古風 其四十八 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集 262/350
其四十八
秦皇按寶劍。 赫怒震威神。
秦の始皇は宝飾の剣をなでさすりながら、烈火のように怒った時、すばらしい威力を天下に示した。
逐日巡海右。 驅石駕滄津。
権力者威光を示す最大のもの太陽を誘導することをめざし、西の山の向こう、海の更に右側を巡幸し、石を駆使して大海原に橋をかけようとした。
征卒空九寓。 作橋傷萬人。
兵卒を徴用し尽くしたので、国中はからになってしまった。橋の建設にすべての人が何らかの傷を負ったのだ。
但求蓬島藥。 豈思農扈春。
そればかりか始皇帝はただ仙人の島、蓬莱島の仙薬ばかりをほしがったのだ、最も大切な春の農耕の仕事など全く念頭になかったのだ。
力盡功不贍。 千載為悲辛。
国力は尽きはててしまい、仙薬の効能もなったく無かったのだ。その国力の衰えは、千年もの長きにわたって悲しみと辛い思いをしていくのである。
古風 其の四十八
秦皇 宝剣を按じ、赫怒(かくど)して威神(いしん)を震(ふる)う。
日を逐いて海右(かいゆう)を巡り、石を駆って滄津に駕(が)す。
卒を征(め)して九寓を空(むな)しゅうし、橋を作りて万人を傷つく。
但だ蓬島(ほうとう)の薬を求め、豈に農扈(のうこ)の春を思わんや。
力尽きて 功 贍(た)らず、千載(せんざい) 為に悲辛(ひしん)す。
古風 其四十八 現代語訳と訳註
(本文)
秦皇按寶劍、赫怒震威神。
逐日巡海右、驅石駕滄津。
征卒空九寓、作橋傷萬人。
但求蓬島藥、豈思農扈春。
力盡功不贍、千載為悲辛。
(下し文) 其の四十八
秦皇 宝剣を按じ、赫怒(かくど)して威神(いしん)を震(ふる)う。
日を逐いて海右(かいゆう)を巡り、石を駆って滄津に駕(が)す。
卒を征(め)して九寓を空(むな)しゅうし、橋を作りて万人を傷つく。
但だ蓬島(ほうとう)の薬を求め、豈に農扈(のうこ)の春を思わんや。
力尽きて 功 贍(た)らず、千載(せんざい) 為に悲辛(ひしん)す。
(現代語訳)
秦の始皇はほう宝飾の剣をなでさすりながら、烈火のように怒った時、すばらしい威力を天下に示した。
権力者威光を示す最大のもの太陽を誘導することをめざし、西の山の向こう、海の更に右側を巡幸し、石を駆使して大海原に橋をかけようとした。
兵卒を徴用し尽くしたので、国中はからになってしまった。橋の建設にすべての人が何らかの傷を負ったのだ。
そればかりか始皇帝はただ仙人の島、蓬莱島の仙薬ばかりをほしがったのだ、最も大切な春の農耕の仕事など全く念頭になかったのだ。
国力は尽きはててしまい、仙薬の効能もなったく無かったのだ。その国力の衰えは、千年もの長きにわたって悲しみと辛い思いをしていくのである。
(訳注)
秦皇按寶劍、赫怒震威神。
秦の始皇はほう宝飾の剣をなでさすりながら、烈火のように怒った時、すばらしい威力を天下に示した。
○秦皇 秦の始皇帝。○威神 神威に同じ。すばらしい威力。
逐日巡海右、驅石駕滄津。
権力者威光を示す最大のもの太陽を誘導することをめざし、西の山の向こう、海の更に右側を巡幸し、石を駆使して大海原に橋をかけようとした。
○海右 中國では古来から四方には海があり、西の山の向こうには海がありその海の果てには崖があって、その場所に太陽が沈むとされていた。方向性は北、北斗七星を背にして左が東、右が西になる。西の山の向こうの海の更に右側ということになる。○駆石 「三斉略記」という本に次のような話が見える。秦の始皇帝は、東海を渡れるような巨大な石橋をつくり、日の出る所を見たいと思った。すると、一人の魔法使が現われ、石を追いやって海に投じた。城陽にある十云山の石がことごとく起きあがり、高高と東に傾き、互につれだって歩いてゆくように見えた。石の歩き方がおそいと、魔法使はムチをふるった。石はみな血を流し、真っ赤になった、という。○駕 架。かける。○滄津 大海。
征卒空九寓。 作橋傷萬人。
兵卒を徴用し尽くしたので、国中はからになってしまった。橋の建設にすべての人が何らかの傷を負ったのだ。
○卒 兵卒。〇九寓 九州。中国全土を九つに区分。九州は九区分の真ん中を除いた八の州を示すが、九寓の場合は単に九の州という意味。空の場合は九天。
但求蓬島藥。 豈思農扈春。
そればかりか始皇帝はただ仙人の島、蓬莱島の仙薬ばかりをほしがったのだ、最も大切な春の農耕の仕事など全く念頭になかったのだ。
○蓬島薬 蓬島は、東海の中にあると信じられた仙人の島、蓬莱島の略。そこに産する不老長生の仙薬。「史記」の始皇本紀によると、始豊の二十八年、斉人の徐市を派遣し、童男童女数千人を出して海上に仙人を求めさせた。同三十二年、韓終・侯公・石生に仙人の不死の薬を求めさせた。同三十七年、方士の徐市らは、海上に仙薬を求めて、数年になるが得られず、費用が多いだけだったので、罰せられることを恐れ、「蓬莱では仙薬を得られるのですが、いつも途中で大鮫に妨げられて島に行くことができないのです。船に連穹(矢をつづけさまに発射できる仕掛の石弓)をつけて下さい」と報告している。始皇帝と仙薬、徐市の詩によく登場する有名な逸話である。○農扈春 扈は1.したがう。主君のあとにつきしたがう。主君のお供をする。2.はびこる。ここでは、春の訪れに伴って当然やるべき農業、耕作種まきをいう。
力盡功不贍。 千載為悲辛。
国力は尽きはててしまい、仙薬の効能もなったく無かったのだ。その国力の衰えは、千年もの長きにわたって悲しみと辛い思いをしていくのである。
○贍 足る。十分である。
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