漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之のブログ 女性詩、漢詩・建安六朝・唐詩・李白詩 1000首:李白集校注に基づき時系列に訳注解説

李白の詩を紹介。青年期の放浪時代。朝廷に上がった時期。失意して、再び放浪。李白の安史の乱。再び長江を下る。そして臨終の歌。李白1000という意味は、目安として1000首以上掲載し、その後、系統別、時系列に整理するということ。 古詩、謝霊運、三曹の詩は既掲載済。女性詩。六朝詩。文選、玉臺新詠など、李白詩に影響を与えた六朝詩のおもなものは既掲載している2015.7月から李白を再掲載開始、(掲載約3~4年の予定)。作品の作時期との関係なく掲載漏れの作品も掲載するつもり。李白詩は、時期設定は大まかにとらえる必要があるので、従来の整理と異なる場合もある。現在400首以上、掲載した。今、李白詩全詩訳注掲載中。

▼絶句・律詩など短詩をだけ読んでいたのではその詩人の良さは分からないもの。▼長詩、シリーズを割席しては理解は深まらない。▼漢詩は、諸々の決まりで作られている。日本人が読む漢詩の良さはそういう決まり事ではない中国人の自然に対する、人に対する、生きていくことに対する、愛することに対する理想を述べているのをくみ取ることにあると思う。▼詩人の長詩の中にその詩人の性格、技量が表れる。▼李白詩からよこみちにそれているが、途中で孟浩然を45首程度(掲載済)、謝霊運を80首程度(掲載済み)。そして、女性古詩。六朝、有名な賦、その後、李白詩全詩訳注を約4~5年かけて掲載する予定で整理している。
その後ブログ掲載予定順は、王維、白居易、の順で掲載予定。▼このほか同時に、Ⅲ杜甫詩のブログ3年の予定http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/、唐宋詩人のブログ(Ⅱ李商隠、韓愈グループ。)も掲載中である。http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/,Ⅴ晩唐五代宋詞・花間集・玉臺新詠http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/▼また漢詩理解のためにHPもいくつかサイトがある。≪ kanbuniinkai ≫[検索]で、「漢詩・唐詩」理解を深めるものになっている。
◎漢文委員会のHP http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/profile1.html
Author:漢文委員会 紀 頌之です。
大病を患い大手術の結果、半年ぶりに復帰しました。心機一転、ブログを開始します。(11/1)
ずいぶん回復してきました。(12/10)
訪問ありがとうございます。いつもありがとうございます。
リンクはフリーです。報告、承諾は無用です。
ただ、コメント頂いたても、こちらからの返礼対応ができません。というのも、
毎日、6 BLOG,20000字以上活字にしているからです。
漢詩、唐詩は、日本の詩人に大きな影響を残しました。
だからこそ、漢詩をできるだけ正確に、出来るだけ日本人の感覚で、解釈して,紹介しています。
体の続く限り、広げ、深めていきたいと思っています。掲載文について、いまのところ、すべて自由に使ってもらって結構ですが、節度あるものにして下さい。
どうぞよろしくお願いします。

名山を望む

望九華山贈青陽韋仲堪 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -299

望九華山贈青陽韋仲堪 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -299



望九華山贈青陽韋仲堪
「九華山を望み、青陽県令の韋仲堪に贈る」

昔在九江上、遥望九華峰 。
一昔まえもここ九の大きな流れが集まる長江のほとりで眺めていたものだ、そして、この隠遁の山である九華山を遥かに望みやったこともあった。
天河挂緑水、秀出九芙蓉 。
銀河が緑水の屏風の瀑布となって崖にかかり、そこに九つの芙蓉のごとき峰々がすばらしく抜きん出ているのである。
我欲一揮手、誰人可相従 。
私は、手を振って、俗世にさよならしようと思っているのだが、いったい誰がわたしに付き従ってくれるだろうか。
君為東道主、於此臥雲松 。
東道の主たる青陽県令の韋仲堪君が案内役になってくれるというから、私はこの山で雲と松の間に寝っころがるとしよう。

〔九華山を望み青陽の韋仲堪に贈る〕
昔 九江の上に在り、遥かに九華の峰を望む。
天河 緑水を挂け、秀出す 九芙蓉。
我 ひとたび手を揮(ふる)はんと欲す、誰人か相ひ従ふべき?
君は東道の主為り、此に於いて雲松に臥せん。


現代語訳と訳註
(本文)

昔在九江上、遥望九華峰 。
天河挂緑水、秀出九芙蓉 。
我欲一揮手、誰人可相従 。
君為東道主、於此臥雲松 。

(下し文)
昔 九江の上に在り、遥かに九華の峰を望む。
天河 緑水を挂け、秀出す 九芙蓉。
我 ひとたび手を揮(ふる)はんと欲す、誰人か相ひ従ふべき?
君は東道の主為り、此に於いて雲松に臥せん。


(現代語訳)
「九華山を望み、青陽県令の韋仲堪に贈る」
一昔まえもここ九の大きな流れが集まる長江のほとりで眺めていたものだ、そして、この隠遁の山である九華山を遥かに望みやったこともあった。
銀河が緑水の屏風の瀑布となって崖にかかり、そこに九つの芙蓉のごとき峰々がすばらしく抜きん出ているのである。
私は、手を振って、俗世にさよならしようと思っているのだが、いったい誰がわたしに付き従ってくれるだろうか。
東道の主たる青陽県令の韋仲堪君が案内役になってくれるというから、私はこの山で雲と松の間に寝っころがるとしよう。


(訳注)
望九華山贈青陽韋仲堪

「九華山を望み、青陽県令の韋仲堪に贈る」

昔在九江上、遥望九華峰 。
昔 九江の上に在り、遥かに九華の峰を望む。
一昔まえもここ九の大きな流れが集まる長江のほとりで眺めていたものだ、そして、この隠遁の山である九華山を遥かに望みやったこともあった。
九江 長江中流右岸にある水陸交通の要地。長江と鄱陽湖への入口に当たる。○九華峰 九華山は、安徽省青陽県西南に位置する連峰(主峰の十王峰は1342m)で、いわゆる景勝の地「皖南」を代表する名山として、そしてまた、峨眉山、五台山、普陀山と並んで中国仏教四大聖地の一つでもある。この山は、唐代の前半に至るまでは、九子山という名称であった。李白のこの詩で命名されたようである。


天河挂緑水、秀出九芙蓉 。
天河 緑水を挂け、秀出す 九芙蓉。
銀河が緑水の屏風の瀑布となって崖にかかり、そこに九つの芙蓉のごとき峰々がすばらしく抜きん出ているのである。
天河 天の河、銀河。○九芙蓉 蓮の花、蕾を山頂に頂く山々。
望廬山瀑布水二首其一#2とまとめ 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -228

贈王判官時余歸隱居廬山屏風疊 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350-229



我欲一揮手、誰人可相従 。
我 ひとたび手を揮(ふる)はんと欲す、誰人か相ひ従ふべき?
私は、手を振って、俗世にさよならしようと思っているのだが、いったい誰がわたしに付き従ってくれるだろうか。
○ここまで出た名勝の地は道教の聖地を意味するもので隠遁することを意味している。


君為東道主、於此臥雲松 。
君は東道の主為り、此に於いて雲松に臥せん。
東道の主たる青陽県令の韋仲堪君が案内役になってくれるというから、私はこの山で雲と松の間に寝っころがるとしよう。
東道 浙江、会稽の海岸地方をいう。○雲松 隠遁を意味するが、別の意味では芸妓も意味する。謝安の「芸妓を携えて」の地方である。

憶東山二首其一 李白 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -269

送姪良携二妓赴会稽戯有此贈  李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -287


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望木瓜山 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -233

望木瓜山 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -233


朝廷追放を機に、李白は現実世界への強い不満と同時に、理想の世への強烈なあこがれを抱くにいたった。道士としての生き方の中に、世俗的な政治の世界での栄達を混入することの誤りに気づいたのだと思われる。自己の内なる世界に深く向き合うことを通して、彼は自己覚醒する。これ以後の李白は専一に仙界の日々を願うようになり、また深みのある山の詩を書くようになっていく。


望木瓜山
早起見日出。 暮見棲鳥還。
客心自酸楚。 況對木瓜山。


木瓜山を望む
早く起きて 日の出づるを見、幕に棲鳥の還るを見る。
客心 白のずから酸楚、況んや木瓜山に対するをや。

nat0022


望木瓜山 現代語訳と訳註
(本文)
望木瓜山
早起見日出。 暮見棲鳥還。
客心自酸楚。 況對木瓜山。

(下し文)木瓜山を望む
早く起きて 日の出る を見、幕に横島の還る を見る。
客心 自(おのずから)酸楚、況や木瓜山に対する をや。


(現代語訳)
毎日、朝早く起きて日の出を見て、日の暮れにねぐらにいそぐ鳥のかえってゆくのを見る。(おなじことをしているだけなのだ。)
でもその当たり前も、旅先にあるわたしの心は、自然とかなしくなり、そしてすっぱいものを食べたときの感覚になってくる。それというのは、すっぱい味を連想させる木瓜山を前にしては、なおさらのことだ。


(訳注) 望木瓜山
木瓜山 湖南省常徳県洞庭湖の西側に位置し、陶淵明の。桃源郷に近いところ。詩の雰囲気も陶淵明の雰囲気を持っている。もうひとつは、秋浦、いまの安徽省貴地県と、どちらにも木瓜山という山があり、ともに李白がよく遊んだところ。この詩はどちらなのか、わからない。


早起見日出。 暮見棲鳥還。
毎日、朝早く起きて日の出を見て、日の暮れにねぐらにいそぐ鳥のかえってゆくのを見る。(おなじことをしているだけなのだ。)
○ 榛鳥 ねぐらに帰る鳥。


客心自酸楚。 況對木瓜山
でもその当たり前も、旅先にあるわたしの心は、自然とかなしくなり、そしてすっぱいものを食べたときの感覚になってくる。それというのは、すっぱい味を連想させる木瓜山を前にしては、なおさらのことだ。
客心 旅人の心。○酸楚 すっぱい。つらい、かなしい。○木瓜 ばら科の落葉溶木。和名ボケ。実は形が小瓜のよう、味は酸味を帯びる。

木瓜00
                      木瓜の花                                                   木瓜の実



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望廬山瀑布 二首其二(絶句) 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -229

望廬山瀑布 二首其二(絶句) 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -229

日本人には「望廬山瀑布」として、この絶句の方が広く知られている。五言古詩「望廬山瀑布 二首其一」の要約篇七言絶句「望廬山瀑布水二首 其二」としている。李白は以下の詩でも同じ手法をとっている。
越女詞 五首 其一~其五の絶句五首を五言律詩「採連曲」にまとめ、五言絶句「淥水曲」 にしている。
また、雑言古詩「襄陽歌」を五言絶句「襄陽曲」其一~其四にしている。

■李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集

越女詞 五首 其一 李白12

越女詞 五首 其二 李白13

越女詞五首其三 14其四 12-5其五

李白10  採蓮曲

淥水曲  李白 11



李白と道教48襄陽歌ⅰ 李白と道教48襄陽歌 ⅱ

李白と道教(7)襄陽曲49から52




望廬山瀑布水二首 其一
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』

望廬山瀑布 二首其二
日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。
太陽が香炉峰を照らしはじめると 光に映えて紫のかすみがわきあがってくる、この嶺の上から遥か彼方に一筋の瀧がみえる  まるで向こうの川まで掛けた川のようになってみえる。
飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。

飛び出している流れが真下に落ちている 三千尺という長さだ。まるで大空の一番高い所から、天の川が落ちてくるのかと思えるのだ。



日は香炉(こうろ)を照らして紫煙(しえん)を生ず

遥かに看()る  瀑布の前川(ぜんせん)を挂()かるを

飛流(ひりゅう)   直下(ちょっか)  三千尺

疑うらくは是()れ  銀河の九天より落つるかと



絶句としてのきれいな対句

日照香炉紫煙遥看瀑布

飛流直下三千尺、疑是銀河落九天



五言絶句としても
香炉生紫煙、瀑布挂前川。
直下三千尺、銀河落九天。



四六駢儷文に読める
日照遥看 飛流疑是


香炉瀑布 直下銀河

紫煙

三千尺落九天




望廬山瀑布 二首其二 現代語訳と訳註

(本文)
日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。
飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。


(下し文)
日は香炉(こうろ)を照らして紫煙(しえん)を生ず
遥かに看(み)る  瀑布の前川(ぜんせん)を挂(か)かるを
飛流(ひりゅう)   直下(ちょっか)  三千尺
疑うらくは是(こ)れ  銀河の九天より落つるかと


(現代語下し文)
香炉峰に陽がさすと  紫の靄(もや)がわいてくる、遥か彼方に一筋の瀧  まるで向こうの川まで掛けた川。
飛び出す流れは直下して三千尺、まるで天から  銀河が落ちてくる。


 (現代語訳)
太陽が香炉峰を照らしはじめると 光に映えて紫のかすみがわきあがってくる、この嶺の上から遥か彼方に一筋の瀧がみえる  まるで向こうの川まで掛けた川のようになってみえる。
飛び出している流れが真下に落ちている 三千尺という長さだ。まるで大空の一番高い所から、天の川が落ちてくるのかと思えるのだ。


(訳注)
日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。
太陽が香炉峰を照らしはじめると 光に映えて紫のかすみがわきあがってくる、この嶺の上から遥か彼方に一筋の瀧がみえる  まるで向こうの川まで掛けた川のようになってみえる。
○日照 日は白日、太陽のこと。○香炉 香炉峰: 白居易の詩の一節(「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」)や『枕草子』への引用などで知られる。○紫煙 紫のかすみ。煙は、香炉の縁語。○瀑布 滝。○前川 向こうの川。別の本では長川となっているが、景色としては前川の方が奥深い。


飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。
飛び出している流れが真下に落ちている 三千尺という長さだ。まるで大空の一番高い所から、天の川が落ちてくるのかと思えるのだ。
○飛流 見上げる高い所から流れが飛び出してくる○銀河 天の川。○九天 中華思想で天地は九で区分される。地は九州、天は九天、その真ん中を示す語である。


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望廬山瀑布 二首其二(絶句) 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -229

望廬山瀑布 二首其二(絶句) 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -229

日本人には「望廬山瀑布」として、この絶句の方が広く知られている。五言古詩「望廬山瀑布 二首其一」の要約篇七言絶句「望廬山瀑布水二首 其二」としている。李白は以下の詩でも同じ手法をとっている。
越女詞 五首 其一~其五の絶句五首を五言律詩「採連曲」にまとめ、五言絶句「淥水曲」 にしている。
また、雑言古詩「襄陽歌」を五言絶句「襄陽曲」其一~其四にしている。

■李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集

越女詞 五首 其一 李白12

越女詞 五首 其二 李白13

越女詞五首其三 14其四 12-5其五

李白10  採蓮曲

淥水曲  李白 11

 

李白と道教48襄陽歌ⅰ 李白と道教48襄陽歌 ⅱ

李白と道教(7)襄陽曲49から52


 望廬山瀑布水二首 其一
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』

望廬山瀑布 二首其二
日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。
香炉峰に陽がさすと  紫の靄(もや)がわいてくる、遥か彼方に一筋の瀧  まるで向こうの川まで掛けた川。
飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。

飛び出す流れは直下して三千尺、まるで天から  銀河が落ちてくる。

日は香炉(こうろ)を照らして紫煙(しえん)を生ず
遥かに看(み)る  瀑布の前川(ぜんせん)を挂(か)かるを
飛流(ひりゅう)   直下(ちょっか)  三千尺
疑うらくは是(こ)れ  銀河の九天より落つるかと


絶句としてのきれいな対句

日照香炉紫煙遥看瀑布

飛流直下三千尺、疑是銀河落九天

 

四六駢儷文に読める

日照遥看 飛流疑是

香炉瀑布 直下銀河

紫煙

三千尺落九天



nat0002

望廬山瀑布 二首其二 現代語訳と訳註
(本文)

日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。
飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。

(下し文)
日は香炉(こうろ)を照らして紫煙(しえん)を生ず
遥かに看(み)る  瀑布の前川(ぜんせん)を挂(か)かるを
飛流(ひりゅう)   直下(ちょっか)  三千尺
疑うらくは是(こ)れ  銀河の九天より落つるかと


(現代語下し文)
香炉峰に陽がさすと  紫の靄(もや)がわいてくる、遥か彼方に一筋の瀧  まるで向こうの川まで掛けた川。
飛び出す流れは直下して三千尺、まるで天から  銀河が落ちてくる。


 (現代語訳)
太陽が香炉峰を照らしはじめると 光に映えて紫のかすみがわきあがってくる、この嶺の上から遥か彼方に一筋の瀧がみえる  まるで向こうの川まで掛けた川のようになってみえる。
飛び出している流れが真下に落ちている 三千尺という長さだ。まるで大空の一番高い所から、天の川が落ちてくるのかと思えるのだ。


(訳注)
日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。

太陽が香炉峰を照らしはじめると 光に映えて紫のかすみがわきあがってくる、この嶺の上から遥か彼方に一筋の瀧がみえる  まるで向こうの川まで掛けた川のようになってみえる。
日照 日は白日、太陽のこと。○香炉 香炉峰: 白居易の詩の一節(「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」)や『枕草子』への引用などで知られる。○紫煙 紫のかすみ。煙は、香炉の縁語。○瀑布 滝。○前川 向こうの川。別の本では長川となっているが、景色としては前川の方が奥深い。


飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。
飛び出している流れが真下に落ちている 三千尺という長さだ。まるで大空の一番高い所から、天の川が落ちてくるのかと思えるのだ。
飛流 見上げる高い所から流れが飛び出してくる○銀河 天の川。○九天 中華思想で天地は九で区分される。地は九州、天は九天、その真ん中を示す語である。

望廬山瀑布水二首 其一#2とまとめ 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -228

望廬山瀑布水二首 其一#2とまとめ 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -228


望廬山瀑布水二首 其一
#1
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
#2
空中亂潀射。左右洗青壁。
水のかたまりがどっと流れ落る、空中でぶつかり、いりみだれ、打ち合っている、そして左右に砕けて、青苔のむす岩壁に降りかかり洗う。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
とびちる水玉はうすい霞にかわってゆく、水泡まじりのながれは大岩の中から沸騰して湧き出ているようだ。
而我樂名山。對之心益閑。
これほどの景色の中でわたしは名山をこころから楽しむことができる、山とむかいあっていると心が落ち着きのびのびするのである。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
仙人の玉の薬液で口をそそいるのではない、ここにある滝のしぶき、水で俗世界の塵にまみれた顔を洗うことが出来る。
且諧宿所好。永愿辭人間。』

これはともかく、自分の元から一番気に入った場所なのだ。永久に人のすむ世界にわかれをつげ隠遁したいと思うのだ。
 

西のかた香炉峰(こうろほう)に登り、南のかた瀑布(ばくふ)の水を見る。
流れを掛くること三百丈、壑(たに)に噴(ふ)くこと数十里。
歘(くつ)として飛電(ひでん)の 来(きた)るが如く、隠(いん)として白虹(はくこう)の 起(た)つが若(ごと)し。
初めは驚く  河漢(かかん)の 落ちて、半(なか)ば 雲天(うんてん)の裏(うち)より灑(そそ)ぐかと。
仰ぎ観(み)れば   勢い転(うた)た 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉  造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう)  吹けども断(た)たず、江月(こうげつ)  照らすも還(ま)た 空(くう)なり。』

空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう)  青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ)  軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ)  穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。
而(しこう)して  我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ  瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは得たり  塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは諧(かなう)  宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う 人間(じんかん)を辞する を。




望廬山瀑布水二首 其一 #2 現代語訳と訳註
(本文)#2

空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』

(下し文)
空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう)  青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ)  軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ)  穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。
而(しこう)して  我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ  瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは得たり  塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは諧(かなう)  宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う 人間(じんかん)を辞する を。

(現代語訳)
水のかたまりがどっと流れ落る、空中でぶつかり、いりみだれ、打ち合っている、そして左右に砕けて、青苔のむす岩壁に降りかかり洗う。
とびちる水玉はうすい霞にかわってゆく、水泡まじりのながれは大岩の中から沸騰して湧き出ているようだ。
これほどの景色の中でわたしは名山をこころから楽しむことができる、山とむかいあっていると心が落ち着きのびのびするのである。
仙人の玉の薬液で口をそそいるのではない、ここにある滝のしぶき、水で俗世界の塵にまみれた顔を洗うことが出来る。
これはともかく、自分の元から一番気に入った場所なのだ。永久に人のすむ世界にわかれをつげ隠遁したいと思うのだ。


(訳注)
空中亂潀射。左右洗青壁。
水のかたまりがどっと流れ落る、空中でぶつかり、いりみだれ、打ち合っている、そして左右に砕けて、青苔のむす岩壁に降りかかり洗う。
 水があつまること。

飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
とびちる水玉はうすい霞にかわってゆく、水泡まじりのながれは大岩の中から沸騰して湧き出ているようだ。
○穹 大岩。

而我樂名山。對之心益閑。
これほどの景色の中でわたしは名山をこころから楽しむことができる、山とむかいあっていると心が落ち着きのびのびするのである。

無論漱瓊液。且得洗塵顏。
人の玉の薬液で口をそそいるのではない、ここにある滝のしぶき、水で俗世界の塵にまみれた顔を洗うことが出来る
 仙人の薬。○塵頗 俗讐まみれた顔。

且諧宿所好。永愿辭人間。』
これはともかく、自分の元から一番気に入った場所なのだ。永久に人のすむ世界にわかれをつげ隠遁したいと思うのだ。
 1 調和する。やわらぐ。「諧声・諧調・諧和/和諧」 2 冗談。ユーモア。「諧謔(かいぎゃく)/俳諧」 [名のり]なリ・ゆき。3.気に入る。○ つつしむ。ひかえる。隠遁する意味に使う。○人間 俗人のすむ世界。



まとめ

望廬山瀑布水二首 其一
#1
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
#2
空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』

(一般下し文)
西のかた香炉峰(こうろほう)に登り、南のかた瀑布(ばくふ)の水を見る。』
流れを掛くること三百丈、壑(たに)に噴(ふ)くこと数十里。
歘(くつ)として 飛電(ひでん)の 来(きた)るが如く、隠(いん)として白虹(はくこう)の 起(た)つが若(ごと)し。
初めは驚く  河漢(かかん)の 落ちて、半(なかば) 雲天(うんてん)の裏(うち)より灑(そそ)ぐかと。』
仰ぎ観(み)れば   勢い転(うたた) 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉  造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう)  吹けども断(た)たず、江月(こうげつ)  照らすも還(また) 空(くう)なり。』
#2
空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう)  青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ)  軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ)  穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。』
而(しこう)して  我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ  瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは 得 たり  塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは 諧(かなう)  宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う   人間(じんかん)を辞する を。』


(現代語下し文)廬山の瀑布を望む 二首其の一
西のかた  香炉峰に登ると、南に瀧の落ちるのが見える。』
岸壁にかかる高さは三百丈、谷間のしぶきは数十里にわたる。
稲妻のように落ちるかと思えば、朦朧として白い虹が立つようだ。
はじめは 銀河が落ちるかと驚き、雲海から注ぐかと息をのむ。』
仰ぎ見れば  勢いはますます強く、大自然の壮大な力に圧倒される。
海からの風にも 吹きちぎられることはなく、江上の月の光は なすところなく照っている。』
水は乱れて 空中でぶつかり合い、苔むすあたりの岩肌を洗う。
飛び散る水は 軽やかな霞となって広がり、流れる飛沫は 岩にあたって舞いあがる。』
かくて私は 名山に遊び、山と向かい合って 心はますますのどかである。
清らかな水で 口を漱ぐのは当然のこと、俗塵にまみれた顔を 洗うこともできるのだ。
かねてからの私の好みに合っているところだ、俗世から辞してつつましくすることが  永い間の願いであるからだ。』


(解説)
 この詩は瀧に注目し、瀧の雄大さを長江の雄大さを交えて描いている。「河漢」(銀河)が落ちるかと驚き、「雲天」(雲海)から注ぐか、と、非常に斬新な表現であらわしている。

瀧は自然の壮大な力の象徴としてさらに細かく描写し、流れ落ちる瀧の水は空中でぶつかり合い、飛沫となって舞い上がる。李白詩の強烈な表現力は、この次に集約される。


仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』

仰ぎ観(み)れば   勢い転(うたた) 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉  造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう)  吹けども断(た)たず、江月(こうげつ)  照らすも還(また) 空(くう)なり。』

天を仰ぎ見てみると、見れば見るほど勢いは雄大である。なんとすばらしいものだろう、天の造化のたくみには感心させられる。
はるばると海辺から風がたえまなく吹きよせてくる。
この雄大な長江を照らした月のひかりは、水に反射してその光を大空にかえしている。』

「江月照還空」「飛珠散輕霞。流沫沸穹石。」李白ならではの感覚である。


安禄山の叛乱軍が各地で好き勝手なことをしていても、李白一人でできることは、叛乱軍に捕まらないことであった。「謫仙人」と都での有名人であったため、下手な動きはできなかった。李白の知っている武将たちも次々と叛乱軍に降伏していた時期である。


名山をこよなく愛した李白の感想は、山と向かい「心益々閑」となった李白は、清らかな水で口をすすぎ、俗世の塵にまみれた顔を洗い清め、「人間を辞」し、隠遁したいと願うのである。

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望廬山瀑布水 二首李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -227


望廬山瀑布水二首 其一
#1
西登香爐峰。南見瀑布水。』
西に位置する香炉峰に登った、南のほうには瀑布の水が見える。
挂流三百丈。噴壑數十里。
水の流れが落ちかかる長さは、三百丈になる。一気に落ちる勢いでもって谷間に噴出す、その距離は数十里にたっする。
欻如飛電來。隱若白虹起。
時に稲光が走ったように見えるかと思えることがある、あるいは、暗いとこからばあっと真っ白な橋がかかり、虹が立ったように見えるのである。
初驚河漢落。半洒云天里。』
これを見て初めて驚いた、まるで天の川が落ちてきたのかと思うほどなのだ、そしてそれが空の雲の中にそそぎこまれているような錯覚をしてしまうのだ。
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
天を仰ぎ見てみると、見れば見るほど勢いは雄大である。なんとすばらしいものだろう、天の造化のたくみには感心させられる。
はるばると海辺から風がたえまなく吹きよせてくる。

海風吹不斷。江月照還空。』
この雄大な長江を照らした月のひかりは、水に反射してその光を大空にかえしている。』
#2
空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』

西のかた香炉峰(こうろほう)に登り、南のかた瀑布(ばくふ)の水を見る。
流れを掛くること三百丈、壑(たに)に噴(ふ)くこと数十里。
歘(くつ)として 飛電(ひでん)の 来(きた)るが如く、隠(いん)として白虹(はくこう)の 起(た)つが若(ごと)し。
初めは驚く  河漢(かかん)の 落ちて、半(なかば) 雲天(うんてん)の裏(うち)より灑(そそ)ぐかと。
仰ぎ観(み)れば   勢い転(うたた) 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉  造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう)  吹けども断(た)たず、江月(こうげつ)  照らすも還(また) 空(くう)なり。』
#2
空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう)  青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ)  軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ)  穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。
而(しこう)して  我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ  瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは 得 たり  塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは 諧(かなう)  宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う   人間(じんかん)を辞する を。

望廬山瀑布水二首其一 現代語訳と訳註
(本文) #1
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』


(下し文)
西のかた香炉峰(こうろほう)に登り、南のかた瀑布(ばくふ)の水を見る。
流れを掛くること三百丈、壑(たに)に噴(ふ)くこと数十里。
歘(くつ)として飛電(ひでん)の来(きた)るが如く、隠(いん)として白虹(はくこう)の起(た)つが若(ごと)し。
初めは驚く  河漢(かかん)の落ちて、半(なか)ば雲天(うんてん)の裏(うち)より灑(そそ)ぐかと。
仰ぎ観(み)れば   勢い転(うた)た雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉  造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう)  吹けども断(た)たず、江月(こうげつ)  照らすも還(ま)た空(くう)なり。』

(現代語訳)
西に位置する香炉峰に登った、南のほうには瀑布の水が見える。
水の流れが落ちかかる長さは、三百丈になる。一気に落ちる勢いでもって谷間に噴出す、その距離は数十里にたっする。
時に稲光が走ったように見えるかと思えることがある、あるいは、暗いとこからばあっと真っ白な橋がかかり、虹が立ったように見えるのである。
これを見て初めて驚いた、まるで天の川が落ちてきたのかと思うほどなのだ、そしてそれが空の雲の中にそそぎこまれているような錯覚をしてしまうのだ。
天を仰ぎ見てみると、見れば見るほど勢いは雄大である。なんとすばらしいものだろう、天の造化のたくみには感心させられる。
はるばると海辺から風がたえまなく吹きよせてくる。
この雄大な長江を照らした月のひかりは、水に反射してその光を大空にかえしている。』


(訳注)
西登香爐峰。南見瀑布水。』

西に位置する香炉峰に登った、南のほうには瀑布の水が見える。
廬山 主峰で江西省最高峰。海抜1,474メートル。九江の南にそびえる名山。北は長江、東から南にかけては鄱陽湖と、三方が水にのぞみ、西は陸地に臨む。奇峰が多く天下の璧号いわれる。○香炉峰 廬山の西北の峰で、細長くて尖が円く、ちょうど香炉(香を焚く糞)に似ている。
廬山は断層の運動によって地塊が周囲からせりあがった断層地塊山地であり、その中に川や谷、湖沼、峰など多様な相貌をもつ。中国における第四紀の氷河が形成した地形の典型とも評され、この観点からジオパーク(世界地質公園)に指定されている。主峰の漢陽峰(大漢陽峰)は海抜が1,474メートルであるが、その周囲には多数の峰がそびえ、その間に渓谷、断崖絶壁、瀑布、洞窟など複雑な地形が生じている。
五老峰: 海抜1,436メートルの奇岩の峰。形が、五人の老人が座っているように見えることからきている。
漢陽峰: ピラミッド状の形をした廬山の主峰で江西省最高峰。海抜1,474メートル。
香炉峰: 白居易の詩の一節(「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」)や『枕草子』への引用などで知られる。
三畳泉: 落差155メートルの大きな滝。
龍首崖: 空中に突き出した崖。明代の寺院・天池寺の跡地に近い。
含鄱口: 五老峰と太乙峰の間の谷間。鄱陽湖に面しているため、湖からの水蒸気がここで霧となって峰々を覆い隠している。


挂流三百丈。噴壑數十里。
水の流れが落ちかかる長さは、三百丈になる。一気に落ちる勢いでもって谷間に噴出す、その距離は数十里にたっする。
 掛と同じ。○ 谷、谷間。


欻如飛電來。隱若白虹起。
時に稲光が走ったように見えるかと思えることがある、あるいは、暗いとこからばあっと真っ白な橋がかかり、虹が立ったように見えるのである。
忽と同じ。にわかに。○飛電 稲妻。○隠 不分明のさま。


初驚河漢落。半洒云天里。』
これを見て初めて驚いた、まるで天の川が落ちてきたのかと思うほどなのだ、そしてそれが空の雲の中にそそぎこまれているような錯覚をしてしまうのだ。
河漢 天の川。○半洒 半分灌ぐかのように見えるという意味。○云天里 空の雲かたまりの中。


仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
天を仰ぎ見てみると、見れば見るほど勢いは雄大である。なんとすばらしいものだろう、天の造化のたくみには感心させられる。


海風吹不斷。江月照還空。』
はるばると海辺から風がたえまなく吹きよせてくる。この雄大な長江を照らした月のひかりは、水に反射してその光を大空にかえしている。』
海風 世界のはてから吹きよせる風。

日本の河と違い長江は大河である。その雄大な景色を言うのである。日本で考えれば、瀬戸内海の中に千数百メートルの山があり、その山から100メートル以上の滝の水が落ちている。大きな川の鏡のような水面に月が映る、滝の山水画の世界である。

(#2につづく。)
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望廬山五老峯 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -226

廬山は断層の運動によって地塊が周囲からせりあがった断層地塊山地であり、その中に川や谷、湖沼、峰など多様な相貌をもつ。中国における第四紀の氷河が形成した地形の典型とも評され、この観点からジオパーク(世界地質公園)に指定されている。主峰の漢陽峰(大漢陽峰)は海抜が1,474メートルであるが、その周囲には多数の峰がそびえ、その間に渓谷、断崖絶壁、瀑布、洞窟など複雑な地形が生じている。


 五老峰: 海抜1,436メートルの奇岩の峰。形が、五人の老人が座っているように見えることからきている。
 漢陽峰: ピラミッド状の形をした廬山の主峰で江西省最高峰。海抜1,474メートル。
 香炉峰: 白居易の詩の一節(「香炉峰の雪は簾を撥げて看る」)や『枕草子』への引用などで知られる。
 三畳泉: 落差155メートルの大きな滝。
 龍首崖: 空中に突き出した崖。明代の寺院・天池寺の跡地に近い。
 含鄱口: 五老峰と太乙峰の間の谷間。鄱陽湖に面しているため、湖からの水蒸気がここで霧となって峰々を覆い隠している。

望廬山五老峯
廬山東南五老峯,青天削出金芙蓉。
廬山の東南に五老峰がある、青空の中から金色かがやく芙蓉の花を削り出したかのようだ。 
九江秀色可攬結,吾將此地巣雲松。

長江の支流、分流である九江のすばらしい景色が手に取るように見える。わたしはこの地で浮き世を離れ、高い雲のかかった松に巣を作って隠棲しようと思う。


廬山の五老峰を望む

廬山東南 五老峯,青天 削り出だす 金芙蓉。

九江の秀色を 攬結(らんけつ)す可(べ)き,

吾(われ) 此(こ)の地を將(も)って 雲松に巣(すく)はん。



望廬山五老峯 現代語訳と訳註
(本文)

廬山東南五老峯,青天削出金芙蓉。
九江秀色可攬結,吾將此地巣雲松。

(下し文) 廬山の五老峰を望む
廬山 東南  五老峯,
青天 削り出だす  金芙蓉。
九江の秀色を  攬結(らんけつ)す可(べ)き,
吾(われ) 此(こ)の地を將(も)って  雲松に巣(すく)はん。


李白の足跡55

(現代語訳)
廬山の東南に五老峰がある、青空の中から金色かがやく芙蓉の花を削り出したかのようだ。 
長江の支流、分流である九江のすばらしい景色が手に取るように見える。わたしはこの地で浮き世を離れ、高い雲のかかった松に巣を作って隠棲しようと思う。


(訳注)
望廬山五老峰

廬山の東南部分の嶺。本来、山の麓側(陽湖側=東側)からの眺めによって呼ばれた嶺嶺。五つ六つの嶺の稜線が、恰も五人の老人が背を丸めて並んでいるようにも、肩を組んで並んでいるかのようにも見えることから呼ばれた。李白は五老峰の近くの山の中に太白書堂を建ててそこに隠棲しようとした。


廬山東南五老峰、青天削出金芙蓉。
廬山の東南に五老峰がある、青空の中から金色かがやく芙蓉の花を削り出したかのようだ。 
東南 廬山は山塊、山地といった山で、その山塊の東南部分が五老峰にあたる。○削出 彫り出す。 ○金芙蓉 金色に輝くハスの花。また、金色に輝く芙蓉の花。五老峰が陽光で黄金色に輝く。


九江秀色可攬結、吾將此地巣雲松。
長江の支流、分流である九江のすばらしい景色が手に取るように見える。わたしはこの地で浮き世を離れ、高い雲のかかった松に巣を作って隠棲しようと思う。
九江 北側の眼下にある尋陽(いまの江西省九江市)のあたりには、長江の九つの支流があつまって、廬山の北を流れる。現・九江市がある。 ・秀色 ひいでた景色。すぐれた景色。 ○攬結 刈り取った稲束のようにとりまとめる。とりあつめる。○ すくう。巣を作る。ここでは、隠棲するの意。 ○雲松 浮き世を離れ、雲のかかった背の高い松。


○押韻 峯、蓉。松。


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