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李白集校注 訳注解説ブログ 750年-5 《雪讒詩贈友人 【巻九(一)六三二】》 #3 漢文委員会 紀
頌之 Blog11080
750年 |
天寶九年 750年 |
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3. 雪讒詩贈友人 【巻九(一)六三二】 #3 |
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李白集校注 訳注解説 |
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漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 11080 |
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巻168-24
雪讒詩贈友人
(平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送った)
嗟予沈迷,猖獗已久。
ああ、予は世の中のくだらない事々に迷って、それに打ち込み、思うが儘に無茶なことをしたり、今考えれば、無意味なことや、ふしだらなことをして、こんな年齢になってしまった。
五十知非,古人嘗有。
しかし、五十にして四十九年の非を知るということは、諺にもなることで、古人も常にあるところである。予もまたその通りで、、ここに昨日の非をさとったというところである。
立言補過,庶存不朽。
こうして、言を立てて筋を通し、また、過ちを補いもってわが名を不朽に伝えようと希う次第である。
#2
包荒匿瑕,蓄此頑醜。
こうして、すべて荒穢を包含し、瑕疵を蔵匿するということは、ありがちであって、いかなるものでもこの見苦しい欠点を蓄えているのである。
月出致譏,貽愧皓首。
予は、徳を好まず好色のためにそしりを受けることを免れなかったのであり、白髪頭になっても恥を残したのは致し方ないのである。
感悟遂晚,事往日遷。
その欠点を認識するに至るのが遅きに失したのであり、そのことはすでに過ぎ去って歳月はしきりに移り行くことは誠に残念なことである。
白璧何辜,青蠅屢前。
しかし、白璧は何の罪もないのであって。青蠅は、しばしば飛んできて、その上にふんをうわ掛けして、汚らわしいものにしてしまう、小役人や糞ばえの宦官どもの讒言をなされたことは、白璧が変じて黒としたようなものである。
#3
羣輕折軸,下沈黃泉。
それからいかに軽いものでも、たくさん集まれば、その重量も増してゆき、やがて車軸をくじいてしまい、その車を黄泉の奥深い底に沈めるほどになる。
衆毛飛骨,上凌青天。
そして、科類は寝であっても多く集まって主翼の羽となれば、骨を備えた鳥の体をして、晴天を凌いで、飛翔せしめるというものである。
萋斐暗成,貝錦粲然。
糞蠅の宦官小役人の讒言であっても、繰り返され、広がり、波及した讒言が束になって押し寄せれば、ひどい結果をもたらすのである。
泥沙聚埃,珠玉不鮮。
そして、また、泥沙と雖も集まって塵埃となると、珠玉がその中に混じっていてもはっきりとわかることができなくなってしまうのである。
#4
洪燄爍山,發自纖煙。
蒼波蕩日,起于微涓。
交亂四國,播于八埏。
拾塵掇蜂,疑聖猜賢。
#5
哀哉悲夫!誰察予之貞堅。
彼婦人之猖狂,不如鵲之彊彊。
彼婦人之淫昏,不如鶉之奔奔。
坦蕩君子,無悅簧言。
#6
擢髮續罪,罪乃孔多。
傾海流惡,惡無以過。
人生實難,逢此織羅。
積毀銷金,沈憂作歌。
#7
天未喪文,其如余何。
妲己滅紂,褒女惑周。
天維蕩覆,職此之由。
漢祖呂氏,食其在傍。
#8
秦皇太后,毐亦淫荒。
螮蝀作昏,遂掩太陽。
萬乘尚爾,匹夫何傷。
辭殫意窮,心切理直。
#9
如或妄談,昊天是殛。
子野善聽,離婁至明。
神靡遁響,鬼無逃形。
不我遐棄,庶昭忠誠。
(讒を雪ぐの詩 友人に贈る)
嗟す 予が沈迷,猖獗 已に久し。
五十 非を知る,古人 嘗て有り。
言を立て 過ちを補い,庶わくば 不朽に存せん。
#2
包荒をみ 瑕を匿し,此の頑醜を蓄う。
月 出でて 譏を致し,愧を皓首に貽す。
感悟 遂に晚く,事 往いて 日 遷る。
白璧 何の辜か,青蠅 屢しば前む。
#3
羣輕 軸を折き,下 黃泉に沈む。
衆毛 骨を飛し,上 青天を凌ぐ。
萋斐 暗に成り,貝錦 粲然たり。
泥沙 埃を聚め,珠玉 鮮ならず。
#4
洪燄の山を爍くは,纖煙より發す。
蒼波の日を蕩す,微涓より起る。
交ごも四國を亂して,八埏に播く。
塵を拾い 蜂を掇い,聖を疑い 賢を猜む。
#5
哀しい哉 悲しい夫!誰か予の之貞堅を察せむ。
彼の婦人の猖狂は,不如鵲の彊彊たるにしかず。
彼の婦人の淫昏は,鶉の奔奔たるにしかず。
坦蕩たる君子は,簧言を悅ぶ無かれ。
#6
髮を擢いて罪を續うも,罪は乃ち孔【はなは】だ多し。
海を傾けて惡を流し,惡 以て過ぐるは無し。
人生 實に難し,此の織羅に逢う。
積毀 金を銷し,沈憂 歌を作る。
#7
天 未だ文を喪さず,其れ余は何如。
妲己【だっき】は紂を滅し,褒女は周を惑わしむ。
天維 蕩覆,職として 此れに之れ由る。
漢祖 呂氏,食其【いき】傍に在る。
#8
秦皇の太后,毐【あい】亦た淫荒。
螮蝀【せいとう】昏を作り,遂に太陽を掩う。
萬乘 尚お爾り,匹夫 何ぞ傷まむ。
辭 殫くし 意 窮まり,心 切に理直。
#9
或は妄談如く,昊天 是れ殛【つみ】す。
子野は善く聽き,離婁は 至明。
神に遁響靡く,鬼に 逃形無し。
我を 遐棄せず,庶わくば 忠誠を昭らかにせよ。
李白集校注 関係個所 抜粋
(摺軸) 漢書: 叢輕折軸、羽翮飛肉。 顔師古註:言積載輕物、物多至令車軸毀折而鳥之所、以能飛翔者、 |
以羽翮扇揚之故也。 |
淮南子: 積羽沉舟、羣輕折軸。 |
(貝錦) 詩小雅: 萋兮斐兮成是貝錦。 彼譖人者、亦已太甚: 毛傳曰:萋斐、文章相錯也。貝錦、錦文也。 |
鄭箋曰: 錦文者、文如餘泉餘蚳之貝文也。 |
興者、喻讒人集作已過以成於罪、猶女工之集采色以成錦文說文。涓小流也 |
雪讒詩贈友人 李白集校注【巻九(一)六三二】 #1 訳注解説
(本文)
雪讒詩贈友人
#3
羣輕折軸,下沈黃泉。
衆毛飛骨,上凌青天。
萋斐暗成,貝錦粲然。
泥沙聚埃,珠玉不鮮。
(下し文)
(讒を雪ぐの詩 友人に贈る)
#2
包荒をみ 瑕を匿し,此の頑醜を蓄う。
月 出でて 譏を致し,愧を皓首に貽す。
感悟 遂に晚く,事 往いて 日 遷る。
白璧 何の辜か,青蠅 屢しば前む。
(現代語訳)
(平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送った)
#3
それからいかに軽いものでも、たくさん集まれば、その重量も増してゆき、やがて車軸をくじいてしまい、その車を黄泉の奥深い底に沈めるほどになる。
そして、科類は寝であっても多く集まって主翼の羽となれば、骨を備えた鳥の体をして、晴天を凌いで、飛翔せしめるというものである。
糞蠅の宦官小役人の讒言であっても、繰り返され、広がり、波及した讒言が束になって押し寄せれば、ひどい結果をもたらすのである。
そして、また、泥沙と雖も集まって塵埃となると、珠玉がその中に混じっていてもはっきりとわかることができなくなってしまうのである。
(訳注解説)
雪讒詩贈友人
(平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送った)
この詩は、李白の平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送ったものである。反省の体で、讒言を批判するのを四言、歯切れのよい詩であったり、六言に変調して、強調し、あざけったものである。
#3
それからいかに軽いものでも、たくさん集まれば、その重量も増してゆき、やがて車軸をくじいてしまい、その車を黄泉の奥深い底に沈めるほどになる。
羣輕折軸 漢書: 叢輕折軸、羽翮飛肉。 顔師古註:言積載輕物、物多至令車軸毀折而鳥之所、以能飛翔者、以羽翮扇揚之故也。淮南子: 積羽沉舟、羣輕折軸。
黃泉 古代の中国人は、地下に死者の世界があると考え、そこを黄泉と呼んだ。黄は五行説で「土」を表象しているので、もともとは地下を指したもので、死後の世界という意味ではなかったが、後に死後の世界という意味が加わった。現代中国語でも死後の世界の意味で日常的に用いられている。
衆毛飛骨,上凌青天。
そして、科類は寝であっても多く集まって主翼の羽となれば、骨を備えた鳥の体をして、晴天を凌いで、飛翔せしめるというものである。
糞蠅の宦官小役人の讒言であっても、繰り返され、広がり、波及した讒言が束になって押し寄せれば、ひどい結果をもたらすのである。
萋斐貝錦 小さな失敗を誇張して言ったり、実際には無いことを事実であるかのように言って、他人を罪に陥れること。「萋斐」はあや模様の美しい様子。「貝錦」は貝殻のような美しい模様をしている錦。言葉を美しく飾り立てて、人を陥れるという意味から。詩經小雅に 萋斐は是れ貝錦を成す。 彼譖人者、亦已太甚: 毛傳曰:萋斐、文章 相い錯るなり。貝錦は、錦文なり。鄭箋 曰く: 錦文者、文如餘泉餘蚳之貝は文なり。興者、喻讒人集り作る已に過り 以て罪を成す、猶女工之集は采色なり 以て錦文を成す、說文に涓が小流となる。
涓. ①水のしずく。「涓滴」 ②小さい流れ。「涓流」 ③わずか。すこし。「涓毫(ケンゴウ)」 ④はらい清める。涓涓· 涓滴
泥沙聚埃,珠玉不鮮。
そして、また、泥沙と雖も集まって塵埃となると、珠玉がその中に混じっていてもはっきりとわかることができなくなってしまうのである。