助詞の整理と解説(2)あえて 敢、肯
2 | 敢 肯 | あえて | カン コウ | |
2 敢 肯 あえて カン、コウ
敢は ……する勇気がある、遠慮なしにする。 肯は ……する気がある。
「近聞下詔喧都邑,肯使騏驎地上行。」(近ろ聞く詔を下して都邑に喧しと、肯て麒麟をして地上に行かしめんや
驄馬行 杜甫:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 102
五言絶句 『答武陵田太守』 王昌齡
仗劍行千里,微軀敢一言。
曾爲大梁客,不負信陵恩。
(「武陵の田太守に答ふ」劍に仗(よ)りて 千里を行き,微軀(びく) 敢(あえ)て感ず。曾て 大梁の客と爲りたれば,信陵の恩に負(そむ)かず。)
『客至』 杜甫 七言律詩
舍南舍北皆春水、但見群鷗日日來。
花徑不曾緣客掃、篷門今始為君開。
盤飧市遠無兼味、樽酒家貧只舊醅。
肯與鄰翁相對飲、隔籬呼取盡餘杯。
(舎南(しゃなん)舎北(しゃほく)皆 春水(しゅんすい)、但見る群鷗の日日に來るを。花径 曾(かつ)て客に縁って掃(はら)わず、篷門(ほうもん)今始めて君が為に開く。盤飧(ばんそん)市 遠くして兼味(けんみ)無く、樽酒(そんしゅ) 家貧にして只だ旧醅(きゅうばい)あるのみ
肯(あえ)て隣翁と相(あい)対して飲まんや、籬(まがき)を隔てて呼び取りて余杯(よはい)を尽さしめん。)
『老將行』王維 七言古詩 一部
少年十五二十時、步行奪取胡馬騎。
射殺山中白額虎、肯數鄴下黃鬚兒。
・・・・・・・・・・・・
(少年 十五、二十の時、步行 胡馬を奪取して騎る。射殺す 山中 白額の虎、肯て數えんや鄴下(ぎょうか)黃鬚(こうしゅ)の兒。
上に疑問の助字がつくと反語となる。
「安くんぞ敢て」
「和虜猶懷惠,防邊詎敢驚。」(虜に和するすら猶 恵に懐(な)つく、辺を防ぐに 詎(なん)ぞ敢て驚かさんや奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻 #2 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 189
「誰か肯で」。しかし
「誰肯艱難際,豁達露心肝。」(誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。)
彭衙行 #4 杜甫 135 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132
「但使閭閻還揖讓,敢論松竹久荒蕪。」(但だ開閉をして還た揖譲せしめば、敢て論ぜんや松竹の久しく荒蕪するを)『將赴成都草堂途中有作,先寄嚴鄭公 五首 其一』
「問之不肯道姓名,但道困苦乞為奴。」(之に問えども 肯て 姓名を這わず、但だ 這う困苦なり乞う奴と為らんと。)『哀王孫』
「不敢長語臨交衢,且為王孫立斯須。」(敢て 長話して 交衝に臨まず、且つ王孫の為めに立つこと斯須。)