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擣衣 (謝惠連)
布帛を、きぬたにのせて擣つ。そして衣を仕立てて、遠く出征した夫に送ろうとする、妻の心をのべたもの。
擣衣
衡紀無淹度、晷運倐如催。
玉衛星はそのすじみちに従ってとどまることなく動きめぐり、天日の運行はせきたてられるようにただしく速かに動きすすむ。
白露滋園菊、秋風落庭槐。
こうして、白露は中庭園の菊をしっとりとうるおしてくれるし、秋風は庭のえんじゅの葉を吹き落す。
肅肅莎雞羽、烈烈寒螿啼。
こおろぎは羽を動かし粛々と音をたてて、秋蟬、ひぐらしは烈烈と鳴いてうったえる。
夕陰結空幕、霄月皓中閨。」
また、夕方になると暗い雰囲気が人陰のない部屋の幕にこもり結び、宵月はねやの中まで白々とさしこみ照らす。
美人戒裳服、端飭相招攜。
美しい人達は着物を出して身づくろいをしている、そして飾り整えて互いに招きあって手を携えて行くのである。
簪玉出北房、鳴金步南階。
頭には玉のかんざしをさし北の部屋から出てきた、黄金でかざった腰の佩び珠を鳴らしながら南の階段へと歩いてくる。
楣高砧響發、楹長杵聲哀。
衣を打つ場所は軒が高くきぬたをうつ音を発しているし、柱が長いのできねの音が悲しげにひびきわたっちる。
微芳起兩袖、輕汗染雙題。」
そして、きぬたをうつ両方の袖からほのかなかおりが起ってくる、またかるい汗が両方の額じゅうを染めている。
紈素既已成、君子行不歸。
白ぎぬを既に縫い終わってしまったが、私の主は旅の行く先からまだ帰ってこない。
裁用笥中刀、縫為萬里衣。
さて箱の中から裁断刀を出して白ぎぬをたちきり、万里の遠くにある夫のための着物を縫い上げる。
盈篋自予手、幽緘俟君開。
それをわが手でこころをこめて箱につめこんだのだ、念いりに荷造りしたのを、あなたが封印の深い閉じ目解き開かれるのを待つのである。
腰帶准疇昔、不知今是非。」
ただ着物の腰まわりや帯の長さなどは以前のままにしたが、今はそれでよいのか、わるいのか、わからないので心配と悲しみに耐えられないのである。
擣衣【とうい】(衣を擣つ)
衡紀【こうき】は度に淹【とど】まる無く、晷運【きうん】は倐【たちま】ちにして催【うなが】すが如し。
白露は園菊【えんぎく】に滋【しげ】く、秋風は庭槐【ていかい】を落す。
粛粛【しゅくしゅく】として莎雞【さけい】は羽【はね】ふるい、烈烈として寒螿【かんしょう】は啼く。
夕陰は空幕に結び、霄月【しょうげつ】は中閨【ちゅうけい】に皓【ひろ】し。」
美人は裳服を戒【いあまし】め、端飭【たんしょく】して相い招攜【しょうけい】す。
簪玉【しんぎょく】もて北房より野で、鳴金【めいきん】もて南階【なんかい】に歩す。
楣【のき】は高くして砧響【ちんきょう】發し、楹【はしら】は長くして杵聲【しょせい】哀し。
微芳【びほう】は両袖に起り、軽汗【けいかん】は雙題【そうだい】を染む。」
紈素【がんそ】は既己【すで】に成れり、君子は行きて未だ歸らず。
裁つに笥中【しちゅう】の刀を用【もつ】てし、縫ひて萬里の衣と為す。
篋【はこ】に盈【み】たすは余【わ】が手よりし、幽鍼【ゆうかん】は君が開くを俟【ま】つ。
腰帯【ようたい】は疇昔【ちゅうせき】に準【なぞら】へたり、今の是非を知らず。」
現代語訳と訳註
(本文)
紈素既已成、君子行不歸。
裁用笥中刀、縫為萬里衣。
盈篋自予手、幽緘俟君開。
腰帶准疇昔、不知今是非。」
(下し文)
紈素【がんそ】は既己【すで】に成れり、君子は行きて未だ歸らず。
裁つに笥中【しちゅう】の刀を用【もつ】てし、縫ひて萬里の衣と為す。
篋【はこ】に盈【み】たすは余【わ】が手よりし、幽鍼【ゆうかん】は君が開くを俟【ま】つ。
腰帯【ようたい】は疇昔【ちゅうせき】に準【なぞら】へたり、今の是非を知らず。」
(現代語訳)
白ぎぬを既に縫い終わってしまったが、私の主は旅の行く先からまだ帰ってこない。
さて箱の中から裁断刀を出して白ぎぬをたちきり、万里の遠くにある夫のための着物を縫い上げる。
それをわが手でこころをこめて箱につめこんだのだ、念いりに荷造りしたのを、あなたが封印の深い閉じ目解き開かれるのを待つのである。
ただ着物の腰まわりや帯の長さなどは以前のままにしたが、今はそれでよいのか、わるいのか、わからないので心配と悲しみに耐えられないのである。
(訳注)
紈素既已成、君子行不歸。
白ぎぬを既に縫い終わってしまったが、私の主は旅の行く先からまだ帰ってこない。
・紈素 白の練り絹。細い絹織物を紈であり、素は白。・君子 夫。主。
裁用笥中刀、縫為萬里衣。
さて箱の中から裁断刀を出して白ぎぬをたちきり、万里の遠くにある夫のための着物を縫い上げる。
・笥 四角な箱。こおり。・萬里衣 万里の旅に出ている人のために作る衣。
盈篋自予手、幽緘俟君開。
それをわが手でこころをこめて箱につめこんだのだ、念いりに荷造りしたのを、あなたが封印の深い閉じ目解き開かれるのを待つのである。
・篋 長方形の竹の器。竹の行李。・幽緘 封印の深い閉じ目。
腰帶准疇昔、不知今是非。」
ただ着物の腰まわりや帯の長さなどは以前のままにしたが、今はそれでよいのか、わるいのか、わからないので心配と悲しみに耐えられないのである。
・腰帶 衣の腰幅と帯。・准 したがう。なぞらえる。ここでは、もとの裁(た)ち方・寸法を基準にすること。・疇昔 その昔。