漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之のブログ 女性詩、漢詩・建安六朝・唐詩・李白詩 1000首:李白集校注に基づき時系列に訳注解説

李白の詩を紹介。青年期の放浪時代。朝廷に上がった時期。失意して、再び放浪。李白の安史の乱。再び長江を下る。そして臨終の歌。李白1000という意味は、目安として1000首以上掲載し、その後、系統別、時系列に整理するということ。 古詩、謝霊運、三曹の詩は既掲載済。女性詩。六朝詩。文選、玉臺新詠など、李白詩に影響を与えた六朝詩のおもなものは既掲載している2015.7月から李白を再掲載開始、(掲載約3~4年の予定)。作品の作時期との関係なく掲載漏れの作品も掲載するつもり。李白詩は、時期設定は大まかにとらえる必要があるので、従来の整理と異なる場合もある。現在400首以上、掲載した。今、李白詩全詩訳注掲載中。

▼絶句・律詩など短詩をだけ読んでいたのではその詩人の良さは分からないもの。▼長詩、シリーズを割席しては理解は深まらない。▼漢詩は、諸々の決まりで作られている。日本人が読む漢詩の良さはそういう決まり事ではない中国人の自然に対する、人に対する、生きていくことに対する、愛することに対する理想を述べているのをくみ取ることにあると思う。▼詩人の長詩の中にその詩人の性格、技量が表れる。▼李白詩からよこみちにそれているが、途中で孟浩然を45首程度(掲載済)、謝霊運を80首程度(掲載済み)。そして、女性古詩。六朝、有名な賦、その後、李白詩全詩訳注を約4~5年かけて掲載する予定で整理している。
その後ブログ掲載予定順は、王維、白居易、の順で掲載予定。▼このほか同時に、Ⅲ杜甫詩のブログ3年の予定http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/、唐宋詩人のブログ(Ⅱ李商隠、韓愈グループ。)も掲載中である。http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/,Ⅴ晩唐五代宋詞・花間集・玉臺新詠http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/▼また漢詩理解のためにHPもいくつかサイトがある。≪ kanbuniinkai ≫[検索]で、「漢詩・唐詩」理解を深めるものになっている。
◎漢文委員会のHP http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/profile1.html
Author:漢文委員会 紀 頌之です。
大病を患い大手術の結果、半年ぶりに復帰しました。心機一転、ブログを開始します。(11/1)
ずいぶん回復してきました。(12/10)
訪問ありがとうございます。いつもありがとうございます。
リンクはフリーです。報告、承諾は無用です。
ただ、コメント頂いたても、こちらからの返礼対応ができません。というのも、
毎日、6 BLOG,20000字以上活字にしているからです。
漢詩、唐詩は、日本の詩人に大きな影響を残しました。
だからこそ、漢詩をできるだけ正確に、出来るだけ日本人の感覚で、解釈して,紹介しています。
体の続く限り、広げ、深めていきたいと思っています。掲載文について、いまのところ、すべて自由に使ってもらって結構ですが、節度あるものにして下さい。
どうぞよろしくお願いします。

古詩十九首

古詩十九首之十九 漢の無名氏(19) 漢詩<107>Ⅱ李白に影響を与えた詩541 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1440

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   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
      2011/7/11 ~ 2012/1/11 まで毎日掲載 全130首(187回) 
   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     


古詩十九首之第十九首
明月何皎皎,照我羅床緯。
なんと秋の月の光の明るいことよ。わたしの寝台牀のうすぎぬのカーテンを照らしている。
憂愁不能寐,攬衣起徘徊。
わたしは遠い旅に出ている夫の身を思うと心配で寝むれない、衣のすそをかかげてたちあがり、あたりをぶらぶら歩いてみる。
客行雖雲樂,不如早旋歸。
旅に出るのは楽しいとあなたはいいますが、早く帰宅する方が何よりいいはずでしょう。
出戶獨彷徨,愁思當告誰!
そんなことを思いながら戸口を出てひとり彷徨い歩くだけなのだ。こんな心の愁いは誰につげたらよいものか。
引領還入房,淚下沾裳衣。
首をながくのばして夫の方を望み、ふりかえって、わが部屋にはいるしかない、涙は流れおちて衣裳をぬらすのである。



現代語訳と訳註
(本文)
第十九首
明月何皎皎,照我羅床緯。
憂愁不能寐,攬衣起徘徊。
客行雖雲樂,不如早旋歸。
出戶獨彷徨,愁思當告誰!
引領還入房,淚下沾裳衣。


(下し文)
明月何ぞ皎皎たる、我が羅【うすぎぬ】の床緯【しょうい】を照す。
憂愁して寐【い】ぬる能はず、衣を攬【と】りて起って徘徊【はいかい】す。
客行楽しと云ふと雖も、早く旋歸【せんき】するに如【し】かじ。
戸を出でて獨り彷徨【ほうこう】し、愁思當【まさ】に誰にか告ぐべき。
領【くび】を引きて還りて房に入れば、涙下りて裳衣を清す。


(現代語訳)
なんと秋の月の光の明るいことよ。わたしの寝台牀のうすぎぬのカーテンを照らしている。
わたしは遠い旅に出ている夫の身を思うと心配で寝むれない、衣のすそをかかげてたちあがり、あたりをぶらぶら歩いてみる。
旅に出るのは楽しいとあなたはいいますが、早く帰宅する方が何よりいいはずでしょう。
そんなことを思いながら戸口を出てひとり彷徨い歩くだけなのだ。こんな心の愁いは誰につげたらよいものか。
首をながくのばして夫の方を望み、ふりかえって、わが部屋にはいるしかない、涙は流れおちて衣裳をぬらすのである。


(訳注)
第十九首

第十八首 十七詩と同じ、留守居の妻が遠方、月夜夫を憶うて感傷にひたる思慕の情を寄せたのである。男性の目から見た詩である。


明月何皎皎,照我羅床緯。
なんと秋の月の光の明るいことよ。わたしの寝台牀のうすぎぬのカーテンを照らしている。
明月 秋八月の月
古詩十九首之第七首
明月皎夜光,促織鳴東壁。
玉衡指孟冬,眾星何歷歷。
白露沾野草,時節忽復易。
秋蟬鳴樹間,玄鳥逝安適。
李白31 『関山月』「明月出天山、蒼茫雲海間。長風幾萬里、吹度玉門關。」
・皎皎 白く明るいさま。
・羅床緯 薄絹の寝床のたれまく。
古詩十九首 第ニ首
青青河畔艸、欝欝園中柳。
盈盈楼上女、皎皎当窓牅。
娥娥紅紛粧、繊繊出素手。
昔為倡家女、今為蕩子婦。
蕩子行不帰、空牀難独守。

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古詩十九首之第十首
迢迢牽牛星,皎皎河漢女。
纖纖擢素手,札札弄機杼。
終日不成章,泣涕零如雨。
河漢清且淺,相去復幾許。
盈盈一水間,脈脈不得語。

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憂愁不能寐,攬衣起徘徊。
わたしは遠い旅に出ている夫の身を思うと心配で寝むれない、衣のすそをかかげてたちあがり、あたりをぶらぶら歩いてみる。
・攬 手に持つ、つまみとる。


客行雖雲樂,不如早旋歸。
旅に出るのは楽しいとあなたはいいますが、早く帰宅する方が何よりいいはずでしょう。


出戶獨彷徨,愁思當告誰!
そんなことを思いながら戸口を出てひとり彷徨い歩くだけなのだ。こんな心の愁いは誰につげたらよいものか。


引領還入房,淚下沾裳衣。
首をながくのばして夫の方を望み、ふりかえって、わが部屋にはいるしかない、涙は流れおちて衣裳をぬらすのである。
・引領 首を伸ばして遠くを眺める。古詩十九首之十六首
古詩十九首之第十六首 #2
願得常巧笑,攜手同車歸。
既來不須臾,又不處重闈。
亮無晨風翼,焉能淩風飛?
眄睞以適意,引領遙相希。
徒倚懷感傷,垂涕沾雙扉。

古詩十九首之十八 漢の無名氏(18) 漢詩<106>Ⅱ李白に影響を与えた詩540 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1437

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古詩十九首之第十八首
客從遠方來,遺我一端綺。
遠方から訪ねて来た客が、わたしに一反のあやぎぬを届けてくれた。
相去萬餘里,故人心尚爾。
夫からの届け物で、別れて行って、万里以上も隔たってしまったのに、あの人のわたしへの心は昔のままでかわっていないのだ。
文彩雙鴛鴦,裁為合歡被。
この布地の織り模様は番いの鴛鴦であり、これを共寝の夜着に仕立てようとおもう。
著以長相思,緣以結不解。
夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるのだ。
以膠投漆中,誰能別離此?
ニカワを漆の中に入れ込んだら、もう誰でも引き離すことはできないことであるように夫婦仲もそれと同じなのだ。


宮島(5)

現代語訳と訳註
(本文)
第十八首
客從遠方來,遺我一端綺。
相去萬餘里,故人心尚爾。
文彩雙鴛鴦,裁為合歡被。
著以長相思,緣以結不解。
以膠投漆中,誰能別離此?


(下し文)
客遠方より乗り、我に一端の綺を遣る。
相去ること萬餘里なるも、故人の心 尚ほ爾り。
文彩は雙鴛鴦、裁ちて合歓の被と為す。
著するに長相思を以てし、縁とるに結不解を以てす。
膠を以て漆中に投ぜば、誰か能く此を別離せん。


(現代語訳)
遠方から訪ねて来た客が、わたしに一反のあやぎぬを届けてくれた。
夫からの届け物で、別れて行って、万里以上も隔たってしまったのに、あの人のわたしへの心は昔のままでかわっていないのだ。
この布地の織り模様は番いの鴛鴦であり、これを共寝の夜着に仕立てようとおもう。
夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるのだ。
ニカワを漆の中に入れ込んだら、もう誰でも引き離すことはできないことであるように夫婦仲もそれと同じなのだ。


(訳注)
第十八首

・第十八首 十七詩と同じ、留守居の妻が遠方、旅先の夫からあやぎぬの贈り物を受けて、思慕の情を寄せたのである。男性の目から見た詩である。


客從遠方來,遺我一端綺。
遠方から訪ねて来た客が、わたしに一反のあやぎぬを届けてくれた。
一端 一反。周代の制では布帛一丈八尺を端といった。
 文𥿻、あやぎぬ。


相去萬餘里,故人心尚爾。
夫からの届け物で、別れて行って、万里以上も隔たってしまったのに、あの人のわたしへの心は昔のままでかわっていないのだ。


文彩雙鴛鴦,裁為合歡被。
この布地の織り模様は番いの鴛鴦であり、これを共寝の夜着に仕立てようとおもう。
文彩 給の彩紋、織り模様。
合歓被 夫妻同歓の夜具。二枚重ねに縫う。


著以長相思,緣以結不解。
夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるのだ。
・著 中に綿を詰める。
・長相思 綿の縁語。綿綿と長く続く意をとる。
 へりを飾る、ふちとる。
・結不解 糸をかがってほどけぬようにすること。


以膠投漆中,誰能別離此?
ニカワを漆の中に入れ込んだら、もう誰でも引き離すことはできないことであるように夫婦仲もそれと同じなのだ。

古詩十九首之十七 漢の無名氏 (17) 漢詩<104>Ⅱ李白に影響を与えた詩539 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1434

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古詩十九首之第十七首
孟冬寒氣至,北風何慘栗。
冬の初めというのに極寒の気がおとずれ来た、北風のなんとものすごくつめたいことであろうか。
愁多知夜長,仰觀眾星列。
愁いが鬱積して堪らないのに夜が長いのは身にしみるくるしさだ。見上げる空には多くの星かならんでいる。
三五明月滿,四五蟾兔缺。
月は三夜五夜と日々明るくなり、十五夜には満月になる、四夜五夜と蟾蜍に喰われ兔もいなくなり、二十日夜になると欠け月になる。
客從遠方來,遺我一書劄。
こうして辛い月日を過ごしたある日、遠方から訪ねて来た客が、わたしに一連の手紙を渡してくれた。
上言長相思,下言久離別。
夫からの便りで、始めの方には「いつまでも忘れぬ」とあり、文末の方には「もうすこしこの別れが久しくなる」と書いてあった。
置書懷袖中,三歲字不滅。
わたしはこの手紙を懐におさめて肌身離さず大切にし、三年たっても一字も消えてはいないのだ。
一心抱區區,懼君不識察。
心のなかにひとつあるのは夫を思う女心のこまごまとした思い、それをあなたが察してくださらないのかと心配でたまらないのです。


現代語訳と訳註
(本文)
第十七首
孟冬寒氣至,北風何慘栗。
愁多知夜長,仰觀眾星列。
三五明月滿,四五蟾兔缺。
客從遠方來,遺我一書劄。
上言長相思,下言久離別。
置書懷袖中,三歲字不滅。
一心抱區區,懼君不識察。


(下し文)
孟冬寒気至り、北風何ぞ慘栗たる。
愁多くして夜の表きを知り、仰いで衆星の列るを観る。
三五明月満ち、四五蟾兔【せんと】缺く。
客遠方より来り、我に一書札を遣る。
上には長く相思ふと言ひ、下には久しく離別すると言ふ。
書を懐袖【かいしゅう】の中に置き、三歳なるも字滅せず。
一心に區區を抱き、君の識察せざらんことを憤る。


(現代語訳)
冬の初めというのに極寒の気がおとずれ来た、北風のなんとものすごくつめたいことであろうか。
愁いが鬱積して堪らないのに夜が長いのは身にしみるくるしさだ。見上げる空には多くの星かならんでいる。
月は三夜五夜と日々明るくなり、十五夜には満月になる、四夜五夜と蟾蜍に喰われ兔もいなくなり、二十日夜になると欠け月になる。
こうして辛い月日を過ごしたある日、遠方から訪ねて来た客が、わたしに一連の手紙を渡してくれた。
夫からの便りで、始めの方には「いつまでも忘れぬ」とあり、文末の方には「もうすこしこの別れが久しくなる」と書いてあった。
わたしはこの手紙を懐におさめて肌身離さず大切にし、三年たっても一字も消えてはいないのだ。
心のなかにひとつあるのは夫を思う女心のこまごまとした思い、それをあなたが察してくださらないのかと心配でたまらないのです。


(訳注)
 第十七首

留守をまもる思婦が遠く旅先の夫からの音信を得たその情をうたう。男性の目から見たものに変わりはない。


孟冬寒氣至,北風何慘栗。
冬の初めというのに極寒の気がおとずれ来た、北風のなんとものすごくつめたいことであろうか。
・孟冬 初冬十月。
惨憺 寒さのひどくきびしいこと。


愁多知夜長,仰觀眾星列。
愁いが鬱積して堪らないのに夜が長いのは身にしみるくるしさだ。見上げる空には多くの星かならんでいる。


三五明月滿,四五蟾兔缺。
月は三夜五夜と日々明るくなり、十五夜には満月になる、四夜五夜と蟾蜍に喰われ兔もいなくなり、二十日夜になると欠け月になる。
蟾兔 蟾蜍と王兎、月の異名。古の英雄翠の妻恒(嫦)娥が夫から不死の薬を盗んで月中に逃げて、蟾蜍になったという説話(准南子・覧冥訓)と、玉兎が月中に住むという伝説(楚群・天間)とにもとづく。
」。・涼蟾 秋の月をいう。月のなかには轄蛤(ひきがえる)がいると考えられたことから、「蟾」は月の別称に用いられる。・蟾蜍 月に住むといわれるひきがえる。李白「古朗月行」月の満ち欠けはカエルが食べてかけていく。・素蛾・娥娥 嫦娥 神話中の女性。神話の英雄、羿(がい)が西方極遠の地に存在する理想国西王母の国の仙女にお願いしてもらった不死の霊薬を、その妻の嫦娥がぬすみ飲み、急に身軽くなって月世界まで飛びあがり月姫となった。漢の劉安の「淮南子」覧冥訓に登場する。なお、魯迅(1881-l936)にこの神話を小説化した「羿月」【がいげつ】と題する小説がある。


客從遠方來,遺我一書劄。
こうして辛い月日を過ごしたある日、遠方から訪ねて来た客が、わたしに一連の手紙を渡してくれた。
客従遠方来 「古楽府」飲馬長城窟行の「客従遠方来、遺我双鯉魚、呼児烹鯉魚、中有尺素書」(客遠方より来たり、我に双鯉魚を遺ル、児を呼んで鯉魚を烹んとすれば、中に尺素の書有り)に由来する。手紙のこと。「鯉魚尺素」の略。鯉の腹の中から白絹(=素)に書かれた手紙が出てきた故事による。


上言長相思,下言久離別。
夫からの便りで、始めの方には「いつまでも忘れぬ」とあり、文末の方には「もうすこしこの別れが久しくなる」と書いてあった。


置書懷袖中,三歲字不滅。
わたしはこの手紙を懐におさめて肌身離さず大切にし、三年たっても一字も消えてはいないのだ。


一心抱區區,懼君不識察。
心のなかにひとつあるのは夫を思う女心のこまごまとした思い、それをあなたが察してくださらないのかと心配でたまらないのです。
・区区 区は分かつこと。こまごま、くどくどなどの意。自己の愛情を謙遜していうもの。


古詩十九首之十六 漢の無名氏 (16)-2 漢詩<103-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩538 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1431

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古詩十九首之第十六首
凜凜歲雲暮,螻蛄夕鳴悲。
りんりんするような寒さで、歳も暮れかかり、寒吟虫が夜悲しげに鳴く季節となった。
涼風率已厲,遊子寒無衣。
冷風が急にはげしく吹き初める時節になってしまったが、旅に出たままの夫は寒さにそなえた着がえを持っていないのである。
錦衾遺洛浦,同袍與我違。
新婚当時は、わたしは洛浦の女神がきる錦の衾をおくられたものであったが、今は一つ褞袍をともにするという情愛ということがそむいてなくなってしまった。
獨宿累長夜,夢想見容輝。
ひとり寝のながながしい夜を随分重ねる間に、想いが夢になりあなたのすがたを見たのである。
良人惟古歡,枉駕惠前綏。
夢の中の夫は、ただ昔の楽しさを思っているようで、わざわざ車を向けて私に「乗りなさい」と、取り綱を授けてくれたのです。
#2
願得常巧笑,攜手同車歸。
願うことはいつまでも笑顔で夫に向かいたいとおもいつづけたいものと、そして、ともに手を取り、同じ車で帰って来たのであった。
既來不須臾,又不處重闈。
やかてこの家に来たと思ったらいきなり夢は破れて、夫はこの奥の閨にいないのである。
亮無晨風翼,焉能淩風飛?
ほんとのところはやふさの翼をもっていないわたしだから、どうして風を凌いで、遠い旅先の夫の所へ飛んで行けるというのか。
眄睞以適意,引領遙相希。
かなたの空をかえり見て気をはらし、えりくびをさしのべて遙かに望んで見るだけのことなのだ。
徒倚懷感傷,垂涕沾雙扉。
こんな悲しみを胸にいだいて、そこにためらいとどまる、涙は左右の門扉までをぬらすほどなのだ。


凛凛として歳云に暮れ、螻蛄【ろうこ】夕に鳴き悲しむ。
涼風 率【にわ】かに己に厲【はげ】しく、遊子寒くして衣無し。
錦衾【きんきん】洛浦【らくほ】に遣【おく】りしも、同抱我と違【たが】へり。
獨り宿して長夜を累【かさ】ね、夢に想うて容輝を見る。
良人古歡【こかん】を惟【おも】ひ、駕を枉【ま】げて前綏【ぜんすい】を恵まる。

#2
願はくは長く巧笑【こうしょう】するを得んと、手を携へ車を同じうして歸る。
既に来りて須臾【しゅゆ】ならず、又重闈【ちょうい】に盛らず。
亮【もこと】に晨風【しんふう】の翼無し、蔦【いずく】んぞ能く風を凌いで飛ばん。
眄睞【べんらい】以て意に適【かな】ひ、領【くび】を引いて遙かに相希【のぞ】む。
徒倚【しい】して感傷を懐【いだ】き、涕を垂れて雙扉【そうひ】を沾【うるお】す。




現代語訳と訳註
(本文)
第十六首 #2
願得常巧笑,攜手同車歸。
既來不須臾,又不處重闈。
亮無晨風翼,焉能淩風飛?
眄睞以適意,引領遙相希。
徒倚懷感傷,垂涕沾雙扉。


(下し文)
願はくは長く巧笑【こうしょう】するを得んと、手を携へ車を同じうして歸る。
既に来りて須臾【しゅゆ】ならず、又重闈【ちょうい】に盛らず。
亮【もこと】に晨風【しんふう】の翼無し、蔦【いずく】んぞ能く風を凌いで飛ばん。
眄睞【べんらい】以て意に適【かな】ひ、領【くび】を引いて遙かに相希【のぞ】む。
徒倚【しい】して感傷を懐【いだ】き、涕を垂れて雙扉【そうひ】を沾【うるお】す。


(現代語訳)
願うことはいつまでも笑顔で夫に向かいたいとおもいつづけたいものと、そして、ともに手を取り、同じ車で帰って来たのであった。
やかてこの家に来たと思ったらいきなり夢は破れて、夫はこの奥の閨にいないのである。
ほんとのところはやふさの翼をもっていないわたしだから、どうして風を凌いで、遠い旅先の夫の所へ飛んで行けるというのか。
かなたの空をかえり見て気をはらし、えりくびをさしのべて遙かに望んで見るだけのことなのだ。
こんな悲しみを胸にいだいて、そこにためらいとどまる、涙は左右の門扉までをぬらすほどなのだ。


(訳注)
願得常巧笑,攜手同車歸。

願うことはいつまでも笑顔で夫に向かいたいとおもいつづけたいものと、そして、ともに手を取り、同じ車で帰って来たのであった。
巧笑 にこにこした笑顔。


既來不須臾,又不處重闈。
やかてこの家に来たと思ったらいきなり夢は破れて、夫はこの奥の閨にいないのである。
重闈 闈は閏の小門、門を幾つもはいった奥の内室の意。


亮無晨風翼,焉能淩風飛?
ほんとのところはやふさの翼をもっていないわたしだから、どうして風を凌いで、遠い旅先の夫の所へ飛んで行けるというのか。
晨風 はやぶさの額。詩経・秦夙中の篇名。秦の康公が賢臣を棄てたのをそしった詩。
『詩経、秦風、』晨風 鴪彼晨風
鴥彼晨風.鬱彼北林.未見君子.憂心欽欽.
如何如何.忘我實多
山有苞櫟.隰有六駮.未見君子.憂心靡樂.
如何如何.忘我實多


眄睞以適意,引領遙相希。
かなたの空をかえり見て気をはらし、えりくびをさしのべて遙かに望んで見るだけのことなのだ。
眄睞 眄は斜視、ふりかえり視る。睞は旁視、見まわす。
引領 えりくびを延ばして遠方を望みみる。


徒倚懷感傷,垂涕沾雙扉。
こんな悲しみを胸にいだいて、そこにためらいとどまる、涙は左右の門扉までをぬらすほどなのだ。
徒倚  ためらいとどまる。

古詩十九首之十六 漢の無名氏(16)-1 漢詩<103-#1>Ⅱ李白に影響を与えた詩537 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1428

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古詩十九首之第十六首
凜凜歲雲暮,螻蛄夕鳴悲。
りんりんするような寒さで、歳も暮れかかり、寒吟虫が夜悲しげに鳴く季節となった。
涼風率已厲,遊子寒無衣。
冷風が急にはげしく吹き初める時節になってしまったが、旅に出たままの夫は寒さにそなえた着がえを持っていないのである。
錦衾遺洛浦,同袍與我違。
新婚当時は、わたしは洛浦の女神がきる錦の衾をおくられたものであったが、今は一つ褞袍をともにするという情愛ということがそむいてなくなってしまった。
獨宿累長夜,夢想見容輝。
ひとり寝のながながしい夜を随分重ねる間に、想いが夢になりあなたのすがたを見たのである。
良人惟古歡,枉駕惠前綏。
夢の中の夫は、ただ昔の楽しさを思っているようで、わざわざ車を向けて私に「乗りなさい」と、取り綱を授けてくれたのです。

願得常巧笑,攜手同車歸。
既來不須臾,又不處重闈。
亮無晨風翼,焉能淩風飛?
眄睞以適意,引領遙相希。
徒倚懷感傷,垂涕沾雙扉。

凛凛として歳云に暮れ、螻蛄【ろうこ】夕に鳴き悲しむ。
涼風 率【にわ】かに己に厲【はげ】しく、遊子寒くして衣無し。
錦衾【きんきん】洛浦【らくほ】に遣【おく】りしも、同抱我と違【たが】へり。
獨り宿して長夜を累【かさ】ね、夢に想うて容輝を見る。
良人古歡【こかん】を惟【おも】ひ、駕を枉【ま】げて前綏【ぜんすい】を恵まる。

願はくは長く巧笑【こうしょう】するを得んと、手を携へ車を同じうして歸る。
既に来りて須臾【しゅゆ】ならず、又重闈【ちょうい】に盛らず。
亮【もこと】に晨風【しんふう】の翼無し、蔦【いずく】んぞ能く風を凌いで飛ばん。
眄睞【べんらい】以て意に適【かな】ひ、領【くび】を引いて遙かに相希【のぞ】む。
徒倚【しい】して感傷を懐【いだ】き、涕を垂れて雙扉【そうひ】を沾【うるお】す。


現代語訳と訳註
(本文)

凜凜歲雲暮,螻蛄夕鳴悲。
涼風率已厲,遊子寒無衣。
錦衾遺洛浦,同袍與我違。
獨宿累長夜,夢想見容輝。
良人惟古歡,枉駕惠前綏。


(下し文)
凛凛として歳云に暮れ、螻蛄夕に鳴き悲しむ。
涼風 勢かに己に厲しく、遊子寒くして衣無し。
錦衾洛浦に遣りしも、同抱我と違へり。
獨り宿して長夜を累ね、夢に想うて容輝を見る。
良人古歡を惟ひ、駕を枉げて前綏を恵まる。


(現代語訳)
りんりんするような寒さで、歳も暮れかかり、寒吟虫が夜悲しげに鳴く季節となった。
冷風が急にはげしく吹き初める時節になってしまったが、旅に出たままの夫は寒さにそなえた着がえを持っていないのである。
新婚当時は、わたしは洛浦の女神がきる錦の衾をおくられたものであったが、今は一つ褞袍をともにするという情愛ということがそむいてなくなってしまった。
ひとり寝のながながしい夜を随分重ねる間に、想いが夢になりあなたのすがたを見たのである。
夢の中の夫は、ただ昔の楽しさを思っているようで、わざわざ車を向けて私に「乗りなさい」と、取り綱を授けてくれたのです。


(訳注)
第十六首

・第十六首 遠行の夫を思う妻の詩。夢をかりて新婚の思い出を叙し、過去と現在とを対照させている。この歌も上流社会のものが、宮妓、官妓の立場に立つとして、フィクションで描いているものである。


凜凜歲雲暮,螻蛄夕鳴悲。
りんりんするような寒さで、歳も暮れかかり、寒吟虫が夜悲しげに鳴く季節となった。
凛凛 寒気が皮膚をさし、鳥肌になる様子。刺戟する寒さのさま。
螻蛄 けらの類。寒吟虫。


涼風率已厲,遊子寒無衣。
冷風が急にはげしく吹き初める時節になってしまったが、旅に出たままの夫は寒さにそなえた着がえを持っていないのである。


錦衾遺洛浦,同袍與我違。
新婚当時は、わたしは洛浦の女神がきる錦の衾をおくられたものであったが、今は一つ褞袍をともにするという情愛ということがそむいてなくなってしまった。
洛浦 洛水の入江、神女容妃のいる所。容妃は伏義の女で、洛水に溺死してその女神となったという。洛浦の地を詩に登場の女のいる所とたとえとし、容妃を女に比していう。
同袍 一つどてらを着る仲、袍はわたいれ、また長い下着にもいう。詩経・秦風に「豈衣無しと曰はんや、子と褞袍を同じくせん」とある。窮迫した生活で袖を共同するような朋友を意味する語であるが、ここは夫婦の情交の意。


獨宿累長夜,夢想見容輝。
ひとり寝のながながしい夜を随分重ねる間に、想いが夢になりあなたのすがたを見たのである。


良人惟古歡,枉駕惠前綏
夢の中の夫は、ただ昔の楽しさを思っているようで、わざわざ車を向けて私に「乗りなさい」と、取り綱を授けてくれたのです。
柾駕 車の道を曲げる、わざわざ来訪する意。
前綏 綏は草に乗る時につかまるためのつりひも。礼記に初婚の際、靖が婦のために車を駕し、綏を授けるということがある。そこでこれを単に事前上車の素と解する説と、前句の古歓を新婚当初の歓びと見て、前鮫も前に花嫁の日、夫に手渡された紋と解する説とある。


凛凛として歳云に暮れ、螻蛄【ろうこ】夕に鳴き悲しむ。
涼風 率【にわ】かに己に厲【はげ】しく、遊子寒くして衣無し。
錦衾【きんきん】洛浦【らくほ】に遣【おく】りしも、同抱我と違【たが】へり。
獨り宿して長夜を累【かさ】ね、夢に想うて容輝を見る。
良人古歡【こかん】を惟【おも】ひ、駕を枉【ま】げて前綏【ぜんすい】を恵まる。

願はくは長く巧笑【こうしょう】するを得んと、手を携へ車を同じうして歸る。
既に来りて須臾【しゅゆ】ならず、又重闈【ちょうい】に盛らず。
亮【もこと】に晨風【しんふう】の翼無し、蔦【いずく】んぞ能く風を凌いで飛ばん。
眄睞【べんらい】以て意に適【かな】ひ、領【くび】を引いて遙かに相希【のぞ】む。
徒倚【しい】して感傷を懐【いだ】き、涕を垂れて雙扉【そうひ】を沾【うるお】す。

古詩十九首之十五 漢の無名氏(15) 漢詩<102>Ⅱ李白に影響を与えた詩536 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1425

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古詩十九首之第十五首
生年不滿百,常懷千歲憂。
人間は百歳までは生きられないのだ、なのにどうして日夜、千年後のことまで考えて憂いをいだくのである。
晝短苦夜長,何不秉燭遊!
秋になると昼が短く、夜が長いのを苦にするようになる、だったらどうして燭を照らして、夜を日につぎ遊ばないのだ。
為樂當及時,何能待來茲?
楽しみを求めるにはつとめて今ある機会を逃さないようにするのがよいのだ。あてにもならない来年のことなど、待ってもどうなるというものではないのである。
愚者愛惜費,但為後世嗤。
愚かな者は、いたずらに費用を出し惜しんで金をためるものだが、そうであればただ後の人々に笑われるだけである。
卡人王子喬,難可蜿等期。
王子喬は仙人になり不老長生を得たと伝えるが、常人にはうねうね続く年寿をすべきであっても、とてもできないことなのだ。


現代語訳と訳註
(本文)
第十五首
生年不滿百,常懷千歲憂。
晝短苦夜長,何不秉燭遊!
為樂當及時,何能待來茲?
愚者愛惜費,但為後世嗤。
卡人王子喬,難可蜿等期。


(下し文)
生年は百に満たず、常に千歳の憂を懐く。
晝は短くして夜の長きに苦しみ、何ぞ燭を秉って遊ばざる。
欒しみを為すは常に時に及ぶべし、何ぞ能く來茲【らいし】を待たん。
愚者は費を愛惜し、但後世の嗤【わらい】と為るのみ。
仙人王子喬は、蜿【えん】に期を等しうす可きこと難し。


(現代語訳)
人間は百歳までは生きられないのだ、なのにどうして日夜、千年後のことまで考えて憂いをいだくのである。
秋になると昼が短く、夜が長いのを苦にするようになる、だったらどうして燭を照らして、夜を日につぎ遊ばないのだ。
楽しみを求めるにはつとめて今ある機会を逃さないようにするのがよいのだ。あてにもならない来年のことなど、待ってもどうなるというものではないのである。
愚かな者は、いたずらに費用を出し惜しんで金をためるものだが、そうであればただ後の人々に笑われるだけである。
王子喬は仙人になり不老長生を得たと伝えるが、常人にはうねうね続く年寿をすべきであっても、とてもできないことなのだ。


(訳注)
第十五首

・第十五首 生命のうつろいやすく、青春の再び得がたいことを欺じ、世の愚人をそしった詩。


生年不滿百,常懷千歲憂。
人間は百歳までは生きられないのだ、なのにどうして日夜、千年後のことまで考えて憂いをいだくのである。
・この二句は千古の名言である。


晝短苦夜長,何不秉燭遊!
秋になると昼が短く、夜が長いのを苦にするようになる、だったらどうして燭を照らして、夜を日につぎ遊ばないのだ。
秉燭遊 手にとり持つこと。この句も後世に影響あるもの。
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古風五十九首 其二十三 李白 :Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白167
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為樂當及時,何能待來茲?
楽しみを求めるにはつとめて今ある機会を逃さないようにするのがよいのだ。あてにもならない来年のことなど、待ってもどうなるというものではないのである。
及時 時を失わず、間に合うようにする。
來茲 来年。


愚者愛惜費,但為後世嗤。
愚かな者は、いたずらに費用を出し惜しんで金をためるものだが、そうであればただ後の人々に笑われるだけである。


卡人王子喬,難可蜿等期。
王子喬は仙人になり不老長生を得たと伝えるが、常人にはうねうね続く年寿をすべきであっても、とてもできないことなのだ。
 (1) (蛇などが)のたくり進む,くねくね進む蜿蜒而上くねくねと登る.(2) (川や道が)蜿蜒(えんえん)たる,うねうね続く.
 期間、年寿。
王子喬 周の太子晋、好んで笠を吹き、道士浮丘公に伴なわれて常山に上り仙人となったという。
西門行
出西門、歩念之、今日不作樂、當待何時。
夫爲樂、爲樂當及時。
何能坐愁拂鬱、當復待來茲。
飲醇酒、炙肥牛、請呼心所歡、可用解愁憂。
人生不滿百、常懷千歳憂。
晝短而夜長、何不秉燭游。
自非仙人王子喬、計會壽命難與期。
自非仙人王子喬、計會壽命難與期。
人壽非金石、年命安可期。
貪財愛惜費、但爲後世嗤。

西門行 【せいもんきょう】
西門を出で、歩みて之を念う、今日 樂しみを作さずんば、當【まさ】に何れの時をか待つべき。
夫れ樂しみを爲さん、樂しみを爲すには當に時に及ぶべし。
何んぞ能く坐し愁えて鬱を拂いて、當に復た來茲を待んや。
醇酒【じゅんしゅ】を飲み、肥牛【ひぎゅう】を炙り、請する心に歡ぶ所を呼べば、用って愁憂を解く可けん。
人生は百に滿たず、常に千歳の憂いを懷う。
晝【ひる】短くして夜長く、何ぞ燭游を秉らざるや。
仙人王子喬に非らざるより、計會して壽命【じゅみょう】を與に期するを難し。
仙人王子喬に非らざるより、計會して壽命【じゅみょう】を與に期するを難し。
人壽は金石に非らず、年命安くんぞ期す可けん。
財を貪【むさぼ】りて費を愛惜すれば、但 後世の嗤【わらび】と爲るのみ。

西門行 漢の無名氏 詩<81>Ⅱ李白に影響を与えた詩511 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1350



鸞鳳 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 111

仙人の王子喬。鶴に乗って昇天したといわれる神仙で、周の霊王(在位前572~前545)の38人の子の一人である太子晋のこと。王喬ともいう。
 伝説によると、王子喬は若くから才能豊かで、笙(しょう)という楽器を吹いては鳳凰(ほうおう)が鳴くような音を出すことができた。伊川(いせん)、洛水(河南省洛陽南部)あたりを巡り歩いていたとき、道士の浮丘公(ふきゅうこう)に誘われ中岳嵩山(すうざん)に入り、帰らなくなった。それから30年以上後、友人の桓良が山上で王子喬を探していると、ふいに本人が現れ、「7月7日に緱氏山(こうしざん)の頂上で待つように家族に伝えてくれ」といった。
 その日、家族がいわれたとおり山に登ると、王子喬が白鶴に乗って山上に舞い降りた。だが、山が険しく家族は近づくことができなかった。と、王子喬は手を上げて家族に挨拶し、数日後白鶴に乗って飛び去ったという。 そこで、人々は緱氏山の麓や嵩山の山頂に祠を建てて、王子喬を祀ったといわれている。(『列仙伝』)



古詩十九首之十四 漢の無名氏(14) 漢詩<101>Ⅱ李白に影響を与えた詩535 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1422

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古詩十九首之第十四首
去者日以疏,生者日已親。
別れて去りゆく者には日一日と思い出すのもまばらになり、今相い接する者には日ごとに親密になっていくのは世の常である。
出郭門直視,但見丘與墳。
今、私は、城郭の外に出て、前方を見渡すと、目に入るものはただ丘と墓があるだけで、もう忘れ去られた人々なのである。
古墓犁為田,松柏摧為薪。
古い墓はいつか鋤きかえされて田地となっていき、常緑をほこる墓上の松柏も伐りたおされて薪とされてしまうものだ。
白楊多悲風,蕭蕭愁殺人!
今は、あたりの白楊に悲しい秋風がおおくおとずれ、しゅうしゅうと鳴って人をひたすら愁えしめるのみである。
思還故里閭,欲歸道無因。

秋になれば儚さが増してくる、そう思うと、故郷が懐かしく、帰りたいとは思うが、道は遠く世は乱れ、帰る道すら求めがたいのである。




現代語訳と訳註
(本文)
第十四首
去者日以疏,生者日已親。
出郭門直視,但見丘與墳。
古墓犁為田,松柏摧為薪。
白楊多悲風,蕭蕭愁殺人!
思還故里閭,欲歸道無因。


(下し文)
去る者は日ゝに以て疎く、来る者は日ゝに以て親しむ。
郭門を出でて直視すれば、但丘と墳とを見るのみ。
古墓は犁【す】かれて田と爲り、松柏は摧【くだ】かれて薪と爲る。
白楊【はくよう】悲風多く、蕭蕭として人を愁殺【しゅうさい】す。
故の里閭【りりょ】に還らんことを思ひ、歸らんと欲するも道因る無し。


(現代語訳)
別れて去りゆく者には日一日と思い出すのもまばらになり、今相い接する者には日ごとに親密になっていくのは世の常である。
今、私は、城郭の外に出て、前方を見渡すと、目に入るものはただ丘と墓があるだけで、もう忘れ去られた人々なのである。
古い墓はいつか鋤きかえされて田地となっていき、常緑をほこる墓上の松柏も伐りたおされて薪とされてしまうものだ。
今は、あたりの白楊に悲しい秋風がおおくおとずれ、しゅうしゅうと鳴って人をひたすら愁えしめるのみである。
秋になれば儚さが増してくる、そう思うと、故郷が懐かしく、帰りたいとは思うが、道は遠く世は乱れ、帰る道すら求めがたいのである。


(訳注)
第十四首

・第十四首 悲愁の秋になり異郷の古墓を見ると、帰郷を思う詩。寡婦の詩と逆のもので例が多い。


去者日以疏,生者日已親。
別れて去りゆく者には日一日と思い出すのもまばらになり、今相い接する者には日ごとに親密になっていくのは世の常である。
去者・来者 文選の諸注では「去者は死を謂ひ、来者は生を謂ふ」とあり、。しかし必ずしもかく生・死に限るにことはない。もっと広く解したほうがよい。また、一説に過去と将来の意に見るものもある。


出郭門直視,但見丘與墳。
今、私は、城郭の外に出て、前方を見渡すと、目に入るものはただ丘と墓があるだけで、もう忘れ去られた人々なのである。
・郭門 城郭の門。郭は都市の四周をめぐらすかこい。
丘・墳 墓地のある丘、項は土を盛った塚、土饅頭。


古墓犁為田,松柏摧為薪。
古い墓はいつか鋤きかえされて田地となっていき、常緑をほこる墓上の松柏も伐りたおされて薪とされてしまうものだ。


白楊多悲風,蕭蕭愁殺人!
今は、あたりの白楊に悲しい秋風がおおくおとずれ、しゅうしゅうと鳴って人をひたすら愁えしめるのみである。
白楊 はこやなぎ。
愁殺 殺は一種の接尾語で、ただ程度の甚だしいことにいう。用例、忙殺、恨殺、悩殺など。
 

思還故里閭,欲歸道無因。
秋になれば儚さが増してくる、そう思うと、故郷が懐かしく、帰りたいとは思うが、道は遠く世は乱れ、帰る道すら求めがたいのである。
里閭 五家を隣とし、五隣を里とする。閭は里の門。以下の二句を死者の心と見ることもできる。

古詩十九首之十三 漢の無名氏(13)-2 漢詩<100-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩534 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1419

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古詩十九首之第十三首 #1
驅車上東門,遙望郭北墓。
車を走らせて、洛陽の上東門を出ていく、遥かに城郭の北なる北邙山、墓地を眺める。
白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。
白楊はものしゅうしゅうとさびしく立ちならんでいるのだろうか、松や柏の木が墓陵の広い路の両側に茂っている。
下有陳死人,杳杳即長暮。
その地下には昔死んだ人々があり、暗い暗い中に永遠の夜を過ごしている。
潛寐黃泉下,千載永不寤。
彼らは地下の黄泉国にひそまり寝ていて、いつまでも千年も目ざめることはないのである。
#2
浩浩陰陽移,年命如朝露。
四季陰陽の変北はこうこうと果てしもなく、そこに住む人間の命は朝露のようなものである。
人生忽如寄,壽無金石固。
人生はたちまち去っていくものであり、この世は無情であり、つかの間であり、寿命は金石の如く不変ではない。
萬歲更相送,賢聖莫能度。
これまでの幾万年の間、人は互いに送られて死んでいった。聖人であっても賢人といえどもこの運命は避けては通れないものなのだ。
服食求神仙,多為藥所誤。
不老長寿の仙薬などを服用して長生を求めても、多くはその薬に誤られて身を失うことになる。
不如飲美酒,被服紈與素。
そんなできないことより生前に美酒を飲み、美服を着て、日々を楽しく暮らすことである。
#1
車を上東門に驅【か】り、遙かに郭北【かくほく】の墓を望む。
白楊【はくよう】何ぞ蕭蕭【しょうしょう】たる、松柏 廣路【こうろ】を夾【はさ】む。
下に陳死【ちんし】の人有り、杳杳【ようよう】として長暮【ちょうぼ】に即【つ】く。
黄泉【こうせん】の下に潜【ひそ】み寐【い】ねて、千載長く寤【さ】めず。
#2
浩浩として陰陽移り、年命【ねんめい】朝露の如し。
人生忽【こつ】として寄するが如く、寿には金石の固き無し。
萬歳更【こもご】も相送り、賢聖【けんせい】能く度る莫し。
服食して神仙を求むれは、多くは薬の誤る所と為る。
如かず美酒を飲みて、紈【がん】と素【そ】とを被服せんには。



現代語訳と訳註
(本文)

浩浩陰陽移,年命如朝露。
人生忽如寄,壽無金石固。
萬歲更相送,賢聖莫能度。
服食求神仙,多為藥所誤。
不如飲美酒,被服紈與素。


(下し文)
浩浩として陰陽移り、年命【ねんめい】朝露の如し。
人生忽【こつ】として寄するが如く、寿には金石の固き無し。
萬歳更【こもご】も相送り、賢聖【けんせい】能く度る莫し。
服食して神仙を求むれは、多くは薬の誤る所と為る。
如かず美酒を飲みて、紈【がん】と素【そ】とを被服せんには。


(現代語訳)
四季陰陽の変北はこうこうと果てしもなく、そこに住む人間の命は朝露のようなものである。
人生はたちまち去っていくものであり、この世は無情であり、つかの間であり、寿命は金石の如く不変ではない。
これまでの幾万年の間、人は互いに送られて死んでいった。聖人であっても賢人といえどもこの運命は避けては通れないものなのだ。
不老長寿の仙薬などを服用して長生を求めても、多くはその薬に誤られて身を失うことになる。
そんなできないことより生前に美酒を飲み、美服を着て、日々を楽しく暮らすことである。


(訳注)
浩浩陰陽移,年命如朝露。

四季陰陽の変北はこうこうと果てしもなく、そこに住む人間の命は朝露のようなものである。
陰陽移 陰気と陽気の変移、四季の変化。


人生忽如寄,壽無金石固。
人生はたちまち去っていくものであり、この世は無情であり、つかの間であり、寿命は金石の如く不変ではない。


萬歲更相送,賢聖莫能度。
これまでの幾万年の間、人は互いに送られて死んでいった。聖人であっても賢人といえどもこの運命は避けては通れないものなのだ。
 度越、越えのがれる。


服食求神仙,多為藥所誤。
不老長寿の仙薬などを服用して長生を求めても、多くはその薬に誤られて身を失うことになる。
服食 仙薬を服し、仙人になる術、道家の養生法。


不如飲美酒,被服紈與素。
そんなできないことより生前に美酒を飲み、美服を着て、日々を楽しく暮らすことである。
・執・素 ねりぎぬ・きざぬ、華美な衣服。

古詩十九首之十三 漢の無名氏(13)-1 漢詩<100-#1>Ⅱ李白に影響を与えた詩533 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1416

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 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
      2011/7/11 ~ 2012/1/11 まで毎日掲載 全130首(187回) 
   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

古詩十九首之第十三首 #1
驅車上東門,遙望郭北墓。
車を走らせて、洛陽の上東門を出ていく、遥かに城郭の北なる北邙山、墓地を眺める。
白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。
白楊はものしゅうしゅうとさびしく立ちならんでいるのだろうか、松や柏の木が墓陵の広い路の両側に茂っている。
下有陳死人,杳杳即長暮。
その地下には昔死んだ人々があり、暗い暗い中に永遠の夜を過ごしている。
潛寐黃泉下,千載永不寤。
彼らは地下の黄泉国にひそまり寝ていて、いつまでも千年も目ざめることはないのである。
#2
浩浩陰陽移,年命如朝露。人生忽如寄,壽無金石固。萬歲更相送,賢聖莫能度。服食求神仙,多為藥所誤。
不如飲美酒,被服紈與素。
#1
車を上東門に驅【か】り、遙かに郭北【かくほく】の墓を望む。
白楊【はくよう】何ぞ蕭蕭【しょうしょう】たる、松柏 廣路【こうろ】を夾【はさ】む。
下に陳死【ちんし】の人有り、杳杳【ようよう】として長暮【ちょうぼ】に即【つ】く。
黄泉【こうせん】の下に潜【ひそ】み寐【い】ねて、千載長く寤【さ】めず。
#2
浩浩として陰陽移り、年命【ねんめい】朝露の如し。
人生忽【こつ】として寄するが如く、寿には金石の固き無し。
萬歳更【こもご】も相送り、賢聖【けんせい】能く度る莫し。
服食して神仙を求むれは、多くは薬の誤る所と為る。
如かず美酒を飲みて、紈【がん】と素【そ】とを被服せんには。


現代語訳と訳註
(本文)

驅車上東門,遙望郭北墓。
白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。
下有陳死人,杳杳即長暮。
潛寐黃泉下,千載永不寤。


(下し文)
車を上東門に驅【か】り、遙かに郭北【かくほく】の墓を望む。
白楊【はくよう】何ぞ蕭蕭【しょうしょう】たる、松柏 廣路【こうろ】を夾【はさ】む。
下に陳死【ちんし】の人有り、杳杳【ようよう】として長暮【ちょうぼ】に即【つ】く。
黄泉【こうせん】の下に潜【ひそ】み寐【い】ねて、千載長く寤【さ】めず。


 (現代語訳)
車を走らせて、洛陽の上東門を出ていく、遥かに城郭の北なる北邙山、墓地を眺める。
白楊はものしゅうしゅうとさびしく立ちならんでいるのだろうか、松や柏の木が墓陵の広い路の両側に茂っている。
その地下には昔死んだ人々があり、暗い暗い中に永遠の夜を過ごしている。
彼らは地下の黄泉国にひそまり寝ていて、いつまでも千年も目ざめることはないのである。


(訳注)
第十三首

・第十三首 人生の無常を説いて、いたずらに長生を求めるより、現世の快楽に憂いを忘れようとする自得の意を述べた。


驅車上東門,遙望郭北墓。
車を走らせて、洛陽の上東門を出ていく、遥かに城郭の北なる北邙山、墓地を眺める。
・上東門 洛陽城門の名。
・郭北 洛陽城の北、北邙山。


白楊何蕭蕭,松柏夾廣路。
白楊はものしゅうしゅうとさびしく立ちならんでいるのだろうか、松や柏の木が墓陵の広い路の両側に茂っている。
白楊 はこやなぎ、ポプラの類。墓の木。


下有陳死人,杳杳即長暮。
その地下には昔死んだ人々があり、暗い暗い中に永遠の夜を過ごしている。
陳死人 昔死んだ人。
杳杳 冥冥と同じく、暗い意。
長暮 永久に暗い墓の意。


潛寐黃泉下,千載永不寤。
彼らは地下の黄泉国にひそまり寝ていて、いつまでも千年も目ざめることはないのである。


古詩十九首之十二 漢の無名氏(12)-2 漢詩<99-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩532 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1413

古詩十九首之十二 漢の無名氏(12)-2 漢詩<99-#2>Ⅱ李白に影響を与えた詩532 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1413

     
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   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

古詩十九首之第十二首
#1
東城高且長,逶迤自相屬。
東の城壁は高く且つ長く、うねうねと続き互いにつながっている。
回風動地起,秋草萋已綠。
旋風が地を動かして吹きはじめても、秋の草は既に夏から繁って緑の色を連ねている。
四時更變化,歲暮一何速!
四季がかわるがわる変化して、としのくれとなるのもまことに早いことであろうか。
晨風懷苦心,蟋蟀傷局促。
古人の歌った『晨風』の詩には見棄てられた臣の苦愁をものがたる意があり、「蟋蟀」の詩には持っている才能を発揮できないことに心を痛めるものである。
蕩滌放情志,何為自結束!

自分はそんな思いはさっぱりと洗い去って、かって気ままにくらそうと思う。何もわが身を束縛することはないのではなかろうか。
東城 高く且つ長く、逶迤【いい】として自ら相属す。
廻風地を動かして起り、秋草萋【せい】として以【すで】に緑なり。
四時更【こもご】も變化し、歳暮【さいぼ】一に何ぞ速【すみや】かなる。
晨風【しんふう】苦心を懐【いだ】き、蟋蟀【しつしゅつ】 局促【きょくそく】を傷む。
蕩滌【とうてき】して情志を【ほしいまま】にせん、何為【なんす】れぞ自ら結束する。
#2
燕趙多佳人,美者顏如玉。
燕や趙の北地には美人が多く、その美人の顔ははれやかな玉のようである。
被服羅裳衣,當戶理清曲。
そしてうす絹の衣裳を身にまとっているいて、戸口に立ってすんだ音色の曲をかなでているのだ。
音響一何悲!弦急知柱促。
そのひびきのひとつひとつのなんと悲しげなものであるのだろう。絃の音のテンポを急にし、琴柱を動かして絃の間をせばめ、絃声を高くしたりするのだ。
馳情整巾帶,沈吟聊躑躅。
これを聴いてしまったら万感迫る思いを美人にはせ、まず自分の身なりをととのえるのであり、詩をうち沈みながら吟じてしばらく立ちどまるのである。
思為雙飛燕,銜泥巢君屋。

自分の思いはいっそつがいとなって飛ぶ燕ともなりたいものであり、泥を口に銜えてあなたの屋根の下に暮らしたいと思うのである。

燕趙佳人多く、美なる者顏【かんばせ】玉の如し。
羅【うすもの】の裳衣を被服し、戸に当りて清曲を理【おさ】む。
音響一に何ぞ悲しき、絃急【げんきゅう】にして柱【ことじ】の促【せま】れるを知る。
情を馳せて巾帯を整へ、沈吟して聊【しばら】く躑躅【てきちょく】す。
思ふ雙飛燕【ひえん】と為りて、泥を銜んで君が屋に巢くはんことを。


現代語訳と訳註
(本文)#2
燕趙多佳人,美者顏如玉。
被服羅裳衣,當戶理清曲。
音響一何悲!弦急知柱促。
馳情整巾帶,沈吟聊躑躅。
思為雙飛燕,銜泥巢君屋。


(下し文)
燕趙佳人多く、美なる者顏【かんばせ】玉の如し。
羅【うすもの】の裳衣を被服し、戸に当りて清曲を理【おさ】む。
音響一に何ぞ悲しき、絃急【げんきゅう】にして柱【ことじ】の促【せま】れるを知る。
情を馳せて巾帯を整へ、沈吟して聊【しばら】く躑躅【てきちょく】す。
思ふ雙飛燕【ひえん】と為りて、泥を銜んで君が屋に巢くはんことを。


(現代語訳)
燕や趙の北地には美人が多く、その美人の顔ははれやかな玉のようである。
そしてうす絹の衣裳を身にまとっているいて、戸口に立ってすんだ音色の曲をかなでているのだ。
そのひびきのひとつひとつのなんと悲しげなものであるのだろう。絃の音のテンポを急にし、琴柱を動かして絃の間をせばめ、絃声を高くしたりするのだ。
これを聴いてしまったら万感迫る思いを美人にはせ、まず自分の身なりをととのえるのであり、詩をうち沈みながら吟じてしばらく立ちどまるのである。
自分の思いはいっそつがいとなって飛ぶ燕ともなりたいものであり、泥を口に銜えてあなたの屋根の下に暮らしたいと思うのである。


(訳注) #2
燕趙多佳人,美者顏如玉。

燕や趙の北地には美人が多く、その美人の顔ははれやかな玉のようである。
・燕趙 周末北方の二国で、今の河北省。古来美人を産すといわれる。この句以下五聯をもって、別に一首として、芸妓を口説く詩とされた。いわば古代のラブレターというところである。


被服羅裳衣,當戶理清曲。
そしてうす絹の衣裳を身にまとっているいて、戸口に立ってすんだ音色の曲をかなでているのだ。


音響一何悲!弦急知柱促。
そのひびきのひとつひとつのなんと悲しげなものであるのだろう。絃の音のテンポを急にし、琴柱を動かして絃の間をせばめ、絃声を高くしたりするのだ。
・柱促 琴の絃を支える柱を動かして絃の間をせばめ、絃声を高くすること。


馳情整巾帶,沈吟聊躑躅。
これを聴いてしまったら万感迫る思いを美人にはせ、まず自分の身なりをととのえるのであり、詩をうち沈みながら吟じてしばらく立ちどまるのである。
・巾帯 頭巾と帯、李善注文選には、中帯とある。したぎの帯の意、身仕度をととのえる意。
躑躅 たちもとおる、足を止めて進まぬさま。また足ぶみすること。


思為雙飛燕,銜泥巢君屋。
自分の思いはいっそつがいとなって飛ぶ燕ともなりたいものであり、泥を口に銜えてあなたの屋根の下に暮らしたいと思うのである。


古代のラブレター
燕趙多佳人,美者顏如玉。
被服羅裳衣,當戶理清曲。
音響一何悲!弦急知柱促。
馳情整巾帶,沈吟聊躑躅。
思為雙飛燕,銜泥巢君屋。

燕趙佳人多く、美なる者顏【かんばせ】玉の如し。
羅【うすもの】の裳衣を被服し、戸に当りて清曲を理【おさ】む。
音響一に何ぞ悲しき、絃急【げんきゅう】にして柱【ことじ】の促【せま】れるを知る。
情を馳せて巾帯を整へ、沈吟して聊【しばら】く躑躅【てきちょく】す。
思ふ雙飛燕【ひえん】と為りて、泥を銜んで君が屋に巢くはんことを。

古詩十九首之十二 漢の無名氏(12)-1 漢詩<99-#1>Ⅱ李白に影響を与えた詩531 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1410

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古詩十九首 第十二首
#1
東城高且長,逶迤自相屬。
東の城壁は高く且つ長く、うねうねと続き互いにつながっている。
回風動地起,秋草萋已綠。
旋風が地を動かして吹きはじめても、秋の草は既に夏から繁って緑の色を連ねている。
四時更變化,歲暮一何速!
四季がかわるがわる変化して、としのくれとなるのもまことに早いことであろうか。
晨風懷苦心,蟋蟀傷局促。
古人の歌った『晨風』の詩には見棄てられた臣の苦愁をものがたる意があり、「蟋蟀」の詩には持っている才能を発揮できないことに心を痛めるものである。
蕩滌放情志,何為自結束!
自分はそんな思いはさっぱりと洗い去って、かって気ままにくらそうと思う。何もわが身を束縛することはないのではなかろうか。
東城 高く且つ長く、逶迤【いい】として自ら相属す。
廻風地を動かして起り、秋草萋【せい】として以【すで】に緑なり。
四時更【こもご】も變化し、歳暮【さいぼ】一に何ぞ速【すみや】かなる。
晨風【しんふう】苦心を懐【いだ】き、蟋蟀【しつしゅつ】 局促【きょくそく】を傷む。
蕩滌【とうてき】して情志を【ほしいまま】にせん、何為【なんす】れぞ自ら結束する。

#2
燕趙多佳人,美者顏如玉。被服羅裳衣,當戶理清曲。
音響一何悲!弦急知柱促。馳情整巾帶,沈吟聊躑躅。
思為雙飛燕,銜泥巢君屋。

燕趙佳人多く、美なる者顏【かんばせ】玉の如し。
羅【うすもの】の裳衣を被服し、戸に当りて清曲を理【おさ】む。
音響一に何ぞ悲しき、絃急【げんきゅう】にして柱【ことじ】の促【せま】れるを知る。
情を馳せて巾帯を整へ、沈吟して聊【しばら】く躑躅【てきちょく】す。
思ふ雙飛燕【ひえん】と為りて、泥を銜んで君が屋に巢くはんことを。


現代語訳と訳註
(本文)

東城高且長,逶迤自相屬。
回風動地起,秋草萋已綠。
四時更變化,歲暮一何速!
晨風懷苦心,蟋蟀傷局促。
蕩滌放情志,何為自結束!


(下し文)
東城 高く且つ長く、逶迤【いい】として自ら相属す。
廻風地を動かして起り、秋草萋【せい】として以【すで】に緑なり。
四時更【こもご】も變化し、歳暮【さいぼ】一に何ぞ速【すみや】かなる。
晨風【しんふう】苦心を懐【いだ】き、蟋蟀【しつしゅつ】 局促【きょくそく】を傷む。
蕩滌【とうてき】して情志を【ほしいまま】にせん、何為【なんす】れぞ自ら結束する。


(現代語訳)
東の城壁は高く且つ長く、うねうねと続き互いにつながっている。
旋風が地を動かして吹きはじめても、秋の草は既に夏から繁って緑の色を連ねている。
四季がかわるがわる変化して、としのくれとなるのもまことに早いことであろうか。
古人の歌った『晨風』の詩には見棄てられた臣の苦愁をものがたる意があり、「蟋蟀」の詩には持っている才能を発揮できないことに心を痛めるものである。
自分はそんな思いはさっぱりと洗い去って、かって気ままにくらそうと思う。何もわが身を束縛することはないのではなかろうか。


(訳注)
第十二首
#1
・第十二首 歳月の過ぎ易いことを歎じて、行楽をほしいままにするの意を述べた。


東城高且長,逶迤自相屬。
東の城壁は高く且つ長く、うねうねと続き互いにつながっている。
達適 うねうねと続くさま。


回風動地起,秋草萋已綠。
旋風が地を動かして吹きはじめても、秋の草は既に夏から繁って緑の色を連ねている。
妻以緑 妻は草の盛んに茂るさま。
「以」「己」は互いに通ずる。一説に妻は凄に通ずると見、秋草の己に凄然として緑の衰うこととも解する。


四時更變化,歲暮一何速!
四季がかわるがわる変化して、としのくれとなるのもまことに早いことであろうか。


晨風懷苦心,蟋蟀傷局促。
古人の歌った『晨風』の詩には見棄てられた臣の苦愁をものがたる意があり、「蟋蟀」の詩には持っている才能を発揮できないことに心を痛めるものである。
晨風 はやぶさの額。詩経・秦夙中の篇名。秦の康公が賢臣を棄てたのをそしった詩。
『詩経、秦風、』晨風 鴪彼晨風
鴥彼晨風.鬱彼北林.未見君子.憂心欽欽.
如何如何.忘我實多
山有苞櫟.隰有六駮.未見君子.憂心靡樂.
如何如何.忘我實多

蟋蟀 こおろぎ。『詩経・唐風、蟋蟀』の篇名。晋の僖公が倹約に過ぎるのをそしった詩。今楽しまなければ月日はサッサと去って行く。勤勉で油断をしない人になれという内容のもの。
詩経・唐風、蟋蟀 
蟋蟀在堂、歲聿其莫。 今我不樂、日月其除。
無已大康、職思其居。 好樂無荒、良士瞿瞿。

蟋蟀在堂、歲聿其逝。 今我不樂、日月其邁。
無已大康、職思其外。 好樂無荒、良士蹶蹶。

蟋蟀在堂、役車其休。 今我不樂、日月其慆。
無已大康、職思其憂。 好樂無荒.良士休休。
傷局促 蛙蜂の声が年の暮れを告げるのに、良士の才を伸ばし得ずして局促しているのをなげく。局促はかがまりこせつく。


蕩滌放情志,何為自結束!
自分はそんな思いはさっぱりと洗い去って、かって気ままにくらそうと思う。何もわが身を束縛することはないのではなかろうか。
蕩滌 洗い流す。

古詩十九首之十一 漢の無名氏(11) 漢詩<98>Ⅱ李白に影響を与えた詩530 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1407

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古詩十九首 第十一首
回車駕言邁,悠悠涉長道。
行く当てもなく車の向きをかえ、行く当てもなく馬に引かせてはるばる長い道をゆく。
四顧何茫茫,東風搖百草。
四方をかえりみるとはてしもない広野はぼうっとひろがる、春風はあたり一面の草々をゆり動かしている。
所遇無故物,焉得不速老。
そこここで出遇うものはもと見たものとおなじものが何一つないのだ、どういうものかわたしが老いてゆくのも道理なのだ。
盛衰各有時,立身苦不早。
人生に繁栄と衰退はつきものである。そういうことだから早く立身出世できないのは苦しいことなのだ。
人生非金石,豈能長壽考?
人は生まれながらにして金石のように堅固ではないのだから、どうしていつまでも長生きすることはできるというのか。
奄忽隨物化,榮名以為寶。
たちまち周囲の事物と同様に変化し、しぼうしてしまうのだから、それから後に残る名誉、名声が残ることだけが大切なのだ。

車を廻らして駕して言に邁【ゆ】き、悠悠として長道を涉る。
四顧すれば何ぞ茫茫たる、東風百草を搖【うご】かす。
遇ふ所 故物無し、焉んぞ速かに老いざるを得んや。
盛衰各おの時有り、立身早からざるを苦しむ。
人生は金石に非ず、豈能く長く寿考【じゅこう】ならんや。
奄忽【えんこつ】として物に隨って化す、栄名【えいめい】以て宝と爲さん。


現代語訳と訳註
(本文)
第十一首
回車駕言邁,悠悠涉長道。
四顧何茫茫,東風搖百草。
所遇無故物,焉得不速老。
盛衰各有時,立身苦不早。
人生非金石,豈能長壽考?
奄忽隨物化,榮名以為寶。


(下し文)
車を廻らして駕して言に邁き、悠悠として長道を涉る。
四顧すれば何ぞ茫茫たる、東風百草を搖【うご】かす。
遇ふ所 故物無し、焉んぞ速かに老いざるを得んや。
盛衰各おの時有り、立身早からざるを苦しむ。
人生は金石に非ず、豈能く長く寿考【じゅこう】ならんや。
奄忽【えんこつ】として物に隨って化す、栄名【えいめい】以て宝と爲さん。


(現代語訳)
行く当てもなく車の向きをかえ、行く当てもなく馬に引かせてはるばる長い道をゆく。
四方をかえりみるとはてしもない広野はぼうっとひろがる、春風はあたり一面の草々をゆり動かしている。
そこここで出遇うものはもと見たものとおなじものが何一つないのだ、どういうものかわたしが老いてゆくのも道理なのだ。
人生に繁栄と衰退はつきものである。そういうことだから早く立身出世できないのは苦しいことなのだ。
人は生まれながらにして金石のように堅固ではないのだから、どうしていつまでも長生きすることはできるというのか。
たちまち周囲の事物と同様に変化し、しぼうしてしまうのだから、それから後に残る名誉、名声が残ることだけが大切なのだ。


(訳注)
第十一首

・第十一首 志を得ないおのれを自らいましめて、名を後世に立てようと期する詩。


回車駕言邁,悠悠涉長道。
行く当てもなく車の向きをかえ、行く当てもなく馬に引かせてはるばる長い道をゆく。
廻車 車往く所なくして廻る。暗に致仕して出直す意味。
駕言 言は助字。「ここに」または「われ」と訓ず。


四顧何茫茫,東風搖百草。
四方をかえりみるとはてしもない広野はぼうっとひろがる、春風はあたり一面の草々をゆり動かしている。
東風 五行思想で春:東:青である。


所遇無故物,焉得不速老。
そこここで出遇うものはもと見たものとおなじものが何一つないのだ、どういうものかわたしが老いてゆくのも道理なのだ。


盛衰各有時,立身苦不早。
人生に繁栄と衰退はつきものである。そういうことだから早く立身出世できないのは苦しいことなのだ。


人生非金石,豈能長壽考?
人は生まれながらにして金石のように堅固ではないのだから、どうしていつまでも長生きすることはできるというのか。
非金石 人の生死あること、金石ように長久不変なものであることはないの意。


奄忽隨物化,榮名以為寶
たちまち周囲の事物と同様に変化し、しぼうしてしまうのだから、それから後に残る名誉、名声が残ることだけが大切なのだ。
 変化、死亡すること。

古詩十九首之十 漢の無名氏(10) 漢詩<97>Ⅱ李白に影響を与えた詩529 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1404

古詩十九首之十 漢の無名氏(10) 漢詩<97>Ⅱ李白に影響を与えた詩529 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1404

     
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   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
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   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

古詩十九首 第十首
迢迢牽牛星,皎皎河漢女。
纖纖擢素手,札札弄機杼。
終日不成章,泣涕零如雨。
河漢清且淺,相去復幾許。
盈盈一水間,脈脈不得語。

天の川を隔ててはるかかなたには彦星がいて、こちらにはこうこうと白くかがやく天の川の織姫がいる。
そのきわめてほっそりした白い手を織姫はぬき出していて、サッサッとした音で織具の杼【ひ】をいそがしく通している。
終日織っても彦星を思う心の乱れでなかなか布地のあや模様ができあがらないのだ、涕、泪で雨のようにこぼれている。
この日天の河は清くすんでその上浅いという。彦星との距離も遠くはないのだ。そして逢えば互いに去って行く、また会えるのはどれほどのもないのだ。
そうして、天の川は、水みちわたるただ一筋の川となり、二人はそれを隔ててことば一つ交わさず、目と目でじっと見つめるばかりなのだろう。

銀河002

現代語訳と訳註
(本文)
古詩十九首 第十首
迢迢牽牛星,皎皎河漢女。
纖纖擢素手,札札弄機杼。
終日不成章,泣涕零如雨。
河漢清且淺,相去復幾許。
盈盈一水間,脈脈不得語。


(下し文)
迢迢【ちょうちょう】たる牽牛星、皎皎【こうこう】たる河漢の女。
纖纖【せんせん】として素手【そしゅ】を擢【ぬき】んで、札札【さつさつ】として機抒【きちょ】を弄【ろう】す。
終日【しゅうじつ】章を成さず、泣涕【きゅうてい】零【お】ちて雨の如し。
河漢清くして且つ浅し、相去る復た幾許【いくばく】ぞ。
盈盈【えいえい】たる一水の間、脈脈として語るを得ず。


(現代語訳)
天の川を隔ててはるかかなたには彦星がいて、こちらにはこうこうと白くかがやく天の川の織姫がいる。
そのきわめてほっそりした白い手を織姫はぬき出していて、サッサッとした音で織具の杼【ひ】をいそがしく通している。
終日織っても彦星を思う心の乱れでなかなか布地のあや模様ができあがらないのだ、涕、泪で雨のようにこぼれている。
この日天の河は清くすんでその上浅いという。彦星との距離も遠くはないのだ。そして逢えば互いに去って行く、また会えるのはどれほどのもないのだ。
そうして、天の川は、水みちわたるただ一筋の川となり、二人はそれを隔ててことば一つ交わさず、目と目でじっと見つめるばかりなのだろう。


(訳注)
古詩十九首 第十首

・第十首 牽牛・織女の二星を借りて、男女相思の情を叙べた詩。


迢迢牽牛星,皎皎河漢女。
天の川を隔ててはるかかなたには彦星がいて、こちらにはこうこうと白くかがやく天の川の織姫がいる。
迢迢 はるかなさま。
皎皎 白く明るいさま。旧暦6月の終わりごろから7月になると天の川がはっきりと見えるようになる。ことをいう。
河漢女 河漢は天の川、女は織女星、たなばたつめ。一年に一度を限って牽牛星と天の川で出逢う。
あまのがわ。天河・銀河・経河・河漢・銀漢・雲漢・星漢・天津・漠津等はみなその異名である。
詩経の大雅•棫樸、「倬彼雲漢、爲章于天。」小雅大東などに雲漢,銀河,天河がみえる。
天河 杜甫 <292> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1343 杜甫詩 700- 412


纖纖擢素手,札札弄機杼。
そのきわめてほっそりした白い手を織姫はぬき出していて、サッサッとした音で織具の杼【ひ】をいそがしく通している。
 ぬき出す。腕まくり。
札札 機を織る音。
機杼 織具の杼【ひ】。緯糸を巻いた「管」をいれ
る具。これを左右に往来させて布地を織る。


終日不成章,泣涕零如雨。
終日織っても彦星を思う心の乱れでなかなか布地のあや模様ができあがらないのだ、涕、泪で雨のようにこぼれている。
 綵。織り模様。
泣涕 二字ともなみだ。


河漢清且淺,相去復幾許。
この日天の河は清くすんでその上浅いという。彦星との距離も遠くはないのだ。そして逢えば互いに去って行く、また会えるのはどれほどのもないのだ。


盈盈一水間,脈脈不得語。
そうして、天の川は、水みちわたるただ一筋の川となり、二人はそれを隔ててことば一つ交わさず、目と目でじっと見つめるばかりなのだろう。
脈脈 じっと見つめるさま。


古詩十九首之九 (9) 漢詩<96>Ⅱ李白に影響を与えた詩528 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1401

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   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

古詩十九首 第九首
庭中有奇樹,綠葉發華滋。
庭の中にめずらしい樹があって、緑の葉の中につややかな花が咲いている。
攀條折其榮,將以遺所思。
その小枝をひきよせ、盛りの花を手折って、それを思う人に贈ろうと思う。
馨香盈懷袖,路遠莫致之。
花の香りは私の懐にも袖にもみちあふれているが、あの人とは路が遠くてその花を届けることができない。
此物何足貴,但感別經時。
花の枝はどうして貴重なものにするに足るものでしょうか、それはただ長い間、別れているので思いのほどを送りたいだけなのです。


現代語訳と訳註
(本文)
第九首
庭中有奇樹,綠葉發華滋。
攀條折其榮,將以遺所思。
馨香盈懷袖,路遠莫致之。
此物何足貴,但感別經時。


(下し文)
庭中に奇樹【きじゅ】有り、緑葉 華滋【かじゅ】を發【ひら】く。
條【えだ】を攀【よ】じて其の栄【はな】を折り、將に以て思ふ所に遺らんとす。
馨香【けいこう】懐袖【かいしゅう】に盈【み】つれども、路遠くして之を致す莫し。
此物何ぞ貴ぶに足らんや、但別れて時を経たるに感ずるのみ。


(現代語訳)
庭の中にめずらしい樹があって、緑の葉の中につややかな花が咲いている。
その小枝をひきよせ、盛りの花を手折って、それを思う人に贈ろうと思う。
花の香りは私の懐にも袖にもみちあふれているが、あの人とは路が遠くてその花を届けることができない。
花の枝はどうして貴重なものにするに足るものでしょうか、それはただ長い間、別れているので思いのほどを送りたいだけなのです。


(訳注)
第九首

・第九首 久しく別れている人を懐う詩。その構成および内容は第六首に似ている。


庭中有奇樹,綠葉發華滋。
庭の中にめずらしい樹があって、緑の葉の中につややかな花が咲いている。
発華滋 華滋を熟語として、花の咲き誇る潤沢なる様子。


攀條折其榮,將以遺所思。
その小枝をひきよせ、盛りの花を手折って、それを思う人に贈ろうと思う。
攀條 撃は下から上をひき、よじのぼること。枝をひきよせること。
 盛りの花。


馨香盈懷袖,路遠莫致之。
花の香りは私の懐にも袖にもみちあふれているが、あの人とは路が遠くてその花を届けることができない。


此物何足貴,但感別經時。
花の枝はどうして貴重なものにするに足るものでしょうか、それはただ長い間、別れているので思いのほどを送りたいだけなのです。


古詩十九首之八 (8) 漢詩<95>Ⅱ李白に影響を与えた詩527 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1398

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結婚の約束をしたままで迎えに来てくれない、待つ身の娘、遅いことに心を痛める娘心を詠う。

古詩十九首 第八首
冉冉孤生竹,結根泰山阿。
すくっとしなやかに伸びてゆく一本の竹がある、泰山の入り組んだところに根を張っている。
與君為新婚,兔絲附女蘿。
あなたとはじめて結婚することになるというのは、女蘿であるあなたに兔絲「ねなしかつら」のわたしがまつわりつくようなものです。
兔絲生有時,夫婦會有宜。
この「ねなしかつら」には生える時節があります、夫婦の交じり合うにも適切な時期があるものだ。
千里遠結婚,悠悠隔山陂。
あなたとははるか千里も離れていて結婚をすることにした、はるばるとはなれている間はいくつもの山阪に隔てられている。
思君令人老,軒車來何遲!
あなたを思うと身の老い衰えるような気持ちなる、お迎えの車が来るのがなんと遅いのであろうか。
傷彼蕙蘭花,含英揚光輝。
あの蕙や蘭の花も心痛めている、咲き出そうするのを内に秘めてあざやかな色を示している。
過時而不采,將隨秋草萎。
その花をとらないままでときを過ごしている、まさにこのままでは秋草ともどもしぼんでしまうということです。
君亮執高節,賤妾亦何為!

あなたが高貴な節操で操を固く守っているなら、このわたしはいつまでもお待ちするだけどうしようもないのです。


現代語訳と訳註
(本文)
第八首
冉冉孤生竹,結根泰山阿。與君為新婚,兔絲附女蘿。兔絲生有時,夫婦會有宜。千里遠結婚,悠悠隔山陂。
思君令人老,軒車來何遲!傷彼蕙蘭花,含英揚光輝。過時而不采,將隨秋草萎。君亮執高節,賤妾亦何為!


(下し文) 第八首
冉冉たる孤生の竹,根を泰山の阿【くま】に結ぶ。
君と新婚を爲すは、兎絲の女羅に附くなり。
免絲生ずるに時有り、夫婦会するに宜有り。
千里遠く婿を結び、悠悠山陂を隔つ。
君を思へば人をして老いしむ、軒車何ぞ乗ること遲き。
傷む彼の恵蘭の花、英を含みて光輝を揚ぐ。
時を過ぎて采らずんは、將に秋草の萎むに随はんとするを。
君亮に高節を執らば、賤妾亦何をか焉さん。


(現代語訳)
すくっとしなやかに伸びてゆく一本の竹がある、泰山の入り組んだところに根を張っている。
あなたとはじめて結婚することになるというのは、女蘿であるあなたに兔絲「ねなしかつら」のわたしがまつわりつくようなものです。
この「ねなしかつら」には生える時節があります、夫婦の交じり合うにも適切な時期があるものだ。
あなたとははるか千里も離れていて結婚をすることにした、はるばるとはなれている間はいくつもの山阪に隔てられている。
あなたを思うと身の老い衰えるような気持ちなる、お迎えの車が来るのがなんと遅いのであろうか。
あの蕙や蘭の花も心痛めている、咲き出そうするのを内に秘めてあざやかな色を示している。
その花をとらないままでときを過ごしている、まさにこのままでは秋草ともどもしぼんでしまうということです。
あなたが高貴な節操で操を固く守っているなら、このわたしはいつまでもお待ちするだけどうしようもないのです。


(訳注)
第八首

結婚の約束をしたままで迎えに来てくれない、待つ身の娘、遅いことに心を痛める娘心を詠う。結婚の遅いことに心を痛める娘心を詠う。この詩も一定以上の地位ある男性が女性のことを撃ったものである。


冉冉孤生竹,結根泰山阿。
すくっとしなやかに伸びてゆく一本の竹がある、泰山の入り組んだところに根を張っている。
再再 次第に進むさま。また、炉と同義に見て、弱表の義、なよなよとのひている意。
 山の隈、入りくんだところ。


與君為新婚,兔絲附女蘿。
あなたとはじめて結婚することになるというのは、女蘿であるあなたに兔絲「ねなしかつら」のわたしがまつわりつくようなものです。
・免糸・女蘿 共に蔓草、木に附くを女羅といい、草にまとうを免糸という。


兔絲生有時,夫婦會有宜。
この「ねなしかつら」には生える時節があります、夫婦の交じり合うにも適切な時期があるものだ。


千里遠結婚,悠悠隔山陂。
あなたとははるか千里も離れていて結婚をすることにした、はるばるとはなれている間はいくつもの山阪に隔てられている。
・山陂 山阪。


思君令人老,軒車來何遲!
あなたを思うと身の老い衰えるような気持ちなる、お迎えの車が来るのがなんと遅いのであろうか。
軒車 大夫以上の乗用車。轅が上方に反って前高になっている。


傷彼蕙蘭花,含英揚光輝。
あの蕙や蘭の花も心痛めている、咲き出そうするのを内に秘めてあざやかな色を示している。
蕙、蘭 共に香草、婦人自らにたとえる。


過時而不采,將隨秋草萎。
その花をとらないままでときを過ごしている、まさにこのままでは秋草ともどもしぼんでしまうということです。


君亮執高節,賤妾亦何為!
あなたが高貴な節操で操を固く守っているなら、このわたしはいつまでもお待ちするだけどうしようもないのです。
高節 心を他に移さず、独身を守る意。

古詩十九首之七 (7) 漢詩<94>Ⅱ李白に影響を与えた詩526 漢文委員会 紀頌之の漢詩ブログ1395

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星をかりて、立身出世し誠意を失った旧友を責めた詩。

     
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古詩十九首 第七首
明月皎夜光,促織鳴東壁。
中秋の月はこうこうと明るくかがやいていて、こおろぎが東の書斎の壁下で鳴いている。
玉衡指孟冬,眾星何歷歷。
北斗七星の柄杓の柄に当たる玉衡星は初冬の方角を指し、多くの星が行列をなしてきらめいている。
白露沾野草,時節忽復易。
白露の季節になった、露は野の草をうるおして、時節はたちまち秋は更けてゆく。
秋蟬鳴樹間,玄鳥逝安適。
秋せみはいまだ樹の間に鳴いているが、つばめはもうどこかへ去ってしまった。
昔我同門友,高舉振六翮。
昔わが同門の友も季節の変わりと同じで、今出世していたく羽振りのよい者のことである。
不念攜手好,棄我如遺跡。
その同門の彼らはかつて手を携えた付き合いをしたことを忘れて、わたしなど道に残した足跡のように棄てている。
南箕北有鬥,牽牛不負軛。
八月の夜空の南に箕の星があり、北には北斗星があり、「箕」といい「斗」といってもそれは名ばかりで実がともなわない。牽牛星にしても同じことで、車を引くくび木がかけられているわけではない。
良無盤石固,虛名復何益?

ほんとに盤石のような堅固な実意がなければ、朋友という虚名だけではなんの役にも立たない。

銀河002

現代語訳と訳註
(本文)
第七首
明月皎夜光,促織鳴東壁。
玉衡指孟冬,眾星何歷歷。
白露沾野草,時節忽復易。
秋蟬鳴樹間,玄鳥逝安適。
昔我同門友,高舉振六翮。
不念攜手好,棄我如遺跡。
南箕北有鬥,牽牛不負軛。
良無盤石固,虛名復何益?


(下し文)
明月皎として夜光り、促織【そくしょく】東壁に鳴く。
玉衡【ぎょくこう】孟冬を指し、衆星 何ぞ歴歴たる。
白露 野草を沾【うるお】し、時節 忽ち復た易【かわ】る
秋蝉【しゅうぜん】樹閒【じゅかん】に鳴き、玄烏 逝【さ】りて安くにか適【ゆ】く。
昔我が同門の友、高擧して六翮【りくかく】を振ふ。
手を携へし好【よしみ】を念はず、我を棄つること遺跡の如し。
南には箕【き】北には斗有り、牽牛【けんぎゅう】軛【やく】を負はず、
良に盤石【ばんじゃく】の固きこと無くんは、虚名【きょめい】復た何の益かあらん。


(現代語訳)
中秋の月はこうこうと明るくかがやいていて、こおろぎが東の書斎の壁下で鳴いている。
北斗七星の柄杓の柄に当たる玉衡星は初冬の方角を指し、多くの星が行列をなしてきらめいている。
白露の季節になった、露は野の草をうるおして、時節はたちまち秋は更けてゆく。
秋せみはいまだ樹の間に鳴いているが、つばめはもうどこかへ去ってしまった。
昔わが同門の友も季節の変わりと同じで、今出世していたく羽振りのよい者のことである。
その同門の彼らはかつて手を携えた付き合いをしたことを忘れて、わたしなど道に残した足跡のように棄てている。
八月の夜空の南に箕の星があり、北には北斗星があり、「箕」といい「斗」といってもそれは名ばかりで実がともなわない。牽牛星にしても同じことで、車を引くくび木がかけられているわけではない。
ほんとに盤石のような堅固な実意がなければ、朋友という虚名だけではなんの役にも立たない。


(訳注)
第七首
・第七首 星をかりて、立身出世し誠意を失った旧友を責めた詩。


明月皎夜光,促織鳴東壁。
中秋の月はこうこうと明るくかがやいていて、こおろぎが東の書斎の壁下で鳴いている。
・促織 こおろぎ、また、はたおり。
東壁 東の書斎の壁。西の窓は閨の窓。


玉衡指孟冬,眾星何歷歷。
北斗七星の柄杓の柄に当たる玉衡星は初冬の方角を指し、多くの星が行列をなしてきらめいている。
玉衡 北斗七星の第五星、斗柄に当たる。「玉衡孟冬を指す」とは斗柄の指す方位が、初冬の月に当たっているの意。
 「北斗七星の中央の星」玉衡星と牽牛星。衡は北斗七星の第五星。『爾雅』に星紀は斗宿と牽牛星とある。
謝霊運 『擣衣』 -#1
衡紀無淹度、晷運倐如催。白露園滋菊、秋風落庭槐。
肅肅莎雞羽、烈烈寒螿啼。夕陰結空幕、霄月皓中閨。
歴歴 分明のさま、また行列のさま。


白露沾野草,時節忽復易。
白露の季節になった、露は野の草をうるおして、時節はたちまち秋は更けてゆく。
白露 二十四節気 : 処暑→白露→秋分 二十四節気の一つ。旧暦八月(葉月)の節気。 大気が冷えて来て、露が出来始める頃。


秋蟬鳴樹間,玄鳥逝安適
秋せみはいまだ樹の間に鳴いているが、つばめはもうどこかへ去ってしまった。
秋蟬 ツクツクボーシ。
玄鳥 燕。


昔我同門友,高舉振六翮。
昔わが同門の友も季節の変わりと同じで、今出世していたく羽振りのよい者のことである。
六翮 副は羽の茎。巽の利き羽は六枚、それにはいずれも太い茎が通っている。故に六新は羽翼の意。


不念攜手好,棄我如遺跡。
その同門の彼らはかつて手を携えた付き合いをしたことを忘れて、わたしなど道に残した足跡のように棄てている。
遺跡 あとに残した足あと。顧みる価値のないこと。


南箕北有鬥,牽牛不負軛。
八月の夜空の南に箕の星があり、北には北斗星があり、「箕」といい「斗」といってもそれは名ばかりで実がともなわない。牽牛星にしても同じことで、車を引くくび木がかけられているわけではない。
 牛の頭にかけて、車を引かせるための頸木。
 

良無盤石固,虛名復何益?
ほんとに盤石のような堅固な実意がなければ、朋友という虚名だけではなんの役にも立たない。
宮島(3)

古詩十九首之六 (6) 漢詩<93>Ⅱ李白に影響を与えた詩525 漢文委員会紀頌之の漢詩ブログ1392

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古詩十九首 第六首
涉江采芙蓉,蘭澤多芳草。
江水をわたって蓮の花をとるのである、蘭草の茂った沢があり、たくさんの芳しい草花が咲いている。
采之欲遺誰,所思在遠道。
それをとって誰におくろうというのか。わが思う人は遠い旅路にいったままなのだ。
還顧望舊鄉,長路漫浩浩。
ふりかえって故郷の方を眺めると、はてしもない長い路がひろびろと続いているのを見られるのだ。
同心而離居,憂傷以終老。

慕う思いは、同じ心の二人でありながら、離れはなれにくらしているのだ、そのため憂と悲しみにくれてついには老いこんでしまうというものだ。

pla051

現代語訳と訳註
(本文)
 第六首
涉江采芙蓉,蘭澤多芳草。
采之欲遺誰,所思在遠道。
還顧望舊鄉,長路漫浩浩。
同心而離居,憂傷以終老。


(下し文)
江を捗【わた】りて芙蓉【ふよう】を采る、蘭澤【らんたく】芳草【ほうそう】多し。
之を采りて誰にか遺【おく】らんと欲する、思ふ所は遠道【えんどう】に在り。
還【めぐ】り顧【かえりみ】て 旧郷を望めば、長路漫として浩浩たらん。
同心にして離屈【りきょ】せば、憂傷【ゆうしょう】して以て終に老いなん。


(現代語訳)
江水をわたって蓮の花をとるのである、蘭草の茂った沢があり、たくさんの芳しい草花が咲いている。
それをとって誰におくろうというのか。わが思う人は遠い旅路にいったままなのだ。
ふりかえって故郷の方を眺めると、はてしもない長い路がひろびろと続いているのを見られるのだ。
慕う思いは、同じ心の二人でありながら、離れはなれにくらしているのだ、そのため憂と悲しみにくれてついには老いこんでしまうというものだ。


(訳注)
第六首
第六首 芳草をとって思う人に遣るのは男女・夫婦の間に多いから、この詩も男女相愛の情を述べたもの。


涉江采芙蓉,蘭澤多芳草。
江水をわたって蓮の花をとるのである、蘭草の茂った沢があり、たくさんの芳しい草花が咲いている。
芙蓉 蓮花。『楚辞』離騒で、「芰荷以爲衣兮,集芙蓉以爲裳」(芰荷を製して以て衣と為し、芙蓉を集めて以て裳と為す)とうたわれ、高潔で孤高に生きる君子の袴とされた花。
 毎年花を咲かせる多年草です。河原や池の側など水辺に好んで自生するふじばかのこと。


采之欲遺誰,所思在遠道。
それをとって誰におくろうというのか。わが思う人は遠い旅路にいったままなのだ。


還顧望舊鄉,長路漫浩浩。
ふりかえって故郷の方を眺めると、はてしもない長い路がひろびろと続いているのを見られるのだ。
還顧 旋願、回敵に同じ。頭をめぐらしてかえりみること。
浩浩 ひろびろとしてほてなきさま。


同心而離居,憂傷以終老。
慕う思いは、同じ心の二人でありながら、離れはなれにくらしているのだ、そのため憂と悲しみにくれてついには老いこんでしまうというものだ。

古詩十九首之五 (5) 漢詩<92>Ⅱ李白に影響を与えた詩524 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1389

古詩十九首之五 (5) 漢詩<92>Ⅱ李白に影響を与えた詩524 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1389


     
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2012年12月1日から連載開始
唐五代詞詩・宋詞詩

『菩薩蠻 一』温庭筠   花間集

 
 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
      2011/7/11 ~ 2012/1/11 まで毎日掲載 全130首(187回) 
   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

古詩十九首 第五首
西北有高樓,上與浮雲齊。
その富貴の家には西北の場所に高楼があるものだ、上れば上は浮雲の高さと同じ位ほどのものである。
交疏結綺窗,阿閣三重階。
組み合わせのすかし彫り込みに花模様の彩絹の窓をつけた四方が解放され望み台のある三階建てである。
上有弦歌聲,音響一何悲。
その上から瑟筝を鼓ち絃歌の声が聞こえてくるが、その音のひびきのなんと悲しいことであろうか。
誰能為此曲?無乃杞梁妻!
誰がこんなに能くあの曲を作ったのであろうか、それこそはあの悲曲の主、斉の杞梁の妻、孟姜女のような人ではあるまいか。
清商隨風發,中曲正徘徊。
琴と笛の和調で澄んだ音調で秋のもの悲しい声調の曲が風にのってひびいてくるが、曲の中ほどで、正規の引きであったり、ためらいかけた音階であったりする。
一彈再三嘆,慷慨有餘哀。
ひとたび弾いては再三なげき、なげいてもなげいても悲しみのつきない様子なのである。
不惜歌者苦,但傷知音希,
歌う人はその身の苦しさを惜しみはしなが、曲の心を知ってくれる聴き手がすくないことを悲しむというものだろう。
願為雙鴻鵠,奮翅起高飛。

願うことはひとつがいの鴻鵠にでもなりたいというものだろうし、翼をふるい空高く飛びたいと思うことであろう。

現代語訳と訳註
(本文)
第五首
西北有高樓,上與浮雲齊。
交疏結綺窗,阿閣三重階。
上有弦歌聲,音響一何悲。
誰能為此曲?無乃杞梁妻!
清商隨風發,中曲正徘徊。
一彈再三嘆,慷慨有餘哀。
不惜歌者苦,但傷知音希,
願為雙鴻鵠,奮翅起高飛。


(下し文)
西北に高楼有り、上は浮雲と斉し。
交疏 綺を結ぶ窓、阿閣 三重の階。
上に弦歌の声あり、音響 一に何ぞ悲しき。
誰が能く此の局を為す、無乃杞梁の妻ならんか。
清商【せいかん】風に随って発し、中曲にいて正に徘徊す。
一たび弾じて再三歎く、慷慨して 余哀有り。
歌う者の苦しみを惜しまず、但だ知音の稀なるを傷む。
願はくは双鳴の鶴と為りて、翅を奮いて起って高飛せんことを。


(現代語訳)
その富貴の家には西北の場所に高楼があるものだ、上れば上は浮雲の高さと同じ位ほどのものである。
組み合わせのすかし彫り込みに花模様の彩絹の窓をつけた四方が解放され望み台のある三階建てである。
その上から瑟筝を鼓ち絃歌の声が聞こえてくるが、その音のひびきのなんと悲しいことであろうか。
誰がこんなに能くあの曲を作ったのであろうか、それこそはあの悲曲の主、斉の杞梁の妻、孟姜女のような人ではあるまいか。
琴と笛の和調で澄んだ音調で秋のもの悲しい声調の曲が風にのってひびいてくるが、曲の中ほどで、正規の引きであったり、ためらいかけた音階であったりする。
ひとたび弾いては再三なげき、なげいてもなげいても悲しみのつきない様子なのである。
歌う人はその身の苦しさを惜しみはしなが、曲の心を知ってくれる聴き手がすくないことを悲しむというものだろう。
願うことはひとつがいの鴻鵠にでもなりたいというものだろうし、翼をふるい空高く飛びたいと思うことであろう。


(訳注)
第五首

富貴の家に嫁いだの人(芸妓が第二夫人として)が部屋に訪れる人がなく孤独で、音楽に托して意中を表わし、知音の人を求めようとする意を述べた詩である。


西北有高樓,上與浮雲齊。
その富貴の家には西北の場所に高楼があるものだ、上れば上は浮雲の高さと同じ位ほどのものである。
西北有高樓 西に閨があり、北には妾夫のかこわれた部屋があり、高楼がある。


交疏結綺窗,阿閣三重階。
組み合わせのすかし彫り込みに花模様の彩絹の窓をつけた四方が解放され望み台のある三階建てである。
交疏結綺窗 格子窓。すかし彫りの、組み合わせに彩色の紋様を彫り込み綵絹を張った飾り窓。富貴の家の娼妾の部屋の窓。
阿閣 四方が解放されていて屋根があり,あがつまや風の高殿。


上有弦歌聲,音響一何悲。
その上から瑟筝を鼓ち絃歌の声が聞こえてくるが、その音のひびきのなんと悲しいことであろうか。


誰能為此曲?無乃杞梁妻!
誰がこんなに能くあの曲を作ったのであろうか、それこそはあの悲曲の主、斉の杞梁の妻、孟姜女のような人ではあるまいか。
杞梁妻 斉の国に杞梁殖の妻が,夫の戦死を悲しみ城下で哭いていた。7日のち城壁が崩れ為に,その父と夫と子を失い悲しみを琴を奏でて歌った。歌い終わると河に身を投じて死んだ。(列女伝)孟姜女 斉の杞梁の妻; 万里の長城の人夫であった夫が過酷な労働で死んだことを知った孟姜女が号泣すると万里の長城が崩れた故事
一去燕山更不歸。造得寒衣無人送,不免自家送征衣。 一般的な見方としては、孟姜女と杞梁は夫婦であり、「杞梁の妻」とは孟姜女を指す。


清商隨風發,中曲正徘徊。
琴と笛の和調で澄んだ音調で秋のもの悲しい声調の曲が風にのってひびいてくるが、曲の中ほどで、正規の引きであったり、ためらいかけた音階であったりする。
清商 宮・商・角・微・羽。の五音の第2音,琴と笛の和調で澄んだ音調で秋のもの悲しい声調。魏文帝 『燕歌行』「援琴鳴絃發清商、短歌微吟不能長。」(琴を援き絃を鳴らして清商【せいかん】を發し、短歌 微吟【びぎん】長くするを能わず。)
杜甫『秋笛』
 清商欲盡奏,奏苦血沾衣。他日傷心極,徵人白骨歸。
 相逢恐恨過,故作發聲微。不見秋雲動,悲風稍稍飛。
徘徊 (1)目的もなく、うろうろと歩きまわること。うろつくこと。 「夜の巷(ちまた)を―する」 (2)葛藤からの逃避、精神病・痴呆などにより、無意識のうちに目的なく歩きまわること。ここではおとをためらい弾きをする。


一彈再三嘆,慷慨有餘哀。
ひとたび弾いては再三なげき、なげいてもなげいても悲しみのつきない様子なのである。


不惜歌者苦,但傷知音希,
歌う人はその身の苦しさを惜しみはしなが、曲の心を知ってくれる聴き手がすくないことを悲しむというものだろう。
知音 知己。自分の琴の演奏の良さを理解していくれる親友のこと。伯牙は琴を能くしたが、鍾子期はその琴の音によって、伯牙の心を見抜いたという。転じて自分を理解してくれる知人。
『列子、湯問』「伯牙善鼓琴。鐘子期善聽。伯牙鼓琴。志在登高山。鐘子期曰。善哉。巍巍兮若泰山。志在流水。鍾子期曰。善哉。洋洋兮若江河。伯牙所念。鐘子期必得之。伯牙游於泰山之陰。卒逢暴雨。止於巖下心悲。乃援琴而鼓之。初為霖雨之操。更造崩山之音。曲毎奏。鐘子期輒窮其趣。伯牙乃舍琴而嘆曰。善哉善哉。子之聽。夫志想象。猶吾心也。吾於何逃聲哉。」 
(下し文)
伯牙善く琴を鼓し、鍾子期善く聴く。
伯牙琴を鼓し、志泰山登るに在り、鍾子期曰く、善い哉、巍巍兮として泰山の若し、と。
志流水に在らば、鍾子期曰く、 善い哉、琴を鼓する、洋洋兮として江河の若し、と。
伯牙の念ふ所、鐘子期必ず之を得。
伯牙、泰山の陰に遊び、卒に暴雨に逢ふ。
巖下に止まりて心悲しみ、乃ち琴を援りて之を鼓す。
初め「霖雨の操」を為し、更に「崩山の音」を造す。
曲奏する毎に、鐘子期輒ち其の趣きを窮む。
伯牙乃ち琴を舎きて嘆じて曰く、善い哉、善い哉、子の聴く。
夫れ志を想像する、猶ほ吾が心のごときなり。
吾れ何に於いて声を逃れんや、と。


願為雙鴻鵠,奮翅起高飛。
願うことはひとつがいの鴻鵠にでもなりたいというものだろうし、翼をふるい空高く飛びたいと思うことであろう。
鴻鵠 「鴻」はおおとり、「鵠」はくぐいで、ともに大きな鳥、大人物のたとえ。
杜甫『三川觀水漲二十韻』「舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?」

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古詩十九首之四 (4) 漢詩<91>Ⅱ李白に影響を与えた詩523 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1386

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 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
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   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

盛宴に列して自己の貧賎を憤る自嘲の詩。


 古詩十九首 第四首  
今日良宴会、歓楽難具陳。
今日のよい宴会出席している、その歓楽の様子はくわしくは述べたくないというものだ。
弾筝奮逸響、新声妙入神。
それは台上にひく十三絃琴の音のすぐれたひびきを聞けば、新曲の妙は人間わざとも思えない。
令徳唱高言、識曲聴其真。
さて高徳の人がりっぱな歌詞を歌えば、曲を識る者にはその真意がわかる。
斉心同所願、含意倶未申。
今日の宴会はそうした良友のみを集められており、いわばみな同心の人で、その理想も同じであるが、その意はなかなか申される通りにはいかないものなのだ。
人生寄一世、奄忽若飆塵。
人のこの世に在るは風に吹かれる塵のようなもの、たちまち吹き飛ばされてしまうものなのだ。
何不策高足、先拠要路津。
どうして、自分の持つ才能を発揮し、まず要路の人に伝手を求めることである。
無為守窮賎、轗軻長苦心。
儒者はそういうことしないで貧賎を貫き通し、不遇のままにいつまでも苦労をするものである。

第四首(今日の良宴会)
今日の良宴会、歓楽は具【つぶさ】に陳【の】べ難し。
筝を弾いて逸響【いつきょう】を奮【るる】い、新声 の妙 神に入る。
令徳【れいとく】高言を唱【とな】へば、曲を識りて其の真を聴く。    
心を斉しくして願う所を同じくするも、意を含みて倶【とも】に未だ申べず。
人生 一世に寄せること、奄忽【えんこつ】として飆塵【ひょうじん】の若し。
何ぞ高足に策【むち】うちて、先づ要路の津に拠らずして。
無為に窮賎【きゅうせん】を守り、轗軻【かんか】長【とこしな】しえに苦心する。


現代語訳と訳註
(本文)
第四首  
今日良宴会、歓楽難具陳。
弾筝奮逸響、新声妙入神。
令徳唱高言、識曲聴其真。
斉心同所願、含意倶未申。
人生寄一世、奄忽若飆塵。
何不策高足、先拠要路津。
無為守窮賎、轗軻長苦心。


(下し文)
第四首(今日の良宴会)
今日の良宴会、歓楽は具【つぶさ】に陳【の】べ難し。
筝を弾いて逸響【いつきょう】を奮【るる】い、新声 の妙 神に入る。
令徳【れいとく】高言を唱【とな】へば、曲を識りて其の真を聴く。    
心を斉しくして願う所を同じくするも、意を含みて倶【とも】に未だ申べず。
人生 一世に寄せること、奄忽【えんこつ】として飆塵【ひょうじん】の若し。
何ぞ高足に策【むち】うちて、先づ要路の津に拠らずして。
無為に窮賎【きゅうせん】を守り、轗軻【かんか】長【とこしな】しえに苦心する。


(現代語訳)
今日のよい宴会出席している、その歓楽の様子はくわしくは述べたくないというものだ。
それは台上にひく十三絃琴の音のすぐれたひびきを聞けば、新曲の妙は人間わざとも思えない。
さて高徳の人がりっぱな歌詞を歌えば、曲を識る者にはその真意がわかる。
今日の宴会はそうした良友のみを集められており、いわばみな同心の人で、その理想も同じであるが、その意はなかなか申される通りにはいかないものなのだ。
人のこの世に在るは風に吹かれる塵のようなもの、たちまち吹き飛ばされてしまうものなのだ。
どうして、自分の持つ才能を発揮し、まず要路の人に伝手を求めることである。
儒者はそういうことしないで貧賎を貫き通し、不遇のままにいつまでも苦労をするものである。


(訳注)
第四首 
 
この詩は知音知己の良友が、楽しい宴会の感動から、短い人生の間に、互いに尊敬する人物が才能を発揮する機会も無く窮賤に苦しむことを惜しみ概いた詩である。


今日良宴会、歓楽難具陳。
今日のよい宴会出席している、その歓楽の様子はくわしくは述べたくないというものだ。


弾筝奮逸響、新声妙入神。
それは台上にひく十三絃琴の音のすぐれたひびきを聞けば、新曲の妙は人間わざとも思えない。
 十三絃琴。
逸響 優れた響き。
・妙入神 霊妙なる神秘性を感じる域にはいること。又は怪しく不思議な程,上手なこと。


令徳唱高言、識曲聴其真。
さて高徳の人がりっぱな歌詞を歌えば、曲を識る者にはその真意がわかる。
令徳 善良な徳を積んだ人柄のもの。儒者の人格。
高言 功徳を積んだものが詩に歌った優れた歌詞。


斉心同所願、含意倶未申。
今日の宴会はそうした良友のみを集められており、いわばみな同心の人で、その理想も同じであるが、その意はなかなか申される通りにはいかないものなのだ。


人生寄一世、奄忽若飆塵。
人のこの世に在るは風に吹かれる塵のようなもの、たちまち吹き飛ばされてしまうものなのだ。
奄忽 たちまち見えなくなる。
・飆塵 風に翻る塵。飆は暴風または旋風。


何不策高足、先拠要路津。
どうして、自分の持つ才能を発揮し、まず要路の人に伝手を求めることである。
高足 足の速い馬,転じて,才能を言う。
要路津 要路は権力者。大切な場所(政治上の地位))
 立場上優位な場所。地位,出世上の利用となるひと,


無為守窮賎、轗軻長苦心。
儒者はそういうことしないで貧賎を貫き通し、不遇のままにいつまでも苦労をするものである。
・轗軻 車が行き悩む事,物事のうまくいかないさま。不遇の意。


古詩十九首之三 (3) 漢詩<90>Ⅱ李白に影響を与えた詩522 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1383

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古詩十九首  第三首
青青陵上栢、磊磊礀中石。
青々とした丘の上には柏の木があり、ごろごろとした谷川の石、自然は常にこのようなものだ。
人生大地間、忽如遠行客。
天地の間において人生のはかないものであり、遠出した旅人がたちまちのうちに過ぎ去るようなものである。
斗酒相娯楽、聊厚不為薄。
せめては一斗の酒を酌みかわしてともに楽しむことであり、そうすれば結構これで十分であるし、不足などとは考えない。
駆車策駑馬、遊戯宛與洛。
足の鈍い馬であってもむちうって車ででかけるのである、宛の街や洛陽の都で遊びまくる。
洛中何欝欝、冠帯自相索。
これらの街はさすが花の都の盛んなことである。衣冠束帯姿のおえら万が、右往左往している。
長衢羅夾巷、王侯多第宅。
東西南北の大通りに小路を規則的に列ねており、そこには王侯の邸宅が建ち並んでいる。
両宮遥相望、双闕百余尺。
南北に向かい合う両宮殿ははるかにとおくのぞみ合っている、そびえ立つ宮門の高い楼閣の高さは百余尺もある。
極宴娯心意、戚戚何所迫。
この繁華街ではこころゆくまで酒宴歓楽に喜び、人生の憂い悲しみは、どうして身に迫り近寄ることがあろうか。


青青たる陵上【りょうじょう】の栢【はく】、磊磊【らいらい】たる礀中【かんちゅう】の石。
人の大地の間に生る、忽ち遠行の客の如し。
斗酒 相い娯楽しみて、聊【しばら】く厚しとして 薄しと為さざらん。
車を駆て 駑馬【どば】に策【むちう】ちて、宛と洛とに遊戯【ゆうぎ】す。
洛中 何ぞ欝欝【うつうつ】として、冠帯【かんたい】自ら相い索【もと】む。
長衢【ちょうく】夾巷【きょうこう】に羅【つら】なり、王侯 第宅【ていたく】多し。
両宮 遥かに相い望む、双闕【そうけつ】百余尺あり。
宴を極めて 心意を娯【たのし】ましぶれば、戚戚【せきせき】として 何の迫る所ぞ。


現代語訳と訳註
(本文)
第三首
青青陵上栢、磊磊礀中石。
人生大地間、忽如遠行客。
斗酒相娯楽、聊厚不為薄。
駆車策駑馬、遊戯宛與洛。
洛中何欝欝、冠帯自相索。
長衢羅夾巷、王侯多第宅。
両宮遥相望、双闕百余尺。
極宴娯心意、戚戚何所迫。


(下し文)
青青たる陵上【りょうじょう】の栢【はく】、磊磊【らいらい】たる礀中【かんちゅう】の石。
人の大地の間に生る、忽ち遠行の客の如し。
斗酒 相い娯楽しみて、聊【しばら】く厚しとして 薄しと為さざらん。
車を駆て 駑馬【どば】に策【むちう】ちて、宛と洛とに遊戯【ゆうぎ】す。
洛中 何ぞ欝欝【うつうつ】として、冠帯【かんたい】自ら相い索【もと】む。
長衢【ちょうく】夾巷【きょうこう】に羅【つら】なり、王侯 第宅【ていたく】多し。
両宮 遥かに相い望む、双闕【そうけつ】百余尺あり。
宴を極めて 心意を娯【たのし】ましぶれば、戚戚【せきせき】として 何の迫る所ぞ。


(現代語訳)
青々とした丘の上には柏の木があり、ごろごろとした谷川の石、自然は常にこのようなものだ。
天地の間において人生のはかないものであり、遠出した旅人がたちまちのうちに過ぎ去るようなものである。
せめては一斗の酒を酌みかわしてともに楽しむことであり、そうすれば結構これで十分であるし、不足などとは考えない。
足の鈍い馬であってもむちうって車ででかけるのである、宛の街や洛陽の都で遊びまくる。
これらの街はさすが花の都の盛んなことである。衣冠束帯姿のおえら万が、右往左往している。
東西南北の大通りに小路を規則的に列ねており、そこには王侯の邸宅が建ち並んでいる。
南北に向かい合う両宮殿ははるかにとおくのぞみ合っている、そびえ立つ宮門の高い楼閣の高さは百余尺もある。
この繁華街ではこころゆくまで酒宴歓楽に喜び、人生の憂い悲しみは、どうして身に迫り近寄ることがあろうか。


(訳注)
第三首
山間から都会の人間の現実世界に身を駆って、享楽と野心の中に憂いを消そうとする。最後の一句中の「戚戚」の言葉の底。人生の憂いこそ、この詩の基調である。
・第三首 人生は無常であるが、それを悲しむよりは命に安んじてしばらく行楽しょうとの意。


青青陵上栢、磊磊礀中石。
青々とした丘の上には柏の木があり、ごろごろとした谷川の石、自然は常にこのようなものだ。
・陵 高丘。
・柏 このてがしわ、ひはに似た一種の常緑樹。
・磊 磊石のごろごろしたさま
・礀 石間の水


人生大地間、忽如遠行客。
天地の間において人生のはかないものであり、遠出した旅人がたちまちのうちに過ぎ去るようなものである。


斗酒相娯楽、聊厚不為薄。
せめては一斗の酒を酌みかわしてともに楽しむことであり、そうすれば結構これで十分であるし、不足などとは考えない。
・聊厚不為薄 酒を飲んで楽しみ,多少厚くても厭わず,又,薄しともしない,転じて,しばらく,之は結構なご馳走だと思い,つまらぬものと思うまい.


駆車策駑馬、遊戯宛與洛。
足の鈍い馬であってもむちうって車ででかけるのである、宛の街や洛陽の都で遊びまくる。
・駑馬 足の鈍い馬では,あるがの意.
・宛與洛 河南省の南陽の宛県と洛陽


洛中何欝欝、冠帯自相索。
これらの街はさすが花の都の盛んなことである。衣冠束帯姿のおえら万が、右往左往している。
・欝 繁盛の状態
・冠帯 衣冠束帯,即ち貴族官僚人
・自相索 訪問し合うのを常としていること。 相追い求める。右往左往している。


長衢羅夾巷、王侯多第宅。
東西南北の大通りに小路を規則的に列ねており、そこには王侯の邸宅が建ち並んでいる。
・長衢 長い大通、衢は四方に通ずる都大路。
・羅 羅列,連なり並ぶ
第宅 邸宅


両宮遥相望、双闕百余尺。
南北に向かい合う両宮殿ははるかにとおくのぞみ合っている、そびえ立つ宮門の高い楼閣の高さは百余尺もある。
・両宮 漢代には洛陽に南北の両宮があり、七里を隔てて相対した。
・双闕 宮門の左右にある高い楼閣。


極宴娯心意、戚戚何所迫。
この繁華街ではこころゆくまで酒宴歓楽に喜び、人生の憂い悲しみは、どうして身に迫り近寄ることがあろうか。 
・戚戚 憂い,悲しみ
・何所迫 どうして身に迫り近寄ることがあろうか

古詩十九首之二 (2) 漢詩<89>Ⅱ李白に影響を与えた詩521 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1380

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   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

      
古詩十九 第ニ首
青青河畔艸、欝欝園中柳。
春の青々と河のほとりの草叢でみんながいて、さかんに茂る園の柳は生き生きとしている。
盈盈楼上女、皎皎当窓牅。
見あげると高殿には、瑞々しく艶やかな女が、真白い顔を輝かして窓のほとりにのぞかせている。
娥娥紅紛粧、繊繊出素手。
そしてその女は嫦娥のように美しい紅粉のよそおい、せんせんとほっそりとした白い手を窓に当てているのが目につく。
昔為倡家女、今為蕩子婦。
彼女は昔、歓楽街娼屋の娼女であったが、今は蕩子の妾妻となっている。
蕩子行不帰、空牀難独守。
放蕩の男は出たまま帰る様子は全くない、妾女はひとり寝のさびしさに堪えがたいようすである。

青青 河畔の艸【くさ】、欝欝【うつうつ】たる園中の柳。
盈盈【えいえい】たる 楼上の女、皎皎【こうこう】として窓牅【そうゆう】に当たる。
娥娥【がが】たる紅紛の粧【よそお】い、繊繊【せんせん】として素手【そしゅ】を出す。
昔は 倡家【しょうか】の女為り、今は 蕩子【とうし】の婦【つま】と為る。
蕩子は行きて帰らず、空牀 独り守ること難し。

    
現代語訳と訳註
(本文)
第ニ首
青青河畔艸、欝欝園中柳。
盈盈楼上女、皎皎当窓牅。
娥娥紅紛粧、繊繊出素手。
昔為倡家女、今為蕩子婦。
蕩子行不帰、空牀難独守。


(下し文)
青青 河畔の艸【くさ】、欝欝【うつうつ】たる園中の柳。
盈盈【えいえい】たる 楼上の女、皎皎【こうこう】として窓牅【そうゆう】に当たる。
娥娥【がが】たる紅紛の粧【よそお】い、繊繊【せんせん】として素手【そしゅ】を出す。
昔は 倡家【しょうか】の女為り、今は 蕩子【とうし】の婦【つま】と為る。
蕩子は行きて帰らず、空牀 独り守ること難し。


(現代語訳)
春の青々と河のほとりの草叢でみんながいて、さかんに茂る園の柳は生き生きとしている。
見あげると高殿には、瑞々しく艶やかな女が、真白い顔を輝かして窓のほとりにのぞかせている。
そしてその女は嫦娥のように美しい紅粉のよそおい、せんせんとほっそりとした白い手を窓に当てているのが目につく。
彼女は昔、歓楽街娼屋の娼女であったが、今は蕩子の妾妻となっている。
放蕩の男は出たまま帰る様子は全くない、妾女はひとり寝のさびしさに堪えがたいようすである。


(訳注)    
第ニ首

此の詩は、遊治郎に身受をされた妓女の不幸な結婚をした婦人が一人寂しく留守をしているのを同情した詩。


青青河畔艸、欝欝園中柳。
春の青々と河のほとりの草叢でみんながいて、さかんに茂る園の柳は生き生きとしている。
青河畔艸 五行思想で青は春で男女の性行為が盛んな様子をイメージさせる。
鬱々 さかんに茂っているさま。柳は女性のしなやかさを示す。


盈盈楼上女、皎皎当窓牅。
見あげると高殿には、瑞々しく艶やかな女が、真白い顔を輝かして窓のほとりにのぞかせている。
皎皎 色白くひかるさま
窓牅 窓のほとりにもたれている様子。


娥娥紅紛粧、繊繊出素手。
そしてその女は嫦娥のように美しい紅粉のよそおい、せんせんとほっそりとした白い手を窓に当てているのが目につく。
娥娥 女の美しい形容。嫦娥 これは裏切られた愛の恨みを古い神話に託した歌。○嫦娥 神話中の女性。神話の英雄、羿(がい)が西方極遠の地に存在する理想国西王母の国の仙女にお願いしてもらった不死の霊薬を、その妻の嫦娥がぬすみ飲み、急に身軽くなって月世界まで飛びあがり月姫となった。漢の劉安の「淮南子」覧冥訓に登場する。なお、魯迅(1881-l936)にこの神話を小説化した「羿月」がいげつと題する小説がある。
裏切られた心の痛み故に、夜のあけるまで、こうして星や月を眺めているのだ。あなたはいま何処にいるのだろうか。月の精である嫦娥は、夫の不在中に不思議な薬を飲み、その為に空に舞いあがったのだという。そのように、人間の世界を去った嫦娥は、しかしきっと、その薬
をぬすみ飲んだ事をくやんでいるだろう。
青青と広がる天空、その極みなる、うすみどりの空の海原、それを眺めつつ、夜ごと、嫦娥は傷心しているに違いない。私を裏切った私の懐しき恋人よ。君もまた新しい快楽をなめて、身分高い人のもとに身を寄せたことを悔いながら、寒寒とした夜を過しているのではなかろうか。李商隠 『嫦娥』 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集約130首 詩の背景1.道教 2.芸妓 3.嫦娥と李商隠


昔為倡家女、今為蕩子婦。
彼女は昔、歓楽街娼屋の娼女であったが、今は蕩子の妾妻となっている。
倡家 遊女屋
蕩子 放蕩の男子。いわゆる貴公子という場合もある。


蕩子行不帰、空牀難独守。
放蕩の男は出たまま帰る様子は全くない、妾女はひとり寝のさびしさに堪えがたいようすである。

古詩十九首之一 (1) 漢詩<88>Ⅱ李白に影響を与えた詩520 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1377

     
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2012年12月1日から連載開始
唐五代詞詩・宋詞詩

『菩薩蠻 一』温庭筠   花間集

 
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古詩十九首.其之一は「文選」にも見える.一人の一時の作でない,名称の纏めから,「文選」では作者不明.「玉台新詠」では,19首中8首は漢の枚乗の作品として収められているが、今日ではそれは疑われていて、漢の武帝時代の作ではないとされはじめている。ここでは、その考察をしない。この詩は後世に多大な影響を持つものであることでここに紹介するものである。

古詩十九首 (1) 漢詩<88>Ⅱ李白に影響を与えた詩520 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1377


古詩十九 第一首.
行行重行行、與君生別離。
別れて旅立って、昨日も今日も、歩み進めておられることでしょう、わたしは『楚辞』で世の中で最も悲しいことといわれた「生きて離別すること」で悲しみにあふれているのです。
相去萬餘里、各在天一涯。
あなたは去って行き、万里を隔てて各々が天の一方に暮らす身の上になっているのです。
道路阻且長、會面安可知。
その間の道は山河を隔て険しくそして長く果てしなく遠いのです。又逢える日は何時の日の事でしょう、
胡馬依北風、越鳥巣南枝。
北方異民族の馬は北風に身をよせていななき、南方越の鳥は技を求めて巣くうと申します。(それもこれも故郷の忘れ難いものばかり、わたしは故郷にはなり得ていないのですか。)
相去日已遠、衣帯日已緩。
故郷を去るとすべて故郷は忘れがたいものなのに、お別れしてから、日数も遠く過ぎました。悲しさのあまり、身もやせ細って、衣も帯も日増しにゆるくなるばかりです。
浮雲蔽白日、遊子不顧返。
あの浮雲はお日様をおおいかくしているから、旅人のあなたには見えないので、あなたはお帰りなさらないというのでしょう。
思君令人老、歳月忽已晩。
あなたのことを思うとにわかに年がふけるようですし、それに本当に歳月は早く暮れていくのです。
棄捐勿復道、努力加餐飯。

わが身の棄てられたことなど今さらなに言いたくありません、あなたが務めて食事をとられ、お体を大切になさいますように思い願っております。

行き行き重ねて行き行く、君と生きて別離す。
相去ること萬餘里、各々天の一涯に在り。
道路 阻にして且つ長し、會面 安くんぞ知る可けんや。
胡馬 北風に依り、越鳥 南枝に巣くう。
相去りし 日々已に遠く、衣帯は 日々已に緩む。
浮雲は 白日を蔽い、遊子は 返り顧ず。
君を思い 人をして老いせしむ、歳月 忽ち已に晩れる。
棄捐 復た道う勿からん、努力し 餐飯を加えよ。


現代語訳と訳註
(本文)
第一首.
行行重行行、與君生別離。
相去萬餘里、各在天一涯。
道路阻且長、會面安可知。
胡馬依北風、越鳥巣南枝。
相去日已遠、衣帯日已緩。
浮雲蔽白日、遊子不顧返。
思君令人老、歳月忽已晩。
棄捐勿復道、努力加餐飯。


(下し文)
行き行き重ねて行き行く、君と生きて別離す。
相去ること萬餘里、各々天の一涯に在り。
道路 阻にして且つ長し、會面 安くんぞ知る可けんや。
胡馬 北風に依り、越鳥 南枝に巣くう。
相去りし 日々已に遠く、衣帯は 日々已に緩む。
浮雲は 白日を蔽い、遊子は 返り顧ず。
君を思い 人をして老いせしむ、歳月 忽ち已に晩れる。
棄捐 復た道う勿からん、努力し 餐飯を加えよ。


(現代語訳)
別れて旅立って、昨日も今日も、歩み進めておられることでしょう、わたしは『楚辞』で世の中で最も悲しいことといわれた「生きて離別すること」で悲しみにあふれているのです。
あなたは去って行き、万里を隔てて各々が天の一方に暮らす身の上になっているのです。
その間の道は山河を隔て険しくそして長く果てしなく遠いのです。又逢える日は何時の日の事でしょう、
北方異民族の馬は北風に身をよせていななき、南方越の鳥は技を求めて巣くうと申します。(それもこれも故郷の忘れ難いものばかり、わたしは故郷にはなり得ていないのですか。)
故郷を去るとすべて故郷は忘れがたいものなのに、お別れしてから、日数も遠く過ぎました。悲しさのあまり、身もやせ細って、衣も帯も日増しにゆるくなるばかりです。
あの浮雲はお日様をおおいかくしているから、旅人のあなたには見えないので、あなたはお帰りなさらないというのでしょう。
あなたのことを思うとにわかに年がふけるようですし、それに本当に歳月は早く暮れていくのです。
わが身の棄てられたことなど今さらなに言いたくありません、あなたが務めて食事をとられ、お体を大切になさいますように思い願っております。


(訳注)
第一首.

此の詩は妻が帰らぬ夫の身を切切と思う情が流露された詩である.文字通り自然な愛情の歌とみるべきであろうが、中国の註釈家達は、古来総べての詩は道義や政治の為のものであるとして、此の詩にも裏面の意味を強いて求めようとする傾向がある。


行行重行行、與君生別離。
別れて旅立って、昨日も今日も、歩み進めておられることでしょう、わたしは『楚辞』で世の中で最も悲しいことといわれた「生きて離別すること」で悲しみにあふれているのです。
行行 留守居の女性の言葉。「閔子侍側誾誾如也,子路行行如也。」(閔子【 びんし】 、 側に侍す、誾誾如【ぎんぎんじょ】たり。子路【しろ】、行行如【こうこうじょ】たり。)
生離別 世の中で最も悲しいことは生きて離別することである.『楚辞』九歌第二 (六)少司命「悲莫悲兮生別離 樂莫樂兮新相知. 」(悲しきは生別離より悲しきはなく、楽しきは新相知より楽しきはなし。)


相去萬餘里、各在天一涯。
あなたは去って行き、万里を隔てて各々が天の一方に暮らす身の上になっているのです。
天一涯:天の果て.空と空の果て,
相去 互いにと読むが女は動かないで男の身が遠くに去る場合も互いにという語を使う。


道路阻且長、會面安可知。
その間の道は山河を隔て険しくそして長く果てしなく遠いのです。又逢える日は何時の日の事でしょう、
阻且長;山河を隔て険しく,そして,長い。


胡馬依北風、越鳥巣南枝。
北方異民族の馬は北風に身をよせていななき、南方越の鳥は技を求めて巣くうと申します。(それもこれも故郷の忘れ難いものばかり、わたしは故郷にはなり得ていないのですか。)
胡馬依北風:北方,または西方の匈奴の馬.北方の異民族(遊牧・騎馬民族)に生まれた馬は北風が吹いてくると北風に向いて嘶き,身を寄せて故郷を懐かしがるようにみえることから、故郷の忘れ難い例えとしている。
・越鳥巣南枝:南方の越の国で生まれた鳥は北の土地に連れていっも,南向きの枝に巣をかける.この句も故郷の忘れ難い例えである。


相去日已遠、衣帯日已緩。
故郷を去るとすべて故郷は忘れがたいものなのに、お別れしてから、日数も遠く過ぎました。悲しさのあまり、身もやせ細って、衣も帯も日増しにゆるくなるばかりです。
・衣帯:(1)着物と帯.装束(2)着物の帯


浮雲蔽白日、遊子不顧返。
あの浮雲はお日様をおおいかくしているから、旅人のあなたには見えないので、あなたはお帰りなさらないというのでしょう。
・浮雲:(1)浮き雲,空にうかんでいる雲.(2)自分に全く関係の無い物事の例え存在性のうすい例え,また,軽いものの例え,(論語・述而)「不義而富且貴,於我如浮雲」(3)悪人の例え,浮雲が太陽の光を遮るから言う.
・遊子:他郷にある人,旅び人.(史・高祖紀 「遊子悲故郷」)(4)人生。


思君令人老、歳月忽已晩。
あなたのことを思うとにわかに年がふけるようですし、それに本当に歳月は早く暮れていくのです。


棄捐勿復道、努力加餐飯。
わが身の棄てられたことなど今さらなに言いたくありません、あなたが務めて食事をとられ、お体を大切になさいますように思い願っております。

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