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李白集校注 訳注解説ブログ 750年-5 《雪讒詩贈友人 【巻九(一)六三二】》 #5 漢文委員会 紀
頌之 Blog11096
750年 |
天寶九年 750年 |
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5. 雪讒詩贈友人 【巻九(一)六三二】
#5 |
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李白集校注 訳注解説 |
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漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 11096 |
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巻168-24
雪讒詩贈友人
(平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送った)
嗟予沈迷,猖獗已久。
ああ、予は世の中のくだらない事々に迷って、それに打ち込み、思うが儘に無茶なことをしたり、今考えれば、無意味なことや、ふしだらなことをして、こんな年齢になってしまった。
五十知非,古人嘗有。
しかし、五十にして四十九年の非を知るということは、諺にもなることで、古人も常にあるところである。予もまたその通りで、、ここに昨日の非をさとったというところである。
立言補過,庶存不朽。
こうして、言を立てて筋を通し、また、過ちを補いもってわが名を不朽に伝えようと希う次第である。
#2
包荒匿瑕,蓄此頑醜。
こうして、すべて荒穢を包含し、瑕疵を蔵匿するということは、ありがちであって、いかなるものでもこの見苦しい欠点を蓄えているのである。
月出致譏,貽愧皓首。
予は、徳を好まず好色のためにそしりを受けることを免れなかったのであり、白髪頭になっても恥を残したのは致し方ないのである。
感悟遂晚,事往日遷。
その欠点を認識するに至るのが遅きに失したのであり、そのことはすでに過ぎ去って歳月はしきりに移り行くことは誠に残念なことである。
白璧何辜,青蠅屢前。
しかし、白璧は何の罪もないのであって。青蠅は、しばしば飛んできて、その上にふんをうわ掛けして、汚らわしいものにしてしまう、小役人や糞ばえの宦官どもの讒言をなされたことは、白璧が変じて黒としたようなものである。
#3
羣輕折軸,下沈黃泉。
それからいかに軽いものでも、たくさん集まれば、その重量も増してゆき、やがて車軸をくじいてしまい、その車を黄泉の奥深い底に沈めるほどになる。
衆毛飛骨,上凌青天。
そして、科類は寝であっても多く集まって主翼の羽となれば、骨を備えた鳥の体をして、晴天を凌いで、飛翔せしめるというものである。
萋斐暗成,貝錦粲然。
糞蠅の宦官小役人の讒言であっても、繰り返され、広がり、波及した讒言が束になって押し寄せれば、ひどい結果をもたらすのである。
泥沙聚埃,珠玉不鮮。
そして、また、泥沙と雖も集まって塵埃となると、珠玉がその中に混じっていてもはっきりとわかることができなくなってしまうのである。
#4
洪燄爍山,發自纖煙。
かくして盛んな火炎が山を焦がして焼き付くけれど、それももとはといえば、か細い火種のようなもの、細い煙から起こるのである。
蒼波蕩日,起于微涓。
渺びょうたる大海の波が日を揺蕩するのも、小さな流れの集まったものに他ならないのである。
交亂四國,播于八埏。
讒言の結果として最後には、交ごも国境を接する四方の国々に大騒乱を起こさしめ、果てはさらに八方に広がるというくらい、人の話に扉は立てられない小さな讒言から起こったものがあるのだ。
拾塵掇蜂,疑聖猜賢。
顔回が飯を炊くとき、ゴミを拾って口に入れたというので、孔子の聖なるもこれを疑い自分にかくして「つまみ食いする」ということからの“教え”となったのである。
#5
哀哉悲夫!誰察予之貞堅。
尹伯奇は、継母の計略に乗せられ、その襟にとまった毒バチをうったためにその父に疑われたことがある。哀しいかな、悲しいかな、だれも予の心正しいこと、その心を固く守り通す正確であることを察してくれるものがいない。
彼婦人之猖狂,不如鵲之彊彊。
かの小人の猖狂でわがままにふるまい、烏鵲の彊彊というのを知らないでいるということだし、
彼婦人之淫昏,不如鶉之奔奔。
かの婦人の淫昏なほどに物事に熱中するのは、鶉の奔奔というのを知らないというのであろう。常に、其の匹耦を伴って飛べばそれに従ってゆくというわけにいかないのである、だから物事わかる人なら、小人や婦人のいうことを聞くことはないでしょう。
坦蕩君子,無悅簧言。
心寛厚な君子は、簧のような小人どもの巧言令色を喜ぶことなどあってはならないのである。
#6
擢髮續罪,罪乃孔多。
傾海流惡,惡無以過。
人生實難,逢此織羅。
積毀銷金,沈憂作歌。
#7
天未喪文,其如余何。
妲己滅紂,褒女惑周。
天維蕩覆,職此之由。
漢祖呂氏,食其在傍。
#8
秦皇太后,毐亦淫荒。
螮蝀作昏,遂掩太陽。
萬乘尚爾,匹夫何傷。
辭殫意窮,心切理直。
#9
如或妄談,昊天是殛。
子野善聽,離婁至明。
神靡遁響,鬼無逃形。
不我遐棄,庶昭忠誠。
(讒を雪ぐの詩 友人に贈る)
嗟す 予が沈迷,猖獗 已に久し。
五十 非を知る,古人 嘗て有り。
言を立て 過ちを補い,庶わくば 不朽に存せん。
#2
包荒をみ 瑕を匿し,此の頑醜を蓄う。
月 出でて 譏を致し,愧を皓首に貽す。
感悟 遂に晚く,事 往いて 日 遷る。
白璧 何の辜か,青蠅 屢しば前む。
#3
羣輕 軸を折き,下 黃泉に沈む。
衆毛 骨を飛し,上 青天を凌ぐ。
萋斐 暗に成り,貝錦 粲然たり。
泥沙 埃を聚め,珠玉 鮮ならず。
#4
洪燄の山を爍くは,纖煙より發す。
蒼波の日を蕩す,微涓より起る。
交ごも四國を亂して,八埏に播く。
塵を拾い 蜂を掇い,聖を疑い 賢を猜む。
#5
彼の婦人の猖狂は,不如鵲の彊彊たるにしかず。
彼の婦人の淫昏は,鶉の奔奔たるにしかず。
坦蕩たる君子は,簧言を悅ぶ無かれ。
#6
髮を擢いて罪を續うも,罪は乃ち孔【はなは】だ多し。
海を傾けて惡を流し,惡 以て過ぐるは無し。
人生 實に難し,此の織羅に逢う。
積毀 金を銷し,沈憂 歌を作る。
#7
天 未だ文を喪さず,其れ余は何如。
妲己【だっき】は紂を滅し,褒女は周を惑わしむ。
天維 蕩覆,職として 此れに之れ由る。
漢祖 呂氏,食其【いき】傍に在る。
#8
秦皇の太后,毐【あい】亦た淫荒。
螮蝀【せいとう】昏を作り,遂に太陽を掩う。
萬乘 尚お爾り,匹夫 何ぞ傷まむ。
辭 殫くし 意 窮まり,心 切に理直。
#9
或は妄談如く,昊天 是れ殛【つみ】す。
子野は善く聽き,離婁は 至明。
神に遁響靡く,鬼に 逃形無し。
我を 遐棄せず,庶わくば 忠誠を昭らかにせよ。
李白集校注 関係個所 抜粋 #5
(奔奔) 詩國風鶉之奔奔:鵲之彊彊。鄭箋曰:奔奔彊彊、言其居有常匹、飛則相隨之貎。 孔頴達正義曰言鶉則鶉自相隨奔奔然鵲則鵲自相隨彊彊然各有常匹不亂其類何晏 |
(坦盪) 論語註坦蕩蕩寛廣貌 |
(簧言) 詩小雅巧言如簧、孔頴達。 正義:巧為言語、結搆虛辭、速相待合、如笙中之簧、聲相應和。 |
雪讒詩贈友人 李白集校注【巻九(一)六三二】 #1 訳注解説
(本文)
雪讒詩贈友人
#5
哀哉悲夫!誰察予之貞堅。
彼婦人之猖狂,不如鵲之彊彊。
彼婦人之淫昏,不如鶉之奔奔。
坦蕩君子,無悅簧言。
(下し文)
(讒を雪ぐの詩 友人に贈る)
#5
哀しい哉 悲しい夫!誰か予の之貞堅を察せむ。
彼の婦人の猖狂は,不如鵲の彊彊たるにしかず。
彼の婦人の淫昏は,鶉の奔奔たるにしかず。
坦蕩たる君子は,簧言を悅ぶ無かれ。
(現代語訳)
(平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送った)
#5
尹伯奇は、継母の計略に乗せられ、その襟にとまった毒バチをうったためにその父に疑われたことがある。哀しいかな、悲しいかな、だれも予の心正しいこと、その心を固く守り通す正確であることを察してくれるものがいない。
かの小人の猖狂でわがままにふるまい、烏鵲の彊彊というのを知らないでいるということだし、
かの婦人の淫昏なほどに物事に熱中するのは、鶉の奔奔というのを知らないというのであろう。常に、其の匹耦を伴って飛べばそれに従ってゆくというわけにいかないのである、だから物事わかる人なら、小人や婦人のいうことを聞くことはないでしょう。
心寛厚な君子は、簧のような小人どもの巧言令色を喜ぶことなどあってはならないのである。
(訳注解説)
雪讒詩贈友人
(平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送った)
この詩は、李白の平生の行いが累をなして、他人からいろいろ悪評を広げられているので、賦して自分自身について正直に語ったものを、讒言をすすぐため友人に送ったものである。反省の体で、讒言を批判するのを四言、歯切れのよい詩であったり、六言に変調して、強調し、あざけったものである。
#5
哀哉悲夫!誰察予之貞堅。
尹伯奇は、継母の計略に乗せられ、その襟にとまった毒バチをうったためにその父に疑われたことがある。哀しいかな、悲しいかな、だれも予の心正しいこと、その心を固く守り通す正確であることを察してくれるものがいない。
哀哉悲夫 継母の計略と言われる故事であるが、魏の尹伯奇は、母の襟に留っていた毒蜂を打ち取ったが、義母を殺そうと毒蜂をつけたと義父に疑われ、母には泣かれ、大いに窮地に追い込まれ自殺したと“悲夫”いうことで、李白は、讒言というものをあらわした。
貞堅 節操を堅く守ること。
かの小人の猖狂でわがままにふるまい、烏鵲の彊彊というのを知らないでいるということだし、
猖狂 激しくふるまう、思うが儘にふるまえばそれで満足でき、無心と同じようになるしそれ以外のことを求めようとしない、行くところを決めないで懸命にするという意。 《莊子·在宥第十一》「浮游不知所求、猖狂不知所往。」(浮游は求むる所を知らず、猖狂は往く所を知らず。)”成玄英疏:“無心妄行,無的當也。”南朝宋鮑照《侍郎報滿辭閣疏》:「幼性猖狂,因頑慕勇,釋擔受書,廢耕學文。」とある。
彼婦人之淫昏,不如鶉之奔奔。
かの婦人の淫昏なほどに物事に熱中するのは、鶉の奔奔というのを知らないというのであろう。常に、其の匹耦を伴って飛べばそれに従ってゆくというわけにいかないのである、だから物事わかる人なら、小人や婦人のいうことを聞くことはないでしょう。
淫昏 度をすごして物事に熱中するのこと。
坦蕩君子,無悅簧言。
心寛厚な君子は、簧のような小人どもの巧言令色を喜ぶことなどあってはならないのである。