのことを考えると長安を旅立つというのではなくはやくこの故郷に帰ってきたいと思う気持ちの方が強いものである。
7 緬然 はるかなさま。遠く思いやるさま。思いにふけるさま。
#2
昔視秋蛾飛。 今見春蠶生。
先に、家を出るとき、秋の蛾が飛んでいたが、何時しか冬を過ぎたが、いまはどうだろう、もう、春の蚕が生まれていることだろう。
8 秋蛾 秋に出現し、越冬せず冬には死に絶えてしまう秋キリガの仲間。江淹賦「秋蛾兮載飛」とある。
9 春蠶生 春になって生まれ蚕が生まれるが晩春を指す。浮気心が芽生えてきたことをあらわす句である。
沈約詩「寧憶春蠶起廣雅、嫋嫋弱也、萋萋茂也。
裊裊桑柘葉。 萋萋柳垂榮。
それに、桑の葉は群がり生じて、しなやかにまとわりついているし、柳は見事に繁って、煙れる枝を垂れていることであろう。
10 裊裊 風で気が揺れる。細長く音が響くさま。しなやかにまとわりつく。
11 萋萋 草が生い茂るさま。雲が行くさま。女性の服のうつくしいさま。枚乗《柳賦》「枝逶迤而含紫葉萋萋而吐緑楊。」とあり、齊賢曰「毛詩昔我往矣楊柳依依。今我來思雨雪霏霏。」とあり、曹子建詩「昔我初遷、朱華未希。今我旋止、素雪云飛。」とある。
曹植《朔風 (二)》
四氣代謝,懸景運周。別如俯仰,脫若三秋。
昔我初遷,朱華未希。今我旋止,素雪雲飛。
四氣は代謝し,懸景【けんけい】は運周す。
別しは俯仰【ふぎょう】の如く,脫せしは三秋の若くす。
昔我 初めて遷りしとき,朱華【しゅか】未だ希れならず。
今我 旋【かえ】り止めゆき,素雪【そせつ】雲にして飛ぶ。
四季の気候が移り変わりが気になり始める、天空にかかる光の循環も移り変わる。
君と別れを過ごしたのは、今思えば目を動かすほどの一瞬のうちのようである、惜別の気持ちから脱するのにこの秋の三カ月もかかってしまい、一日過ごすのも遅く感じたものなのだ。
その昔、私がはじめて、この地から他へ転任したと、きには、あかい花はまだ相当残っていたものだ。
今、私がふたたび帰ってくる池の辺に来てみたのだが、まっ白な雪が樹氷の上に降り積もった雪は雲のように見え、そしてまた雪が舞い飛び降ってくる。
李白のこの詩もまた、曹植の意と“此昔我在、此見秋蛾之飛、今既改嵗、春蠶生矣、桑葉如結、柳條争榮、猶未得歸。”同じものである。」
朔風 (二章) 曹植 魏詩<25-#2>文選 雑詩 上 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1825
急節謝流水。 羈心搖懸旌。
時節は流れる水よりも早くながれ、わが旅人の心は旗のように揺れうごいて落ち気はしない。
12 羈心 旅人の心。楽天的な李白にはマイナスの要素はない。そして道教に本格的に向かう。
13 搖懸旌 鳥の翅で作った房の様なものを旌といい、吹き流しの様なもので、良く揺れるので、心が揺れ動いて定まらないことをいう。
曹植《與吳質書》日く「不我與曜靈急節。」吕延濟の註に「急節謂遷移速也楊。」
齊賢曰く「謝去也。謂時節之去如流水之急也。」
揮涕且復去。 惻愴何時平。
こうして、今、涙を払ってともかくもこの地を去って、旅を続けようとするので、愴然として心を傷ましめ、この重たく暗い思いは何時になったら平静になるのであろうか。
14 惻愴 かなしむこと。重たく暗い思い。史記「心搖摇然/如懸旌而無所終薄家語無揮涕。」王肅註「揮涕不哭流涕以手揮之音咽音噎躞音燮蹀音/疊緬音勉羇 雞愴音昌又音創」